DTMステーションで、過去何回か取り上げてきた、ポータブルオーディオワークステーション、KDJ-ONE。コンパクトで軽い機材ながら、シンセサイザー、シーケンサ、エフェクト、サンプラーなど音楽制作に必要な機能を一通り備えるとともに、タッチディスプレイ、キーボード、スピーカーまで備えることで、これ1つで何でもできてしまうというスーパーマシン。デザイン的にもゲーム機っぽい雰囲気で、心惹かれるものがあります。このKDJ-ONEについては2年半前にアメリカのクラウドファンディング・サイト、Kickstarterでの支援を募る形で実質的な販売を行ったので、「そういえば、だいぶ前に見た!」なんて覚えている方も多いと思います。
ただ、メーカーであるサイバーステップでは、想定以上に開発が難航し、現時点ではまだユーザーの手元にモノが届いていない状況でした。しかし、小型デジタルDJ機器であるGODJを開発する仙台のメーカー、JDSoundが昨年末から助っ人として開発・生産チームに加わったことで、状況は大きく好転。ようやく生産スタートの段階にたどり着いたようです。「ついに量産機の第1号が届きます!」という連絡を一昨日、サイバーステップの社長、佐藤類さんからいただき、すぐに見に行ってきました。5種類のカラーバリエーションのホンモノが一挙に勢ぞろいした姿はなかなかのもの。質感もすごくよくて、グッときます。ちょうど9月末から日本のクラウドファンディングであるMakuakeでも予約販売を開始していますが、実際どういう状況なのかも、いろいろ聞いてきたので、レポートしてみましょう。
ついに量産体制に入ったゲーム機風小型DAW、KDJ-ONE
久しぶりにお会いした佐藤さんは、開口一番「予想以上にずいぶん時間がかかってしまって申し訳ありません」とお詫びの言葉。確かに私もKickstarterで1台購入しているので、待っている側の立場ではありますが、かなり苦労されている……という噂は各方面から伺っていたので、「頑張って欲しい!」と心の中で応援しつつ、「このまま、暗礁に乗り上げるようなことがなければ…」と心配もしていたところです。
工場から上がってきたばかりの量産機を手にする、サイバーステップの社長、佐藤類さん
でも明るい表情の佐藤さんは「お待たせしましたが、ようやく生産のメドがつき、今日、その量産機の第1号がやってきました!」と見せてくれたのが、この5つのカラーバリエーションのKDJ-ONEです。以前見ていた白いプロトタイプとは、やはり質感もまったく異なり、見た瞬間に「これ、今ください!」って言ってしまったほど。すごくカッコいいんですよ。
KDJ-ONEの5つのカラーバリエーションがついに完成に
以前、CGにおいてこのカラバリは見ていましたが、実物のほうが断然イイですね。さっそく電源を入れてみると、おお!ちゃんと動きます。そのうちの1つでデモ曲を再生し、少し触ってみたのをビデオで撮影してみたので、ご覧ください。
どうですか?iPhoneで撮影しただけの映像ですが、この雰囲気、分かりますよね!ちなみに、この音はKDJ-ONE内蔵のスピーカーから出た音をそのまま撮影したもの。すぐそばでサイバーステップの社員の方が電話をしていたので、その声も少しモゴモゴと入ってしまっていますが、本体から出てる音と考えると、なかなかのものだと思いませんか?
本体の左右にステレオのスピーカーを内蔵
ちなみに、このスピーカー部のデザインはプロトタイプとはちょっと変わったようです。歴代のKDJ-ONEプロトタイプを見ると、ボディーからスピーカーの振動部が飛び出した格好になっていますが「これだと、ボタンと間違えて押して壊してしまう可能性もある」という指摘から網目状の内側に収めたそうです。
マルチダイヤルを回すとカチカチと動くのも気持ちいい
タッチパネルの液晶での操作も快適だし、細かなレベル設定はタッチパネルを使うより、左側の十字キーや右側のマルチダイヤルを使うほうが操作しやすいかもしれません。このマルチダイヤルもカチカチカチ…と音を立てながら回る構造になっているのですが、これが操作しやすいし、結構気持ちいい感触なんですよね。
アナログスティックを使い、画面スクロールなどもできる
歴代プロトタイプで改良を加えてきた結果、落ち着いたのが左下のアナログスティック。ここも滑らかに動いて、すごくいい使い心地になっています。
2010年末に私が初めてKDJ-ONEのプロトタイプ(左下)を見たときから、徐々に進化していった
その隣の鍵盤の形をしたボタンは、ベロシティーに対応したもので、ここで直接演奏することもできるし、リアルタイムレコーディングを行うこともできますよ。
左からヘッドホン出力、ライン出力、ライン入力、マイク入力。ここのデザインも以前と少し変わった
ほかにもフロント部のデザインが少し変わって、コネクタが並ぶ部分が平らになっていたり、USB端子もType Aが2つと、microUSBが1つという構成になりました。
USB端子もTypeAが2つ、microUSBが1つ搭載される構成になっている
「最後にもう1点修正するのが、このキーボードの左側にあるOCTAVEとVOLUMEの印刷。これまでは、この写真の通りで作ってきたけれど、やはり操作の多いOCTAVEを手前に持ってきたほうが操作感がイイんです。最後まで気は抜けませんが、ようやく、ここまで来た、という思いですね」と佐藤さん。
感触のいいベロシティー付きキーボードでリアルタイム演奏、レコーディングも可能
画面やDAWとして、シンセとしての機能は以前見たのと大きく変わっていないようですが、その点について佐藤さんは「そうですね、機能的には完成しているので、大きくは変わっていません。ただ、XYパッドやSONGモード部分が一部未確定なので検討中です。またサンプラー機能が仮実装という感じなので、出荷するまでにもう少し完成度を上げるか、出荷後にファームウェアアップデートなどで対応する形になるかもしれません」とのことです。
ピアノロール表示のSCORE画面
気になるのは、バッテリーの持ち時間ですが、工場から届いたばかりのこの機材、しばらく使っていましたが、電池切れということもなく、安定して動いてくれます。「鳴らしっぱなしでもフル充電で約10時間使用できます、シーケンサの入力操作などをしている分にはそれ以上の時間動作しますよ」とのことなので、ノートPCやスマホも顔負けのスタミナですね。
さまざまなパラメーターを持つMIXER画面
GO-DJのJDSoundが、KDJ-ONEの生産に関わっているという話は4月に書いた「クラウドファンディングで大成功のデジタルDJ機、GODJ Plusが一般に向けて発売開始だ!」という記事の中でも少し触れましたが、その時、JDSoundの社長、宮崎晃一郎さんから、「KDJ-ONE用に2年前に購入していたリチウムイオン電池は全部破棄して、新しいものを買い直している」という話をちょっと聞いていたので、その点についても佐藤さんに確認してみました。
ずっと再生しながらでも連続10時間使えるバッテリーのスタミナ
「その通りです。リチウムイオン電池は注文してからモノが届くまで半年近くかかります。当初は2015年7月にモノをお届けするつもりで開発していたので、それに合わせて1000台分のバッテリーを発注し、倉庫に保管していました。現在でも使用期限内ですし、動作に問題はありませんが、やはりバッテリーは安全に関わる重要な部分ですし、そこで万が一バッテリーの持続性に問題が出てもユーザーのみなさんにご迷惑がかかるということで、これらは破棄して、新しいものを揃えました」とのこと。サイバーステップとしても想定外のコストであり、Kickstarter単独で見れば膨大な赤字になっているようですね。
音色エディット機能やエフェクトも強力なVOICE画面
「バッテリーの話は、開発・生産の流れの一例でしかないんです。ARMのCPUを1GHzで動作させ、タッチパネルのディスプレイを動かし、しかもモバイルタイプでバッテリー内蔵。まさにハードルの高いことだらけに挑戦した結果、時間もコストも想定以上にかかってしまい、ご迷惑をおかけしました。タイで基板の開発をしていましたが、やはり1GHzというクロックで動かすと、回路幅をちょっと狭くするだけでトラブルが起こるとか、回路をコの字型に配線すると電磁波が出てしまって、FCCをクリアできないと、ひたすら難関だらけで、この基板の開発だけで1年かかってしまった……という具合です。やはりハードウェア製品を生産するというのはソフトウェアのビジネスとはまったく違うことを痛感しました。かなりしっかりしたプロトタイプは早い段階でできたんですけどね……」と佐藤さん。
いよいよ国内での生産へ!
当初はタイでの生産を予定していたけれど、量産着手寸前の段階で海外での金型製作などに課題がありストップ。その後、JDSoundと出会ったことで、大きく進展していったそうです。
「JDSoundはGODJやGODJ Plusで量産の実績があるし、生産規模的にもKDJ-ONEとかなり近いところです。生産に関する専門家をコーディネートしてくれたり、日本の優秀な設計者が加わってくれ、まさに僕らにない部分を補完してくれた形です。結果的にすごくいいものに仕上がりました」(佐藤さん)
というわけで、まもなく最終チェックを終えて量産がスタート。東北での生産となるので、KDJ-ONEはまさにMade in JapanのDAW機ということになるわけですね。まずはKickstarterの購入者に商品が11月末から12月末にかけて製品が届き、その後3月までに順次Makuakeでの購入者にモノが届いていくとのこと。
KDJ-ONEはMakuakeでのクラウドファンディング実施中
その後は79,800円(税込み)という価格での一般に向けた販売も計画しているようですが、まずはクラウドファンディングでの購入者を優先的に生産していくとのことで、お店やネットショップでで入手できるようになるには、まだ時間がかかりそうです。
また今ならクラウドファンディングのMakuakeで20~33%オフといった価格での予約購入ができるので、早く欲しい、安く入手したいという方は、Makuakeをチェックしてみてはいかがですか?
なお、ニコニコ生放送およびFresh!でのネット生放送番組であるDTMステーションPlus! (10月31日 20:30~22:30)において、このKDJ-ONEを特集する予定です。スタジオに実機を持ち込むとともに、実際に使っての曲作りなどをお見せしていくので、ぜひご覧ください。
【価格チェック&購入】
◎Makuake ⇒ KDJ-ONE
【関連情報】
KDJ-ONEクラウドファンディング(Makuake)
KDJ-ONEサイト
【第93回 DTMステーションPlus!】
10月31日 20:30~22:30放送予定
●ニコニコ生放送 http://live.nicovideo.jp/watch/lv307440974
●Fresh! https://freshlive.tv/dtmstationplus/160339
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コメント
>2018年03月中にお届け予定です。
もういいよ…
Kickstarterで投資していた人には届くんでしょうか…
新しい情報にはMakuake受付中だけで、Kickstarter組は無かったことになってそうで不安
まあコルグとかの普通の製品開発は、
水面下でこういう紆余曲折をしまくったあとに初めて発表されてるんだろうなぁという勉強になりましたね
その紆余曲折段階から関わってやろうというのがクラウドファンディングなわけで…
ぼくのFCカラーがショボそうでがっかり
ねるさん
記事にも書いているとおりです。
私もKickstarter組ですが、当然Kickstarterでbackした人が最優先で届くとのことです。
マックンさん
そうですよね。Backした側からすると、私も含めて、なかなか製品が届かず、不安になることもありました。が、水面下では、かなり苦労してたみたいですね。逆にいうと、コルグもローランドもヤマハもそうですが、ハードを作っている会社が持つノウハウというのはすごいんだな、と実感します。小さい会社だったらGiveUpしてたのでは…とも思いました。
そういう意味で、クラウドファンディングって、まさにスタートアップを温かい目でゆっくりと見守る仕組みなんだなと実感しました。
プロトモデル黄ばんでしまってますやん・・・
初めて装置みた、期待してます。
ハード開発で何が一番大変かって「電波」ですよ。FCCやVCCI通すにはそこそこ熟達した基板設計エンジニアの技が必要で、単にパターンをCADで引いて終わりではないです。その次は「電池」。これも経験値が物を言います。
とは言え、最近このタイプの楽器がどこからも出ないので、今後に大いに期待しています。
> (10月31日 20:30~22:30)において、このKDJ-ONEを特集する予定です。
とうぜん、社長が出てきて謝罪するのですよね?まさか偉そうに「新製品発表会」するつもりなんじゃないですか?またキックスターター以前にも予約注文をやっていたというのも聞きました。その時にも入金させて返済すらしていないとの事ですが、何回、同じことを繰り返すのでしょう?謝罪は当然の事ですが、番組でその機能を取り上げるなら《確実に出荷開始》してからやったらいかがでしょうか?
ファミコンカラーだけ色がショボくて泣いた。赤い部分はもっとメタリックでプレートはゴールドだと思っていたのに。どうにか改善してくれないかなぁ。
これって、スタンダードMIDIファイルとかエクスポートできるのかなー?
外出先で簡単に作っておいて、家でDAWに取り込み作業したいけど、
ブラック会社の片棒担ぎ?さん
10月31日の内容はまだ決まっていませんが…。
「その時にも入金させて返済すらしていないとの事ですが」
あまり、こういう根拠もないウソの噂話を書かないでくださいね。これまでも記事で書いているとおり、確かに予約注文をしたことはありましたが、設計のしなおしということになり、全部キャンセル、返金していますよ。
素人志向さん
スタンダードMIDIファイルのエクスポート機能、確かあったように思うのですが、サイバーステップに問い合わせてみるのでお待ちください!
批判するわけではないですが、イヤ、遠まわしにイヤミじみてしまうかもしれませんが、
エレクトライブを作った人のインタビューでしたかね、
「何でも載せたら狙いがわからなくなるから、あえてバッサリ斬る。そういう刀を持っていたのがぼくらの強み」というのを思い出します
KORGやヤマハとの差はそこかなと。
Twitter見ると大変そうなので応援してますよ。ぼくは買ってないけど←オイ
キックスターターでファミコンカラー注文してるので楽しみ^^
確かにチープさはあるけど、逆にファミコンぽくて好きですw
気長に待っててよかったです。
素人志向さん
先ほど、サイバーステップからMIDIの書き出しに関しての返事が戻ってきたので、以下に転載します。
ーーー
スターンダードMIDIファイルのエクスポートに関して、KDJ-ONE本体及びPC用アプリケーションの両方からエクスポート可能です。
具体的には、KDJ-ONE本体で「EXPORT MIDI」というボタンを押すと、USBに差し込んでいるUSBメモリーにスターンダードMIDIファイルが出力されます。
そのデータをPCなどで読み込むことでそのままデータを引き継げます。
また、PC(Windows/MacOS)向けのアプリケーションではスタンダードMIDIファイルの読み込みも行えます。
PCアプリケーション上で読み込んだMIDIファイルをKDJ-ONEに転送し、作曲を継続できます。
ただ、KDJ-ONE 独自の楽器が多いため、出力された MIDI ファイルの楽器がKDJ-ONE独自の楽器に対応していることが多く、MIDI ソフトの方で適切な楽器に変更する必要があります。
藤本 様
早急なご対応。有難うございます。
いつも楽しみに記事を拝見させて頂いてます。
なるほど、素晴らしいですね。
エクスポート出来る出来ないは、大きな関心事でした。
これからも良い記事たのしみにしております。
いくつか投稿がありましたが
ファミコンカラーだけショボく感じる件
実際どうだったのでしょうか?
キックスターター時や夏頃のCGでは渋いメタリックレッドにゴールドでカッコよかったのにこの写真ではすごくチープに見えます。キックスターターで入った人はファミコンカラー目当ての人が一番多かったと思うんですが、待たされたあげく出てきたものは想像より下だとしたら、他のカラーがいい出来なだけになんか浮かばれないんですが。
ファミーさん
ん~、何とも言えませんし、どう感じるかはひとそれぞれだとは思います。個人的な印象でいうと、ファミコンカラーよりも他のほうが、カッコよかったかな…とも。とはいえ、ファミコンって、そもそも、チープなものだったので、いかにもファミコンという感じはしましたよ!
何流されてんですか!
ファミコンカラーが他のよりダサいなんてあり得ません!
確かにメタリックなあの頃とは別物ですけど、
別物なのが問題なだけです。ダサいとかいう問題じゃないです!
ファミコンカラーは「枠と面」という配色になっていて、この中で唯一「立体感」を持つデザインです。
よく見てください、黄色の「面」が張り出して来ているような迫力ですよね。こんなにメリとハリで出来た配色はファミコンカラーだけです
その圧倒的なコントラストに誇りを持つのです!メタリック感はニスか何か塗って下さい!
藤本さんご回答ありがとうございます。
なるほどー、写真の印象ママってことなんですね。
ファミコンへのオマージュだけで食いついたというよりはファミコンカラーでなおかつカッコ良さげなイメージだったというダブルの魅力で選択したのですが、まさかの展開です。チープさなんか受け継がなくていいのになー。筐体デザインが良くなったのでチープさが似合わないんですよね。なんか納得いかないなー。
当時投資しようか迷ってたけどまさかこんなに延期するなんて・・・
投資しなくてよかったってのが正直な感想
やっぱり一番気になるのが、作った曲を他のDAWソフトで編集できるようにMIDIファイルで書き出ししてくれるのかかなぁ…サイトには専用のPC用のソフトウェアが作って書いてあったけど、対応OSとかも情報が欲しいところ。
※24
ログも読めねえのか(゚Д゚)ゴルァ!な香具師ハケーン!!(゚∀゚)
→※17を参照シル━━━━(゚∀゚)━━━━!!
25さん
ありがとうございます。
なら買いかな〜
クラウドファウンディングで、GODJやGODJ Plusも入手しました。
どちらも不具合なく動いています。
本当に長くかかりましたが、KDJ-ONEもJDSoundになったので、
やっと手元に届きそうですね。ひと安心です。
ファミコンカラー貧乏臭くてイヤ過ぎです。あれをそのまま出すんなら。要らないので返金してもらいたいです。