先日来、何度かお伝えしていたサイバーステップが開発したゲーム機風の小さなDAWマシン、KDJ-ONE。いよいよ仕様も確定したようで、クラウドファンディングのサイト、Kickstarterでの発売が12月4日17時より開始されます。
いくつかのカラーバリエーションもありますが、いずれも価格は395ドルと発表されたので、1ドル=118円で計算すれば46,610円と、思っていたよりもかなり低価格であることが判明しました。「何で日本の会社なのにドルで販売するの?」と不思議に思う方もいると思うので、その辺も含めて改めて内容を整理するとともに、最新情報をまとめてみたいと思います。
Engadet FesでのKDJ-ONE展示ブースの様子
思いがけず、発売の価格や日程を知ったのは、11月24日に秋葉原で行われていたEngadget Fesに参加した際です。「当日入場券が8,000円もするイベントに誰が参加するんだろう…」と思っていたこのEngadget Fes、たまたま知人から招待券をもらったので、物は試しということで行ってみたんですよね。もちろんサイバーステップが出展するという話は、以前に同社社長の佐藤類さんから伺っていたので、どんな様子なのかも、ちょっぴり気になっていました。
Engadget Fesでお話を伺ったサイバーステップの社長、佐藤類さん
実際に行ってみたところ、KDJ-ONEを展示してあるブースではひっきりなしに人が訪れて、大人気となっていたのですが、その後のステージで価格と発売日程が発表されたんです。DTM界ではお馴染みのビデオブロガーであるジェット☆ダイスケさん、ITメディアの松尾公也さんが審査員として出ていたガジェットを自慢するコンテスト「ライトニングガジェットトーク」に佐藤さんが登場し、ここで価格は399ドルであること、Kickstarterで12月4日より受付を開始することが公表されたことには、ちょっとビックリしました。というのもブースで佐藤さんとお話をしていた際には、「いくらに値付けするか、いまだ悩んでいて、眠れないんですよ…」と言っていたからです!
DTM界ではお馴染み、ジェット☆ダイスケさん、ITメディアの松尾公也さんが審査員を務めるトークセッションで佐藤さんが、いきなり価格を発表
「399ドルって、いま公表してしまったので、もう後には戻れないですよね。製造原価、送料、事務手数料、さらには人件費まで入れれば完全に赤字です。200万ドル分売れれば、トントンになりそうですが……。まずはなるべく多くの方にKDJ-ONEを使っていただき、われわれはその後に展開する音楽コンテンツ流通などでビジネスできないだろうか……と目論んでいるところです」と、佐藤さん。
会場で展示していた通常カラーモデルのプロトタイプ
ところが、その後、改めて佐藤さんに「399ドルで間違いないですね?」と確認してみたところ、「Engadet Fesの翌日、社内で再考に再考を重ねた結果、わずかではありますがさらに値下げして395ドルとします。あくまでキックスターター限定の特別価格ではありますが、どうぞよろしくお願いします!」とのお返事でビックリでした。
先日発表された某レトロ・ゲーム機風カラーのモデルも、そのレトロゲーム機の海外版のカラーリングのモデルも価格はすべて395ドルだそうですから、国によっても人気カラーに違いが出てきそうです。
これで395ドルに確定となったわけで、購入希望者としては嬉しい限りですが、でも何で日本の会社が日本在住の人に対して、ドルで販売するのでしょうか?それは、サイバーステップが日本発のオンラインゲームで世界展開している会社であり、KDJ-ONEもアメリカやヨーロッパ、アジア…とワールドワイドでの販売していく意気込みだからのようです。また、こうしたベンチャー的な取り組みにおいて、大きな役割を果たしているKickstarterを活用しようと考えた結果、必然的にドルでの販売となってしまったんですね。
「Kickstarterって何?」という人もいると思うので、簡単に紹介しておくと、これはクリエイティブな分野の製品やサービスに対するクラウドファンディングを行うサイトとして世界的に人気の高いアメリカのWebサイト。クラウドファンディングは、ネットを通じて資金調達する仕組みであり、名目上は「この製品を作るための出資をお願いします!」という形で出資者を募り、プロジェクトが成功したら試供品という形で新製品を提供するもの、となっています。
そのため、いわゆる通信販売とは違って、出資してすぐに製品が手に入るというわけではなく、支払ってから半年程度は待つことが一般的です。とはいえ出資者の特権として、実際の発売よりもかなり早い時期に製品が入手できたり、かなり安い価格で購入できるとうメリットがあるわけです。一方の企業側は、これによって製造のための資金を調達でき、銀行から高い利息でお金を借りなくて済むというメリットがあるわけですね。
アメリカのクラウドファンディングのWebサイト、Kickstater
そうした出資という形でKickstarterを使って販売されたもの例としては、VRヘッドセットの「Oculus Rift」、日本のベンチャーが作った指輪型デバイスの「Ring」、ニール・ヤングの新音楽システム「Pono」なんてものがありますね。私個人的にもBluetooth LEを使ったコンパクトなキーボードであるMiseluの「C.24」、自分だけの電子楽器が簡単に作れるDentakuの機材「Ototo」などを購入しています。やはり製品を入手するまでにそれぞれ半年以上の時間がかかりましたが、それぞれ手元に製品が届いていますよ(C.24は手元に来たばかりなので、近日中に記事で紹介する予定です)。
今回のKDJ-ONEにも、私ももちろん出資して1つGETしようと思っているわけですが、初めての方にとってネックとなるのは、Kickstarterが英語サイトであることでしょう。慣れてしまえば簡単なものですが、最初は戸惑う面もあると思うので、私が購入する際に手順を画面キャプチャするなどして、その方法を紹介していく予定です。
さて、そのKDJ-ONEについての最新情報をお伝えしておきましょう。まず、改めてハードウェアのスペックを見てみると以下のような内容になっています。
ハードウェアスペック | |
CPU | ARM Cortex-A8 1GHz |
Display | 5.0インチ WVGA(800×480) マルチタッチ対応液晶パネル |
メインメモリ | 512 MBytes |
内部ストレージ | 4.0 GBytes |
外部ストレージ | USBメモリー |
バッテリー | リチウムイオンバッテリー 7.4V 3,000mAh |
インターフェイス類 | USB 2.0 host x 1, mirco USB x 1 |
オーディオI/O | Phone, Mic/Line in, Line out |
スピーカー | 2.0 W (1.0 W + 1.0 W ステレオ) 250 Hz~20,000 Hz |
アピアランス | |
キーパッド | 16鍵(ベロシティ付) 、 オクターブUP/DOWN、ボリュームUP/DOWN、タップテンポ |
コントローラー | 十字ボタン、ボタンx4、マルチダイヤルx1、ピッチベンド・モジュレーション用アナログスティック |
ケースサイズ | 174.2 mm x 115.5mm x 29.5mm |
重量 | 480 g |
本体には大容量のリチウムイオンバッテリーが内蔵されており、最長で10時間の連続使用が可能になっているとのこと。外部にUSB-MIDIキーボードなどを接続すれば、そのまま使えてしまうのも便利なところです。また、KDJ-ONEの構造を見ることができる3Dモデルも出来上がっていたので、以下に載せておきますね。
また音源部、シーケンサ部のスペックは以下のとおりです。
音源部 | |
最大同時発音数 | 64 音 (音色により変動) |
波形メモリ | 14 MB (拡張可能) |
ウェーブフォーム | 240 種類(マルチレイヤー) |
オシレータ | 2機 10アルゴリズム |
フィルター | 7 種類 |
モジュレータ | 4機 10アルゴリズム (ステップモジュレータ対応) |
プログラム数 | プリセット 200ボイス、100ドラムキット、100オーディオクリップ |
最大オーディオ容量 | 1 GB (1プロジェクトあたり) |
エフェクト | 20種類、各トラックにつき2系統、マスターエフェクト |
シーケンサー部 | |
パターントラック数 | 6 |
分解能 | 384 tick / 4 分音符 |
テンポ | 40 ~ 400 |
レコーディング方式 | ループ(リアルタイム)レコーディング、 ステップレコーディング オートメーション |
スコア編集方式 | ピアノロール |
パターン長 | 999小節 |
ソング長 | 9,999小節 |
パターン数 | 999 (1プロジェクトあたり) |
ソング数 | 99 (1プロジェクトあたり) |
Engadet Fesの会場においては「Bluetoothは搭載していないのか?」、「Wi-Fi機能は内蔵しているのか?」という質問が出ていましたが、結論からするとNOとのこと。佐藤さんによれば電波を発生する機能を搭載すると、各国でFCCなどの認可を取るのに時間とコストがかかるため、あえて搭載しなかった、とのこと。ただし、USB端子があるので、ここでBluetooth、W-Fiなどのモジュールを取り付ければ、すぐに使うことができるし、KDJ-ONEの機能としては、ネット接続をサポートし、作成した音楽データを友達と交換したり、SoundCloudにUPするといった機能も装備しているそうですよ。
著名クリエイター、ミュージシャンがKDJ-ONEのプリセットパターンの制作を行っている
一方、先日の記事で、複数のクリエイター、ミュージシャンがKDJ-ONEのプリセットパターンの制作を行っており、佐野電磁さん、細江慎治さんが参加していることを明らかにしました。その後の情報では、この2人に加えて、光田康典さん、氏家克典さん、除村武志さん(YMCK)、松前公高さん、菊田裕樹さん、サカモト教授、さらにはSlipknotのSid Wilsonさんも参加されていることが明らかになりました。なんかDTMステーションでも登場いただいている方々ばかりですね!
先日、別件で佐野電磁さんにお会いしたので、この件を伺ってみたところ「6トラックという絶妙な仕様が、逆に曲を作るモチベーションになります。マニュアルが要らないぐらい全体的にとても素直でわかりやすい構成なので、かなり使いやすいです」というコメントを頂きました。
ウチのWindows 8.1上でもKDJ-ONEがしっかり動いてくれている。もちろん、Macでも!
私の手元でもそのソフトウェア版であるβ版が動いていますが、快適に使うことができますよ。とはいえ、ハードウェアとしてのKDJ-ONEが待ち遠しいですね。
Kickstarter開始の翌日、12月5日に、KDJ-ONEの実機に触れることができるイベントが東京・表参道で開催されます。参加無料で途中参加、退室もOKとのことですが、事前に参加登録が必要なので、興味のある方は、このチャンスに触れてみてはいかがですか?場所は以下のとおりで、WebページまたはFacebookからの参加登録が可能となっています。
KDJ-ONE キックスターター開始記念イベント
●日時:12月5日(金) 19時~21時30分
●場所:タウンデザインカフェ http://towndesigncafe.com/
東京都渋谷区神宮前5-7-18プラザ青山1F
TEL 03-6427-1223
●主催:サイバーステップ
●協力:ICON / DTMステーション
※場所が急きょ変更になり以下になっております。ご注意ください。
●場所:東京都杉並区和泉1-22-19 朝日生命代田橋ビル4階
TEL 03-5355-2087
※イベント参加の場合は以下のサイトから登録してください。
KDJ-ONEキックスターター開始!実機に触れよう!イベント出欠管理ツール
KDJ-ONEキックスターター開始記念体験会 Facebookイベントページ
【関連情報】
KDJ-ONE製品ページ
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