シンセフェスタ2012で披露されたSSW 10のMIDIフレーズ機能

10月6日、7日の2日間、東京・新宿の廃校になった小学校校舎を利用したイベント施設、西新宿芸能花伝舎で今年もシンセサイザのイベントSynthsizer Festa 2012(シンセフェスタ2012)が開催されました。今年からは正式名称が「新宿電子楽器祭」と改められましたが、例年通り大手楽器メーカーから個人の出展までシンセサイザ、DTMをテーマとした機材、ソフトがいろいろと展示されるとともに、さまざまなセミナーも行われました。

各セミナーとも事前予約制となっていた中、Singer Song Writer 10が初お目見えするとあって予約で満席となっていたのがインターネット社のセミナー。同社の村上昇社長と、ギターリスト/作編曲家の小川悦司さんの2名によるSSW 10のプレゼンテーションが行われました。SSW 10の概要については先日の記事「国産DAWとしての独自色を鮮明に打ち出してきたSinger Song Writer 10」でも紹介しましたが、私も改めてこのセミナーで話を聞いてみたので、SSW 10紹介の2回目として、MIDI関連の機能にフォーカスを当てて見ていたいと思います。
シンセフェスタ2012で行われたSingerSongWriter スペシャルセミナーはほぼ満席

 



先日の記事でも紹介したとおり、他のDAWとの差別化という点で、Singer Song Writer 10の最大の特徴ともいえるのが、MIDIを利用したフレーズ作成機能です。もともとSSWは約20年前の登場当初から「アレンジ機能」というものを売りにしたMIDIシーケンサで、ロック、ジャズ、フュージョン、テクノ…といったジャンルを選択するとともに、Intro、Vrri-A、Vari-B、Endingの形式を設定し、コードを設定すればバッキングパートが簡単にできてしまうというユニークなソフトでした。ほぼ同時期に誕生した海外ソフトであるBand-in-a-Boxも似たコンセプトのソフトでしたが、その後2つはずいぶん違うソフトへと進化していったわけですね。

村上社長とギターリストの小川悦司さんによってSSW 10が紹介された 

さて、コードを指定するだけで曲を展開できるというのは便利だし、初心者にとっても簡単に曲が作れるメリットはありますが、予め用意されたパターンしか使えないのでは、発展性が乏しいのも事実。そこで、コード進行で曲を作るという考え方はそのままに、従来のアレンジ機能とは別の形で、自由な音楽制作を可能にしたMIDIフレーズトラックというものが搭載されたのです。

MIDIフレーズトラックにMIDIループ素材を並べ、コードを指定する

まずSSW 10にはMIDIフレーズデータと呼ばれるMIDIのループ素材が、およそ70ジャンル、3,400種類収録されています。これをMIDIトラックにドラッグ&ドロップでもっていくと、下に「MIDIフレーズトラック」という子トラックが生成されます。ここで、そのループ素材をマウスでドラッグすることで繰り返し並べていくことができるのです。これはオーディオデータであるACIDファイルを並べていくのと基本的に同じ操作ですね。

コードはオンベースやテンションなどを含め自在に入力できる
文字で直接入力でできるほか、このようなコード入力名機能も用意されている

さらに、このMIDIフレーズトラックに対してコードを振ることができるのです。コードはマイナー/メジャーの展開はもちろん、オンベーステンションなどを設定することも可能です。

でも、この用意されているループ素材では納得いかない、気に入らない、というケースもあるでしょう。そんなときに自分で作ったフレーズをループ素材化できるというのが、SSW 10の大きなポイントなのです。ステップエディタなどを利用して数小節分のデータを打ち込み、これをMIDIフレーズに変換するとループ素材化できてしまうのです。

その曲だけで使用するのであれば、打ち込んだデータをMIDIフレーズトラックにドロップするだけで、MIDIフレーズになりループが可能になります。さらに、データベースにフレーズ登録を行えば、3,400種類あるMIDIフレーズのデータベースに新たに追加されて、それ以降いつでも簡単に呼び出せるようになるのです。

登録は簡単で基本的にはキーと小節数を設定するだけでOK。必要に応じてジャンルを指定するとともに、キーワードやコメントを入力すれば元から入っているフレーズと同様に検索などが行えます。
作ったループ素材はフレーズ登録することで、データベースに追加することが可能

ちなみに、このようにしてループ素材を作れるのはMIDIだけでなく、オーディオのほうも同様です。つまりギターやベースなどをレコーディングした結果にキーと小節数を指定して登録すれば、簡単にACIDファイルのループ素材ができてしまうわけですね。

MIDIフレーズエディタでコード展開などを修正することもできる

このようにしてコード指定して作成したMIDIフレーズトラックを聴いてみると、やっぱりちょっと気に入らないというケースもあるでしょう。とくに問題になるのがコードの展開の仕方やコードチェンジの部分です。自動作成された結果ではなく、少し修正したいという場合も問題ありません。この場合、フレーズエディタというものを開けば、ピアノロールまたはスコアの形で修正することが可能になっているのです。

さらに、このMIDIフレーズトラックの内容をそのまま親トラックであるMIDIトラックへとドラッグすると、今度はMIDIの普通のデータになるので、数値入力可能なステップエディタを含め、各MIDIのエディタで自由にエディットしていくことができるのです。

各トラックへの入力は最大8つの入力ポートから選択できる

さて、MIDI関連ではもうひとつ今回追加された便利な機能があります。それがMIDIトラックへの入力するためのMIDIインプットポートに関してです。DTMの環境によっては複数のキーボードを接続していたり、その他のMIDI機器を同時に接続して利用するというケースもあるでしょう。そんなとき、SSW 10では各トラックごとに8つまでのポートを切り替えて使うことが可能となっています。まあ、この辺はほかのDAWも同様で、そのうちの1つを選んだり、OMNI設定でどの機器を弾いてもレコーディングできるようになっているのですが、ユニークなのはここから。
キーシフトやベロシティシフトを設定することができる
この入力設定においてトラックごとにキーシフトを上下1オクターブの範囲で設定できるようになっているのです。たとえばベーストラックなら-12に設定しておき、ギタートラックを+12に設定する……といったことが可能なわけです。また、ベロシティシフトも可能であり、オフセット値を設定したり、予め固定ベロシティにするといったことも可能になっているのです。

キーシフトは普通、MIDIキーボード側で設定できるわけですが、DAW側でトラックごとに設定できれば便利になるし、トラックによってキーボード側の設定を変える必要もなくなるから効率的ですよね。

そのほかにも従来どおり、数多くのMIDIプラグインが搭載されていること、日本独自文化ともいえるレコンポーザ形式の数値入力可能なステップエディタを装備していることなど、とにかくMIDI機能が充実しているのがSSW 10の大きな特徴です。ソフトシンセであるVSTインストゥルメントを活用するためには、そのベースとなるMIDIエディット機能がいかに充実しているかが重要ですから、そこを使いやすく、効率のいいデータ作成を可能にしたSSW 10の意義は大きいと思います。

単純な和音をギターのストローク風にアレンジするMIDIプラグイン

ほかのDAWの場合、オーディオ機能の派手さが目立つ一方、MIDI機能はだいぶ以前から進化していないものがほとんどのように思えます。そうした中でSSW 10のMIDIの進化を歓迎するユーザーも多いのではないでしょうか?

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