Audio Unitsといえば、普通はMacのプラグインを思い浮かべますよね。Logic ProやGarageBandをはじめ、Mac上のDAWの多くがサポートするプラグインフォーマットであり、エフェクトもインストゥルメントも、数多くのラインナップが揃っています。でも、Audio UnitsはmacOS上のDAW用プラグインとしてだけでなく、iPhone、iPadで利用できるiOS用のプラグインとしても存在していることをご存知ですか?
まあ、iOS上のAudio Units(正確にはAudio Units Extention)という規格は2年ほど前に誕生しているので、いま突然始まったというものではありません。その数は着実に増えてきており、それらを活用できるDAWやユーティリティも増えてきています。将来的にはInter-App AudioやAudiobusは廃れて、Audio Unitsが主流になるんだろうな……と想像しているところ。そんな中、とってもシンプルながら軽くて便利なアプリ、AUHostなるものが小久保佳則さんという方によって開発され、たった120円でリリースされました。試してみると、なかなか便利なものだったので、改めてiOS上のAudio Unitsとは何なのかも含めて、紹介してみたいと思います。
iOSのプラグインエフェクト、Audio Unitsを起動できる簡易ホストアプリ、AUHost
これまでDTMステーションでも、AudiobusやInter-App Audioについては何度となく取り上げてきました。2年前には「iPad/iPhoneでDTMを使いこなすためのInter-App Audio」なんて記事を書いたこともあり、今も多くの方に読まれているし、ここで解説していること自体は変わっていません。でも、この2年間でAudio Unitsが大きく台頭してきたため、iOSでのDTM環境は少しずつ変わってきているように思います。
でも「Audio UnitsがiPhoneやiPadで使えるって、どういうこと??」と不思議に思う方も多いと思うので、少し整理して解説しておきましょう。ご存知の通り、Audio UnitsはMac用のプラグインとして数多くのメーカーが出しているわけですが、これらのソフトがそのままiPhoneやiPadで使えるというわけではないんです。
そう言うと「なぁ~んだ」とガッカリしちゃうかもしれませんが、macOS、iOS共通で使えるAudio Unitsがいろいろ出てきているのも事実です。そう、実はAudio Unitsは現在バージョン3となっており、Audio Units v3、AU v3などと言われているのですが、これを開発するためのツールがmacOS、iOS共通のものとなっており、一つ作るとmacOS用と、iOS用がそれぞれできるのです。まあ、正確にいうと、そこまで単純ではないようで、やはりGUIなどは、それぞれ用に作りこむ必要があるそうですが、エンジン自体は共通なんですよね。
iPhone用のコーラスであるAudio UnitsのFAC Chorus
そのため、今後Mac用のAudio UnitsのプラグインのiOS版が増えてくる可能性は高そうです。以前海外から連絡をくれたFrederic Corvestさんは、高性能なAudio Unitsのエフェクトをいろいろと開発しているのですが、コーラスであるFAC Chorus(macOS版、iOS版)、マキシマイザであるFAC Maxima(macOS版、iOS版)、トランジェントシェイパーのFAC Transient(macOS版、iOS版)などなど、まったく同じように使えるエフェクトをハイブリッドで次々と開発しています。
Mac版のLogic Pro上で動いているFAC Chorus
これらiOS版のAudio UnitsがAudiobusやInter-App Audioと異なるのは、プラグインのように動作するという点です。Audiobusの場合、Audiobusというアプリを利用してオーディオやMIDIの信号の流れを制御するものだったので、使う場合にはいちいちアプリを切り替える必要がありました。またInter-App Audioでは、もう少し使いやすくなったものの、やはりアプリを切り替える必要があるものも多く、面倒という印象を持たれる方が多かったと思います。
Cubasisを含め、多くのDAWがAudio Unitsをサポート
でもAudio Unitsの場合は、本当にプラグインのように動き、Garageband、Cubasis、AuriaまたAUMなどのホストアプリの中で動き、ホストアプリの中でエディットができるのです。ただし、これらも基本的にはスタンドアロンで動作するものが多いので、単体で使うこともできるんですけどね。
インストールされている数多くのAudio Unitsを起動して使うことができるAUHost
さて、そんな中で今回紹介するのは小久保佳則さんが開発したAUHost。まさに名前そのものというアプリで、Audio Unitsのホストとなるアプリです。まあ、前述の通り、Audio Unitsのホストとなるアプリとしては、iOS標準アプリとなっているGaragebandがあるので、わざわざホストアプリなんてなくても各種Audio Unitsを使うことができます。でも、Audio Unitsを動かすことが目的だとしたら、これらDAWを動かすのは負荷が重くなってしまいます。
サンプリングレートやバッファサイズなどを調整可能なAUHostの設定画面
そこで、まさにAudio Unitsを使うこと、しかもAudio Unitsインストゥルメントではなく、Audio Unitsエフェクトだけを使うアプリとして開発されたのがAUHostなのです。「プログラミングは素人なのですが、元々自身のライブのために製作したものです。思い切って、ストアでリリースすることにしました」とのこと。
使ってみて驚いたのは、入れたつもりのないAudio Unitsエフェクトが数多く見つかったこと。具体的には
-
- AUBandpassFilter
- AUDelay
- AUDistortion
- AUDynamicProcessor
- AUHighPassFilter
- AUHighShelfFilter
- AULowPassFilter
- AULowShelfFilter
- AUNBandEQ
- AUNewPitch
- AUParametricEQ
- AUPeakLimiter
- AUReverb2
- AUSampleDelay
- AUiPodEQ
と頭にAUがつく15種類。これらはGUIを装備していないようで、AUHostが用意したフェーダーで操作するようになっていますが、あらかじめプリセットの音色設定を数多く備えたものもあるなど、なかなか使えるエフェクトなんです。
前述のFAC ChorusをAUHost内で起動
もちろん、これら以外にも自分でインストールしたエフェクトを起動することができますが、上記15個は、おそらくiOSが標準で装備しているエフェクトであり、Garagebandなどのアプリの中で使われているんでしょうね。
もちろんTASCAM iXRなどオーディオインターフェイスと組み合わせて使うことが可能
AUHost自体は、とにかく軽いアプリで、安定して動いてくれます。もちろん、iPhoneでそのまま使ってもいいですが、オーディオインターフェイスとしてTASCAMのiXRやIK MultimediaのiRig HD 2、iRig Pro DUOなどのオーディオインターフェイスを組み合わせることで、本格的なエフェクトとして機能してくれます。
iPad上で使うことは可能ではあったが…
まだ登場したばかりのアプリであり、120円なので、あまり多くを望んではいけないのかもしれませんが、現在のところ、エフェクトが1つしか起動できないので、ぜひ、複数並べられるようにしてほしいところ。また、iPhone用のアプリであり、iPadで起動させてもiPadアプリとはならないので、画面的にもやや崩れてしまう面もありました。ぜひ、この辺もうまく解決してくれると、定番のAudio Unitsホストとして世界中に広がっていく可能性もあるので、今後に期待したいところです。
※2018.07.08追記
小久保さんからその後連絡があり「いま複数エフェクトの搭載に向けて、改良をしています。また海外の方からもiPadへの正式対応への希望がありましたので、そちらに向けても準備をします」とのこと。期待して待っていたいと思います!
【ダウンロード】
◎App Store ⇒ AUHost
◎App Store ⇒ FAC Chorus
◎App Store ⇒ FAC Maxima
◎App Store ⇒ FAC Transient
◎App Store ⇒ Cubasis
◎App Store ⇒ Auria
◎App Store ⇒ AUM
【価格チェック&購入】
◎Rock oN ⇒ TASCAM iXR
◎Amazon ⇒ TASCAM iXR
◎サウンドハウス ⇒ TASCAM iXR
◎Rock oN ⇒ iRig HD 2
◎Amazon ⇒ iRig HD 2
◎サウンドハウス ⇒ iRig HD 2
◎Rock oN ⇒ iRig Pro DUO
◎Amazon ⇒ iRig Pro DUO
◎サウンドハウス ⇒ iRig Pro DUO
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