ShureのiOSデバイス用マイク、MOTIV MV88をご存知でしょうか?発売自体は2015年9月なので、決して新製品というわけではないのですが、コンパクトで高音質で、かつとっても便利なことから、実は私自身毎日カバンに入れて持ち歩いてるんです。そう、iPhoneでビデオ撮影する際にこれを使っており、実際DTMステーションの記事内に登場するビデオの多くはMV88を使っているんですよ。
MV88はMSマイクというやや特殊な構造のマイクであることから、非常に自由度高くレコーディングできるのが気に入っていたのですが、その特殊性ゆえに使いにくい点があったのも事実でした。しかし、先日「ShurePlus MOTIV Video」という動画撮影アプリが新たに登場したことで、非常に便利に、そして快適に使えるようになったのです。改めてMV88とはどんなもので、MSマイクにどんなメリットがあるのか、そして今回のアプリがどう強力なのかなどについて紹介してみたいと思います。
MV88用の新アプリが登場で、iPhoneの音楽ビデオ撮影がより強力に
まずMV88というマイクについて、改めて簡単に紹介していきましょう。これはとっても小さなマイクで40.5gと軽量。とはいえアルミボディーでかなりガッチリした丈夫なマイクで、iPhoneやiPadとは、直接Lightning端子に接続する形になっています。
MV88はiPhone/iPad用のとてもコンパクトなマイク
標準でウィンドウスクリーンが付属しているのと同時に、それを入れるケースも付属しているので、私はいつもこのケースごと持ち歩いていて、イザというときに取り出して、iPhoneに接続して使っているわけです。
コンパクトなケースが付属しているので、これに入れて持ち歩ける
iPhoneのマイクも、そこそこキレイな音で録音することができますが、やっぱりオマケのマイク的な性能でしかないのも事実です。最大の難点ともいえるのは内蔵マイクがモノラルである、という点です。ボイスメモ的に使うのであれば問題ないですが、やはり音楽を録るとなったら、モノラルだとかなり厳しいのが実情です。
ウィンドスクリーンも標準装備
iPhoneを使っている方ならご存知のとおり、これでビデオ撮影すると音声はモノラルになってしまいます。だから、内蔵マイク性能が向上したとはいっても、すごくショボイ音に聴こえてしまうのです。でも、iPhoneがよくできているのは、ここにLightning経由でステレオマイクを接続することで、標準にビデオ撮影もステレオで行えるようになること。そのためにステレオで録音・録画できるMV88を持ち歩いているのです。
接続はLightningでiPhone/iPadに直結
ただ、このMV88は前述の通り、ちょっと特殊な構造のMSマイクというものなのです。MSマイクの詳細についてはここでは割愛しますが(興味のある方は、以前AV Watchの記事などでも書いているので参照ください)、簡単にいうと設定によって音の広がりを自由に変えられるマイクなんです。
MS(Mid/Side)マイクというやや特殊な構造。透かすとマイク素子が見える
たとえば音の収録範囲=指向特性を60~135度の範囲で自由に設定することができます。もちろん、可動式で中のマイク素子の向きが変わるわけではなくハード的には固定されたままですよ。またモノカーディオイド、モノ双指向性という録音方法(これを使うことはまずないと思いますが)に加え、RAWミッドサイド(RAW_MS)という録音の方法も可能です。
アプリによって音の収録範囲を調整することができる
このRAWミッドサイドで録音した場合、そのまま再生すると妙な音になってしまうのですが、たとえばWaveLab 9.5のようなソフトを使ったり、MSデコーダーというプラグインソフトを介すことで、後からステレオの広がりを調整することもできるんです。この小さなマイクで、そんなことができるからこそ、便利なわけなのです。
では、その設定をどのようにして行うかというと、これはShureのアプリを使ってするのです。従来からShurePlus MOTIVというアプリが出ていて、これを使うことで収録範囲を設定したり、マイクゲインを調整したりできるほか実はリミッタ、コンプレッサ、さらにはイコライザ機能なども設定できるようになっているのです。
しかも、これらはこのアプリで処理しているのではなく、MV88内部にDSPが搭載されていて、それが機能しているというのも重要なポイントなんです。つまり、設定した状態をすべてMV88自身が覚えてくれているので、一度設定すれば、あとは接続するだけでOK。このアプリでオーディオの録音機能も持っていますが、それに頼ることなく、カメラ機能でビデオ撮影に使ってもいいし、各種DAWでレコーディングに使ってもOKというわけなのです。
ちなみに、このMSマイクの構造上、録音する際のマイクの向ける方向は重要になってくるのですが、MV88は可動部分が2か所あり、それぞれ90度回転させることができるので、iPhoneを縦に持って撮影する場合でも、横に持って撮影する場合でも、それに合わせたセッティングができるようになっています。
と、ここまでは従来からできたことなのですが、とくにビデオ撮影をする場合、ちょっと面倒に感じることが一つありました。それは各種設定、とくにマイクゲイン設定を行うのにShurePlus MOTIVアプリを起動しなくてはいけなかったこと。ビデオ撮影中に、現在の入力レベルがどうなっているのかを確認する手段がなかったことです。
アプリで録音も可能だが、ゲイン調整をするにもこのアプリを起動しなくてはならなかった
とくにiPhone7以降はアナログのヘッドホン出力端子がなくなったため、入力する音をモニターすることができないので、よりその点が心配なところでした。
新アプリ、ShurePlus MOTIV Videoを使うことでビデオ撮影しながら音量は波形状態も確認できる
しかし、先日リリースされたShurePlus MOTIV Videoによって、そこがうまく解決されたのです。そう、これはビデオ撮影機能とMV88の各種設定が合体したアプリであり、撮影しながら、画面横で入力レベルなどを目で確認することができ、必要に応じてマイクゲインの設定ほか、リミッタやコンプレッサの設定、またEQの設定までできてしまうわけなのです。
もちろん、縦録画も横録画も自由自在。撮影した結果は写真ライブラリへ
しかも、撮影した結果は、iOS標準の写真ライブラリに記録されていくのも重要なポイント。アプリ独自のフォルダに保存されるわけではないため、自由度高く使うことができるんですよね。これによってMV88がさらに便利なアイテムへと進化してくれました。これからもより積極的に使っていこうと感じた次第です。
ところで、現在Shureでは現在「OFF THE BEATEN TRACK」というモバイルレコーディングコンテストを実施しています。これは参加者の個性にあった場所でオリジナル楽曲の演奏ビデオをモバイルレコーディングし、提出するというもの。この時点では必ずしもMV88などShure製品の使用が必須というわけではないようで、一次審査を通過した段階でShure MOTIV機材を使った作品作りを行うとのこと。
最終的な優勝者にはカリフォルニア州ロサンゼルスへの旅が贈呈されるとともに、ハリウッドのキャピトル・スタジオでのプロフェッショナルな2日間のレコーディングセッションができるとのこと。その際はフランク・シナトラやボブ・ディランのレコーディングを手掛けこれまで多々グラミー賞を受賞した大御所エンジニア/プロデューサー、アル・シュミット(Al Schmitt)がキャピトル・スタジオでのあなたのレコーディングに立ち会うとのことですから、かなり本気のコンテストです。しかも優勝者には5,000ドル相当のShure機材ももらえ、2位でも3,000ドル相当、3位でも1,000ドル相当のShure機材がもらえるそうですよ!ただし、参加者は日本だけでなく、世界15の地域での参加を呼び掛けているそうですから、それなりにハイレベルな戦いにはなりそうです。とはいえうまく日本のオリジナリティを出せれば可能性はあると思うので、ぜひどなたかチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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