次々と強烈なプラグインを開発してはDTM世間(!?)を騒がせ続けているDotec-Audioの勢いが止まりません。つい先日もワンパラメータで、いい感じに音を太くしてくれるDeeFatをリリースしたばかりですが、今度はあのマキシマイザー、DeeMaxがメジャーバージョンアップを果たし、2.0.0へ進化しました(ダウンロード価格$49、バージョンアップは無償)。
今回のバージョンアップのポイントを一言でいえば、「“超簡単&最強の音圧”の部分はそのままに、“さらなる音質向上”を図った」ということと、モバイルPCでも使いやすいUIサイズへの変更の2点。最新製品DeeFatで培ったオーディオ解析のノウハウを取り入れたことで、音質の向上を実現しているようなのですが、実際何が変わったのか、すでにDeeMaxを使っている人にとって、2.0にする価値がどれだけあるのか、ということについてチェックしていきたいと思います。
メジャーバージョンアップし、より高音質になったマキシマイザー、DeeMax
作曲家でありDJとしても活躍する一方で、次々と斬新なプラグインのアイディアを生み出しては、それをプログラムとして実現していく天才肌の開発力を持つフランク重虎さんを中心に、VSTやAudioUnitsのプラグインソフトへと実装していく飯島進仁さん、そして従来にないグッとくるUIをデザインする出雲重機さんの3人のチームで、次々とユニークなプラグイン、Deeシリーズを開発するDotec-Audio。
英ComputerMusicの2016年6月号ではDeePanpotが最優秀賞を受賞し、7月号にはDeeMonitorが付録掲載される!
Deeシリーズ、第1弾のコンプレッサ、DeeCompをリリースした当初から「世界へ発信していきたい!」と言っていましたが、ついにイギリスのDTM雑誌、Computer Musicの2016年6月号(第230号)で、昨年9月リリースの第2弾プラグインDeePanpotが「Finest free mix utilities of the last year」(2015年リリースのミックス関連フリーソフト最優秀賞)を受賞しました。さらにそのComputer Musicの来月号となる第231号では、DeeSpeakerのComputer Music誌特別バージョン「DeeMonitor」が付録として掲載されることが告知されるなど、やはり日本だけでなく、世界中で認められる存在になってきているんですよね。
そのDeeシリーズの人気を不動のものとしたのが、超簡単に使えるマキシマイザー、DeeMaxであるのは間違いないでしょう。単に簡単というだけでなく、レバーを持ち上げることで、目いっぱい音圧を上げられるマキシマイザーとして、プラグイン史上最強の威力を持っていたこと、そしてそのデザインがとっても分かりやすかったことが、世界中の多くの人に受け入れられた要因なんだと思います。
そのDeeMaxは、昨年11月に初期バージョンの1.0.0をリリースした後、12月にTURBOスイッチを搭載した1.1.0、今年2月にSafeスイッチを搭載した1.2.0とバージョンアップするとともに、細かな調整を繰り返しながら、1.2.3まで進化していたのですが、このたび、メジャーバージョンアップを果たし、2.0.0となったのです。
左からDeeMaxの1.0、1.1、1.2、2.0。(※比較用に画像合成したもので、同時に複数バージョンを使うことはできません)
見た目で比べてみると分かる通り、TURBOスイッチ、Safeスイッチと新しいスイッチが追加されるごとに、デザインが拡張されてきたため、やや縦長なサイズとなり、小さいディスプレイのマシンだと収まり切らないケースも出てきていました。そこで、デザインコンセプトはそのままに、初期バージョンと同サイズにデザインし直したのが今回の2.0.0となっているのです(細かな調整はいろいろされてるようです!)。これなら11インチのMacBook AirやタブレットPCなど、WXGAのモバイルPCでも、しっかり入り切るサイズとなった、というわけですね。
旧バージョンのDeeMaxでロゴ部分をクリックすると、新バージョンの存在を知らせるメッセージが表示される
でも、2.0.0というからには、単にUIを変更したというわけではありません。最大のポイントは前述のとおり、音質の向上なのですが、それはどういうことなのでしょうか?
「音のアタックとリリース部分をより正確に区別して処理を行うことで、さらにミックスバランスを保った音圧アップが可能になりました。また、ユーザーが決めたパラメータで特性を作り処理する従来型のマキシマイザーと比較し、サンプル単位での自動最適化を行うためオートメーションでも不可能な対応力を実現しました」と語るのは、開発者であるフランク重虎さん。なかなか難しそうな話ではありますが、その難しいことをDeeMaxが自動で行ってくれるからこそ、ユーザーとしては簡単に使えるというわけなんですね。
また、「アタックとリリース部分を正確に区別する処理」というが、DeeFatで考案されたDotec-Audioならではのオリジナル・テクノロジー。その解析技術をDeeMaxにも搭載したことで、2.0.0として、より強力なマキシマイザーへ進化したということのようです。
音をいい具合に太くしてくれるツールDeeFatの解析エンジンがDeeMax 2.0.0に搭載された
「新しいエンジンにしたことにより、過去のバージョンとは音が変わってきますが、設定を一切変えること無く、音質の向上を図ることができたのが今回の大きなポイントです。そのためバージョンアップによる既存プロジェクトの再調整が不要で、そのまま磨きがかかった音を実感できます」と重虎さん。つまり、プラグインを新バージョンに差し替えるだけで、完成している曲が、丸ごといい感じにバージョンアップするということのようです。
もう少し具体的にいうと、「大きく楽器構成や抑揚が変わる曲や、室内楽のような音楽は、DeeMaxに限らず世の中のマキシマイザー共通の弱点であり、苦手でした。今回のバージョンアップでは、そうした問題も克服しているため、ロックやダンスなど従来からマキシマイザーを多用する音楽にもよりマッチします。また以前より増して得意になったのはメリハリのあるパーカッションの音です。ドラムなどは最も得意な分野です。非常にパンチのあるサウンドが得られます」(重虎さん)。
「ほかはSafeモードもよりタイトに音圧が上がるようになりました」と重虎さん。Safeスイッチをオンにすると、レバーを思い切り上げてもサチュレーションを起こすことなく、自然な形で音圧アップが図れるというものですが、そこも変わってくるというのは、どんな音になるか、いろいろと試してみたいところですね。
新バージョンでは、2.0.0との表記を確認できる。もちろん、旧バージョンからのアップデートは無料
なお、既存のバージョンであるDeeMax 1.0.0~1.2.3を購入した人は、2.0.0をダウンロードして差し替えるだけで、そのまま使うことができます。そうした点もユーザーにとっては嬉しいところですよね。
「以前にDeeMaxのデモ版を試してみて、『合わないな』と思われた方にも、ぜひ再度お試しいただきたいです。多くの方が喜んでくれるマキシマイザーに仕上がったと思っているので、Windowsユーザーの方も、Macユーザーの方も、使ってみてください」(重虎さん)。
とりあえずダウンロードしてインストールすればデモ版として無償で使うことはできるし、レジストレーションすれば製品版に変身するという仕組み。不要だと思ったら簡単にアンインストールもできて痕跡も残らないですから、気軽に試すことができますよ。
開発スピードが速すぎて、記事が追い付かなくなりそうですが、またDotec-Audioの新しい情報をキャッチしたら、レポートしていきたいと思います。
【追記】2016.5.17
昨日、早くもDeeMax 2.0のアップデート版、DeeMax 2.0.1がリリースされました。単なるバグフィックスかと思ったら、トンでもない大改革が。フランク重虎さんが、まったく別の新製品用に開発していたアルゴリズムの効果があまりにも大きく、早くユーザーが利用できるようにしたいとDeeMaxを大きく改変したとのこと。
実際にサンプル曲をRMS-6dBまでマキシマイズした結果が以下のグラフです。
RMS-6dBまで持ち上げた波形。上からノーマライズ、DeeMax、著名マキシマイザーのA、B、C
上から単なるノーマライズ、DeeMax 2.0.1その下が有名マキシマイザーのA、B、Cの順番。DeeMax 2.0.1が自然な波形になっているのは明らかですよね。ちなみにすごく音質が向上したというDeeMax 2.0.0の波形はここにないものの、波形的には2.0.1のものとAの中間くらいとのことなので、やはりかなり大きな進化のようです。
DeeMax 2.0.1のリリースからたった5日での新バージョンだったので、飯島さんが2.0.1とバージョン設定したものの、実質的にはDeeMax 3.0とか、せめてDeeMax 2.1というべきものではないか、と思います。つい先日インストールしたばかり、という人も改めてこの新バージョンに差し替えることをお勧めします。
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