昨年10月のリリース以来、DTMステーションで何度となく取り上げてきた、最強にして簡単操作の音圧激上げツール=DeeMaxが、またまたバージョンアップし、新しい機能を搭載してきました。新規参入の小さな小さなメーカーだからこそ、力いっぱい開発を行っているようなのですが、今度もまた理にかなった強力な機能の追加です。
ミュージシャンであり、Deeシリーズの開発者であるフランク重虎さんによると「クルマのサスペンションにヒントを得た機能を搭載した」とのことなのですが、マキシマイザとサスペンションにどんな関係があるのでしょうか? もちろん既存ユーザーは無料でアップデートできる嬉しい機能追加なのですが、どんな威力を持った機能なのか、紹介してみましょう。
DeeMaxの概要については「音圧を上げるための最強にして超簡単なツール、DeeMax誕生」などの記事をご覧いただくとして、今回の登場したDeeMaxの新バージョン1.2.0で追加されたのは画面一番下に搭載されたSAFEスイッチというもの。名前の通り、このSAFEスイッチをオンにしておくと安全に運転してくれるようなのですが、何がどう安全なのかを少し見ていきましょう。
このSAFEスイッチ、単純にオンかオフの設定しかないわけですが、これをオンにすることにより、これまでになかった機能が大きく2つ加わります。具体的には
・サチュレーションがかかる手前で音圧を自動調整する機能
・前段処理の自動コンプレッサ
の2種類です。
この新機能を見て「それはすごい!」「それを待っていた!」なんて思える人は、マキシマイザについて十分に理解している人。大半の人は「???」という感じではないでしょうか?
そこで、開発者であるフランク重虎さんが作ったDeeMax 1.2.0の機能紹介ビデオがあるので、まずはこれをご覧になってみてください。
いかがですか?このSAFE機能の意味、なんとなくお分かりいただけたのではないでしょうか?DeeMaxに限ったことではないのですが、マキシマイザって入力レベルをどう設定するかという難しい問題があります。いくら扱いが超簡単なDeeMaxといえども入力レベルの振幅が大きすぎると思ったような効果が得られず、上げすぎるとサチュレーションがかかった状態になってしまうのです。
そのため、マキシマイザの性能を最大限生かすためには適切な入力レベルに調整が必要があり、オートメーションを駆使しなくてはならず、そこにはテクニックやノウハウが必要でした。でも今回のSAFEスイッチにより、そうした調整を一切しなくてもレバーをグイッと100まで上げれば、音が歪むことなく、音圧MAXにすることが可能になったのです。
「SAFEスイッチは、DeeMaxに入ってくる信号のレベル調整を自動化するためのものです。この機能は路面に合わせて自動でサスペンションを伸縮させる自動車の技術をヒントに思いつきました。波形を路面に見立てて先読みしているんです」と語るのは重虎さん。
そんな先の波形まで読むとしたら、かなり大きなレイテンシが発生してしまいそうですが、その点について重虎さんは「今回のSAFEボタンにおいて、従来のバッファ先読みとは異なる点として、レベルだけではなく波形を放物運動として計算することにより、より自然に先の予測値を得ています」とだんだん難しい話になってきてしまいましたが、この辺、うまく処理しているみたいだし、実際先ほどのビデオを見てもいい感じですよね。
もう一つの「前段処理の自動コンプレッサ」についても伺ってみました。
「マキシマイザ全般ではコンプレッサでの下処理を前提としています。これはプロのエンジニアは必ず行うものであり、マキシマイザー前段でコンプレッサ処理をしています。この設定もかなりノウハウが必要となりますが、SAFE機能を用いることで、その前段のコンプレッサ処理をすべて自動で行うようになっているのです」と重虎さん。
まあ、何がどうなっているのか理解するのは、なかなか難しそうな気もしますが、要は、SAFEスイッチをオンにして、レバーをグイッと上げればいい、ただそれだけだ、ということのようですね。でもDeeMax 1.1.0で追加されたTURBOスイッチと今回のSAFEスイッチの関係はどうなっているんでしょうか?
「SAFEスイッチはTURBOではないノーマルモードで使うことを想定しています。TURBOはより過激な音作りを可能としたモードですので、ぜひじゃじゃ馬を乗りこなしてください。SAFEスイッチはそれとは真逆のモードで、とにかく全開にして使うことをお勧めします。サチュレーションをかけたくない場合にとても最適です。気を使うこと無く思いっきりレバーを上げて楽しんでください」と重虎さんは話してくれました。
なお、前述のとおり、今回のDeeMax 1.2.0は、すでに購入した人であれば無料でアップデートすることが可能です。また、まだ使ったことのない方も、ダウンロードすればデモ版として試すことが可能ですので(デモ版の状態では、利用可能時間に制限があります。またシリアルコードを入力することで解除されて製品版となります)、ぜひ試してみてはいかがですか?