SOUND Canvas VA用にVST Hostを利用するというワザ

昨年末にリリースして大きな話題になったRolandSOUND Canvas VA。90年代のDTMを代表するSC-88ProSC-55mkIIなどを、WindowsおよびMacのVSTプラグイン、AUプラグインとして利用できるということで、当時を知るユーザーからの注目を集めたわけです。

 

そのSOUND Canvas VAをどう利用するかは人によって違うとは思いますが、「当時の曲データを今のマシン環境で再生するために利用したい」というニーズはかなり高いのではないでしょうか?ただ、DAWによってはうまく利用できないケースも出てきているようです。そこでSONARなどでもうまく鳴らすためのWindowsにおける裏ワザ的方法として、VST Hostというソフトを使う手法について紹介してみたいと思います。


SONARの外部MIDIとしてSound Canvas VAを利用する

以前書いた「昔のデータをDAWで再現!SOUND Canvas VA徹底活用術」という記事でも、紹介しているように、SOUND Canvas VAは現在のDAW環境下においては、うまく動作するものと、少し問題があるケースがあります。主なものをいくつかピックアップすると、以下のような状況です。

 

Ability
Cubase
Digital Performer(Mac版)
Live
Singer Song Writer
SONAR
Studio One

 

動作状況の詳細についてはRolandのSOUND Canvas VAの製品情報をご覧いただきたのですが、うまく動かない理由は今のDAWでの曲制作手法と当時のデータ制作手法に違いがあるためです。具体的にいうと、当時はSOUND Canvasなどの外部音源ですべての音作りをしていたので、曲データ内で音色番号の切り替えを行ったり、システムエクスクルーシブという手段を用いて音色パラメータの設定をしていました。ところが、最近のDAWでは音色の設定はトラックのパラメータで行うし、システムエクスクルーシブで音色を設定することなどはまずないので、そうした機能が完全に省かれてしまったDAWが少なくないんですよね。

 

その代表例ともいえるのがCakewalkのSONARでしょう。確かにSONARでも外部のMIDI音源に対してはこうしたパラメータを送ることはできるけれど、VSTプラグインに対してプログラムチェンジやシステムエクスクルーシブを送ることは想定していなかったようで、うまくいかないのです。別にSOUND Canvas VA側が悪いのではなく、DAW側が対応していなかったわけなのです。


SONARでSOUND Canvas VAのプロパティにおいて「NRPNを送信」にチェックを入れるとプログラムチェンジは送信可能になるが…

先日、読者の方から「NRPNを送信」にチェックを入れれば、音色切り替えが可能になるという情報をいただきました。確かにこれによってプログラムチェンジは送れるようにはなるけれど、GMの128音色への対応だけで、バリエーションを使ったGSとしての音色切り替えには対応していないので、結局満足のいく使い方はできないようなんですよね。

 

だったらSOUND Canvas VAをDAWのプラグインとして使うのではなく、外部音源として使ってしまおう!という逆転の発想が今回の主題です。フリーウェア(正確には寄付を募っているドネーションソフト)であるVST Hostと、仮想MIDIポートを実現するフリーウェアloopMIDIを組み合わせて利用することで、SONARでもバッチリ使うことが可能になるのです。

 

さらにはSONARのみならず、フリーウェアのMIDIシーケンサとして人気のあるDominoなどと組み合わせて使うことも可能になるのです。ややトリッキーな手法ではありますが、その手順について紹介していきましょう。


loopMIDIをインストール 

 

まずSOUND Canvas VA、VST Host、loopMIDIのそれぞれをダウンロードした上で、順にインストールします。ただし、VST Hostは特にインストール作業はいらないので、ダウンロードしたファイルを解凍して、HDD/SSD上に展開しておいてください。

loopMIDIでポートを作成する


ここでまずloopMIDIを起動すると、素っ気ない画面が表示されますが、画面左下にある「+」をクリックすると、loopMIDI Portという1行が表示されますので、これで終了。これがSONARやDominoなどからSOUND Canvas VAを呼ぶためのMIDIポートということになるのですが、もしSC-88ProのようにAポート、Bポートの2つを使い計32chでコントロールするのであれば、もう1回「+」をクリックして2行表示されるようにします。

VST Hostを起動すると、このような画面が登場 

続いてVSTHostを起動します。これは先ほどHDD/SSDに展開したフォルダの中からvsthost.exeというファイルをダブルクリックして起動すればいいのです。すると、VSTHostの画面が表示されるので、ここにSOUND Canvas VAを組み込みます。ただし、その前の準備として、まずDevicesメニューの「MIDI」を選び、表示される一連の中から、先ほどloopMIDIで設定した名前を選び「OK」をクリックします。


[Devices]-[MIDI]において「loopMIDI Port」を選択してOKをクリック

さらに、Devicesメニューから「Wave」を選択の上、Output Portに現在接続しているオーディオインタフェイスのASIOドライバを組み込んでください。これによってここで設定したオーディオインターフェイスからSOUND Canvas VAの音が出るようになります。


Output PorにASIOドライバを設定する

ここで重要なのは、SONARで使うオーディオインターフェイスと、VST Hostで使うオーディオインターフェイスは別に設定すること。もし、SOUND Canvas VAをSONARで再生する上で、オーディオトラックが不要というのであれば、SONAR側のオーディオインターフェイス設定を外してしまうというのも手です。


VST Host内にSOUND Canvas VAを読み込み起動させる

 

準備ができたら、VST Host内でSOUND Canvas VAを立ち上げます。VST Host上で右クリックして出てくるプルダウンメニューから[File]-[Plugins]-[Sound Canvas VA]-[SOUND Canvas VA]を選択することで、組み込まれます。もしプラグインの一覧の中にSOUND Canvas VAがない場合には、[File]メニューの[Set Plugin Path]を利用して、SOUND Canvas VAがインストールされているフォルダを指定した上で[File]メニューの[Rescan PlugIns]を実行してみてください。


ノブのアイコンをクリックすると、SOUND Canvas VAの画面が表示される 

 

この時点では、SOUND Canvas VAの画面が見えていませんが、すでに読み込まれているので、SOUND Canvas VAモジュールのノブのパラメータボタンをクリックすると、現れてきますよ。


VST Host上に立ち上がったSOUND Canvas VAの入力ポートを「loopMIDI Port」に設定する

続いてこのSOUND Canvas VAのMIDI入力ポートを指定します。これにはモジュールの左側にあるMIDIのアイコンをクリックして行います。MIDI Inpuot Devices一覧の中から、先ほど設定しておいたloopMIDI Portを選び、OKをクリックするのです。


VST Host内に2つのSOUND Canvas VAを立ち上げ、入力をそれぞれAポート、Bポートに設定する 

 

もし、Aポート、Bポートと2つ使う場合は、SOUND Canvas VAをVST Host内に2つ立ち上げた上で、それぞれで別のポートを設定すれば2つを同時に使うことができるようになります。


SONARの環境設定で「loopMIDI Port」を使えるようにしておく

さあ、これで準備は完了です。あとはSONARやDominoなどのDAW、MIDIシーケンサを起動し、MIDIデータを読み込んでみましょう。そのDAW・MIDIシーケンサ側からの出力ポートは、先ほどと同じ「loopMIDI Port」です。事前に環境設定のMIDIデバイスの選択で「loopMIDI Port」にチェックしておいてくださいね。


MIDIトラックの出力先「loopMIDI Port」にすれば、SOUND Canvas VAへ信号を送れる

その後、MIDIトラックの出力先を「loopMIDI Port」に指定することで、まさに外部MIDIに接続するのと同様に、VST Host上のSOUND Canvas VAへMIDI信号が届くわけです。


VST Hostを用いることでDominoにおいても同じようにSOUND Canvas VAを扱えるようになる

最新版のSOUND Canvas VA Ver 1.01にはSpecial Demo Songとして、SC-88Pro用、SC-55用、SC-8820用など1991年~1999年にRolandが出していたデモソングをMIDIデータとして収録しているので、まずは、これらを試してみるといいと思いますよ。

なお残念ながら、この設定においてVST Hostのオーディオ出力をDAW側に戻せるわけではなく、あくまでもオーディオインターフェイスから音が出るということ。もし、オーディオをDAW側に戻す必要がある場合は、リアルタイムではありませんが、便利な方法があります。


VST Hostの画面左上の録音ボタンを押し、終了したらストップ。これで演奏内容をWAVで保存できる 

 

それはプレイバック前にVST Hostの録音ボタンを押して録音をスタートさせ、再生が終わったところでストップボタンを押すこと。これによって、SOUND Canvas VAで再生した音が音質劣化なくWAVファイルとして保存されるので、これをDAWで読み込めばいいのです。タイミングは手動で合わせるしかありませんが、ぜひ、この方法も試してみてはいかがでしょうか?

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VST Host
loopMIDI
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2件のコメント
  • pal8000

    普段はABILITYなのですが、曲を聴くだけのとき、切り替えが簡単なプレーヤーを使いたく、
    KbMedia PlayerからSC-VAを鳴らす目的で、loopMidi、VST HostとASIO4ALLを
    組み合わせて使っています。
    この組み合わせだと、曲を切り替える際にSC-VAを繋ぎなおさないので、待ち時間が
    初回のみなのが大きなメリットです。
    さて、VST Hostの設定、紹介してくれているサイトはあるのですが、
    古い版数対応での説明だったりして、意外に面倒です。
    実は、先日から設定情報を壊してしまい、音が鳴らなくなってしまっていましたが、
    今回の紹介記事のおかげで復活させることができました。

    2016年3月24日 10:18 PM
  • 藤本健

    pal8000さん
    loopMIDIの設定、お役に立ててよかったです!

    2016年3月25日 7:57 AM

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