昨日9月25日に発売されたiPhone6sとiPhone6s Plus。私個人的には今回は見送ろうと思っていたんです。だって、あんまり見た目も変わらないし、これといってすごく進化した感じもしなかったので……。毎年買い替えるのもバカバカしいですからね。ただ、昨日、今日とTwitterやFacebookを見ていたら、「買った!」という報告やら写真やらがいっぱいUPされていて、ちょっと悔しく思い、予約もしてなかったのに、さっき思い立って買ってきてしまいました!
これまでiPhone6 Plusを使っていたのですが、このデカさには1年経っても馴染めず、この際小さいのにしてしまえ!とiPhone6sのほうを買ってきたのです。iPhone6 Plusの下取り価格が妙に安いので、これを捨ててしまうのはもったいなく感じ、これを保持したままの2台持ちです。当然片方はSIMなしですけどね。というわけで、毎年恒例の新iPhone、新iOSのDTM環境動作チェックを行ってみました。
iPhone6sを買ったので、さっそくDTM環境についてチェックしてみた(下はこれまで使っていたiPhone6 Plus)
もともとiOS9は、DTM環境にとっていろいろ問題があるらしい、という情報を得ていたので、iPhone6 PlusのほうはiOS9へはアップデートしておらず、iOS8.4.1の環境。一方、購入したiPhone6sのほうは当然iOS9が入っているのでiCloudを使って、iPhone6 Plusの環境をそのままiPhone6sのほうへ復元。またiOS9はさっそくバグフィックスされたiOS9.0.1が出ていたので、こちらにアップデートしました。
ここ最近アプリのアップデートもしていなかったので、まずはこれをチェックしてみたところ、もう各社iOS9対応版を出してきているんですね。先日、「KORGの開発者が語るiELECTRIBE for iPhone音作りの秘訣」という記事でも書いたとおり、KORG iELECTRIBE for iPhoneなどはいち早く対応しているし、ヤマハのiVOCALOID-VY1もiOS9上で起動しないという問題をすぐに修正してきています。
KORGからはいち早くiOS9対応のiELECTRIBE for iPhoneなどがリリースされた
またDAWにおいてもMusic StudioがiOS9対応を打ち出したバージョンを8月の時点で出してきているし、シンセサイザでもFairelight CMIを再現するアプリであるPeter Vogel CMIや波形をオシロスコープで見れるアナログシンセであるMagelan JrなどもiOS9対応版をリリースしているんですね。
各種アプリも次々とiOS9対応を進めている
とはいえ、iOS8からiOS9への変化はDTMにとっては、あまり大きなものではなさそうです。確かにiPhone6s、iPhone6s Plusという新ハードウェアにおいては、3D Touchという機能が搭載されたので、これによって今後ベロシティーを感知するとか、アフタータッチ、モジュレーションコントロールに対応したアプリが出てきそうな予感はしますが、現時点ではそうしたものは存在してないため、各アプリのアップデートもバグフィックス的なものに留まっているようです。
3D Touch対応のアプリはすでにリリースされていました。いつもいち早く新機能に対応しているbismarkさんのbs-16iです。bismarkさんによると、これでベロシティー感知をするには厳しく(以前から加速度センサーでの対応はさせてますね)、3D Touchではアフタータッチに対応させたとのことです。
FL Studio Mobile HDもとくにアップデートされていないが、問題なく動作する
そもそもAppleのGarageband自体6月30日にリリースされたものが最新版で、iOS9への対応というのはありませんから、しっかりしたアプリであればとくに問題なく動作すると考えてよさそうです。FL Studio Mobile HDやMultitrack DAWなどの定番DAWもとくにアップデートはないですからね。もちろんiOS9に移行した結果、不具合が顕在化するという可能性はあるので、とりあえず手持ちのアプリを片っ端から使ってみました。
ここではとりあえず、起動して音が出るかの確認をするとともに、録音可能な録音できるかをチェックしたり、エフェクト系は入力、出力ともにうまくいくかを見た程度です。厳密に見ていくと、今後問題が現れるかもしれませんが、各種アプリを試したところ、基本的にはどれもほぼ問題なく使うことができました。
VocaloWitterをiPhone6sの内蔵オーディオデバイスで鳴らすと歪みが発生
ただし、気になるトラブルが発生したアプリが3つほどあったのでピックアップしておきましょう。ひとつはYAMAHAのiVOCALOIDエンジンを利用して喋らせるアプリであるVocaloWitter。普通に起動し、普通に動くのですが、実際に発音させると音が歪むというかノイズが乗るのです。
同様にシンセアプリであるMagelan Jrおよびmini Synth2も歪んだり、音が出なかったりするのです。この2つのアプリは同じYonacという会社が開発したもので、ともにiOS9対応版としてリリースしている、というのにです。
※追記(2015.9.26 23:40)
これら3つのアプリ、ヘッドホンで再生したところ、歪みやノイズまた音が出ない、といった問題は解消しました。ほかの人からも同様の報告が上がっているので、スピーカー側の回路もしくはドライバの問題のようです。
※追記(2015.9.26 23:55)
同様の問題がAnimoog、Argon、Cassiniなどのシンセでも起こっていることが確認されました。
※追記(2015.9.27 11:30)
Argon、Cassiniの開発者との連絡のやりとりにより、スピーカー再生時にはアプリケーションが要求したバッファサイズと異なる値をiOSが返してきているのが原因のようだ、とのこと。ちょっと面倒な問題なようです…
SONIC PORT VXを接続すると、問題なく動作するとともに上記3つの問題アプリの不具合も解消
これらの現象や音を聴いた感じでいうと、オーディオのバッファサイズの設定の問題なような気がします。そこで、もしかしたらこれらの問題の解決になるのでは……と思って行った次の実験はオーディオインターフェイスを接続して使ってみるというもの。まずはLine6のSONIC PORT VXおよびIK MultimediaのiRig PROを接続して試してみたところ、これらは問題なく動作し、各種アプリで使うことができました。
ここで、問題となっていた3つのアプリを試してみたところ……あっさり問題は解決してしまいました。そうアプリとしてはしっかり動いているけれど、iPhone6sのオーディオ機能との連携部分にトラブルが生じているようなのです。試していませんが、YonacがiPhone6s、iPhone6s Plusが発売される前に、iOS9用として出したということは、iPhone6やiPhone5なら問題なく動くのではないでしょうか?つまり、新世代のiPhone6sやiPhone6s Plusはオーディオのハードウェア部分に何等かの変化があった可能性が高そうですよね。
Lightning-USBカメラアダプタ経由でSteinberg UR242に接続
なお、Lightning-USBカメラアダプタを使って、USBクラスコンプライアント対応のオーディオインターフェイスであるTASCAMのUS-2×2およびSteinbergのUR242で試してみたところ、これらもバッチリ動作します。ちなみにUS-2×2はUSBバスパワー動作するデバイスなのでLightning-USBカメラアダプタとUS-2×2の間にパワードのUSBハブを入れてみたところ動いてくれました。またUR242の場合は標準のACアダプタでの動作を確認しました。
なお、US-2×2もUR242もオーディオだけでなく、MIDIも装備しているわけですが、これらも同時に使えることが確認できています。
iRig KEYSもLightning接続で問題なく使うことができた
さらに、MIDIキーボードはどうでしょうか?ここではIK MultimediaのiRig KEYSをテストしていますが、これも標準のLightningケーブルを接続することで動作し、各種音源などを弾くことができました。またLightning-USBケーブルを使ってKORGのnanoKEY2に接続してみたところ、こちらも問題ありませんね。
ちなみに、iOS9登場に合わせてアップデートしているアプリのアップデート内容をチェックしてみると「Audiobus SDK 2.2.1対応、Audiobus Remote対応」などと書かれています。一方で、現行のAudiobusのバージョンはまだ2.1.8ですが、次期バージョンで何か変化があるのかもしれませんね。ここで気になったのは「Audiobus Remoteって何?」ということ。
Audiobus Remoteは2台のiOSデバイスをBluetooth LEで接続してリモートコントロールするアプリ
調べてみたらAudiobus Remoteなる新アプリが7月にリリースされていました。さっそく試してみたところ、これなかなか画期的なアプリです。Audiobusを使ったことのある方ならご存じかと思いますが、Audiobusは1つのデバイス内にシンセやエフェクト、レコーダーなど複数のアプリを起動させて使うため、切り替えがとっても面倒なんです。そこで、Bluetooth LEを用いて別のiOSデバイスと接続し、もう片方をリモコンとして使ってしまうというものなんですよね。
Audiobus Remoteを使ってiPhone6 Plus側のAudiobusをコントロール
ちょうど、余ったiPhone6 Plusがあるので、そちらをリモコンとして使ってみたところ、なかなか快適でした。まあ、「そこまでしてiPhoneですべてをやる必要があるのか!」という声が聞こえてきそうではありますが、A9プロセッサともなれば、かなりのCPUパワーもありますからね。
というわけで、一通り使ってみた結果、iOS9でも基本的に問題なく使えそうです。ただし、アップデートがあまりない古いアプリだと、iPhone6s、iPhone6s Plusのオーディオ機能との相性問題が発生する可能性はありそうですので、その点は注意が必要ですね。