古くからMIDIの打ち込みをしている人の中でMOTUのDigital Performerを使っている人の比率って結構高いですよね。またその昔はPerformerやDigital Performerを使っていたけれど、マシン環境をWindowsへ移行させた関係で、泣く泣く別のDAWに乗り換えた……という人も少なくないと思います。
でも、そのDigital Performerは今でも着実に進化しており、先日リリースされたDigital Performer 9はMacでの動作はもとより、Windows 10(現在MOTUで最終テスト中)でもしっかり稼動するなど、Windows環境においても、より安定して動作するDAWとなっています。その最新版のDigital Performer 9をWindows 10およびMac OSX 10.10(Yosemite)にインストールして使ってみたので、これがどんなDAWなのか、改めて紹介してみたいと思います。
先日リリースされた最新版のDP9はWindows 10でも快適に安定して動作する
DAWが登場するより少し前の時代、約20年前のMIDI打ち込み全盛期だったころ。通信カラオケ用のMIDIデータ需要が高まり、MIDI打ち込みバブル時代というのが存在していたのをご存知でしょうか?ミュージシャンの方々もアルバイト的に参加するなど、結構多くの人たちが通信カラオケ用データの制作を行って、ひと財産築いた……なんて話も聞きますからね。
もちろんMac OS X Yosemite環境でも同じように動き、Win/Mac間のデータ互換性も完璧
とにかく効率が求められたMIDIの打ち込みにおいて、主流となっていた2つのソフトがありました。その1つがMOTU(当時は今の略称ではなくMark of the Unicornだったかな)のPerformer、もう1つがカモンミュージックのレコンポーザでした。考え方に少し違いはあるものの、いずれも数値入力をメインとしたソフトで、打ち込み職人の方々の間で重宝されていたんですよね。そうテンキーを使って、数字をカチャカチャと打ち込んでいたいたから「打ち込み」と呼ばれていたわけです。
先日発売されたDP9のパッケージには192ページのクイックガイドとDVD-ROM、キーコードが入っている
当時はまだDAWという言葉が生まれる前で、MIDIシーケンサと呼んでいましたが、正確に、そしてスピーディーにデータを入力し、編集していく上で数値入力が威力を発揮していたわけです。残念ながらレコンポーザのほうは、その後PC-9801の衰退とともに消えていってしまいましたが、Performerのほうは、オーディオ機能を備えてDigital Performerと改名するとともに、Mac環境において着実に進化してきたのです。
もっともDAW全盛時代に入ってくると、プラグインなどオーディオ機能に多くの人の注目が集まるようになり、Cubase、Logic、Pro Toolsなどに乗り換える人が出てきたり、メインマシンをMacからWindowsに切り替えたことで、Performerを諦めた……なんて声もよく聞きました。
完全に日本語対応となっており、使いやすい(9.0.1より対応)
そのDAWとなったDigital Performerも先日発売された新バージョンはDigital Performer 9と9番目のバージョン。一般にDP9と略称で呼ばれることも多いのですが、ここには当時の数値入力での打ち込み機能、そしてMIDIの多彩な編集機能は脈々と受け継がれており、「以前はPerformerでよく打ち込んだよ…」という人なら、きっと体が覚えているから、すぐに“道具として”使えるはずですよ。
そして昨年「今さらながらWindows版のデジパフォを試してみた」という記事でも書いた通り、DP8からはMacだけでなくWindowsでも使えるハイブリッドDAWへと進化。そして今回のDP9は、Windows 10対応をいち早く表明するなど、よりWindows対応を鮮明にしてきています。
先日の「DAWを片っ端から入れてWinodws 10のDTM環境をチェックしてみたら…」という記事でも試してみたDP9、改めてクリーンインストールしたWindows 10環境にインストールして使ってみましたが、とっても安定して動作するし、DP8のときよりも、Windows適合した気がします。
DP9からは1,000ページを超える分厚いマニュアルはPDFでの提供となった
まあ、ご存じの通り、MOTUは数多くのオーディオインターフェイスを出しており、これらは古くからWindows対応しているし、MACH FIVEを始めとする各種ソフトウェアもWindows版で実績を持つメーカーですから、「なんでDigital PerformerだけWindows対応しないんだろう……」と不思議に思っていたくらい。Windowsへの対応技術はとてもしっかりしているわけですよね。
もちろんMacでも今まで通り使用することが可能なのですが、ここで気になるのがプロテクトがどうなっているのか…という点。いや、もちろん不正利用したいってわけじゃないですよ。せっかくWindows版もMac版もあるなら両方使いたいところじゃないですか。たとえば家ではデスクトップの高性能Windowsマシンで使いつつ、MacBook Airにも入れて通勤時に電車の中で打ち込みするとか……、いろいろな使い方を想像できますが、そんなことができるのか、という点が気になります。
キーコードの入力で認証され、MacでもWindowsでも同時に2台までインストール可能
そこで、国内発売元のハイリゾリューションに問い合わせて聞いてみたところ、明確な回答を得ることができました。「DP9は同時に2台までインストールすることができ、それ以上にインストールした場合、最後に認証をかけた2台が有効になる」とのこと。この認証はネット接続された環境で、DP9のパッケージに入っている「Digital Performer 9キーコード」という文字列とメールアドレス、ユーザー名を入力して行う簡単なもの。これならドングルを紛失する心配もないし、ハードディスクがクラッシュしたって、マシンを新調したって引っ越しは簡単ですよね。
実売価格4万円程度のプラグインシンセ、MX4がバンドルされている
さて、このDP9、もちろんDAWですから、MIDIのシーケンス機能はもちろんオーディオのレコーディング機能、編集機能、ミックス・マスタリング機能とDAWとしての機能は一通りなんでも揃っています。当然、ソフトウェア音源やエフェクトも利用できるわけで、最新のDP9では、従来から発売されているMOTUの音源でEDM系の世界で人気のシンセサイザ、MX4もバンドルされるようになりました。
ビンテージコンプレッサの定番、1176LNをエミュレーションするFET-76
また1176LN コンプレッサ(Rev.D/E)を忠実にエミュレートしたMasterWorks FET-76、Craig Anderton氏開発の秀逸なマルチバンドディストーションキットであるQuadraFuzzを忠実に再現したMultiFuzz、さらには強力なギターシンセのMegaSynthなど5つのエフェクトが追加されたのも大きなポイントとなっています。
Windows版にSynth1を組み込んでみたところ、快適に動作してくれた
もちろんMacならAudio UnitsやVST、WindowsでもVSTのプラグインを使うことが可能ですから、インストゥルメントでもエフェクトでもどんどん増やして使うことが可能です。試しにWindows版のDP9にフリーウェアのSynth1を組み込んでみたところ、軽快い動作してくれましたよ!
ただし、DP9自体にはプラグインの32bit/64bitブリッジ機能は搭載されていません。そのため、DP9の32bit版を動かした場合は32bitのプラグイン、DP9の64bit版を動かした場合は64bitのプラグインのみが認識されるので、64bit版DP9で古い32bit版プラグインを使うことはできません。実際、上記のSynth1においても最新のSynth1 Ver 1.13 beta3 32bit/64bitを組み込んで使っています。
そのほかにも、DP9へのバージョンアップによってオートメーションデータをさらに見やすくするためのオートメーションレーンが追加されたり、各オーディオトラックのスペクトラル解析された波形をカラフルに表示させるスペクトラルディスプレイ機能が搭載されたり、オーディオプラグインのMIDIラーン対応がされたり、MusicXMLのエクスポート機能が搭載されるなど、さまざまな進化があります。
オーディオをスペクトラム表示させるスペクトラルディスプレイ機能
さらに、MIDI機能のほうも進化しています。たとえばマーカーリストとチャンクリストに検索機能が搭載されたり、MIDIにMuteツールが搭載されたのもポイントです。このMuteツールは従来オーディオを一時的にミュートするのに使っていたものですが、MIDIノートもミュートできるようになり、複数選択されたノートもワンクリックでミュートが可能となるなど、便利になってますよ。
以上、最新のDP9について見てきましたが、いかがだったでしょうか?以前、PerformerやDigital Performerを使っていたけど、最近は離れてしまった……という方もこれを機会にまたDPを導入してみるというのもいいのではないでしょうか?
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Digital Performer 9製品情報