JUPITER-8やJUPITER-6、JUNO-60、JUNO-106、SH-101、TB-303そしてD-50……といったRolandのビンテージシンセサイザ。現在でもさまざまな音楽制作、ライブで使用される音源を、Roland自らが復元して、今、普通に使えるようにしてくれるサウンドライブラリの配信サイトがあるのをご存じですか?Rolandが2013年4月からスタートしたサイト、Axialというのがそれ。
誰でもPCからアクセスすることができ、それぞれの音色の出音をチェックできるので、そうした音を聴くだけでも、結構グッと来るのですが、現在のところすべて無料でダウンロードすることができ、手持ちのシンセサイザ音色を追加、拡張していくことができるのです。どんな内容のものなのか、紹介してみることにしましょう。
Rolandが無料で公開する音色ダウンロードサイト、Axial
まずは、以下のビデオをちょっとご覧ください。
どうですか?これ左がオリジナル音源であるJUPITER-8、右が現行モデルのシンセサイザJUPITER-80であり、聴いただけでは、音の違いが判らないほどですよね。このビデオを見ても分かる通り、かなり多くの音源をソックリに復元しているのですが、これらの音色をAxialで無料配信しているのです。
RolandのFA-06でもJUPITER-8やD-50の音色を同じように再現できる
とはいえ、「JUPTER-80なんて高いシンセサイザ買えないよ!」、「JUPITER-80なんだから、JUPITER-8の音色をある程度復元するのは当たり前では…?」と思う方もいると思いますが、これとまったく同じ音がJUPTER-80やJUPITER-50に限らず、INTEGRA-7、さらには先日紹介したFA-06、FA-08でも再現できる、といったら話は変わってきますよね。
続いて、もう一つのビデオもご覧ください。
こちらも復元用のシンセサイザにJUPITER-80を使ってはいますが、LA音源の代表であるD-50の代表的なサウンドも再現しているんでよね。これもやはりINTEGRA-7、FA-06、FA-08でまったく同じように利用することができ、この音色ライブラリは5月下旬に公開されるとのことです。
これまでのRolandの音源の集大成という全部入り音源モジュール、INTEGRA-7
でも、これどうやって再現しているのでしょうか?音色配信サイト、Axialの運営をしているローランド株式会社国内マーケティンググループの主任、石井宏平さんに聞いてみました。
「JUPITER-8をはじめヴィンテージ・シンセそっくりな音が実現できているのは、アナログ・シンセならではの挙動……、たとえば、フィルターを触ると意図せず音量までもが変化したりする、といった独特な動きを再現するSupterNATURALシンセサイザーというRoland独自のエンジンを利用しているからです。同じエンジンがINTEGRA-7やFA-06、FA-08にも搭載されているので、これらの音色を同じように使えるわけです」(石井さん)
それなりに高価なシンセサイザー達ではありますが、FA-06なら実売110,000円前後と比較的、手を出しやすい機材。これでもJUPITER-8などの音がそのまま再現できるというわけなんですね。
「D-50ならではの特徴的な波形、たとえばFantasiaであれば倍音成分を活かした音作りによるものです。もちろん、社内にはD-50の実機などもあるわけですから、これらもうまく活用して当時の懐かしい音を再現しているのです」とのこと。
PCでダウンロードしたデータをUSBメモリーやSDカードにコピーした上で各シンセサイザーへ展開する
ほかにも、JUPITER-6、JUNO-60、JUNO-106、SH-101、TB-303などの音色ライブラリもあり、やはりJUPITER-80、JUPITER-50だけでなくINTEGRA-7、FA-06、FA-08で再現できるとのことです。
ちなみにFA-06、「先日WOWOWで放送された、しょこたんライブ『TOUKYO SHOKO LAND』で使われていたのを見た!」なんて方もいるかもしれません。そう、ニコニコ生放送のDTMステーションPlus!を一緒に運営しているパートナーである作曲家の多田彰文さんが、バックバンドのシンセサイザ担当としてFA-06を演奏をしていたのです。
しょこたんライブでFA-06(上)、RD-700(下)を演奏する多田彰文さん
先日の記事「DAW用に作りこまれたワークステーション、Roland FA-06/08誕生!」で取り上げ、DTMステーションPlus!でも扱ったのがキッカケで多田さんも気に入ったみたい。、DAWと連携した曲作り用として活用する一方、とにかく軽くて持ち運びやすいことからライブでも使っているんですね。そうしたアクティブな活用がでいるキーボードで、ビンテージシンセの音色がそのまま活用できるというのは大きな魅力ではないでしょうか?
ところで、Axialで対象になっているシンセサイザーは
●FA-06/08
●INTEGRA-7
●GAIA SH-01
●JUPITER-80
●JUPITER-50
●JUNO-Di
●V-Combo VR-09
のそれぞれ。すべてで同じ音色が使えるというわけではなく、各シンセサイザー用に別々のライブラリが用意されているんですね。たとえば、いま高校生、大学生バンドなどで定番となっているキーボード、JUNO-Di用には「JUNO-Di Band Sound Collection」というシリーズの音色ライブリーが用意されており、けいおん!の「Don’t say “lazy”」や「NO,Thank You!」、いきものがかりの「じょいふる」、White Flameの「千本桜」といった曲そっくりの音色からTMネットワークの「Get Wild」、B’zの「LOVE PHANTOM」なんてものまで揃っているのも楽しいところです。
高校生、大学生バンドで大人気のJUNO-Di(上)と76鍵おもり付鍵盤を採用したJUPITER-50(下)
さて、ここで1つ分かりにくかったのがFA-06/08とINTEGRA-7の関係です。それぞれ別の音色ライブラリが登録されているのですが、実はINTEGRA-7用のものは、すべてFA-06/08で利用できるんです。それが、前述のJUPITER-8やD-50などの音色ですね。
EXPシリーズの音源をダウンロードし、FA-06上で表示させると「SRX」の文字を発見
一方、FA-06/08用に用意されているEXPシリーズというのは、INTEGRA-7では読み込めないというか読み込む必要がない構造です。というのも、INTEGRA-7に標準で入っているけれど、FA-06/08に入っていない波形データが、EXPシリーズであり、毎月のように増えているんです。FA-06に読み込ませて確認してみると「DnB SRX」といった名前で表示されます。ハッキリは書かれていないのですが、Fantom-Xシリーズなどのオプションとして発売されているSRXシリーズに相当するものが無償でダウンロードできる…ということなのでしょうか?
「SRXのサウンドを100%すべて網羅……というわけではありませんが、SRXから引き継がれた音色や波形を活用しています。追加される音色によっては”SRX”という名称が使われているものもありますので、探してみるのも面白いかもしれませんね。INTEGRA-7をリリースした際、やはりSRXやSR-JV80シリーズのサウンドが今でも活用されているという実感がありました。FA-06/08ではじめてRolandシンセに触れる方にも、これまでのRolandの歴史を音色で辿ってほしい、という想いを込めて、無償で提供させていただいています」と石井さん。かなり付加価値が大きそうですよね。
今後も、最低1か月に1度はAxialサイトを更新して、新しい音源を追加していく予定とのことなので、上記のシンセサイザーを持っている人にとっては非常にうれしいところ。
「これらのシンセサイザーをお持ちでない方で、実際、どんな音なのか試してみたいという方は、全国にあるRoland Planetへいらしてください。ローランド社員が常に待機しており、Axialで配布している各音色を試すことができます」と石井さん。
追加料金が発生せずに、こうした魅力的音色がどんどん増えていくとは、嬉しい時代になったものですね。
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【関連情報】
Axial — Roland Synthsizer Sound Libraries
FA-06製品情報
FA-08製品情報
INTEGRA-7製品情報
Roland Planet
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