超強力エフェクト満載のUAD-2を使ってみた

先日「ビンテージエフェクトを忠実に再現する、プロ御用達のUAD-2ってどんなもの!?」という記事でも紹介したUniversal AudioUAD-2。PC外付けか内蔵を選択可能なUAD-2というハードをPCに接続することで、プロが使っている環境そのものを手元のDAWで実現できるとというものです。

プロ用だけにUAD-2って、すごく高価で一般DTMユーザーには手が出せないものと思い込んでいたら、4万円弱で入手するエントリー版も存在しているんですね。その一番安いUAD-2 SOLO Coreを代理店のフックアップから借りることができたので、これでどんなことができるのか実際に試してみました。

Cubase7 にUAD-2のプラグインをいろいろ組み込んで使ってみた


UAD-2に関する詳細は前回の記事を併せて読んでいただきたいのですが、簡単に説明しておきましょう。これはDSPと呼ばれる高速演算ICを搭載したハードウェアで、PCに内蔵するPCIeカードタイプ、外付けのFireWire接続タイプの大きく2種類が存在します。これらをPCに接続して専用のソフトウェアをインストールすると、CubaseSONARPro ToolsStudioOne……といったDAWにおいてさまざまな高性能なプラグイン・エフェクトが使えるようになるのです。

UAD-2によって実現されるビンテージプラグインの1つ、Universal Audioの1176 Rev.A

そのプラグイン・エフェクトの数は現在、約60種類。いずれもプロの現場で長年使われてきているビンテージ機材を忠実に再現したもの。しかも、そのビンテージメーカー自らが開発にも関わっており、NEVEAMPEXLexiconMANLAYRoland……といったブランド名で出ており、まさにその音をPC上で再現できるのです。

しかも、これらのプラグイン・エフェクトを動作させる上で、PC本体のCPUパワーを使わないというのが大きなポイント。そう、UAD-2搭載のDSPがすべて処理してくれるからで、PCのCPUパワーが低くても問題なく使うことができるのです。

もちろん、DSPの演算能力にも限界があるわけですが、より多くのエフェクトを同時に動かすのであれば、複数のDSPを搭載したUAD-2を使えばいいのです。そのため、DSPが1個のみ搭載されているSOLO、2つ搭載されているDUO、さらに4つ搭載のQUAD、8つ搭載のOCTOといった機種があり、必要に応じて選んだり、買い足していけばいいのです。

PCIe接続のPC内蔵タイプのUAD-2 SOLO Core

今回試してみたのは、一番安い、PCIe接続のカードタイプのUAD-2 SOLO Core。実売価格が4万円弱という比較的手ごろな機材であり、このカードを見ると、銀色に光るICが搭載されています。そうこれがDSPであり、ANALOG DEVICES社SHARCプロセッサと呼ばれるものです。これが1つだけ搭載しているからSOLOなんですね。

ANALOG DEVICESのSHARCプロセッサが1つ搭載されている

このUAD-2 SOLO Coreというハードウェア自体はいたってシンプルなもので、カードをPC本体の内蔵スロットに刺すだけで、ほかに触るところも何もありません。実際、装着してしまうと、入出力端子もスイッチも何もなく、本当にそれだけ。逆に調整の必要もありませんから、扱いはとっても簡単なんです。

セッティングはPCの拡張スロットにUAD-2 SOLO Coreを挿すだけ

続いて、Universal Audioのサイトから最新のドライバーソフトであるUAD SOFTWARE V7.2をダウンロードしてインストールします。今回は、Windowsマシンに装着したので、Windows版をダウンロードしたわけですが、容量は約780MBと、結構大きく、10分程度を要しました。実はこのソフト、単なるドライバーというわけではなく、ここに約60種類にも及ぶプラグインエフェクトがすべて入っているんですよ。

UAD SOFTWAREには約60種類のエフェクトも入っている

また、前述のとおり、UAD-2には、いろいろな種類がありますが、UAD SOFTWARE自体はすべてのハードに共通で、Windows版とMac版があるだけだから、この点でも失敗する心配がなく、いいですね。

Universal Audioのサイトを見ると、サポートしているのはWindows XP、Vista、7となっていましたが、最近、私はWindows 8を使うことが多くなっているので、これにインストールしてみました。結論からいえば、まったく問題なし、完璧に、そして安定して使うことができました。

UAD-2がサポートしているのはVSTAURTASのプラグインフォーマット。そう、UAD SOFTWAREをインストールするだけで、各DAWにプラグインが追加されるんですね(VSTフォルダの指定が必要な場合もありますが)。

SONAR X2を使ってみると、膨大な数のプラグインが組み込まれていた

まず試してみたのはSONAR X2。プラグインエフェクトの一覧を見ると、本当にズラリと並んでいます。試しに適当に選んでインサートしてみると、それだけで、なんか不思議といい音に変化してくれますね。楽しいです!

SONAR上で起動させたSPACE ECHO RE-201

続いてCubase 7を起動してみると、こちらでもまったく同じように、60種類あるプラグインを選択し、使うことができました。

Cubase 7上でもまったく同じようにUAD-2のエフェクトがVSTエフェクトとして使える

ここで、以前からUAD-2があったらぜひ試してみようと思っていたことにトライしてみました。それは、多くのプロのエンジニアがメインリバーブとして使っているというEMT250を使うこと。いろいろなところで取材していても、EMT250の話題が出るし、、「どんなリバーブよりも密度があって濃い」なんて話を聞くので、どんなものなんだろう……、と。リバーブって、さまざまなものがあるけれど、確かに特徴的なサウンドで、「なるほど、プロの人たちって、こういうのを好むのね」っという雰囲気を実感できました。

EMT250を使ってプロっぽい音作りを試してみた

もっとも、たった4万円の製品を買っただけで、すべてがずっと使えるというわけではないようですね。UAD SOFTWAREをインストール後、14日間のみ、すべてを使うことができ、それ以降は使いたいものをライセンス購入する必要があるようです。ただし、Analog Classicsという計5つのプラグインは最初から付属しています。この中に、以前の記事でも触れたTeletronix LA-2AUniversal Audio 1176LN/SEなどが含まれています。
標準でバンドルされるAnalog Classicsもなかなか強力

さて、今回使ったのがDSPが1つだけのUAD-2 SOLO Coreということだったので、エフェクトも1つ、2つしか使えないのかなと思ったら、同時に5、6個は余裕で使えてしまいました。DSPの使用状況やUAD-2のメモリー状況をモニターできるメーターがあるので、これを見れば、どの程度の余裕があるのか、一目瞭然。また、確かにこのエフェクトをいくら使ってもPCのCPUメーターのほうは、まったく動いておらず、PC側に負荷がかかっていないことも確認できました。

UAD-2のパフォーマンスメーターを見る限り3つのプラグインを組み込んでもまだまだ余裕がある 

私も、使ったのが初めてなだけに、それぞれのエフェクトを動かして音を聴いてみるだけで、楽しくなります。プロ用ビンテージ機材って、使い方が難しいのかなと思っていましたが、すごく簡単で分かりやすいからプロ機材なのかも……と改めて感じたところです。

UAD-2 SOLOの状態をより細かくモニターすることも可能

今のところ、3、4種類を同時に使うだけで楽しめていましたが、本気で作り出すと、パワー的に物足りなくなるのかもしれません。ただ、われわれ一般ユーザーの使い方としては、「ここぞ」というトラックだけに使ってみたり、マスタートラックに使うだけで、十分すぎる効果が得られるのではないかと思います。また、どうしても複数トラック使いたければ、かけた結果を別トラックにバウンスしてしまえばいいわけですしね。

Cubase 7上に表示されるUADのプラグインの一覧

普通、ビンテージ機材を買うとなると、結構莫大な金額になるけれど、4万円の投資で、ここまでのことができるのなら、ものすごく高いコストパフォーマンスではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

ちなみに、ちょうど9月末までのタイミングで、フックアップがキャンペーンを行っているとのことで、UAD-2 SOLO Coreの場合は、NEVE 88RS Channel Stripプラグインがついてくるそうですから、買うならいいタイミングかもしれませんよ!

【関連サイト】
UNIVERSAL AUDIO製品情報(フックアップ)
UNIVERSAL AUDIO本社サイト(日本語)
UAD-2(フックアップ)