ヤマハ自らが新しい手法でレコーディングしてデータベース作成を行ったVOCALOID2、「VY1」が9月1日に発売されます。ただし、これはヤマハ製品として発売されるのではなく、VOCALOID STOREを運営しているビープラッツの製品として販売され、サポートもビープラッツが行うという話は前編で紹介したとおりです。
とはいえ、これまでクリプトン・フューチャーメディアやインターネット、AHSなどのベンダーがデータベースを作っていたのに対し、今回ヤマハが作っているという点は、やはりいろいろと興味を引くところ。また、VY1といういかにもヤマハ製品っぽいロゴを使っているあたりも気になるので、聞いてみました。
VY1のデラックスパッケージにはニコ動などで活躍する著名PさんたちによるコンピュレーションCDがバンドルされる
初音ミクなどはエンジン部分はヤマハが提供しているものの、データベース制作からパッケージ化まではクリプトン・フューチャーメディアなどサードパーティが行っているのに、なぜ今回はヤマハが行っているのかを改めて聞いてみたところ、また意外な答えが剣持さんから返ってきました。
「従来の各製品も最終的なインストーラにまとめるのはすべてヤマハで行っているんですよ。各社からデータベースを納品してもらい、それをヤマハが最終的な製品にしているのです。その際、クオリティーチェックも行っており、オープンにはできないものの、過去には検品不合格で却下された製品もあるんですよ。だから、確かにデータベース作成という面では違いがあるものの、最終的にヤマハ製であるという点はVY1も共通なんです」
てっきり、VOCALOID2のライセンスをしているだけだと思っていたのですが、違ったんですね。また、VY1のデータベース収録においてVOCALOID向きな声優さんを選び、意味ある言葉で歌ってもらった結果、滑らかに歌えるようになったとのことは前編でも書きました。が、この辺についてももう少し詳しく聞いてみました。
デラックス版に収録されるフェイスタオル。そのデラックス版は290 x 203 x 82 mmのキレイな化粧箱に入っている
「VOCALOIDの開発元として、やはり音質の向上はどんどん進めていかなくてはなりません。そのために我々は2つの方向からアプローチをしています。ひとつは、データベース作りの改良、もうひとつは合成エンジンの改良です。データベース作りについては、クリプトンさんなどが、かなり工夫を重ねているという話は聞いていますが、任せきりではマズイでしょう。そのため今回のVY1で模索してきたものは、中間成果として発表する意味合いもあるのです。もしろん、この収録方法やデータベース構築手法については各ライセンシーさんにも公開していきますよ」と剣持さん。
その話からやはり気になるのは、「合成エンジンの改良」ということについて。これはどういうことなんでしょうか?
「合成エンジンの改良は社内では常に進めています。これはGUI部分ともセットとなっていますが、さらに音質を向上させるとともに、入力しやすい使いやすいものに改良しています。ただ、VY1においては、データベース作成方法は大きく変えたものの、エンジン部分は従来の製品とまったく同じVOCALOID2となっています。ただ、次のVOCALOID3の準備は進めており、近い将来発表できると思います。現時点でいつとは明言はできませんが、楽しみにしていてください」と次期バージョンのVOCALOID3について明かしてくれました。
もうひとつ気になったのがVY1のロゴです。一目見て、QY100やDX7など、いかにもヤマハというロゴデザインになっていますが、これを、なぜビープラッツが使っているのかという点です。これについては、ヤマハ研究開発センター 技師補の小山雅寛さん説明してくれました。
ヤマハ研究開発センター 技師補の小山雅寛さん
「ご指摘のとおり、QYやDXシリーズのロゴを調整して作っています。アルファベットは白抜きで数字は黒というルールに則っています。現在のヤマハ製品にこのタイプのロゴの製品はありませんが、VY1のロゴについてはヤマハからの許諾の元でビープラッツが使っています。もっとも、初音ミクをはじめとする既存のVOCALOID製品もみんなヤマハ製品がなんらかの形でデザインに入れてありますから、その意味では同じなんですよ。もっともmikiとLilyだけは入っていませんけれどね」
なるほど、そういわれてみればみんな何かしら入っていますね。
まずは、ベタ打ちでもキレイに歌ってくれるというVY1の製品の発売を待ちつつ、次のVOCALOID3にも大きな期待をしたいところです。