4年前に新たな楽譜作成ソフトとして誕生したSteibergのDorico。ゼロから開発されたDoricoは、非常に軽く、軽快に動くのが特徴のソフトで、毎年着々とメジャーバージョンアップを繰り返しながら、機能・性能をどんどん強化し、今やFinaleやSibeliusと並ぶ存在にまで成長しました。姉妹ソフトCubaseのブランド力も生かしつつ、2020年の年初には無償版のDorico SEもリリースされたことで、国内でも着実に浸透してきているといった印象です。
そうした中、5月20日、SteinbergからDoricoのメジャーバージョンアップが発表され、Dorico 3.5が登場しました。ラインナップは従来通り、上位版のDorico Proとエントリー版のDorico Elements。今回はどんな機能が強化されたのか、実際使ってみたので紹介してみましょう。
新機能の前に、Doricoの製品ラインナップを紹介しておくと、以下のようになっています。
Dorico Proクロスグレード 通常版
Dorico Proアカデミック版
Dorico Proクロスグレード アカデミック版
Dorico Elements通常版
Dorico Elements アカデミック版
クロスグレードというのは他社製品からの乗り換えを意味しており、具体的にはFinaleまたはSibeliusのフルリテール版(上位グレード版)の正規ユーザーが対象。残念ながら下位グレードのFinale PrintMusicやSibelius First、Sibelius Studentのユーザーはクロスグレード対象外となっていませんが、安価に乗り換えができるのがポイント。またDorico Pro各製品には、SteinbergのUSBドングルであるUSB-eLicenserが同梱されています。ちなみに今回からDoricoのバージョンのナンバリングはCubaseと同じく、x.5と0.5ずつ刻むようになったそうです。
Dorico Pro(左)とDorico Elements(右)
旧バージョンのDoricoを4月22日以降にアクティベーテョンした方は、Dorico 3.5への無償バージョンアップの対象となっているので、Steinbergサイトをチェックしてみてください。また旧バージョンDorico 1~Dorico Pro 3、Dorico Elements 2~Dorico Elements 3、Doricoo SE 3からのアップデートを希望する方はSteinberg Online Shopから、Dorico 3.5へアップデート可能です。
一方、エントリー版のDorico Elementsの機能制限は、以前とほぼ同じで以下の7つとなっています。
2. 浄書モードは非搭載
3. HALion Symphonic Orchestraは付属しない
4. キュー音符が記譜できず、キューパネルとポップオーバーは非搭載
5. divisi, ossiaが省略され、微分音は記譜できない
6. 浄書オプション、記譜オプション、再生オプション、フォントスタイルなどが非搭載
7.ギタータブ譜、コードダイアグラム、ハープのペダリングの記譜に一部制限あり
では、ここからはDorico 3.5になって搭載された新機能を順番に見てみましょう。
進化したギター記譜
Dorico 3になったタイミングでTAB譜が大幅に強化されたことは以前にもレポートした通り。そのTAB譜がDorico 3.5では、さらに多彩なギター記譜が可能となりました。具体的にはベンドの細かい調整ができるようになったり、ビブラートも詳細に調整可能になり、これまでよりも高いクオリティでの譜面作成が可能になりました。また曲頭にコードダイアグラムを並べて表記できたり、コードダイアグラムの垂直や水平が変更できるようになりました。
ラインエディター
今回のバージョンで40種類の平行、垂直ラインの記譜をサポートするようになりました。ビブラートや演奏技法の表記がより柔軟に行えるので、現代音楽の特殊奏法の表記など、より自由に幅広く使える優秀なツールが追加されています。
音価の前に音高を指定して入力
これまでのDoricoはノート入力の際に、デュレーション(音価)を選択してからピッチ(音高)を入力という順番でしか行えませんでした。しかし、Dorico 3.5からは入力の順番をその都度変更できるようになっています。多用する部分の使い勝手が向上したので、これまでよりもスピーディーに効率よく、柔軟性の高い入力が可能になりました。
通奏低音の記譜
17世紀初頭から18世紀半ばまでのバロック音楽で使用された数字付き通奏低音の記譜ができるようになりました。ショートカットによる簡単な入力が可能で、MIDIキーボードで和音を弾いて入力することもでき、数字の外観は浄書オプションから選択可能となっています。
進化したコンデンス機能
この譜面ではViolin1、Violin2と分かれているが…
コンデンシングを実行するとViolinの2つのパートがまとまる
Dorico 3から簡単に生成できるようになった、指揮者用のコンデンススコアがDorico 3.5では、さらに機能強化され、弦セクションのDivisiに対応しました。たとえば、Violin 1、2と分かれている譜表を集約し、譜表の数を各ページ減らすことで、より大きく表示させ視認性を向上させることが可能に。またワンクリックで指揮者用のコンデンススコアが作成できます。
VSTエクスプレッションマップの改良
VSTエクスプレッションマップが改良され、キースイッチとその他のパラメータの同時使用が可能になりました。これにより再生時の表現力を向上させることができるので、さらにクオリティの高いプレイバック音源を作ることができます。
MusicXMLの拡張
楽譜データを他の楽譜作成ソフトとやり取りする際に用いるMusicXML。最近では「AIきりたん」など、歌声合成の世界でもデータ入力手段としてMusicXMLが活用されるようになっています。今回のDorico Pro 3.5では、そのMusicXMLでインポート、エクスポートできる記号類が大幅に拡張されました。歌声合成に関する機能は従来から十分に備わっていたので、大きな変化はありませんが、パーカッションの書き出しの改良をはじめとする、ダイナミクス、符頭タイプ、拍子記号、テンポ記号……など、さまざまな要素の読み込み、書き出し機能が強化されています。
進化したユーザーインターフェース
記譜モードと浄書モードの2つのモードの背景のグラデーションを変更できるようになりました。シンプルなアップデート部分ですが、色を分けることにより、今どちらのモードを選択しているのかが、一目瞭然になっています。
Dorico Pro 3.5となって、より便利な譜面作成ソフトへと進化している
以上、Dorico 3.5の主な新機能を一挙羅列する形で紹介してみました。他社ソフトにない機能を搭載したりと、独自の進化もはじめたDorico。今後も進化があれば都度レポートしていきたいと思います。
【関連情報】
Dorico 3.5製品情報
Steinberg Online Shop
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