SteinbergがCubaseの姉妹ソフトとして展開する楽譜作成ソフト、DoricoがDorico 3.0からDorico 3.1へとマイナーバージョンアップしたタイミングで、Dorico SEという新ラインナップが登場しました。これは上位版のDorico Pro、スタンダード版のDorico Elementsの下に位置づけられるもので、Cubaseユーザーはもちろん、そうでない人でも無償で入手できるフリーウェアの楽譜作成ソフトです。
フリーウェアとはいえ、楽譜入力における一通りの機能を備え、Doricoの世界を十分に体験できるもの。もちろん、いわゆる試用版ではないので、日数制限もないし、セーブができないといったこともありません。「Cubaseは使っているけど、まだDoricoは使ったことがない…」という方も多いと思うので、まずはこれを試してみるというのもよさそうです。どんなことができるのかなど、チェックしてみましょう。
Steinbergから無料の楽譜作成ソフト、Dorico SEがリリースされた
ご存知の方も多いと思いますが、楽譜作成ソフトの世界では、これまでfinaleやSibeliusという2大巨頭がいたわけですが、ここへ3年前にSteinbergが参入し、Doricoをリリースしました。それから毎年メジャーバージョンアップを繰り返しながら、機能・性能をどんどん強化してきたことについては、これまでもDTMステーションで紹介してきました。
Dorico Proは機能アップ、性能アップを繰り返しつつ、現在3.1になった
Steinbergが開発したソフト、ということでCubaseユーザーからは連携性や互換性の面で期待の高いソフトでもあります。もっともDorico自体はCubaseから機能分離して発展したソフトというわけではなく、Cubaseとはまったく別の開発部隊が新たに開発したものであるため、直接連携するものではないのですが、同じSteinbergが開発しているだけにUIや音源機能などは少しずつ共通化を図ってきており、Cubaseユーザーにとっても扱いやすいソフトになっていることは間違いありません。
そのDoricoは上位版のDorico Pro 3、スタンダード版のDorico Elements 3があったわけですが、それに加えて、エントリー版であり無償配布となるDorico SE 3がリリースされたのです。
Dorico Elementsの下のラインアップに位置づけられるDrico SE 3
Dorico SE 3を簡単に紹介すると、これはDorico Elements 3の機能をほぼそのまま踏襲しながら、入力可能なパート数を2つまでに制限したというものです。逆にいうと、それ以外はDorico Elements 3とほとんど変わりません。
入力された楽譜を再生する際の音源として1500音色、約2GBものライブラリーを持つHALion Sonic SEも搭載しているので、これだけでも十分入手する価値があるのではないでしょうか?もちろんCubaseユーザーであればHALion Sonic SEを持っているはずではありますが……。ただし、Dorico Pro 3およびDorico Elements 3に収録されている音源、Soundiron Olympus Choir Microは入っていません。ここが、Elementsとの違いとなります。
記譜機能における各エディションの違いを現したものが以下の表です。
Dorico Pro 3 | Dorico Elements 3 | Dorico SE 3 | |
プロジェクト上のプレーヤー数 | 無制限 | 12 | 2 |
搭載テンプレート | 37 | 29 | 6 |
臨時記号 | 標準 / ダブル / 微分音 / カスタム | 標準 / ダブル | 標準 / ダブル |
小節番号 | 複数フォーマット | 一種類 | 一種類 |
小節反復記号 | 〇 | 〇 | 〇 |
小節線の種類 | 豊富に対応 | 縦線 / 複縦線 / 終止線 / 繰り返し線 | 縦線 / 複縦線 / 終止線 / 繰り返し線 |
音部記号 | 26 プリセット | 7 プリセット | 7 プリセット |
音符 / 休符のカスタムグルーピング | 〇 | ||
括弧のカスタマイズ | 〇 | ||
コードダイアグラム | フル | 限定 | 限定 |
コード記号 | 9 プリセット、カスタマイズ可能 | 1 プリセット | 1 プリセット |
コンデンシング | 〇 | ||
キュー | 〇 | ||
ストリングスの Divisi | 〇 | ||
ドラム譜 | 〇 | 〇 | 〇 |
強弱記号 | 〇 | 〇 | 〇 |
扇状連桁 / ステムレット | 〇 | ||
ギタータブ | フル | 限定 | 限定 |
ハープペダリング | フル | 限定 | 限定 |
調号 | フルカスタマイズ可能 | 最大 7 フラット / シャープ | 最大 7 フラット / シャープ |
テヌート / フェルマータ等 | 〇 | 〇 | 〇 |
歌詞 | 〇 | 〇 | 〇 |
符頭 | 30 プリセット、フルカスタマイズ可能 | 30 プリセット | 30 プリセット |
オクターブ線 | フルカスタマイズ可能 | 限定 | 限定 |
装飾音符 | 〇 | 〇 | 〇 |
Ossia | 〇 | ||
楽器毎に譜表の追加 / 削除 | 〇 | ||
ページ番号 | カスタマイズ可能 | 自動 | 自動 |
ペダル記号 | フルカスタマイズ可能 | 限定 | 限定 |
演奏技法 | フルカスタマイズ可能 | 220 プリセット | 220 プリセット |
リハーサルマーク | カスタマイズ可能 | 限定対応 | 限定対応 |
反復記号 | 〇 | 〇 | 〇 |
リズムスラッシュ | 〇 | 〇 | 〇 |
シングル / マルチトレモロ | 〇 | 〇 | 〇 |
テンポ記号 | 〇 | 〇 | 〇 |
無音程打楽器譜 | カスタマイズ可能 | 限定対応 | 限定対応 |
これを見ても、Dorico SE 3がかなりの機能を持ったソフトであることが十分理解できると思います。入力できるのが2パートとはいえ、Dorico Pro 3で作成した楽譜データであれば、何パート入力されたデータであってもDorico SE 3で全パート閲覧することは可能だし、それをそのまますべて印刷することも可能です。ただし、これをDorico SE 3でエディットすることはできない、という制限はあります。
2パートまでという制限はあるものの、機能的にはDorico Elementsをほぼ踏襲している
またDorico Elements 3もDorico SE 3も、Dorico Pro 3が持っている浄書モードは装備していません。そのため、装飾されたキレイな楽譜を作成することはできないので、そこはDorico Pro 3を購入してから……ということになりそうです。ちなみに、3つのエディションともインストーラ自体はまったく同じものを使用しており、ライセンスによって機能制限をかけている形ですね。
ところで、前述の通り、Dorico SE 3のリリースは、Dorico Pro 3.0がDorico Pro 3.1にアップデートされたタイミングだったわけですが、このマイナーバージョンアップでどんな機能が追加されたのかを簡単に紹介しておきましょう。
コードダイアグラムの設定機能が搭載された
まず1つ目としてピックアップしたいのがギターのコードダイアグラムの表記について。これまでフレットが垂直表示される形になっていて、多くの日本のユーザーにとっては違和感のあるものでした。そうした日本のユーザーの声が反映された結果、水平表示も選べるようになっています。
コードダイアグラムが垂直の場合
コードダイアグラムが水平の場合
一方、再生機能のほうも少しずつ強化されてきています。見た目にもCubase風な画面となっていますが、今回のタイミングで音の強弱を表現できるようになりました。これまでもベロシティはあったのですが、今回フォルテのアイコンをクリックすると現れるようになった強弱記号は、MIDIのDynamicsを表現するためのもの。これによりベロシティとは別に扱えるようになったのです。
MIDI再生機能においてDynamicsを設定できるようになった
そのほかDorico Pro 3になった際に追加されたコンデンシング機能もよりブラッシュアップされています。たとえば、コンデンシングした結果、上のパートと下のパートが同じ音になった場合、上下に旗が立つ形になっていましたが、「フレーズ全体でのユニゾンを許可」をすることによって、それが解除される形になりました。
コンデンシング方法をより細かく設定できるようになった
また、括弧付き符頭の表記において括弧を()という丸括弧にするか、[]という四角括弧にするかを選択できるようになるなど、細かなこだわりまで表現できるようになるなど、より融通の利く楽譜作成ができるようになっています。
もちろん、このDorico Pro 3.1はDorico Pro 3ユーザーであれば無償アップデート可能なので、ぜひ、すぐにでもアップデートしてみてください。
なお、先ほどのDorico SE 3の入手法ですが、Dorico SEのサイトに行き、「無償ダウンロード」ボタンをクリックし、指示にしたがっていけば手に入れることができます。Cubaseユーザーであれば、Steinberg IDというものを持っていると思うので、それでログインして入手してください。
Dorico SE 3はSteinbergサイトから入手できる
これまでSteinberg製品を使っていない方は、ここでSteinberg IDというのを作成してからになります。メールアドレスさえ入力すればすぐに登録できるので、その手続きを行ってください。
登録が完了するとメールが届くので、それに従ってインストール、アクティベーションを行う
これによって、そのメールアドレスにアクティベーションコードとダウンロードリンクが記載されたものが届くので、これでインストールができるはずです。
もちろん、このDorico SE 3が気に入り、2パートでは物足りなくなったらDorico Elements 3さらにはDorico Pro 3へとアップグレードすることもできますから、まずは一度試してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
Dorico SE 3製品情報・ダウンロード
Dorico 3製品情報
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