ゲーム機風小型DAW、KDJ-ONEがついに復活!Kickstarterで販売開始

3年ほど前、DTMステーションでも何度か取り上げて話題になったゲーム機風の小型DAW、KDJ-ONEを覚えていますか?2012年2月に予約販売を開始したものの、ハードウェア的なトラブルが解消できず、プロジェクト中断という残念な結果になっていました。

しかし2年半の時を経て、完全に復活したようです。ハードウェアを一から設計し直し、デザインも一新。新しい機材として誕生し、間もなくクラウドファンディングという形で販売が開始されるそうです。実際どんな製品になったのか、今度こそ本当に発売されるのかなど、開発元であるサイバーステップ株式会社(東証マザーズ上場)に伺って話を聞いてきました。

装い新たに誕生したKDJ-ONE、間もなくキックスターターで販売開始

もう2年以上前のことなので、ご存じない方も多いと思うので、改めてKDJ-ONEについてまずは簡単に紹介しましょう。これは日本のオンラインゲーム開発会社であるサイバーステップが開発した手のひらサイズのハードウェア。シンセサイザであり、シーケンサであり、サンプラーであり、ミキサーも搭載と、まさにDAWといえる機材なのです。


5.0インチのタッチパネル液晶を搭載し、174.2mm×115.5mm×29.5mmというコンパクトサイズなKDJ-ONE
写真は3Dプリンターで作成した開発中のバージョン  

内部には大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載し、連続で10時間の使用が可能。通勤・通学などでの移動時はもちろん、海外へ行く飛行機の中で曲作りをしていても、10時間あれば、フルタイムで作業することができますよね。

特徴的なのは本体に搭載されたミニ鍵盤です。やはりハードウェア機材だけに、ベロシティーセンシングにも対応しており、しっかりした演奏、レコーディングも可能になっているほか、USBで手持ちのMIDIキーボードと接続すれば、それを利用できるのも便利なところです。


2オシレーターで構成される強力なシンセサイザー 

さらに強力なのが、このKDJ-ONEに搭載されているシンセサイザーの存在です。2つのオシレータ+ノイズジェネレータを元に、10のアルゴリズムで音作りが可能。20エフェクタ、7フィルタ、4基のモジュレータを備えるなどシンセ好きにとっては、堪らない音源になっており、ここにはもちろんステップシーケンサも搭載されています。


タッチ操作可能なピアノロール画面 

しかも6トラック・モーションシーケンス対応の高機能パターンシーケンサを搭載するとともに、ループレコーディング、ステップレコーディング、ピアノロール編集ができるなど非常に充実した内容になっているのです。


左右に1.0W+1.0Wのスピーカーが搭載されている(製品版はメッシュのカバーで覆われる予定) 

まあ、こうした基本的な機能、考え方は以前と変わっているわけではないのですが、なぜ2年以上のブランクが空いてしまったのでしょうか?


KDJ-ONEを開発したエンジニアでもあるサイバーステップの取締役、大和田豊さん 

お待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。以前、量産寸前のところまでいったののですが、どうしてもバッテリー寿命の問題を解決することができず、やむなくハードウェアの設計をやり直すことにしたのです」と話すのは、KDJ-ONEの開発を行ったサイバーステップの取締役である、大和田豊さん。

そう当時はIntelのCPUを使ったハードウェアになっていたのですが、想定していた消費電力まで下げられなかったとのこと。そこで、ARM系のCPUに置き換えて、まったく新規にハードウェアを開発し直し、この新たにできあがったKDJ-ONEにはARM Cortex-A8という1GHzで動作するCPUを搭載したそうです。これによってバッテリーでの実駆動時間を10時間にまで延ばすことができたんですね。


KDJ-ONEの各ボタンの役割。右スピーカー下の銀色のノブは360度回転するローターリーエンコーダー 

5.0インチ WVGA(800×480)のマルチタッチ対応液晶パネルを搭載し、デザインも新たになったKDJ-ONE。間もなく購入できるとのことなので、ワクワクしますが、やっぱり気になるのは価格と発売時期です。この点について、同社・代表取締役の佐藤類さんに聞いてみました。


Kickstarterでの販売を決めたという、サイバーステップ・代表取締役の佐藤類さん

新しい製品を出して世の中を驚かせたい、楽しくしたい、という気持ちが強いため、今回はクラウドファンディングのKickstarterを用いて11月20日より“購入希望者を募る”という形での販売を予定しています。原価割れはしてしまいそうですが、とにかく多くに人に使っていただきたいので、出来る限り安価な価格での販売を予定しています。価格はKickstarterの開始ギリギリまで考えようと思っています

最近、こうしたクラウドファンディングを用いた機材の販売形式が増えてきていますよね。私もこれまでOTOTO、mi.1、C.24など、いろいろなDTM系機材を購入してきましたが、KDJ-ONEはかなり大きな話題になるのではないでしょうか?


佐藤さん(左)、先日のLAでSilpknotのDJ Starscreamさん(中央)と記念撮影

先日、Kickstarterの準備ということもあって、ロスアンゼルスに行ってきたのですが、その際、SlipknotのDJ Starscreamさんに丸一日KDJ-ONEのプロモーションビデオの撮影にお付き合い頂いたんです。このKDJ-ONEのプロトタイプを見せたら、非常に気に入ってくれて、何時間も使っていました。曲作り用としてはもちろんですが、ライブ用に使えると評価してくれたのがサンプリング機能です。ライブ会場での音をサンプリングし、それをその場で編集して曲に組み込んでいったら、絶対にウケる、と使い方まで提案してくれました」と佐藤さん。


プロトタイプの実機裏側にはDJ Starscreamさんの直筆特性サイン 

なるほど、いろいろな使い方が考えられそうですよね。私、個人的にはやはり持ち歩き可能なDTM環境であるというのが大きな魅力だな、と思っています。このシンセサイザ機能については、改めて詳しく紹介しようと思っていますが、音源として非常に優れているし、6トラックあるシーケンサ機能も非常に使いやすくなっています。

また、サンプラー機能は、いわゆるサンプリングに留まらず、レコーディングに利用できてしまうのが大きなポイントです。1プロジェクトあたりの最大オーディオ容量が1GBあるので、十分に録ることができるんですよね。


ホストとして機能するUSB 2.0端子(左)と、PCとの接続に利用するmicro USB端子(右) 

もちろん、すべての作業をKDJ-ONEで行っていくこともできますが、うれしいのはPCと自在に連携できるという点です。KDJ-ONEにはUSB 2.0のホスト端子とmicro USB端子の2つが搭載されており、micro USB端子を使ってPCと接続すれば、直接データのやり取りができるし、USB 2.0端子にUSBメモリなどを接続すれば、ストレージとしてデータを保存することができるし、それをPCに持っていくこともできるそうです。

しかもPCと接続すると、PCのDAWから見て、KDJ-ONEをアウトボードの音源として利用することも可能なので、活用法も大きく広がりそうです。


入出力端子にはPhone(左)、Mic/Line in(中)、Line out(右)の3つが用意されている

このKDJ-ONEをどう利用するかはもちろんユーザー次第。すべてスタンドアロンで利用するのもいいし、PCと連携させて使うのも面白そうです。またUSB端子にWiFiデバイスを接続すれば、SoundCloudへのアクセスといったこともできるようになりそうです。サイバーステップとしてもハードを出して終了というわけではなく、KDJ-ONEの付加価値を高めるために追加ソフトウェアの開発やコンテンツ・サービスの拡充もしていくとのことなので、この辺にも期待したいところですね。

前出のSlipknotのDJ StarscreamさんがKDJ-ONEを使っているビデオが、ちょうど本日、YouTubeへもアップされたので、これをご覧になると音の雰囲気なども確かめられると思いますよ。

このKDJ-ONEについては、また新しい情報が入ったらお知らせしていこうと思っています。
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Commentsこの記事についたコメント

8件のコメント
  • 根本拓海

    とても興味があります!是非キックスタートの時に手に取ってみたいと思っています。
    これは文章を読んで把握できているのか分からないのですが、これはモバイルDAW的なもので、中に音源が入っている(たとえるならばポケット版Cubaseで中にHALionも入ってる)と捉えるのが正しいのでしょうか。それともシンセサイザーみたいなもので、たまたま複数プロジェクトによる録音が可能になったものと捉える方が正しいのでしょうか。
    前者とかでしたら自分は通学時に電車の中にいるだけで一時間強もかけているので物凄い画期的な機材に、作曲環境になるなと感動すら覚えています。
    是非これからも情報が入ったら教えてください!!

    2014年10月28日 10:23 PM
  • 藤本健

    根本さん
    いわゆるオーディオレコーディングに使う機材ではなく(長時間サンプリングによってレコーディングもできるのですが)、MIDIシーケンサが中心であり、それに使える音源が入っているので、どちらかというと前者だと思います。ただし、違うシンセを組み込んで入れ替えるという発想のものではないので、シンセにシーケンサ機能(録音機能ではなく)が搭載されたものと考えてもいいかもしれませんね。ただ、そのサンプラー機能を備えたシンセ音源なので、かなり自由度は高く使えますよ。

    2014年10月28日 11:40 PM
  • 根本拓海

    成る程。
    てことは打ち込みだけで大まかなものを作るなどするならばぼぼこれ一つで間に合ってしまうってことですよね。
    これ一つでほぼ打ち込み、家に帰ったらパソコンに出力して音の差し替え等等…
    俄然更に楽しみになってきました!
    お早い返信ありがとうございました!

    2014年10月29日 12:35 AM
  • たうざぁ

    ヤマハが去年くらいにQY100をとうとう販売終了にしてしまっているので、後継機として期待しています。
    (QYについてはむしろ今までよく売り続けてくれたという方が正しいのですが)
    ただ問題は価格ですね。最初に発表された時と比べ、タブレットの性能は飛躍的に上がり
    価格が下がっているので、売りとなるハードウェア入力部分(現状見た目がいまいちなのは
    3Dプリンタによるプロトタイプだからだと信じたいです)にどれだけの値段を払えるかという話に
    なるでしょうが。
    (鍵盤+コントローラの外付け品も今は安価でいろいろ出てますし。)
    なお個人的には、鍵盤はせめて2オクターブ欲しいところですが…(QYも2オクターブありました。)
    調によってはこの配置だとオクターブキーをフル活用しないといけなくなりそう。

    2014年11月2日 5:28 AM
  • たろう

    ヤマハのQYシリーズみたいですね。
    面白いとは思うけど価格が問題だと思う。
    あとデザインも。
    このボディの厚さだと持ち歩きには不便かな。
    ヤマハやコルグが作ってくれるのが一番いいんだろうけどね。

    2014年11月5日 9:40 AM
  • CS歴11年

    2008か9年あたりに発売予約だしたけど予約入ったのたった6件でその時が7万4000だっけ販売額
    先行予約で1万値引きで6万4000
    あまりの人気のなさに販売取りやめて今鬼斬(PC70万ダウンロード、でもプレイヤー数30人
    PS4版が8~10人)、GA8~12人、C21が15~33人、CBが180~249人とまずい状況で
    急遽KDJでキックスターター支援に出た
    今まではゲームのガチャが回されたが誰も回さなくなってガチャだけで貯めた貯蓄も
    鬼斬の広告宣伝費、舞台化、コラボで消え持って夏までと言われてる状況
    ここはCSにとって正念場、過去融資断られ続けて苦労した(社長自叙伝 販売後10冊も売れず
    今は無料PDF公開)※これは社長自らブログに書いていた数字
    今は販売1週間で258個売れたと、世界で
    この先どうするんだろうと・・・
    しかも値段4.7万、大幅値下げでの売り込み
    これが音楽ブーム残ってる2005くらいだったら売れてたかもしれない
    過去に作ったものを今発売なだけにどうも古いのが残念
    鬼斬も開発に2年かかったと、でも実際中身は昔なら通用したけど今のゲーム
    ありふれてる時代では「いつの時代のゲームだよ」といった具合
    色々残念だ

    2014年12月15日 1:29 AM
  • Bonanza

    KDJ-ONE の Kick-Starter 出資しました。
    まずは、第一目標達成は良かったです。
    やはり、日本ではQYシリーズと比べられ
    海外では、OP-1 と比べられているのが面白いです。
    私は、QYシリーズは中に入っているお仕着せにパターンがイヤで
    OP-1は高価でちょっと尻込みして両方とも手にしていません。
    DS-10 もシーケンサが使いづらそうで見送っていてかなり臆病なたちです。
    今回は、一も二もなく申込みました。
    非常に自由な感じとクォリティの高さが伝わってくるようで。
    普段はCubaseで曲作りをしていますが、何か共通する風通しの良さを感じました。
    一つ心配なのが、Kick-Starterサイトのやり取りです。
    MIDIアウトにこだわっている人が数人いるようで、制作サイドも搭載を考えているようです。
    あと、DACのスペックにやたらこだわっている人も。
    こちらとしては、USBもあるしここでムリはしてほしくないな、という感想です。
    サイトが英語なので日本人の書き込みが少ないようです。
    日本人が作っているからとか、日本人が一番買うからという理由で
    日本のユーザばかり大事にするのはどうかとは思いますが
    ちょっと一部の海外ギークの言うことを信用しすぎるのはどうかと。
    この大きさでこのCPUで、24bitの高品位をねだるなんて馬鹿げていると思うし
    16bit でクリエイティブなものを作れないとは思わないんですよね。

    2014年12月20日 3:34 AM
  • 藤本健

    Bonanzaさん
    ご意見ありがとうございます。CyberStepの社長、佐藤さんにお伝えしておきますね!

    2014年12月20日 6:04 PM

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