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障害のある子どものための楽器アプリ、DropTone開発に向けたクラウドファンディング実施中。音源にはKORG提供の15音色を搭載

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クラウドファンディングサイト、READYFORにおいて、2025年5月16日まで「みんなが演奏を楽しめるインクルーシブな新しい楽器~DropTone」の支援者募集が行われています。このDropToneは障害のある子供たちでも演奏を楽しめるようにするiPad用のアプリで、これまで障害のある子どもたちに向けた数々のアプリを開発してきたNPOであり、教師や元教師などが中心に活動しているドロップレット・プロジェクトが開発を進めているものです。

障害のある子どもたちも、みんな音楽は大好き。でもさまざまな障害によって、演奏することができない子どもがいっぱいいるのが実情です。そうした子どもたちに演奏の成功体験を積んでもらい、自己肯定感を育んでもらおうというのが、この楽器アプリ、DropTone開発の狙いです。おもちゃではない、ホンモノの楽器の息吹を子どもたちに体験してもらうために、KORGから音色提供をしてもらい、それを搭載したアプリを開発しているとのこと。さらに、このアプリをより多くの子どもたちが活用できるようにするためのスイッチインターフェイス「ハーモニー8」なるものも開発中。いずれも開発にかなりの資金が必要になるため、支援者を募集しているのです。先日、このドロップレット・プロジェクトの代表である青木高光さんにオンラインでインタビューし、DropTone開発の背景や、その狙いなど伺ってみました。

障害のある子どもたちに演奏の楽しさを体験してもらうアプリ、DropToneの開発支援を募集中

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教員仲間が作ったボランティアグループが元となったNPO

--まず、今回のクラウドファンディングを行っているNPO法人、ドロップレット・プロジェクトとはどんな団体なのか教えてください。
青木:私たちは、障害のある子どもたちのコミュニケーション支援について研究している教員仲間が作ったボランティアグループからスタートしています。とくに発語のない子供たち、しゃべれない子どもたちが絵カードを使って自分の気持ちを表現したり、食べたい物の絵を指さしたり、どこが痛いとか、嬉しい、悲しいといった感情を伝える取り組みをしてきました。そのシンボルが現在2,555個あるのですが、それらを使ってiPadでシンボルをタッチすると音声が出る、DropTapというアプリを開発しました。これを無償提供したということもあり、現在GIGAスクール端末に100万本インストールされている、という実績を持っています。

シンボルを利用して障害のある子どもたちが表現をできるようにするアプリ、DropTap

--そのドロップレット・プロジェクトで今度は障害のある子どもたちに向けた楽器アプリを作る、ということなんですね。
青木:肢体不自由の子にとっては、学校でよく使われる鍵盤ハーモニカやリコーダーなどの演奏が難しいことは、想像に難くないと思います。また知的障害のある子の中には、鍵盤と音階の結びつきの理解が難しいため、メロディーを奏でる楽しさを味わえない子がたくさんいます。さらに発達障害のお子さんの中には、手指を思ったように上手く使えない子がいます。そのため音楽は大好きだけど、楽器を弾くことができない子どもたちがいっぱいいるんです。そこで、そういう子供たちが簡単に演奏できるシステムを作ろうと、DropToneという楽器アプリの開発に取り組んでいるのです。

NPO法人ドロップレット・プロジェクト代表の青木高光さん

--ということは、先生たちがみんなでアプリ開発を行っている、ということなんですか?
青木:もともと学校の教員をしながらプログラミングをしていた仲間がいたのですが、現在は教員を辞めて専属のプログラマーとして開発を進めています。

さまざまな障害のある子どもたちが演奏できる楽器を

--そのDropToneについて、もう少し具体的に教えてください。
青木:障害のある子どもたちは、指がうまく動かせないとか、どこにドがあって、レがあるか分からないといったことから、既存の鍵盤楽器やリコーダーのような楽器は使いにくいし、仮に音が出せてもミスタッチが多くなり難しいのです。頭の中では演奏したいとおもっていても、余計な情報であるとか、操作の難しさからなかなかうまくできません。そこで、iPadの画面上に、その子が弾きたい音であるとか、必要な音だけを自由に並べられるようにしたら、演奏することが可能になります。たとえば、左から順番にタッチしていけばメロディーが弾けるとか、みんなで合奏する際に、頭の部分で和音ボタンを押せば和音がなる……など、その子に合わせたセッティングさえしてあげれば楽器演奏が可能になる、という考え方のアプリです。つまり出したい音とか楽器の音色、その音階を自由に配置できるアプリがあればいいのではないか、ということでアイディアを出し合いながら設計しているのです。

DropToneでは、画面をタップして演奏も可能

--そうしたものは、やはり現状の教育現場では存在しないんですね。
青木:肢体不自由なお子さんは、そもそも指をうまく動かせないので、教育現場ではスイッチを結構使うんです。スイッチを押すと、その先に接続されるiPadなどを通じてミキサーが回るとか、音楽が鳴るなど…。実際、そんな機材が販売されているのですが、やはり音楽演奏であれば、最低ドレミファソラシドの1オクターブくらいは鳴らしたい。そこでそうしたことを可能にする「ハーモニー8」というハードウェアの開発も併せて行っています。もっともハーモニー8は必ずしもドレミファソラシドと演奏するわけではなく、左から順番に押していけば、なんらかの演奏ができるなど、それぞれの子どもに合わせた設定ができ、どんな障害のある子でも使えるような柔軟性を持たせています。たとえばドラムを割り当てて、バスドラ、スネア、ハイハット…のようなこともできますね。

画面上にパッドを配置してドラムを鳴らすといったことも可能

順番にタップしていけば曲の演奏ができる

--画面操作だけでなく、こうした物理的なスイッチがあることで、さまざまな障害のある子どもに対応できる、というわけですね。
青木:もっとも、このハーモニー8そのものを誰もが操作できる、というわけではありません。普段の教育現場などでは、たとえば棒状になっていて、それに指先をちょっと触れるとスイッチ入力できるもの、丸型の大きなスイッチでバーンと叩くと入力できるものなど、その子に合ったスイッチが必要になります。そこで、ハーモニー8は8つならんだボタンの下に3.5mmのジャックが用意されており、ここに別のスイッチを接続して使う、といったことも可能にしています。ちょうど、そのプロトタイプを使ってもらった動画が以下のものです。障害のあるお姉ちゃんが指先に付けたスイッチで下に表示されているドとミの和音を鳴らし、妹さんがハーモニー8でドレミファソラまで弾いて合奏しています。

--なるほど、画面上でユーザーが配置していくこともできるし、ハードウェアとも連携できるなど、自由度が高いわけですね。
青木:はい、シンプルに木琴のようにドレミファソラシドと並べることもできるし、ドラムセットのようにして打楽器を鳴らすこともできます。また、順番に指でなぞっていけば演奏ができるようにもなりますし、簡単にコード演奏をするといったことも可能です。

iPadに接続するハードウェアスイッチとして開発中のハーモニー8

KORGから提供してもらった音源を実装

--ところで今回KORGから音源を提供してもらったとのことですが、これはどんな経緯だったのですか?
青木:DropToneの原型のようなものは5年くらい前から考えていたのですが、楽器メーカーに音源の提供をお願いしたいと考えた際、そうした窓口が用意されていたのがKORGさんだけだった、というのがお話させてもらったスタートでもありました。最初は音源チップ的なものを提供いただけないかと相談したのですが、ハードウェアだと開発費が非常にかかるので難しい、iPadのアプリにしてみたらということで再提案させていただいたのです。そんな経緯で、5年前から少しずつ相談させていただいていました。

DropToneにはKORG提供の音源15音色が搭載される

--以前GIGAスクール構想に対応した音楽制作Webアプリ、カトカトーンが全国の小学校~高校に無料で提供開始。音源はKORG Gadgetがベースにという記事でカトカトーンという記事を紹介しましたが、それとは関係あるのでしょうか?
青木:カトカトーンについてはよく知っていますが、DropToneはそれとはまったく関係ありません。またKORG Gadgetの音源を…というわけではなく、KORGさんからは「何でも好きなもの15音色を選んでください」とおっしゃっていただけたんです。そこで、KORG Moduleの音源であったり、TRITONの音源、TRITON Extreamの音源など、贅沢に使わせていただきました。音源的にはTRITONやTRITON Extremeのものだけれど、M1やMS-20を思わせるものなど、ちょっと私の趣味も入って選ばせていただいています。個人的には趣味でシンセサイザを触って来たので、とても楽しいところではありました。

音色 KORG Module TRITON TRITON Extream
PIANO Natural Grand   A010 Aggressive Pad
Guitar/Plucked   A 037 Wet Dist. Guitar  
Bass   B 062 E.Bass Pick 1  
Strings/Choir Strings    
Brass Brass Ens    
Mallet     J095 Vibraphone
    K047 Marimba
Wind     B016 A Real Flute
Drum   A 036 Stadard Kit  
Organ Full Organ 1    
Guitar/Plucked     B034 Nu A.Guitar
Bass   C 102 Reso Bass  
Brass     G061 French Horn
Wind     D008 Orch.Oboe Vib 1
スクロールできます

--それが、この画面にある15種類の楽器というわけですね。
青木:はい。KORGさんから提供いただいた15種類の音に、我々のほうでシンボルというかアイコンを描いて割り当てています。やはり、このようにホンモノの楽器の音で演奏できるということを、多くの子どもたちにも経験して、楽しんでもらいたいと思っています。クラウドファンディング開始後、KORGさんからもXで発信していただき、ありがたく思っております。

DropToneが完成したらAppStoreで販売する予定

--最後に、このDropToneが完成したら、どのような形で配布されるのでしょうか?
青木:これ自体は、ごく普通にAppStoreにおいて、教育向けのカテゴリーのアプリとして販売させていただく予定です。クラウドファンディングで開発におけるイニシャル費用などを集めさせていただきますが、それですべてを賄うのは難しいため、おそらく1,500円といった価格での販売となる予定です。クラウドファンディングで集めるのはプログラミングの費用というのもそうですが、ハードウェアの生産にかなりのコストがかかるので、そちらにも結構割り当てる形になるかと思います。ぜひ、多くの方にご支援いただけると嬉しいです。

--ありがとうございました。

DropToneのクラウドファンディングは5月16日まで

【関連情報】
DropTone支援サイト(READYFOR)
ドロップレット・プロジェクトサイト

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