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パンチを出したい、しっとりさせたい…ボーカルを思いのままに調整できる夢のプラグイン、VO-TTが誕生

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「ボーカルをいかに、いい感じに仕立て上げるか」はDTMにおける永遠のテーマだと思います。もちろん一言でいい感じといったって、ボーカリストによって方向性は違うし、それがポップスなのか、ロックなのか、バラードなのか……などによっても仕立て方は変わってきます。DTMerのみなさんは、コンプを使ったり、EQを使ったり、ディエッサを使ったりと、いろいろなエフェクトを使いながら自分なりの調整を工夫されていると思います。

そうした中、かなり自由度高くさまざまな方向で、強力に、そして簡単にボーカルサウンド作りができるエフェクト、VO-TTThree-Body Technologyからリリースされました。実はこれ、Ableton Liveのプリセットとして有名な、バキバキサウンドを作るOTTOver The Top)の考え方をベースに、ボーカル専用に作り上げるとともに、すべてのDAWで利用可能にした画期的なエフェクト。生身のボーカルに対してはもちろん、Synthesizer VやVOCALOIDといった歌声合成サウンドに対しても効果的に使える、超強烈なエフェクトプラグインなんです。価格は29ドル(SONICWIRE価格で5,159円:2025年4月8日現在の価格)と非常に手ごろなのに、4月13日まではさらもイントロプライスということで19ドル(3,380円)と非常に安くなっています。ボーカルを扱う人であれば絶対に持っておくべきプラグインなので、どんなものなのか紹介してみましょう。

Three-Body Technologyよりボーカルプロセッサ、VO-TTが誕生

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VO-TTの元となったAbleton Liveで著名なOTTとは

今回登場したVO-TTのベースになっていると思われるのが、Ableton LiveのMultiband Dynamicsプロセッサのプリセットと知られるOTT(Over The Top)です。とくにEDM系では大人気のOTT、「OTTを使いたいからAbleton Liveを使っている」という人もいるくらいで、これを通すだけでド派手なサウンド、バキバキなサウンドに仕立て上げるものです。

Ableton Liveに収録されているOTT

ベースやドラムに使ってもいいし、ギターやシンセなどに使ってもOK。またLow、Hightの周波数を軽く調整するだけでも、ドラスティックにサウンドが変化するので、使っていてとても楽しいというのもOTTの魅力の一つ。

ただし、Ableton Liveの内蔵エフェクトという位置づけだからほかのDAWで使うことができないし、楽器用としてはいいけれど、ボーカルに使うとすぐに破綻してしまうなど、使い道が限られているというのも一つのネックではありました。

Three-Body Technologyがボーカル専用に作り上げたVO-TT

そのOTTのアルゴリズムを元にして、ボーカル専用としてまったく新たに開発したのがVO-TTです。これは究極の32バンド・パラメトリックEQプラグインとして多くのプロユーザーが使うKIRCHHOFF-EQや、「ギター経験のなくても本気のプレイができるメタル系・超ギター音源、Heavier7Stringsがスゴイ!」という記事などでも紹介したメタル系ギター音源のHeavier7Strings、さらには「北京のベンチャーが開発。AIで1073やAPI Ch Stripなどビンテージ機器を完全に再現する脅威のプラグイン、Deep Vintage」、「独自のAI技術でNeve、API、Pultecなどのビンテージ機を完全再現するDeep Vintageがさらに進化。ラインナップは12種類に」などで紹介したDeep Vintageなど、数々のプラグインを開発してきたThree-Body Technologyが新たに開発したプラグインです。

実際そのVO-TTを使うとどんな効果があるのか、まずは以下のビデオをご覧になってみてください。

このVO-TTを通すだけで、ボーカルの雰囲気がガラリと変わるのがわかると思います。基本的にはボーカルトラックにインサーションの形で入れるだけ。それによって、歌声が大きく変わるのです。

実際試してみたところ、人間の歌うボーカルはもちろん、先日リリースされたSynthesizer V2をはじめとするAI歌声合成、さらにはVOCALOIDや初音ミク NTなど音素合成タイプの歌声合成であっても、それぞれにマッチした形で歌声を調声し、幅広いボーカルを作り出すことが可能です。

12種類のスタイルでボーカルを目的の歌声に

さきほどのビデオにもあったとおり、VO-TTにはさまざまな使用場面に合わせた12種類のスタイルが用意されており、それらのボタンを押すだけで、そのボーカルの雰囲気がドラスティックに変化します。

VO-TTに用意されている12種類のスタイル。ボタンを押すだけでサウンドが大きく変化する

デフォルトはCleanで、Bright、Warm1、Soul1、Pop、EDM……と12種類あるわけですが、これらのスタイルを選択すると、ジャンルに応じた歌声に調整されるのですが、ここで重要になるのは、これが単なるプリセットというわけではない、という点。実は、画面に表示されていないパラメータが数多くあり、それらが各スタイルを選択することで変わることによって、歌声を作り出しているのです。実際、スタイルを切り替えても、画面上にあるノブはまったく変化しません。

まずはスタイルを選んでから、各パラメータを調整していく形になります。

5つのパラメータで好みの歌声の方向へに

ここで左上のボタンをクリックするとメインパネルの下に5つのパラメータが表示された画面が現れます。再度クリックするとその表示された5つのパラメータを右側に持っていくことも可能です。どちらでも使いやすい形を選べばOKです。

画面下に5バンドのパラメータを表示

この5つのパラメータは以下のような意味を持っています。

5バンドのパラメータを右側に表示

Air(エアー) シビランス(歯擦音)、ブレス(息づかい)、エアリーな質感などの高周波数帯
Pres.(プレゼンス) 明瞭度、定義、アーティキュレーションに貢献する中高周波数帯
Clear(クリア) ディテール、明瞭度、ボーカルの精度を提供する中音域帯
Warm(ウォーム) 豊かさ、滑らかさ、フルなボーカルトーンを加える低中音域帯
Body(ボディ) ボーカルに深み、豊かさ、しっかりとした基盤を提供する低周波帯

基本的には周波数帯ごとに5つに分かれている形ですが、それぞれ左側にボタンがあって、ON/OFF設定することが可能です。またS=ソロ、M=ミュートボタンを使って、その帯域のみにしたり、その帯域完全にカットしてしまうといったことも可能です。さらに、右側にノブがあり、通常は中央の0.0dBとなっていますが、それを強めていったり、弱めていくことも可能。

これらを使って極端にAirを強くするとか、Bodyを消してしまう……といった操作をすることで、VO-TTでの音作りの中身が見えてくると思います。

4段階で処理を行うアルゴリズム

さらにVO-TTの仕組みに入っていきましょう。先ほどのAir、Pres.、Clear、Warm、Bodyの各周波数帯域は、4つの処理段階を備えています。

各バンドごとに4つの処理段階がある

 

この図を見ると分かるとおり、左からExpander、Upward Compressor、null、Compressorという4段階。それぞれ、以下のような意味を持っているのです。

Expander 最も静かなサウンドを減衰させてノイズを低減します
Upward Compressor 過度に静かなボーカル部分を目的のダイナミックレンジに戻すためブーストします
Null この段階では処理は適用されません。各周波数帯域でカスタマイズできる目的のダイナミックレンジの境界として機能します。
Downward Compressor 過度に大きなボーカル部分を目的のダイナミックレンジに戻すため減衰させます

これらの処理段階は連携して動作するようになっており、各周波数帯域の信号が目的のダイナミックレンジ内に確実に収まるように調査されています。そして各周波数帯域ごとにそうした処理を適用し、出力バランスを調整することで、スペクトル全体で安定しバランスの取れたサウンドになる、というのがVO-TTのシステム。

先ほど、12種類のスタイルを切り替えてもノブの設定は変わらないといいましたが、実は、この4段階の設定は切り替わるようになっています。そしてユーザーは各周波数帯ごとに帯グラフ的に表示された部分を左右にドラッグすることで、ある程度バランスを調整することも可能です。

また全バンド共通で、Expander、Upward、Downwardパラメータで調整して音作りをすることも可能になっています。

Windows/Macの各プラグイン環境で動作。試用版も用意されている

このように、仕組み、動作原理などはちょっと難しく、完全に理解するのは簡単ではなさそうですが、前述の通り、12種類のスタイルを選択の上、5つのバンドを少し調整するだけ、かなり直感的な歌声作りができるので、とにかくボーカルの音作りという意味では非常に重宝するプラグインです。

動作環境はWindowsのVST2、VST3、AAX、MacのAU、VST2、VST3、AAXと、現行のほぼすべてのプラグインプラットフォームに対応しているので、どんなDAWであっても利用可能です。

価格は前述のとおり29ドルと安く、しかも5月8日までは19ドルというイントロセールが実施中なので、とにかく急いで入手しておくことをお勧めします。

そうはいっても、やっぱり試してからにしたい、という慎重派の方にはトライアル版も用意されているので、いったんこれを使ってみてから……ということも可能です。こちらのリンク(https://www.threebodytech.com/en/products/vott#lm6)から入手可能です。

トライアル版の場合、DEMOの表示がされるとともに1分に2秒のミュートがされる

ちなみに、このトライアル版は、期間的な制限はありませんが、1分間に2秒のミュートが実行されて音が途切れることと、セーブ/ロードの無効化がされること、そしてVO-TTの画面上に「DEMO」という表示があることで、音においては製品版とまったく同じように試すことができるので、念のため…という方はこちらで確認してみてください。

【関連情報】
VO-TT製品情報(Three-Body Technologyサイト:英語)
VO-TT製品情報(SONICWIRE:日本語)
VO-TTトライアル版

【価格チェック&購入】
◎Three-Body Technology ⇒ VO-TT
◎SONICWIRE ⇒ VOTT

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