サンプラーエンジンKONTAKTシリーズを開発したNative Instruments社の元プロダクトマネージャー兼エンジニアであるYaron Eshkarさんと、20年を超える業界経験を持つUI兼サウンドデザイナーのFernando Abreuさんが、2015年に設立したOCEAN SWIFT SYNTHESIS社より発売された「PORPHYRA HYBRID」(17,798円税込)が、今年1月から国内販売がスタートしました。イスラエルに拠点を置くこのメーカーが開発したPORPHYRA HYBRIDの特徴は、200種類のウェーブテーブルと500種類のサンプルをブレンドすることで、リッチで質感豊かなパッド、リード、アトモスフェリックなテクスチャーまで、幅広いサウンドデザインが可能という点。
また自身のオーディオファイルのインポートも可能となっており、さらにウェーブテーブルとサンプルソースのミックスはUI上で左右に分けられているので、DJ感覚で直感的に操作することができます。この音源は、無料でゲットできるKONTAKT PLAYER 8上で動かすことができ、KONTROL MK3を使っている場合、各パラメータが自動的にノブにアサインされます。また、Netflixで配信中の作品「西部戦線異状なし」にも携わった作曲家兼サウンドデザイナーのによるプリセットやサンプルコンテンツも収録。映画音楽やゲーム音楽など、没入感のあるサウンドを求めるクリエイターにも最適な音源となっています。そんなPORPHYRA HYBRIDを実際に試してみたので、紹介していきましょう。
無料版KONTAKT PLAYER 8で動かすことのできるシンセ音源PORPHYRA HYBRID
PORPHYRA HYBRIDは、冒頭にも書いたようにKONTAKT PLAYER 8上で使うことのできる音源。ダウンロードもNative Accessから行うようになっています。まずは、以下の動画でサウンドを確認することができるので、ぜひご視聴ください。
いかがでしょうか?特にエレクトロニカやIDMなど、実験的で没入感のある音楽制作に最適としている音源とされていて、上記の動画でも広がりがあって幻想的なサウンドが鳴っていますよね。ただ、こちらのページからいろいろなサウンドを確認することができるのですが、実は結構幅広い音色を鳴らすことが可能なんです。攻撃的なサウンドを鳴らすこともできるし、Popsにもフィットする音も作ることができる、受け皿が広い音源となっています。サウンドのクオリティが高く、既存のシンセとはまた違ったサウンドを求める方におすすめな製品ですよ。
さて、さっそくPORPHYRA HYBRIDを起動しつつ、どんなものになっているのか見ていきましょう。一見すると、パラメータが多いので、複雑に見えますが、使い方は想像以上にシンプルです。まず、左側にウェーブテーブルのセクションがあり、右側にサンプラのセクション、中央にはDJミキサーの横フェーダーのようなクロスフェードミックス、下段にはフィルターとエンベロープのセクションが並んでいます。
また、タブを切り替えるとPORPHYRA HYBRID上でエフェクトを掛けていくことができ、Creative系、Mod系、Delay、Reverbの計4つのエフェクトを使用できるようになっています。
200種類のウェーブテーブルが用意されている
もう少し各セクションについて、もう少し詳しくみていきましょう。まず左にあるウェーブテーブルセクションから。ここでは、200種類のウェーブテーブルを読み込むことができ、冒頭にも書いたように自分の持っているデータもロードすることができるようになっています。
シンセシスのパラメータは、Gain、Tune、Fine、Pan、ウェーブテーブルの波の調整をするMorph、サイクルの開始位相を調整するPhase、各ノートで開始位相をランダムにするPhRnd、周波数の幅を調整するWidth、ハーモニクスを加えるInharmとなっています。
その下の左側では、たくさんの種類が用意されたシェーパータイプから好きなものを選んで、適応するシェービングの量を調整可能。ここでの設定は、根本的なサウンドを大きく変えることができますよ。
シェーパーパラメータの横には、モジュレーションオシレータのパラメータが並んでいます。モジュレーションタイプは、FM->WTというモジュレーションオシレータからウェーブテーブルへの周波数変調、FM<-WTはFM->WTの逆の変調、FMfbは周波数変調フィードバック、PM->WTはモジュレーションオシレータからウェーブテーブルへの位相変調、PM<-WTはPM->WTの逆、PMfbは位相変調フィードバック、Ring Modはリング変調、Mod Mixはモジュレーションオシレータとウェーブテーブルのミックスとなっています。
Waveではモジュレーションオシレータの波形を選択することができ、Depthモジュレーションの深さを0%〜100%で調整可能。またモジュレーションオシレータのチューニングタイプを選び、その値を調整できるようになっています。
その下には、ステレオ感を調整できるエフェクトとフィルタが搭載されていますね。
ユニークなサンプルから生楽器まで500種類のサンプルが収録されている
一方、サンプラセクションには、500種類のサンプルが用意されており、中には子どもの声や雨の音といった、少しユニークなサンプルも収録されています。ここにも、好きなサンプルを読み込むことができるので、日常で録音した音を読み込んでみても面白いサウンドを作れるかもしれませんね。
シンセシスのパラメータはGain、Tune、Fine、Pan、サンプルの開始位置を決めるStart、開始位置をランダムにするStRndが用意されています。その隣には、Lofiというパラメータが並んでいて、これを使ってローファイ感を演出することも可能となっています。そして、その下にはフィルターが搭載されていますね。
以上が、ウェーブテーブルセクションとサンプラセクションのパラメータです。1つ1つ見ていくと、思ったよりもシンプルですよね。なお画面下にあるFilterとEnvelopeは、インストゥルメント全体の調整に使用します。また、さまざまな行き先へルーティングできるLFOも画面右下に搭載されています。
シンプルながらも充実した機能が多数搭載されている
中央にあるAとBが書かれた部分を上か下にドラッグすると、ウェーブテーブルセクションとサンプラセクションのミックスを調整することができます。左に振り切れば、ウェーブテーブルの音だけになりますし、右に振り切ればサンプラの音だけを再生することが可能。
KONTAKT上で使えるので、プリセットを読み込まずとも、サウンドが試聴できるのもかなり便利。522種類ものプリセットが用意されており、そのどれもがかなりいい音をしているんですよ。また、KONTROL MK3シリーズと連携させると、パラメータが自動でアサインされるので、より直感的に操作していくこともできます。
以上、PORPHYRA HYBRIDについて紹介しました。操作自体はシンプルですが、サウンドは複雑性のある個性的なサウンドが魅力。飛び道具的なプリセットも収録されていますが、普通の楽曲にも使える質の高いサウンドも鳴らすことができる音源となっているので、ぜひチェックしてみてはいかがしょうか?
【関連情報】
PORPHYRA HYBRID製品情報
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