CASIOの歌うシンセサイザキーボードのCT-S1000V。鍵盤を弾くことで、自由に歌わせることができるという非常にユニークな楽器であるため、プロ・アマ含め、多方面で活用されています。VOCALOIDやVoiSona、CeVIO、SynthsizerVといった歌声合成ソフトと何が違うの?という方もいると思いますが、決定的な違いはリアルタイムで自由に演奏して歌わせることができる、という点。もちろん歌声も男性ボイス、女性ボイス含めて数多く用意されており、曲によって歌声を切り替えるなど、さまざまなシーンで活用できます。
そのCT-S1000Vを歌わせるためのツールとして重要な位置づけとなっているのがiPhone/AndroidアプリのLyric Creator(リリック・クリエイター)。これを使うことでユーザーが自由にCT-S1000Vに歌わせるための歌詞を入力することが可能となり、USB接続でそのデータを転送することができるのです。そのLyric Creatorがアメリカ・アナハイムで開催されている世界最大の楽器展示会、The NAMM Show 2025開催のタイミングでver2.0.0へアップデートが発表されました。そしてこのVer.2で譜割りを感覚的に編集できるようになったり、入力した歌詞をCT-S1000Vに転送しなくてもアプリ上で歌声でプレビューできるようになったのです。実際どんな機能になったのか紹介してみましょう。
CASIOの歌うシンセサイザキーボード、CT-S1000Vとは
CT-S1000Vについては、これまでも「CASIOが歌うシンセサイザ・CT-S1000Vをリリース。和音も歌える新型カシオトーンが3月発売」、「CASIOの歌うシンセ、CT-S1000VをDAWでコントロールする方法」、「CASIOの歌うシンセサイザ、CT-S1000Vがファームウェアアップで、DTM用途でもより使いやすく進化」といった記事で紹介してきたほか、「CASIOの歌うシンセサイザ、CT-S1000VをテーマとしたYouTube番組、『江夏と藤本のオトトーク』スタート!」という記事でも紹介した通り、マリモレコーズの江夏正晃さんとともに、YouTube番組「江夏と藤本のオトトーク」を数年間配信してきたので、ご存じの方も多いと思います。
が、改めてこのCASIOのCT-S1000Vについて簡単に紹介すると、これは鍵盤を弾くことで歌わせることができるユニークな楽器です。弾き方は単音でもいいし、和音でもOK。実際その演奏シーンを収めたビデオがこちらです。
最近のAI歌声合成とはちょっと雰囲気が違い、ボコーダーっぽいというか機械っぽい歌声であるのが特徴でもありますが、プリセットでさまざまな歌声が用意されているので切り替えることでかなり違った雰囲気になります。さらに男性的な歌声か女性的な歌声か、若い声か年齢のいった声か、ビブラートの掛かり具合がどのくらいかなど、自由に調整して歌声を作っていくことができるのも楽しいところです。
さらに演奏の仕方には2種類のモードがあるのがユニークなポイント。1つは押鍵ごとに歌詞音節が進行するモード(ノートモード)です。この場合、もしミスタッチした際は、ペダルや鍵盤で歌詞の頭出しなどの歌詞音節制御ができるようになっているので、これを利用することができます。一方で、これとは別に予め指定した譜割りで進行するフレーズの和声を変更させるモード(フレーズモード)があるのが大きな特徴。先ほどのビデオでもこのフレーズモードが使われています。
もちろん、CASIOのキーボードなので、歌声が出せるというだけではありません。歌詞を歌わせるLYRICモードに対し、さまざまな楽器音を鳴らせるINSTRUMENTモードというものがあり、こちらに切り替えることで約800種類の音色を選んで利用できるほか、それぞれにCUTOFFとRESONANCEを用いてフィルタ処理できるなど、かなり積極的に音作りも可能になっているのでシンセサイザ的な楽器として使用することも可能です。
驚くべきはその価格。CASIOのオンラインストア価格は55,000円(税込)となっていますが、ネットショップなどを見てみると50,000円を切ってきているのです。もちろんUSBでPCと接続することで、DTM用途で使える61鍵盤のUSB-MIDIキーボードとしても使えるので、持っておいて損のない機材だと思います。
コンパニオンアプリのLyric Creatorがバージョンアップ
そのCT-S1000Vを演奏して歌わせるためには、予め歌詞を仕込んでおく必要があります。CT-S1000Vには予め英語の歌詞、日本語の歌詞がいろいろ入っており、それを選んで歌わせることも可能ではあります。しかし、実際の利用を考えれば、当然自分で歌詞を設定したいところですよね。
もちろんそうした歌詞入力も可能になっています。この入力はCT-S1000V本体で行うのではなく、iPhoneやAndroidのLyric Creatorというアプリを用いて行うのです。日本語か英語かを選択した上で、日本語であればひらがなで1つ1つ入力していくことができます。さらに音声入力モードを用いればソフトウェアキーボードを使うことなく、直接しゃべって入力できるし、結構高精度な認識率で入力できるので、便利に使うことができます。
また前述のフレーズモードのために譜割り設定ができるようになっています。各ひらがな(英語モードならば単語)に音符を割り振ることで設定していくのです。その後、USBケーブルを用いてCT-S1000Vに転送することで使うことができるのです。
なお、Lyric Creatorでは単純に歌詞を入力するだけではなく、複数の歌詞をつなぎ合わせて長い歌詞を歌わせるためのシーケンス機能、さらには前述の歌声のエディット機能を用いてオリジナルの歌声を作成するボーカリスト機能なども搭載されています。
そうした機能を持つCT-S1000VのコンパニオンアプリであるLyric Creatorがこのたびver2.0.0へとバージョンアップし、CT-S1000Vをより使いやすくしてくれたのです。もちろん、アプリ自体は無料で入手して使うことができるので、全CT-S1000Vユーザーに恩恵をもたらしてくれるものなのです。
譜割り編集モードを搭載し、より使いやすく
では、そのLyric Creator ver2.0.0で何が変わったのか。その最大のポイントとなるのが譜割り編集モードの搭載です。
前述のとおり、もともとLyric Creatorには譜割りの設定機能があり、各ひらがな、英単語に対して音符を指定していくことで、譜割りができるようになっていました。しかし、今回の新バージョンではグラフィカルにより直感的に設定できるようになったのです。
音程のないピアノロールと言うとわかるでしょうか?グリッドに乗せて音の長さを指定していくことで、「音符がいまいちピンと来ない!」という人でも見た目で長さを理解することができ、効率よく指定することができ、その結果が音符のほうにも反映される形になっています。
もちろん、グリッドの設定も可能で一拍(4分音符)にすることも半拍(8分音符)に設定することも可能。さらには三連符でグリッド設定することもでき、選んだグリッドにピッタリ合う形でボックスを動かす形となるのです。
またルーラーもあるので、小節、拍で進行をチェックできるため、従来の音符指定と比較して、圧倒的に使いやすくなっています。
細かな操作方法については割愛しますが、ボックスを移動させることによって、自動的に休符も入るなど、非常に使いやすくできている印象です。
アプリ自体で歌ってくれるので、より分かりやすく
これまでのLyric Creatorでは、音符を使って譜割りを指定したら、あとはCT-S1000Vに転送して、その後に演奏して確認する形になっていました。そのため、「実際に演奏したらちょっと思っていたのと違った」という場合、再度Lyric Creatorに戻って作業する必要があったのですが、今回のver2.0.0では、アプリ自体で入力したデータを歌ってくれるようになったので、確認の効率が断然よくなっています。
もっともLyric Creatorの譜割りモードは音程のないピアノロールようなものであるため、音程を付けて歌ってくれるわけではありません。あくまでも単一の音程でお経のように歌うだけではありますが、それでも休符も含め、入力した通りに歌ってくれるため、CT-S1000Vに転送する前にチェックすることができ、おかしなところがあれば、すぐに修正することができるのです。うまくいったら、その上でUSBケーブルを使って転送すればいいので、とにかく使いやすくなっていますね。
ちなみに、ここで歌ってくれる歌声は固定で、歌声を変えることはできないようです。カシオからもLyric Creatorの新バージョンに関する紹介ビデオが公開されているので、ご覧になってみるといいと思います。
なおボーカリスト機能で作成した声をチェックしたり、その作成した歌声で歌わせるということはできないようでした。いつかこの辺もサポートしてくれるとさらに便利そうですが、CT-S1000Vユーザーのみなさんは、ぜひ今すぐLyric Creatorをアップデートしてみてください。
【関連情報】
CT-S1000V製品情報
Lyric Creator ver2.0.0情報
【ダウンロード】
◎App Store ⇒ Lyric Creator ver2.0.0
◎Google Play ⇒ Lyric Creator ver2.0.0
コメント
タイトルの「Lyric Creatorばver2.0.0に。」の「ば」は不要です。
えむいーさん
ありがとうございmす!