MIDI 2.0に対応した箏(十三絃と十七絃箏)および和太鼓音源をSound Magicがリリース

これまでDTMステーションでもたびたび紹介してきたプラグインメーカー、Sound MagicがMIDI 2.0に対応した音源をリリースしました。その第1弾となるのが日本の箏を再現する音源であるNeo Kotoと、和太鼓の音源であるSupreme Drums Taikoのそれぞれ(各199ドル→セール価格69ドル=10,800円)。いずれもWindowsのVST2およびVST3、MacのVST3およびAU(いずれも64bit版)に対応した音源となっています。

Neo Kotoは13本の弦を持つ十三絃と17本の弦を持つ十七絃箏の2つの音源をセットにしたもので、Supreme Drums Taikoは大太鼓、鼓、長胴太鼓、締め太鼓などの和楽器をリアルに再現する音源となっています。この2つに共通するのはMIDI 2.0に対応するとともにMPEにも対応した音源で、最大65,536のベロシティレイヤでサウンド表現が可能である、という点。MIDI 2.0の正式発表から約5年が経過した今も、MIDI 2.0対応の音源は数えるほどしかありませんが、ここに新たに2つが加わったわけです。実際どんなプラグインなのか紹介していきましょう。

Sound MagicからMIDI 2.0対応の音源、Neo KotoとSupreme Drums Taikoがリリース

MIDI 2.0における2024年末の現状

DTMステーションでMIDI 2.0が登場することをセンセーショナルに伝えたのが2019年1月の「MIDIが38年ぶりのバージョンアップでMIDI 2.0に。従来のMIDI 1.0との互換性を保ちつつ機能強化」という記事。その1年後の2020年2月22日と2.0を想起させる日付でMIDI 2.0が正式発表されたことは「日米合意でMIDI 2.0が正式規格としてリリース。MIDI 2.0で変わる新たな電子楽器の世界」の記事でも紹介しました。

MIDI 2.0も正式発表から間もなく5年になる

そこから間もなく5年が経つのですが、現状を見ると各社の動きが鈍いというのが正直なところです。各社がMIDI 2.0に対してやる気がない、というわけではなく、「ハードがないから、ソフトが開発できない」、「ソフトがないからハードを作っても売れそうにない」……という「卵が先か鶏が先か」を見合ってる状況であり、結果として製品がなかなか出てこないのです。

また1年前に「打ち込み新時代の幕開け。Roland A-88MKIIが世界初の高分解能ベロシティ/CCに対応。Cubase/LogicのMIDI 2.0エディットの実際」という記事で、ようやくRolandのキーボード、A-88MKIIがMIDI 2.0対応したことや、各DAWでの対応などについてもレポートしているので、現状を知る上ではこちらの記事が参考になると思います。また、その時点でMacは対応したけれど、Windowsがまだで……という課題を指摘していました。

が、2か月前Microsoftが開発者ブログ「Windows MIDI Services October 2024 Update」の中で、いよいよMIDI 2.0対応することが公表されています。現時点ではまだwindows insider previewでの実験的実装ということのようですが、正式リリースも間もなくのようです。この辺については、また近々詳細をレポートでいればと思っていますが、ここに来て、ソフトウェア音源側もMIDI 2.0対応が進み出したようです。

まだ極めて少ないMIDI 2.0対応音源

MIDI 2.0対応のソフトウェア音源、おそらく世界初としてリリースされたのが「MIDI 2.0に対応した初の音源!?新世代RGBエンジン搭載のバーチャル・ピアノ、Ivory 3 German Dが発売開始」という記事でも紹介したIvory 3だったと思います。その後、メジャーブランドメーカーからのリリースというのは全然聞かないのですが、iOS/iPadOS上のMIDI 2.0対応音源としては「オープンソースのサンプリング音源フォーマット、sfzをサポートするiPhone/iPadアプリ、isfizzが400円で発売開始。MIDI 2.0にも対応」で紹介した、雲英亮太さん開発のisfizzが1年前にリリースされるなど、ポツポツと登場してきてはいました。

そうした中、今回メジャーブランドメーカーから、ようやくWindows/Mac対応のMIDI 2.0音源が2つ登場したのです。開発したのは「手ごろな価格でフルオーケストラサウンドを実現できるSound MagicのNeo Orchestra CEの実力」や「EQの常識を覆す画期的なイコライザ、AIが調整すべき周波数帯を自動で割り出してくれるNeo EQシリーズのスゴさ」、また「Bechstein D 282、Bösendorfer 290SE、Yamaha C7…、8種の最高峰ピアノを再現する1TB超のサンプリング音源、Neo Pianoの実力」、「音圧と自然さの相反する2つを同時に実現。最新の音響心理学に基づいて開発された新世代のマキシマイザ、Neo Loudness」といった記事でも紹介してきたプラグインメーカー、Sound Magicです。

海外メーカーではありますが、日本とのコネクションなどもしっかりあるようで、箏音源であるNeo Koto、そして和太鼓音源であるSupreme Drums TaikoのそれぞれをMIDI 2.0対応およびMPE対応としてリリースし、65,536段階のベロシティ レイヤーに対応した音源として誕生したのです。それぞれを順に見ていきましょう。

13弦と17弦の2種類の箏音源をセットにしたNeo Koto

まず日本の箏をMIDI 2.0対応の音源として打ち出したのがNeo Kotoです。まずは、以下にその音源があるので、実際のサウンドを聴いてみてください。

Sound Magic · Neo Koto

かなりリアルな箏であることが分かると思いますが、この製品はKoto13とKoto17という2つのプラグインがセットになったものとなっています。名前からも想像できるようにKoto13はもっとも一般的な箏であり、お正月に流れる「春の海」や「さくらさくら」などの音で知られる13弦の箏である十三絃を再現するもの。

十三絃を再現するNeo KotoのKoto13

一方のKoto17のほうは十三絃と比べて絃が太く、重低音もしっかりと響く十七絃箏を再現するものとなっています。
Koto13、Koto17ともに、Sound MagicオリジナルのQinハイブリッド モデリング エンジンを搭載したもので、サンプリングと物理モデリングをうまくミックスさせたもの。そのためファイルサイズはわずか250MBながらサンプリング音源であれば37GBに相当する表現力を備えているのだとか。その特徴や使い方に関しては英語のビデオではありますが、以下のYouTubeが参考になると思います。

このビデオでも紹介されていますが、まずはメイン画面において各種パラメーターを調整できるようになっています。いわゆるシンセパラメータとはちょっと違うので、少し紹介するとたとえばSpeedはピッチ・チェンジのスピードを調整するもの、Differeceは高い音と低い音の音量の差を調整するものになっています。

十七絃箏を再現するKoto17。このメイン画面の各パラメーターで音色などをエディットできる

また物理モデリング部分での音の調整ができるのも面白いところでCabinetは箏の共鳴箱というか胴の部分の大きさを調整し、音色や音の響き具合を調整します。またMaterialを調整すると弦の材質を調整し、これによっても音に違いが出てきます。同様にHardnessでは弦の硬さを調整する形になっています。ユニークなところとしてはAI Driverというこのがあり、これによってコントローラの入力のスムーズ加減を調整できるようになっていて数値が大きいほど、スムーズになる形となっています。

Micro Tuningで各弦のチューニング調整が可能

ここでMicro Tuningを開くとKoto13なら13の、Koto17なら17の各弦のチューニングができるので、必要に応じて調整が可能です。

Virtual Stageで音場の調整も可能になっている

さらにVirtual Stageを使うことで、どんな場所で演奏するのか、どの位置で演奏するのかどんなマイクを使って、X-Yで録るのか、ABで録るのかなど細かく調整できるようになっています。

コンパクトながらリアルに和太鼓を再現するSupreme Drums Taiko

続いて、和太鼓音源のSupreme Drums Taikoについても見ていきましょう。こちらもまずは、そのサウンドを聴いてみてください。

Sound Magic · Supreme Drums Taiko

海外音源だと太鼓と言いながらも、和太鼓ではなくアジアのまったく異なる太鼓をサンプリングした音源をよく目にしますが、これはしっかりした和太鼓であり、かなりリアルなサウンドになっているのが分かると思います。

和太鼓を再現するSupreme Drums Taiko

見てみると

中太鼓
大太鼓
長胴太鼓
桶同太鼓
締め太鼓

太鼓合奏団1(長胴太鼓アンサンブル)
太鼓合奏団2(桶胴太鼓アンサンブル)

と大きく8つの音源が入っており、ノートの音域ごとにサウンドが割り振られています。こちらも英語ですが、解説ビデオがあるので、こちらをご覧になってみてください。

パラメーターは、Neo Kotoと比較すると非常にシンプルで、画面も1つしかありません。ここで8つあるうちのどの音源を調整するかを指定した上で各パラメータを調整することで、サウンドをある程度変化させることができます。

たとえばDYNAMICは音のダイナミックレンジの調整で最大にすることで96dBのダイナミックレンジにまで広げることができます。またAMBはアンビエンスマイクとルームマイクのバランスを調整するもので60dB~12dBの範囲で調整可能です。またLOWおよびHIGHは低域と高域のブースト/減衰を調整していくもの、TRANSIENTはトランジェントの度合いを調整するものとなっています。

こちらもSound Magicオリジナルのハイブリッド モデリング ドラム エンジンを採用しているため、こうしたパラメータでかなり調整できるようになっているのです。

デバイスがなくても打ち込みならMIDI 2.0を味わえる

では、Neo KotoおよびSupreme Drums TaikoがどのようにMIDI 2.0対応になっているのでしょうか?一言でMIDI 2.0といってもさまざまな要素があるわけですが、これら2つの音源で対応したのはベロシティの部分。ご存じのとおり、MIDI 1.0では0~127の128段階(7bit)でベロシティを表現する形ですが、MIDI 2.0では0~65,535(16ibt)と圧倒的に細かく調整できるようになっているのです。

とはいえ、前述のとおり、まだMIDI 2.0対応のデバイスというのはほとんどありません。以前「世界初、MIDI2.0プロパティエクスチェンジ対応の最先端キーボード、KORG Keystage誕生」という記事で紹介したKeystageのようにプロパティエクスチェンジ対応のものはあるものの、これだと今回のNeo KotoやSupreme Drums TaikoでMIDI 2.0機能が使わるわけではありません。ベロシティの分解能という意味では前述のRolandのA-88MKIIくらいですが、これがないと使えない、というわけではありません。

まずは通常のMIDI 1.0とも互換性があるので、まったく問題なく使うことが可能です。この際、内部的には7bitから16bitへのアップサンプリングを行っているとのことです。

その上で、Cubase 13/14やLogic Pro Xなどは現在MIDI 2.0対応しているので、リストエディタなどで打ち込みを行えば、A-88MKIIなどのデバイスがなくても、細かなニュアンス調整が可能になっています。

Cubaseの環境設定でによってMIDI 2.0に対応した高解像度での打ち込みが可能になる

たとえばCubaseの場合、リストエディタで0~65.535という数字を入れるのではなく、もっと直感的に使える形が用意されています。具体的には環境設定の編集操作-MIDIにおいて「高解像度表示形式で」で「1.00」と設定すると0~127ではなく、0.00~127.99という数字で設定できるようになるため、従来の100倍の解像度で打ち込みが可能になるのです。

小数点以下2桁でのベロシティー調整が可能になる

その差をどれだけ感じることができるかはユーザー次第なのかもしれませんが、ぜひMIDI 2.0の世界を味わってみてください。

リリース記念で、199ドルが69ドルの大特価。さらに……

そのNeo KotoとSupreme Drums Taiko、いずれも通常価格が199ドルとなっています。現在の為替レートで見ると32,000円弱といったところでしょうか?

しかし、現在リリース記念のセール価格となっておりいずれも69ドル(約10,800円)と65%オフのセールとなっているのです。しかも以下のクーポンコードを使うことで、ここからさらに20%オフすることが可能。

クーポンコード:DTM20%OFFSS

ただし、このクーポンコードは99ドル以上の買い上げ価格に対して有効となっているので、Neo Kotoのみ、Supreme Drums Taikoのみだと、適用されませんが、2つセットで買えば99ドルを超えるので、セットで110.4ドルという低価格で入手することが可能となります。

クーポンコードを入れることにより、20%オフが適用される

1本あたりでみれば55.2ドルつまり8,700円程度でMIDI 2.0対応の音源を入手できるので、購入して損はないと思います。ぜひ、この機会に入手してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Neo Koto製品情報
Supreme Drums Taiko製品情報