本日12月26日、テクノスピーチからAI歌唱ソフトであるVoiSonaのiOS/iPadOS版が無料アプリとして正式にリリースされました。VoiSonaのiOS/iPadOS版は今年の9月からベータテストが行われており、9月の期間中にベータテスターに応募した一部のユーザーのみ使える形となっていました。そのVoiSona iOS/iPadOS版が、本日から誰でも無料で使える形となったのです。従来VoiSonaはWindowsもしくはMacでないと動作させることができませんでしたが、今回のiOS/iPadOS版のリリースによって、従来よりももっと気軽にどこでも音楽制作、歌声合成が可能になったのです。
自由に使えるパソコンがないという中学生や高校生がDTMの第一歩として使ってみるのもいいですし、普段iPhoneのGarageBandで曲を作っているという方が歌声トラック制作用に使うのにもピッタリです。もちろん、これまでWindowsやMacでVoiSonaを使っていた人にとっても、iOS/iPadOS版の誕生は大きなメリットになります。というのもパソコン版とデータの互換性があるので、通勤・通学の電車内で作ったり、出先でiPhoneで作ったものを、自宅に戻ってからパソコンに取り込んで続きの作業をする……なんて使い方も可能です。実際にどんなアプリなのか試してみたので、紹介してみましょう。
テクノスピーチが開発した無償で使えるAI歌唱ソフト、VoiSona
「VoiSonaって何?」という方も少なくないと思うので、まずは簡単に紹介しておくと、これは音符と歌詞を入力すると、リアルな歌声で歌わせることができるAI歌唱ソフトです。たとえば以下のような歌声で歌わせることができるものです。
ちなみに、VoiSonaが担当しているのはボーカルの部分であって、バックに流れているドラムやベース、シンセサイザのサウンドはDAWと呼ばれるソフトで作っているものです。また歌っているのは、VoiSonaで無料で使えるボイスライブラリであり、VoiSona第一弾アーティストである知声(Chis-A)ですね。上記のアニメーションで出ているキャラクタがその知声ですが、このアニメーションも別のツールで作っているのであって、VoiSonaで作れるわけではないですよ。
「ああ、それってボカロのこと?」なんて質問も来そうですが、VOCALOID(ボーカロイド)はヤマハが開発した歌唱ソフトウェアであるのに対し、VoiSonaは名古屋にあるテクノスピーチというベンチャー企業が開発したソフトウェア。
VoiSonaもVOCALOIDも、歌声をコンピュータで合成するという意味においてはどちらも同じだし、ピアノロールといわれる画面で音符を入力し、そこに歌詞を流し込んでいくという使い方も似ている点はあります。でも、それぞれまったく異なる歌声合成エンジンであり、入力するエディタもまったくの別モノ。どちらがいいというのではなく、どんな歌声を使いたいか、どんな歌わせ方をしたいか、どっちのシステムが好きか…といったことで選んだり、場合によっては一緒に使ったりするものなのです。
一つほかの歌唱ソフトとの大きな違いを挙げるとしたら、VoiSonaは無料のソフトである、という点。エディタソフトを無償でダウンロードできるとともに、知声は無料で使えるボイスライブラリであるため、誰でも気軽に楽しむことができるのです。
これまで30を超えるボイスライブラリがラインナップ
そんなVoiSonaは2022年の誕生から2年が経過し、知声のほかにも数多くのボイスライブラリが登場してきました。DTMステーションでもこれまで「AI歌唱ソフト、VoiSona の新ボイスライブラリとして、ゴールデンボンバー鬼龍院翔CVの『機流音』 、SILENT SIRENすぅCVの『AiSuu 』がリリース。AI歌声合成の世界に新しい波」、「イケボのAI男性ボーカル、MYK-IVがVoiSonaでリリース。よりリアルになったVoiSonaの新エンジン2.x Betaも試験的運用を開始」といった記事でも紹介してきましたが、VoiSonaのサイトを見てみると、すでに30を超えるソング用のボイスライブラリが登場しているので、かなり自由度高く、歌声を選択することができるようになっています。
また、当初はこれらボイスライブラリは月間または年間でのサブスクという形になっていましたが、「AI歌唱ソフト、VoiSonaに買い切りプラン、パッケージ版が登場。第一弾は鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)CVの機流音、すぅ(SILENT SIREN)CVのAiSuu」という記事でも紹介した通り、買い切りプランというものが登場し、現在すべてのボイスライブラリにおいて、サブスクと買い切りの好きなほうを選択できるようになっています。
iPhone/iPadでもパソコンと同様にVoiSonaを無料で利用できるようになった
そうした中、今回、iPhone/
基本的なアプリの内容については以前「リリース2周年を迎えたVoiSonaが、iOS/iPadOS版のベータテストを開始。誰でも3か月程度無料で利用可能に」という記事で紹介しているので、そちらを参照していただきたいのですが、基本的にはベータテストでの内容をそのまま踏襲しています。
その概要を改めて紹介すると、これはiOS/iPadOS 17もしくは18で動作するアプリで、Windows版、Mac版のVoiSonaと同じように音符や歌詞を入力すれば歌わせることができるものです。パソコン版と歌声のクオリティは同等ですが、大きな違いは歌唱用のソングトラック、伴奏用のオーディオトラックともに1つずつである、という点。
そのためパソコン版では画面上部でトラックを作成し、画面下部に表示されるピアノロールでデータを入力していく形でしたが、iPhone/iPad版の場合はプロジェクトを作成すると、すぐにソングトラックが設定されてピアノロールが表示されているので、初めての方でも、よりとっつきやすいと思います
またノート(音符)以外のパラメータ、つまりTMG(タイミング)、VOL(ボリューム)、PIT(ピッチ)、VIB(ビブラート)、ALP(声の幼さ)、HUS(声のかすれ具合)については、パソコン版の場合、タブで選ぶ形だったのに対し、iOS/iPadOS版では画面上部で切り替える形になっています。また表示させたいパラメータはチェックを入れていくことで複数表示させることも可能になっています。
認証すると、パソコン版と同じボイスライブラリが利用可能に
パソコン版とiOS/iPadOS版のもう一つの大きな違いは、パソコン版は認証(公式サイトでアカウントを作成してログイン)しないと使用できないのに対し、iOS/iPadOS版は、認証しなくても使うことができるのも気軽に使えて便利なところです。
しかし認証することによって、知声以外のボイスライブラリも利用可能になるのです。知声以外のボイスライブラリは前述のとおりサブスクもしくは買い切りという形の有料になっていますが、これまでパソコン版を使っていた方で、有料のボイスライブラリを使っている方であれば、それと同じものをiPhoneやiPadでも利用可能になります。
ただし1つ条件があり、iOS/iPadOS版で利用できるのは、VoiSona 2.x以上のボイスライブラリに限る、という形になっています。1.xというボイスライブラリは使えないので、その点は注意してください。
また、逆も同様で、iPhoneやiPadで使うためにボイスライブラリを追加した場合、パソコン版でも同じボイスライブラリが利用可能になります。つまり、プラットフォームが増えただけで、VoiSonaとしては、Windows、Mac、iPhone、iPadいずれも同じように使うことができるわけです。
AUv3プラグインとしても利用可能。パソコン版とのデータ互換性も
もう一つ特筆すべきポイントとして、iOS/iPadOS版のVoiSonaはスタンドアロンのアプリとして使うことができるだけでなく、AUv3のプラグインとして使うことが可能である、という点が挙げられます。
たとえばCubasisやAuria、さらにはLogicといったDAWアプリ内でVoiSonaを起動して使うことができるほか、Garagebandの中でVoiSonaを立ち上げて、Garagebandの音源として使うことも可能なのです。
Garagebandであれば、iPhone/iPadにおいて無料のアプリとして利用可能だから、誰でも気軽に使うことができます。前述のとおり、VoiSonaアプリとしては伴奏用のオーディオトラックは1つのみですが、Garageband内でVoiSonaを起動させれば、多くのオーディオトラック、MIDIトラックと同期させて音源制作することが可能なので、無料でできる音楽制作の幅もグッと広がると思います。
またiOS/iPadOS版で制作したデータ(拡張子:tsmsln)は、パソコン版のVoiSonaでインポートすることが可能になっています。これは先日11月7日にリリースされたWindowsおよびMac版VoiSonaのバージョン1.12から対応しています。
一方でパソコン版で作ったデータをiOS/iPadOS版で読み込むことも可能です。ただし、パソコン版は複数のソングトラックがあるので、そのままというわけにはいきません。この場合、パソコン版のエクスポート機能を使ってtsmslnを選択します。こうすると、どのトラックを渡すか選択する形になっているので、渡したいソングトラックとオーディオトラックのペアを指定すればOK。これをiOS/iPadOS版で読み込めばいいのです。
なお、前述のベータテストのときと少し変わっている点があるのでいくつか紹介しておくと、以前記事で指摘していた新規プロジェクトクトを作成するには一度アプリを終了しなくてはいけない、という問題が改善され、メニューから「プロジェクト」を選択すればできるようになりました。
また歌詞の流し込み入力ができるようになったほか、オーディオトラックを畳んで隠すことができるようになったため、とくにiPhoneでの作業エリアを広くすることが可能になっています。ほかにもメモリ効率がよくなり、よりスムーズに動作するようになったなど、こまかな改善がいろいろあるとのこと。無料で使うことができるので、iPhone/iPadをお持ちの方であれば、まずはダウンロードしてみてはいかがですか?
VoiSona iOS版リリース記念~抽選で50名にiOS版/PC版両方で使える好きなボイスライブラリをプレゼント!
2025年1月5日まで、iOS/iPadOS版を利用している画像または動画をXにポストすると抽選で50名に、好きなボイスライブラリ1種の買い切りライセンスがもらえるというキャンペーン企画が実施されています。内容は以下の通りです。
◎応募方法:VoiSona公式Xをフォローし、VoiSona iOS/iPadOS版を使っている写真または動画をXにタグ付きでポスト(画面をキャプチャしたものでも撮影したものでも可)
◎タグ:「#iPhoneでVoiSona」または「#iPadでVoiSona」
◎VoiSona 公式X:@VoiSonaOfficial
【関連情報】
VoiSona iOS/iPadOS版情報・リリース記念キャンペーン情報
【ダウンロード】
◎AppStore ⇒ VoiSona iOS/iPadOS版