爆音でも音割れしないと話題の32bitフロートに対応したハンディーレコーダー、ZOOM H2essential

爆音でも音割れしないということで、さまざまな方面で人気となっている32bitフロート対応のZOOMのハンディーレコーダー、essentialシリーズ。これまでマイクカプセル交換型で6chのH6essential、XYステレオマイク搭載で4chのH4essential、もっともシンプルなXYステレオマイク搭載で2chのH1essentialがあった中、先日3つの内蔵マイクを搭載し、9種類のマイクパターン(集音範囲)の切り替えができるH2essentialが発売されました。

型番からも想像できる通り、H2essentialは昔から人気のレコーダー、H2の後継にあたるラインナップで、H2(2007年発売)、H2n(2011年発売)、H2essential(2024年発売)と進化してきたという歴史があるモデルです。現在も現行機種であるH2nから見ると13年ぶりのフルモデルチェンジとなるわけですが、これがどんな機材なのか試してみたので紹介していきましょう。

爆音でも音割れしないと話題の32bitフロートに対応したハンディーレコーダー、ZOOM H2essential

名機H2nと最新モデルH2essentialの違い。ポイントは32bitフロート録音の有無

2011年に発売されたロングセラーモデルであるH2n。このH2nと最新モデルのH2essential、どちらも販売されているので、購入する際は迷いそうなので、まずは簡単にその違いを見ていきましょう。価格としては、ZOOM STORE販売価格でH2nが14,900円(税込)、H2essentialが19,900円(税込)、とそれぞれ5,000円の違いがありますね。

今もなお人気の高いハンディレコーダーH2n

そして機能の違いのポイントになるところとしては、まずは32bitフロート録音の有無が挙げられます。H2nは24bit/96kHzであるので32bitフロート非対応である一方、H2essentialは32bitフロート/96kHzなので、32bitフロート録音に対応しています。この32bitフロートに対応しているかどうかは、かなり重要なポイントで、革命的な機能である32bitフロートに対応していると、いくら爆音が入ってもクリップする事故がなくなり、録音前の入力ゲイン調整すらも必要なくなるのです。なので、レコーダーを初めて使う方でも、録音ボタンさえ押せば、絶対に失敗することなく、確実に音を録ることができます。

従来レコーダーは、まず入力される信号が適切な値になるようにGAINを調整する必要があり、突発的な大きな音に対しても気を使う必要がありました。昔は、まさにこの部分がエンジニアの腕の見せどころでもありましたが、時代が進むにつれて、このGAIN調整は簡単になり、そして32bitフロートでの録音が生まれたことにより、誰でもしっかりとした音声を収録できるようになったのです。もう少し詳しい仕組みに関しては、以前「これはオーディオインターフェイス革命!ZOOMが32bit Float対応のUSBオーディオインターフェイスにもなる小型レコーダーF3を発表」という記事で紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。

32bitフロート対応で、爆音でも絶対音割れしないH2essential

ある程度、機材に対して経験のある方であれば、H2nもかなり優秀なので、こちらを選択するのはありですが、初めてのレコーダーであればH2essentialが圧倒的におすすめ。機材に慣れている方でも、H2nまたはH2essentialを検討している方は、ほかにもカメラのことを気にしたり、自分自身が演者だったりする方も多いと思うので、音声レベルに気を使いたくないのであればH2essentialを選択するといいと思いますよ。

H2nとH2essentialは録音方式にも違いがある

また、H2nとH2essentialは録音方式にも違いがあるので、ここも選択する際に考慮する点となります。H2nが対応している録音方式は、XYステレオ、MSステレオ、2チャンネルサラウンド、4チャンネルサラウンドの4タイプ。一方H2essentialは、フロント、リア、双方向の3つの録音方向と、モノラル(ハイパーカーディオイド)、ステレオ90°、ステレオ120°の3種類の指向性を選択でき、両者を組み合わせた9種類のマイクパターンとなっています。

H2nはサラウンド録音にも対応している

H2nとH2essentialは近い機材なので、共通してアコギの弾き語りを録音したり、1人のトーク用マイクやUSBマイクとして利用したり、ボイスレコーダーとして使うことはできます。基本となる部分は共通しており、双方とも対面での録音ができたり、MSステレオにも対応しているのが、ほかのレコーダーにはないユニークなところ。H2nとH2essentialの違いとしてH2nは360°/VR動画の空間音声(Spatial Audio)を収録することが可能で、GoPro OdysseyまたはRicho Thetaなどで撮影された360°/VR動画に組み込んでYouTubeにアップロードすれば、視点の移動に合わせて音像も移動する、より没入感のある動画コンテンツを作成できます。一方のH2essentialは、集音幅をモノラル、ステレオ90°、ステレオ120°の3段階調整することができる形となってます。

H2essentialは正面と背面に向けた2つの単一指向性マイクと、左右に向けた双指向性マイクを搭載している

録音方式で選ぶのであれば、VR動画の空間音声を録りたい、XYステレオ、MSステレオを選択して使いたいのであればH2n。それ以外であればH2essentialが無難だと思います。いずれにせよ、H2essentialと比べるとH2nは少し上級者向きですね。

そのほかにも、H2nはSDHCカードにしか対応していないので最大が32GBである一方、H2essentialはmicroSDXCカードに対応しているので、最大2TBまで使用可能だったりと違いがあるので、細かい点については各製品ページをご覧ください。

いつでも、どこでも使えるH2essential

さてここからは、H2essentialについて詳しく紹介していきたいと思います。前述の通り、H2essentialはフロント、リア、双方向の3つの録音方向と、モノラル(ハイパーカーディオイド)、ステレオ90°、ステレオ120°の3種類の指向性を選択でき、両者を組み合わせた9種類のマイクパターンを使い分けることができます。また、ピンマイクにも対応しており、Windows、Mac、iOS、Androidデバイスと接続すれば32bitフロートのUSBマイクとして利用することも可能。USBマイクとして使用する場合は、もちろんバスパワーで駆動させることが可能です。

天面についているボタンでマイクパターンを切り替えることができる。また左の録音ボタンでREC開始

入力はフロントのステレオ1ch、リアのステレオ1chの合わせて4chの機材となっています。レコーダー本体で収録するときも、USBマイクとして利用するときも、これは共通。なおLINEに接続すると、リアが無効になり、その分LINEの音声が収録されます。ちなみにLINE接続したまま、本体に搭載されたマイク(フロントのみ)も録音することも可能。ピンマイクを接続して声を録りながら、周囲の音を録音したり、ボーカルを歌いながらキーボードを演奏したりと、本当に幅広い用途で使うことができます。

LINEにマイクなどを接続すると、リアのトラックにLINEの信号が録音される

製品ページに載っているものも含め、H2essentialが使えるシチュエーションとしては、アコギの弾き語り、バンド演奏の録音、対面ポッドキャスト、トーク配信、歌ってみた配信、Vlogなどがあります。LINEにオケを入力して、本体マイクで歌って、H2essentialはiPhoneに繋いで配信するといったことだって、工夫次第であらゆることに使えますよ。

USBマイクとしてデバイスに接続すると、4in/2outの機材として使うことができる

コンパクトな筐体に便利機能が多数搭載されている

大きさは手のひらサイズで、iPhone 16 Proと比べると以下の画像のような感じです。

H2essential(左)とiPhone 16 Pro(右)

重さは170gと、かなりコンパクトなのが伝わりますでしょうか?縦置きできるように、底面にはゴム足が付いていて、また1/4インチサイズいわゆるカメラネジにも対応しているので、ミニ三脚などに付けて使用することができます。なおマイクスタンドに取り付ける場合は、変換ネジが必要です。後は、microSDカードのスロットもここに搭載されています。

底面にはゴム足が付いており、そのまま机の上に立てて使うことができる

画面は大きく、1.3インチフルカラー液晶を搭載しており、これはZOOM製品の特徴でもあるのですが、設定画面が分かりやすく、直感的に使うことができます。各種設定は、この中央の画面を見つつ、フロントのボタンで操作します。

デフォルト画面には、入力された信号の波形が表示されている

MIXERというボタンを押せば、内蔵ミキサーを使うことができ、ここで簡易的にフロントとリアのバランスを調整することが可能。LINE接続した音声と、本体マイクのバランスもここで調整することができます。そのほかワンボタンで、マーカー機能を利用したり、80Hz、160Hz、240Hzのローカットを入れたりすることも可能。

内蔵ミキサーで、フロントとリアの音声のバランスを取ることができる

左サイドには、ヘッドホン端子兼LINE OUTが付いており、ボリュームも感覚的に調整できます。ヘッドホン端子兼LINE OUTとなっているので、カメラに音声を送るための出力としても利用することが可能となっています。またここにあるUSB Type-Cを使ってデバイスと接続を行えます。

左サイドには、ヘッドホン端子兼LINE OUT、ボリューム、USB Type-C端子が搭載されている

右サイドには、ラべリアマイクも使用できる、プラグインパワー対応ステレオミニ仕様のMIC/LINE IN端子が搭載してあります。電源はスライド式で、スライドを上にすれば、HOLD状態になり、解除するまですべてのボタンの操作を制限することができます。いわゆる誤操作しないようにするためのロック機能ですね。またカバーが付いているのですが、これを外すと、別売のBluetoothアダプタBTA-1を挿せるようになっており、これを使用すればiOS用アプリ「ZOOM Handy Control & Sync」からリモートコントロールすることも可能です。

右サイドには、MIC/LINE IN端子、電源、BTA-1端子が用意されている

ほかにも、スピーカーを搭載しているので、ヘッドホンなしで録音ファイルの内容をチェックしたり、設定メニューを音声で読み上げる視覚障がい者のためのアクセシビリティ機能も搭載しています。2秒前にさかのぼれるプリレコード、大きな音が鳴ったら録音開始するオートレコード、3/5/10秒後に録音するセルフタイマー録音、0.5~1.5倍速の再生スピード可変機能など、レコーディングをサポートする機能を多数搭載。

スピーカーを搭載していたり、レコーディングをサポートする機能を多数搭載している

電池での駆動時間はアルカリ乾電池、FRONTステレオ録音、48kHz/32-bit float、ヘッドフォンなし、REMOTEなし、省電力タイマー1分で、約11時間。最大負荷を掛けた、FRONTステレオ+外部マイク録音、96 kHz/32-bit float、ヘッドフォンあり(33Ω負荷)、REMOTEあり、省電力タイマーオフでも約4時間駆動し続けることが可能。また、純正の別売ACアダプタも売っていますが、モバイルバッテリーでも、通常の充電器でもDC5V/1Aであれば給電できるようになっています。

電池はリア側に入れる場所が設置されている

以上、H2essentialについて紹介しました。コンパクトな筐体にいろいろな機能が考えられて詰め込まれた機材になっていましたね。個人的にいいなと思った点は、起動が早いところ。電源を入れて5秒程度で起動するので、使いたいときにさっと録音開始できるのは、嬉しいところですね。ちなみに録音形式は普通のステレオファイルとして保存する以外にもMS RAWという、録音後にステレオ幅を調整できるフォーマットでも収録することが可能なので、とりあえず録っておいて、編集するときに必要なポイントを抜き出すといった使い方もできます。とにかく、あらゆる場面で活躍するH2essentialをぜひ試してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
H2essential製品情報
H2n製品情報

【価格チェック&購入】
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Commentsこの記事についたコメント

1件のコメント
  • 上野パンダ

    「32bitフロートに対応していると、いくら爆音が入ってもクリップする事故がなくなり」
    とありますが、ゲイン無調整で大レベルでもクリップしないのは32bitフロートだからではありません。
    実際に、同じように32bitフロートを採用していてもTASCAM機種のようにHAゲイン調整(切り替え)を残している機種もあります。
    この場合ゲイン設定が高ゲイン側だと32bitフロートでも大入力でクリップします。

    ZOOM機がクリップしないのは32bitフロートだからではなく、ハイゲイン用とローゲイン用の高性能なプリアンプとデュアルADCを搭載して自動切り換えアルゴリズムで実用レンジ全域をカバーできているからです。
    このデュアルADCによって実質的にプリアンプからADCまでのDレンジが拡大されてクリップしなくなります。
    なのでZOOM機は24bitリニアモードでもローゲインADCにデジタルゲインを固定すれば、同じ性能のノンクリップ録音が可能です。32bitフロートモードでなくてもいいんです。
    ではなぜ32bitフロートを採用しているかというと、24bitリニアの固定レンジADCをしてしまうと見掛けの平均音量がすごく小さくなって録音中のモニターがしにくいので、便宜上レベル上げ機能を付けたのがフロート部分です。

    デュアルADCこそ主役であって、32bitフロートはモニターしやすくするためのグリコのオマケなんです。
    ZOOM社のエンジニアさんもそう説明してくれたと思います。

    2024年12月21日 4:00 PM

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