EQの限界に挑戦し続ける定番EQプラグインの最新バージョンFabFilter Pro-Q 4を試してみた!

先日12月12日に定番EQのFabFilter Pro-Qの最新バージョンPro-Q 4が発売されました。Pro-Q 4では、Pro-Q 4をインサートしているトラックを1つの画面に表示できるインスタンスリスト機能や、EQカーブを好きに描くとそれ通りに適切なバンド設定が行われるEQスケッチ機能が追加されました。またClean、Stuble、Warmの3種類からEQのキャラクターを付けることも可能になり、搭載されていたダイナミックEQにもアタックとリリースが追加されています。

Pro-Qを持っている方であれば、Pro-Qの便利さを知っていると思いますが、一見するとただのEQなので、「DAWに付属しているEQで十分でしょ」と思う方も多いかもしれません。たしかに通常版であれば、価格は33,000円(税込)。学生および教職員向けのエディケーション版であっても23,100円(税込)と、DAWに付属しているEQのようなものだと思っていると、なかなかなお値段に感じます。ちなみにPro-Q 1〜3からのアップグレード版は14,850円(税込)です。そこで今回は、なぜみんなPro-Qを使っているのか、改めてPro-Qが人気な理由を紹介しつつ、新しくリリースされたPro-Q 4の新機能について紹介していきましょう。

大定番のEQプラグイン。FabFilter Pro-Q 4がリリース

昨年20周年を迎えた、プラグインメーカーとしては老舗のFabFilter

数年前突如として、日本で人気になった印象のFabFilterですが、実は設立は2003年と、結構昔からあるメーカーなんですよね。会社自体はオランダにあり、人気のEQ Pro-Q以外にも、コンプレッサのPro-C 2やディレイのTimeless 3などなど、FabFilter製品を使っている人をよく見かけますよね。そんなFabFilter Pro-Qが爆発的に使われ始めたのは、実は意外な理由があったのです。

もともと知る人ぞ知る、よくできたEQプラグインだったのですが、コロナ禍になってOBSを使った配信者が使い始めるようになり、普及していったのだとか。どこから広がったのかは定かではないですが、これを使うと、音をよくすることができるという話になり、世界中でユーザー数が増えたのです。

最新バージョンのPro-Q 4(左)とPro-Q 3(右)

一方、音楽制作サイドからは、普通にシンプルで使いやすいEQであるにも関わらず、直感的な操作でダイナミックEQを使えたり、MSでEQを掛けられたりする汎用性の高さから、たしかな信頼を勝ち取って、徐々に定番EQプラグインの地位を築いたように感じます。初心者でも使いやすいUIであるにも関わらず、プロも満足する機能が詰め込まれているので、Pro-Qは多くの人に愛用されているのでしょうね。

Pro-Qの魅力は、圧倒的なシンプルさと、どんなことにでも使える汎用性

そんなPro-Qの最新バージョンの新機能の紹介に行く前に、そもそもどんなところが、多くのユーザーから人気なのか具体的に紹介していきましょう。まずは、何回も書いてますが、その圧倒的なシンプルさです。以下がPro-Qを起動した画面なのですが、すごくシンプルですよね。

Pro-Qは非常にシンプルで使いやすい

そして、EQを掛ける際は、画面をダブルクリックするか、黄色いラインをグイッと上か下に動かすと、EQポイントを作りだすことができ、後はポイントをドラッグして動かせば好きな場所にEQを掛けることができます。スクロールでQ幅を変更することができ、EQポイントは24個まで作ることが可能。シンプルなEQとして、操作性が抜群なのです。

直感的に操作でき、EQポイントも自由に設定できる

ヘッドホンマークをドラッグしながら、左右に動かせば、その帯域だけをモニタリングすることも可能だし、

EQポイントの帯域だけモニタリングすることができる

また後ろに表示されているアナライザーも分かりやすく、元の状態とEQを掛けた状態を同時に表示してくれていたり、下に鍵盤を表示することもできるので、音程でもその周波数を確認することができます。

スペクトラムアナライザや下に鍵盤を表示することができる

視認性と直感的な操作性が抜群で、しかもめちゃくちゃ動作が軽いので、EQを使うのであればまずPro-Qを挿すという人も多いでしょうね。ある意味、DAW付属のEQの上位互換なので、普段DAW付属のEQを使っているのであれば、それの置き換えとしてPro-Qを使えますよ。

アナライザーがしっかりしているし、EQを直感的に掛けられるし、モニターもしやすい。ただそれだけでは、ここまで人気になることはなかったと思います。Pro-Qのすごいところは、こんなシンプルなのに、かなりのポテンシャルを秘めているところです。まず、どの機能も、設定を潜ることなくアクセスできるので、「こんなことがしたい」と思ったら、すぐに実行できるというデザインのよさがあります。

たとえば、ダイナミックEQを掛けたかったら、右クリックして、「Make Dynamic」をクリックするだけ。これだけでダイナミックEQを使うことができますし、

ダイナミックEQも簡単に使うことができる

Pro-Qは、Stereo以外にも、Lのみ、Rのみ、Mid、SideとEQを掛けることができるのですが、これも以下の画面のポイントをクリックすると、すばやく切り替えることができます。

ステレオで掛けるだけでなく、ミッドサイド、Lのみ、Rのみなど、切り替えられる

ほかにも、A/Bスイッチが付いていたり、プラグイン内だけでアンドゥ・リドゥができたり、ほかのソースの周波数バランスを適応するEQマッチができたり、9種類のシェイプをすぐに切り替えたり、マスキングしているところを表示してくれていたり、スウィートスポットを表示できたり、7.1.2chにも対応していたりと、考えられるだけのEQに必要な機能も詰め込まれているのです。

被りのポイントを表示して、それを参考にEQを掛けたり、ミックスをサポートする機能が充実している

FabFilterのラインナップ。単体製品も人気だが、バンドル製品も外せない

ちなみに現在リリースされている、FabFilter製品は以下のようになっています。

・Pro-R 2
・Volcano 3
・Timeless 3
・Saturn 2
・Pro-Q 4
・Pro-L 2
・Pro-G
・Pro-DS
・Pro-MB
・Pro-C 2
・Micro
・Simplon
・Twin 3
・One

全部で14製品が並んでいるのですが、これらがバンドルなった製品も存在しており、特に人気なのがPro-QもバンドルされているMixing bundle。この中には、EQプラグインのPro-Qをはじめ、リバーブプラグインのPro-R 2、コンプレッサプラグインのPro-C 2、ゲート/エキスパンダプラグインのPro-G、ディエッサプラグインのPro-DS、テープディレイプラグインのTimeless 3、アンプモデリングプラグインのSaturn 2が収録されています。価格は、122,100円(税込)となかなかなお値段ですが、そのどれもがPro-Qのように、使いやすく、高い機能を有していることから、多くのユーザーに愛用されています。また、Mixing bundleのほかにも、ミュージシャンにはCreative bundleが人気だったり、その次にMastering bundleが人気なのだそうなので、ぜひこちらもチェックしてみてください。

単体だけでなく、バンドル製品も展開されている

Pro-Q 4になって追加された機能

さて、ここからはPro-Q 4になって追加された機能を見ていきましょう。主なアップデートポイントは4つ。1つ目はインスタンスリスト機能です。これは、たとえばトラック1とトラック2にPro-Q 4をインサートしていた場合、トラック1のPro-Q 4の画面からでもトラック2のPro-Q 4をコントロールできるというもの。キックとベースの被り具合を調整したり、オケとボーカルのマスキングを調整したりなど、1画面で簡単に行うことができるようになりました。

1つのPro-Q 4から、すべてのPro-Q 4をコントロールできる

また、EQ Matchも簡単になり、プルダウンメニューからEQ Matchを選択。

EQのコピーも簡単にすぐに行えるようになっている

その後、リファレンストラックを選択して再生。

リファレンストラックを選択して再生すると、周波数の特性が適応される

Matchボタンを押せば、リファレンストラックの周波数バランスを現在のトラックに活かすことが可能です。

リファレンスにしているトラックのバランスを、現在のトラックに活かすこともできる

2つ目は、EQスケッチ。これは、従来のEQのようにポイントを打って、それを持ち上げたり、カットしたりするのではなく、なんとなくこういったEQカーブにしたいというものを、直接描いてイコライジングできるというもの。従来のEQ設定とは違ったアプローチで、EQのカーブを作ることができる機能となっています。

カーブを描くと、それに合わせたEQが設定されるEQスケッチ機能が追加された

次に3つ目は、キャラクタモードの追加です。ある意味、色付のない精度の高いEQがPro-Qの特徴でもあったのですが、従来の色付けなしのCleanに加えて、Stuble、Warmからキャラクタを選択できるようになりました。余計な周波数をカットする場合はCleanを使って、音作りをする際はStubleやWarmを使うといったように、Pro-Qでできることの幅が広がりましたね。

Clean、Stuble、Warmの3つのキャラクタモードが搭載された

最後に4つ目は、ダイナミックEQ系。まずは、ダイナミックEQにアタックとリリースが追加されました。これまでは、オートでこのパラメータは調整されていたのですが、Pro-Q 4からは時間軸を調整することが可能になり、より柔軟にダイナミックEQ設定が行えるようになりました。

ダイナミックEQにアタックとリリースが追加された

また、ほかにもダイナミックEQにはアップデートポイントがあり、Make Spectralというモードが追加されています。画面を見てもらうとわかりやすいのですが、バンド内全体にダイナミックEQが適応されるのではなく、特定の周波数だけに適応するモードが追加されています。まだまだ使いこなせてはいないですが、ディエッサとして使う際や突発的なピークポイントに対して使ったり、より強調したいアタック音などに使えそうですね。

特定の周波数のみにダイナミックEQを掛けることもできるようになった

以上、Pro-Q 4について紹介しました。音楽制作をするのであれば持っていて損はないFabFilterのPro-Q。30日間の体験期間もあるので、ぜひこの機会に試してみてはいかがでしょうか?

Pro-Q 4への無償アップグレードについて

2024年10月13日 ~ 2024年12月11日の期間にPro-Q 3を購入・アクティベーションをされた方は、ご自身のFabFilterアカウントにPro-Q 4のライセンスが無償で付与されます。対象となる方はぜひチェックしてみてください。

【関連情報】
Pro-Q 4製品情報
Pro-Q 4アナウンスページ
(連載もくじ)プロが選ぶ FabFilter
(連載もくじ)FabFilter Tips

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