東京・東池袋にある電子楽器メーカー、SONICWARE(ソニックウェア)。ELZ_1(エルザ・ワン)を皮切りに、LIVEN(ライヴン)シリーズ、SmplTrek(サンプルトレック)……などなど、ほぼ半年置きに新しい楽器を低価格でリリースしている、いま一番勢いのあるメーカーといっても過言ではありません。海外のメーカーかな?と思っている方も少なくないと思いますが、歴とした日本のメーカー。現在の総社員数は20人と少数精鋭で運営していますが、今年で20周年になるとのこと。
そのSONICWAREの最新作となるのが今年7月に発売された没入型アンビエント・ジェネレーターのAmbient Ø(アンビエント・ゼロ)。発売当初より世界中から注文が殺到し、ずっと品薄の状態が続いていましたが、最近ようやく購入可能になってきているようです。DRONE、PAD、ATMOS、NOISEという4つのレイヤーを重ねていくことでうねり/ゆらぎのある気持ちいいサウンドを構築していくことができるという他にないユニークな機材。ここにはSONICWAREが生み出した新たなシンセエンジン、Blendwave Modulation Synthesisを搭載しているのも大きなポイントとなっています。そのAmbient Øについて紹介するとともに20周年を迎えたSONICWAREについて、代表取締役CEOである遠藤祐さん、取締役である須藤英理さんにお話しを伺ってみました。
アンビエント・サウンド作りに特化したマシン、Ambient Ø
今年の7月末から発売がスタートしたLIVENシリーズのAmbient Ø。見た目は以前記事でも取り上げたLIVEN 8bit warpsやLIVEN Lofi-12、また今年の正月に取り上げて大ヒットとなったLIVEN MEGA SYNTHSISと同じ形状の色違いという感じではありますが、中身はまったくの別物。ステップシーケンサも搭載されているけれど、ダンス・ミュージックやゲーム・ミュージックを作る機材ではなく、アンビエント・サウンドを生み出す専用のシンセサイザなんです。
実際どんなサウンドが出せるのか、まずは以下のビデオをご覧になってみてください。
なんとなく雰囲気は感じられたと思います。このビデオにあるサウンドが、まさにAmbient Øによるもので、複雑な音の構成になっていますが、多重録音しているわけではなく、この機材一発で鳴らしているもの。SONICWAREでは、没入型アンビエント・ジェネレーターと呼んでいますが、こんなハードウェアの楽器、これまで存在していなかったと思います。
もちろんシンセサイザとしてドローン・サウンドを鳴らしたり、パッド・サウンドを鳴らしたりできるものはこれまでもいろいろ存在していましたし、ソフトシンセでもそうしたものはあります。しかし、Ambient Øは複数のテクスチャー・サウンドが折り重なって、独特な響きを作り出しているのです。
4つのレイヤーを重ねていく音作り
どんな構造になっているのか、少しずつ紐解いていきましょう。なんか難しそうな機材にも見えますが、Ambient Øの基本的な使い方はとっても簡単。最初に理解しておくべきことは、これが4つのレイヤーを重ねて音を作り出しているという点です。
具体的には持続したサウンドでうねりを持ったDRONE(ドローン)、全体を包み込むようなサウンドのPAD(パッド)、キラキラした感じのあるATMOS(アトモス)、そして雨の音や海の波の音なども含めたNOISE(ノイズ)の4つ。それぞれが独立したシンセサイザになっていて、それを重ねていくことができるのです。
その重ね方もいろいろ。基本的なシステムは従来のLIVENシリーズと同じなので、ステップシーケンサを用いてそれぞれのトラックを構築していく……ということもできますが、もっと簡単にHOLDをオンの状態でキーを弾いていくと、どんどん重なっていき、そこにうねりが発生して独特な雰囲気を生み出してくれるのです。
ここは演奏力とかはまったく関係なく、雰囲気でキーを押していくと、壮大なサウンドを作り出していけるのです。
もちろんプリセット・サウンドは4つのレイヤーをまとめたパレットという形でたくさん用意されているので、まずはそれらを使っていくことでアンビエント・サウンドの世界に入っていくことができます。
SONICWAREが生み出した新シンセエンジン、Blendwave Modulation Synthesis
さて、この4つのレイヤーをさらに見ていきましょう。デフォルトでは1つ目がDRONE、2つ目がPAD、3つ目がATMOSで、4つ目がNOISEとなっていますが、それに固定されているわけではりません。NOISEだけはPCM+ノイズジェネレーターという形で固定されているものの、残りの3つはSONICWAREが開発したまったく新たなシンセサイザであるBlendwave Modulation Synthesisというものになっており、これでDRONEサウンドやPADサウンド、ATMOSサウンドを作り出しているのです。そのため、必要あれば3つすべてをDRONEにすることも可能だし、ATMOSだけにするといったこともできるのです。
では、そのBlendwave Modulation Synthesisって、何なのか?それを示すのが本体のAmbient Øのロゴの下に記載されているストラクチャーの6つの図です。なんとなくベンゼン環が並ぶ化学記号みたいにも見えてしまいますが、これはオシレーターがどのように接続されていて、そこにモジュレーションやピッチ、ハーモニックなどをどう掛かるかを意味する図になっているんです。FM音源でいうところのアルゴリズムに相当するもの、というと分かりやすいでしょうか?そのストラクチャーが6種類あり、その構造によって作れるサウンドが変わってくるのです。
必ずしもできるサウンドが固定されるわけではありませんが、6つのストラクチャーのうち、DRONE 1、DRONE 2がドローン・サウンドに向くもの、PAD 1、PAD 2がパッド・サウンドに向くもの、そしてATMOS 1、ATMOS 2がアトモス・サウンドに向くものであり、ユーザーは自由にこのストラクチャーを変更することができるのです。
陰と陽の正反対なオシレーターが織りなす、音作りの世界
さて、この6つのストラクチャー、これはどういう仕組みで、どのようにして音を作り出すシンセサイザなのでしょうか?
最初に見たときは、なんだこれ!?とちょっと構えてしまいましたが、マニュアルを見つつ操作していくと、実はそこまで難しいものではなさそうです。マニュアルにDRONE 2を例に、それぞれの要素の記載がありました。
一番ポイントになるのは、やはりオシレーター。左側に黒い六角形のOSC 1、右側に白い六角形のOSC 2があります。これらのオシレーターはいわゆるWavetableシンセになっており、全部で32種類の波形が内蔵されていて、ここから選択する形になっています。
そして白黒が陰陽を表しており、黒いOSC 1が陽のオシレーターで正方向に、白いOSC 2は陰のオシレーターで負方向にモジュレーション(MOD)がかかる構造になっているんです。
そのMODを表しているのがM、そしてPがPITCH、HがHARMONIC、さらにdがdetune、bがbalanceとなっており、Ambient ØのLED下にある4つのえんじ色のノブ(SHIFTキーを使うことで計8つのパラメーターノブとして機能する)で調整しながら音を作っていくのです。
HARMONICを動かすと倍音構成が変わってくるので、かなりドラスティックにサウンドが変化していきます。またストラクチャーによってMODのモジュレーション先なども変わってくるので、先ほどのストラクチャーの図を見ながら操作していきます。
基本的にプリセットだけでも十分音作りを楽しめますが、ストラクチャーの意味が見えてくるとゼロから音を作っていく楽しみ方もできるわけです。
なお、NOISEレイヤーは、前述のとおり雨の音や波の音、風の音など、8つの環境音が収録されているほかホワイトノイズ・ジェネレーターもあるので、これらを使ってノイズ作りができるほか、ライン入力から最大8秒のステレオサンプリングも可能になっていて、自分だけのテクスチャーを作っていくことも可能です。
エフェクトやシーケンサも充実
一方で、アンビエント・サウンドに欠かせないのがリバーブをはじめとするエフェクトの存在。もちろん、Ambient Øもエフェクトが充実しています。中でもアンビエント・ミュージック向けに調整された専用のリバーブが強力で、9種類の異なる雰囲気のリバーブを搭載し、オクターブ上の残響レイヤーを重ねるシマー成分も独立して調整できるようになっているのです。
さらにリバーブとは独立する形でマスター・エフェクトを利用できるようになっています。テープ・ディレイ、リバース・ディレイ、オーバードライブ、ビット/レート・クラッシュ、ティルト・イコライザー、ステレオ・コーラスの中から選択できるので、音作りからパフォーマンスまで、かなり重宝しそうです。
さらに前述のとおり、LIVENシリーズなので、最大64ステップのシーケンサが使え、各レイヤーごとに別々に組んでいくことが可能です。また、シーケンスのランダム再生機能や、音符の発音確率を設定する機能に加え、シーケンスを再生させながら、リアルタイムに音符を上書きできるオーバーライトREC機能やノブの動きを記録できるパラメーター・ロック機能など、さまざまな機能が搭載されています。
以上、本当にざっと機能を紹介してみましたが、実際に触ってみればすぐにAmbient Øの面白さ、凄さを実感できると思います。まさに他にはないユニークな楽器なので、自分だけのアンビエント・サウンドを作りたい人には最高のツールだと思います。
SONICWARE 20周年キャンペーン実施中
SONICWARE設立20周年を記念して12月末までの期間限定で、LIVENの特別キャンペーンが実施されています。キャンペーン期間中は、LIVENシリーに純正ACアダプターがバンドルされています(SONICWAREウェブショップではACアダプタ付きですべて37,800円で販売中)。
さらにLIVEN専用のキャリングケースもリリースされました。こちらはウェブショップ価格で11,800円、すべてのLIVENシリーズがピッタリ収まるセミハードケースで、すぐれた耐久性と保護を提供する硬質成型EVA素材(1680Dナイロン外装)となっています。
キャンペーン期間中は、このセミハードケース付きでLIVENシリーズが42,800円で買えるお得なバンドルセットも販売されています。
LIVEN特別キャンペーン実施店はこちら。
とにかく楽器を作る!という思いで設立したSONICWARE、20年の歴史
DTMステーション読者のみなさんであればご存じだと思いますが、一般的にはまだまだ知らない人も多い日本の電子楽器メーカー、SONICWARE。設立は2004年9月なので、ちょうど20周年というタイミングであり、いままさに勢いに乗っているところ。アメリカやヨーロッパでの知名度も上がり、海外での出荷台数も飛躍的に伸びているようです。でもたった20人という会社で、どうしてユニークな楽器を次々と作っていけるのか。SONICWAREの創業者であり、代表取締役CEOの遠藤祐さん、そしてVice Presidentとして経営に参画するとともにシンセサイザの中枢部の開発も行う取締役の須藤英理さんにお話しを伺ってみました。
--まずは、遠藤さんがSONICWAREを設立した経緯をお話いただけますか?
遠藤:私の家は祖父が土木関係の会社、父が防音室やシールドルームの設計・施工会社、母が音楽スタジオの経営をしているような環境で育ったためか、私も将来、自分自身の仕事を見つけ起業するんだろうなぁと漠然と思っていました。初めから楽器メーカーをやりたいと思っていたわけではないのですが、その辺りを紐解いていきますと、まず、小学生の時にMSX2というパソコンのBASIC言語でプログラミングをすることに夢中になったり、ドラクエの中村光一氏に憧れていて、当時、将来はゲームプログラマーになりたいと思っていました。
それ以降プログラミングが楽しくてBASIC、Z80アセンブラ、C言語と色々とやりながら工業系の高校に進学しました。
音楽に関しては、高校で軽音楽部へ入部したことをきっかけにギターを始めました。最初はコピーバンドをやっていたのですが、次第に自分で作曲することにハマってしまいました。実家が音楽スタジオだったというのもかなり影響していると思います。
その後、大学ではプログラミングやFPGAを使った論理回路の設計などを使った研究をしていたのですが、並行して、趣味でポップロックバンドをやり、当時出始めだったデジタルMTRで宅レコして、オリジナルCDを作ったりライブ活動などをしていました。
私のいた大学では卒業生のほとんどが電機メーカーなどに就職するのですが、大学院に進学した頃に自分の好きな音楽と工学を結び付けたような仕事をしたいと強く意識しました。そこで、大学院を修了した2001年に国内の楽器メーカーに就職し電子楽器開発のキャリアがスタートしました。(遠藤さんの略歴はこちら)。
--大学を卒業し、すぐにSONICWAREを起業したわけではないのですね
遠藤:はい。いつかは起業できたら良いなぁとは思っていましたが、当時は自分の大好きな音楽と工学を結び付けた電子楽器作りというものに、とにかく携わってみたかった、という感じでした。幸い就職先ではMTRのファームウェアの開発に直ぐに参加させてもらえました。また、しばらくしたらMTRやマルチエフェクターの仕様担当もやらせていただけました。それほど長い期間在籍していたわけではないのですが、ここで働いたことで、本当に勉強になり今でも感謝しています。そして、2004年9月に独立したのです。
--それが、まさに20年前のことですね。
遠藤:もっとも会社を設立したとはいっても、最初はお金もないですし、自社製品を作りきる技術もコネもありませんでした。なので、まずは受託開発というところからスタートしました。在籍していた会社からは円満に応援してもらうような形で退職できましたので、起業当時から開発や検査といった仕事を頂きました。こうして、少しずつお金を稼ぎながら、一緒に働いてくれる仲間を増やしていったのですが、気づいたら自社製品は開発はせず、ほぼ受託専門の会社になっていました(笑)。無意識に安定を求めていたのかもしれません。
--私が遠藤さんと最初にお会いしたのもそのころでしたよね。元々在籍されていた会社の協力会社の社長さんとして…。ちなみに須藤さんはいつごろSONICWAREに入っているのですか?
遠藤:はい、藤本さんに初めてお会いした時はまだ自社製品も作っていなかったころですね。その当時は受託開発の仕事だけをしていました。須藤とは私が受託開発していたころに取引先の担当者として出会いました。
--ということは、須藤さんも遠藤さんが在籍されていた会社のご出身なんですか?
須藤:はい、そうです。遠藤とは在籍時期が被っていないので社内で一緒に働くことはありませんでしたが、受託開発をしていたころのSONICWAREとはいくつかのプロジェクトで開発を一緒にしました。私も学生のころからプログラミングはしていましたが、遠藤とは少し違って信号処理を中心に勉強していました。就職してからも2、3年は信号処理をしていて、その後システムに行ったり、信号処理にもどったりを繰り返したあと、機種を担当するようになりました。そのころ、一部の開発をソニックウェアに頼む形になり、遠藤とやりとりが多くなった形でした。
--遠藤さんは楽器メーカーになるためにSONICWAREを起業したはずなのに、すっかり受託開発の会社になっていたわけですね。
遠藤:そうですね。ありがたいことに受託開発の仕事は尽きることなくたくさんありましたし、日々忙しいので、すっかり当初の志を忘れかけていたかもしれません。そうこうしているうちに30代を走り抜け、休日にベッドで寝転んで何となくボーっとしている時に、「あれ、俺は自分の人生を生きているのか?」と思ってしまったのです。お金も技術もそれなりに溜まってるし、やろうと思えばやれるはずなのに、と。で、志を忘れかけていた自分に活を入れ2017年にメーカーとして舵を切りました。勇気いりましたけど(笑)
--なるほど、SONICWAREとしては20周年ではあるけれど、メーカーとして舵を切ったのは2017年だった、と。
遠藤:はい。といっても当初、ELZ_1の開発に専念できるリソースは私を入れて2名体制でした。まさに執念で開発をしていったのが最初の製品であるELZ_1です。でも、これまで溜めてきたお金が見る見る減っていきました。開発しているだけで売り上げはないですから……。その一方で、プロモーションの準備も始めなくちゃいけない。そこにお金をかける余裕もないので、X(旧Twitter)やFacebook、Instagramなどに開発状況を実況中継していき、翌年2018年1月にNAMM Showにて製品発表を行いました。その際、DTMステーションでも記事でも記事で取り上げていただいたので、嬉しかったですし、反響も大きかったのでとても感謝しております。
--まさに遠藤さんがSNSでいろいろ発信されていてNAMMに出展するというのを見て、NAMMでは初日、最初にSONICWAREブースに伺いました。まさにあの日が楽器メーカー、SONICWAREとしてのスタートだったわけですね。
遠藤:NAMMに出展した時点では、すぐに発売する気満々で、5月か6月に販売開始を予定していたのですが、そこからが大変でした。確かに試作はうまくできたんです。ところが100個作ると問題がいろいろ出てきてしまうんです。ベトナムの工場に行ったり、台湾の工場に行ったり……。どうしても鍵盤の精度やノブの精度が上がらない。いま思えば、基本的な問題ではあるんですけどね。ベトナムの工場も、これまでシンセサイザーは作ったことがなかったんですが、いろいろと交渉した中、「それなら一肌脱ごう」って、実費精算のような形で一緒にやってくれたんです。とはいえ、お互い経験不足で、なかなかうまくいかず、結局、ようやく発売にこぎつけたのが2019年3月。NAMMから1年以上かかってしまいました。世界中で発売を待ってくれている方がいて、かなり売れたのですが、初期投資が大きく回収に苦労しました。
--ところで須藤さんがSONICWAREにジョインしたのはいつごろだったのですか?
須藤:私は2018年に某カメラレンズメーカーに転職していたのですが、そこを経て2020年8月にSONICWAREに入っています。
遠藤:須藤がレンズメーカーに勤めていることを知り、すぐにラブコールを送りました(笑)。ELZ_1はなんとか作りだしたけれど、楽器メーカーとして発展していくためには信号処理部分の開発力と須藤の物事を前に進めていく力がこれからのSONICWAREに必要不可欠と思いました。0からモノを作っていくということは、エンジニアリングスキルはもちろんですが、オフロードを地ならししながら諦めず進み続けられる気概も大切で、須藤にはジョイン後に経営にも参画してもらいエンジニアリング以外の面でも助けられていますし経営自体もかなり加速しました。
--ELZ_1の次に出したのがLIVEN 8bit warpsでしたよね。あれもDTMステーションで「チップチューンからFMサウンドまで、日本のベンチャーSONICWAREが開発したガジェット型シンセ、LIVEN 8bit warps誕生」として記事にさせてもらいました。
遠藤:SONICWAREの認知度はまだ低い状況ではありましたが、めげずにLIVENシリーズを作り出しました。ELZ_1は電子楽器としては少し高めな値段だったので、もっと手ごろな価格にして、まずは多くの人にSONICWARE製品を実際に使ってもらいたいという想いもありました。そこでプラスティック筐体にするとともに、ハードウェア共通プラットフォームというアイディアを考えたんです。つまり、同じ金型で同じ形状の筐体を作りながら、中身を変えることでまったく違う楽器にしていく、というアイディアです。これなら莫大なコストがかかる金型を共通化することができます。とはいえ、最初に金型を作るのに大きな費用が必要になります。そこで、その開発費を捻出したい、ということでKickstarterを2020年1月にローンチしました。お陰様でとても大きな反響を頂きクラウドファンディングで先行して開発費を賄うことが出来ました。ちょうどそのころに須藤もジョインし、次にアルゴリズムのない革新的なFM音源を作ろうと動きだしました。それ以降は定期的にLIVENシリーズを年に1、2機種で開発しています。
--さらには「ゲームボーイ風小型サンプラー!?多機能な作曲ガジェット、SmplTrekがKickstarterでクラウドファンディング開始!」といった記事で紹介したSmplTrekも出してますよね?
遠藤:はい、SmplTrekは1台でどこにいても楽曲の制作ができるというコンセプトで開発しました。このSmplTrekローンチの少し前に、セールス&マーケティング担当として佐藤にジョインしてもらっているのですが、佐藤は楽器業界で長いキャリアを持つ人物でスタインバーグ・ジャパンの元社長でもありマーケティング分野に精通しています。SmplTrek以前は私がSNSで発信ことがプロモーション活動の大部分を占めていたのですが、佐藤のジョインにより企画・マーケティング・セールスが一気に加速しました。SmplTrekでもKickstarterを使うことで開発費を捻出したいという面もあったのですが、どちらかというと開発過程を共有したい、使い手と作り手が協力してこのプロジェクトを成し遂げたいという意味合いもありました。私たちは大きなメーカーではないので、大手メーカーさんが作らないようなニッチな領域を狙って開発しています。マーケティングやセールスも業界の旧態依然としたやり方はウチらしくもないな、と思っていたので、その辺りを佐藤にも共感してもらい常にSONICWAREらしいやり方を模索してもらいつつ、ユーザーに近い、けど唯一無二な楽器を作るメーカーとして成長できていると思います。
--開発だけじゃなく、もちろん販売をしなくちゃいけないので、そうした活動も重要ですよね。ちなみにSONICWARE製品の国内:海外比率っていまどのくらいなのですか?
遠藤:現状では2:8で海外のほうが多いです。だからなのか海外メーカーと思われがちです(笑)。会社を設立し20年が経ちますが、日本での認知度はまだ低いので、今後は日本のイベントなどにも積極的に出展して、もっと知ってもらうことに力を入れていこうと思ってます。また、もう少し社内基盤を強化していきたいと思っています。
--人を採用し、大メーカーに向けて進んでいこう、と?
遠藤:いえ、大きい会社になりたい、というわけではないです。でも作りたい楽器のアイディアはまだまだいっぱいあるけれど、社内リソースが足りなくて、手が付けられていないというのも実情です。もうちょっとだけ規模を大きくし、そういった新製品の開発や既存製品のファームウェアのアップデートにも力を入れたいと考えています。これらを実現するためには、社内の基盤強化が必要ですので、その一環として、SONICWAREでは新たなエンジニアの採用を随時行っております。自分たちの開発した楽器を世界中の人に使ってもらえるというのは、とてもエキサイティングな体験になると思います。今までのSONICWAREを振り返っても、会社が前進するタイミングは、人と人との化学反応が良い感じに起きた時だと思います。製品をつくり、それを求める人にお届けする、という過程は長くて面倒な道のりだったりするのですが、ユーザーさんがSONICWARE製品を使って楽しそうにクリエイティブしてくれているのをSNS上などで見ると、最高に幸せな気持ちになります。もし、この記事をご覧になった方で、興味のある方はぜひご連絡ください。
SONICWARE採用情報
SONICWAREでは現在以下の職種を募集しています。
《中途》電子楽器の組み込みソフトエンジニア
《中途》電子楽器のハードウェアエンジニア
募集要項詳細は下記のSONICWAREの採用情報ページをご覧ください。
https://ja.sonicware.jp/pages/recruit
--日本にはヤマハやローランド、コルグといったメーカーがありますが、そこに並ぶメーカーを目指すのですか?どんな製品を作っていくのでしょうか?
遠藤:積極的に大きなメーカーになりたいとは思ってないというのが正直なところでしょうか。また大手メーカーさんの製品と同じようなものは恐らくやらないです。私たちが作る意味があまりないですし、大手メーカーさんの方がリーズナブルでお客さんにとってもその方が良いと思います。私たちが作るのは大手メーカーさんがつくりづらい趣向性の強いニッチなものになると思います。もちろん、単に奇をてらうようなニッチだけを売りにした楽器ではないです。
私たちのミッションは「今までにない楽器の発明と進化に挑戦し続けることで新しい楽曲や音楽文化の誕生に寄与すること」なのですが、開発の際、とても大切にしている価値観があります。それは、「使い手、作り手の両者がワクワクしながら、今までにない音や表現を作り出せる楽器にこそ価値があり、私たちが作る意味がある」ということです。大事なのは使い手、作り手の一方ではなく、両者がワクワクしているか?そして、今までにない音や表現を作り出せているのか?そして、その結果1ミリでも新しい楽曲や音楽文化の誕生に寄与しているのか?です。大手メーカーさんは領域的にニッチだからやらないけど、SONICWAREならチャレンジできる領域であり、かつ、アーティストにインスピレーションをもたらし、その結果、新しい楽曲や新しい音楽ジャンルの誕生、音楽文化の発展に寄与する楽器、そういった製品づくりをしていきたいです。
--ありがとうございました。ぜひこれからの展開、楽しみにしています。
※昨年7月に米国Perfect CircuitのWebメディア「SIGNAL」に掲載されたインタビュー記事を読むと、遠藤さんの考え方を深く知ることができます。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
https://dr.yuendo.jp/pages/perfect-circuit-interview
【関連情報】
LIVEN Ambient Ø製品情報
SONICWAREサイト
【価格チェック&購入】
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