スマホ時代のとっても小さなデジタル管楽器「Zefiro」、Kickstarterでクラウドファンディング開始!

AKAIのEWIやRolandのAerophoneといったデジタル管楽器に加え、最近はARTinoiseのlunaticaをはじめとする、手ごろなデジタルリコーダーも登場し、鍵盤のMIDI楽器とは違う吹くMIDI楽器が盛り上がってきています。そうした中、重量たったの8gという非常にコンパクトでユニークなデジタル管楽器、Zefiro(ゼフィーロ)なるものが誕生し、現在、クラウドファンディングサイトであるKickstarterで発売が開始されてました。標準モデルのZefiro(22ユーロ=約3,500円~)と上位モデルのZefiro Pro(39ユーロ=約6,200円~)という2種類。非常に安価なものですが、指で押さえるところなどなく、口でくわえるマウスピースというかベック(唄口)部分だけのような、ちょっと不思議な形状のデバイスになっています。

実はこれ、USB Type-C接続となっていて、これをiPhoneやAndroidなどに挿すことにより、スマホのディスプレイ部分で演奏操作できるようになっています。そのアプリも無料で配布される予定。またケーブル経由でコンピュータと接続することで、高度なブレスコントローラとしてDAWに演奏をレコーディングしていく……といったこともできるようになっています。クラウドファンディングの期間は12月13日まで。実際どんなものなのか、紹介してみましょう。

USB-Cで利用できる非常にコンパクトな高性能ブレスコントローラー、ZefiroがKickstarterで発売開始

ARTinoiseが開発した、lunaticaに続くデバイス、Zefiro

このZefiroを開発したのはイタリアのメーカー、ARTinoize。以前、DTMステーションでも同社のデジタルリコーダー、lunatica(ルナティカ、海外での名称はre.corder)について「アコースティックのリコーダーにBluetooth-MIDI搭載!?カスタマイズ自在なイタリアのlunaticaを試してみた」という記事で紹介したことがありました。

ARTinoiseのlunatica。Bluetooth-MIDIを利用して専用アプリ、さらにはソフトシンセやDAWと連携させることができる

その記事でも紹介した、同社CTOのDavide Manciniさんから、先週メールをいただき、新たな製品、Zefiroを開発し、Kickstarterでのクラウドファンディングを開始した旨、連絡をもらったのです。見たところ、すごく面白そうだったのと、とっても安かったこともあり、そのまま勢いで購入してしまいました。まずは、Zefiroの概要紹介ビデオがあるので、こちらをご覧ください。

おそらくARTinoiseがAI翻訳とAI音声合成で作ったビデオなので、日本語が多少妙ではあるけれど、どんなものなのか、雰囲気は十分分かると思います。

たった8gのデジタル管楽器、Zefiroとは?

では、このZefiroについて、もう少し具体的に見ていきましょう。

Zefiroをスマホと接続し、スマホを指で押さえる形で演奏することができる

一見するとリコーダーの口でくわえる部分のような形状ですが、その中には高度なテクノロジーが詰め込まれています。Zefiroは、スマートフォンやタブレットを活用することで、従来の楽器にはない自由度と使いやすさを実現した次世代型のデジタル管楽器なのです。大きく以下の4つの特徴を持っています。

特徴1:高度なセンサー技術でリアルな演奏表現
Zefiroには、息の強さやニュアンスを感知するセンサーが搭載されています。単なるボタンのオン・オフではなく、実際の吹奏楽器のように音量や音色の変化をダイナミックに表現できます。これにより、アコースティック楽器に迫る演奏体験が可能です。
特徴2:スマートフォン・タブレットとの連携
専用アプリを介して、スマホやタブレットとUSB Type-C端子を使って簡単に接続できます。アプリ上では、音色の選択やエフェクトの調整、MIDIデータの記録など、多彩な機能を利用可能。自宅のDTM環境でも、外出先でも、自由自在に演奏を楽しめます。
特徴3:初心者からプロまで楽しめる設計
Zefiroは、初心者向けのわかりやすい練習機能を搭載している一方で、プロ奏者にも満足してもらえる精度と表現力を提供しています。たとえば、指使いに応じた音階変化や、息遣いによる音の強弱は、リアルな管楽器と同じ感覚で操作可能です。
特徴4:コンパクトで持ち運びやすい
従来の電子管楽器に比べて圧倒的に量で、ポケットに入れたりバッグに入れて気軽に持ち運べます。自宅での練習はもちろん、旅先やカフェ、さらにはライブ会場でも活躍します。

従来のブレスコントローラーとは次元の異なるデバイス

では、このZefiroについて、もう少し技術的に突っ込んで見てみましょう。といっても、まだ私も実物を目にしたわけではなく、Kickstarterの情報だけなので、その情報から読み解く形ではありますが……。

まずここまでの情報を見て、「なんだ昔からあるブレスコントローラのUSB版ってことだろ」、「ほとんど同じようなものが40年前のDX7の時代にあったじゃないか、BC1」なんて声も聞こえてきそうです。確かに基本的なコンセプトはBC1当時のものを踏襲しているんだと思います。しかし、最先端のテクノロジーを駆使することで、BC1などとは次元の異なるデバイスへと進化しています。それを示すのが以下の4つのポイントです。

Zefiroを構成する4つのテクニカル要素

まずは非常に高精細なブレスセンサーを搭載していることです。ここは昔と比べて精度が向上したという点です。またBC1などはブレスコントローラー用の専用端子に接続し、その処理はシンセサイザ側で行う形になっていましたが、Zefiroはこれ本体ですべての処理を行い、ここからMIDI信号を直接出力するのです。その出力はUSB Type-Cを通じて行うため、Zefiro自体が小さいながらもUSBクラスコンプライアントなMIDIデバイスとなっているのです。

Zefiro用のiOS/Androidアプリは無料で提供される

さらに静電容量タイプのリップセンサーを搭載しているというのも新しいポイント。つまり口でくわえたかどうか、どのくらい強くくわえているかを検知し、それをMIDI CCの信号で出力できるようになっています。そしてもう一つがMEMSタイプの3D加速度センサーを搭載していること(Zefiro Proのみ)。これによって、構える角度や勢いのつけ方によってビブラートを書けるとか、ピッチチェンジを行うなど、独特な奏法を実現することができるのです。こうした仕様・特徴を並べると以下のような感じです。

1.軽量(約8グラム)
とても軽いため、持ち運びや演奏が簡単。
2.低消費電力
長時間の使用にも対応。
3.USB-C標準プラグ
スマートフォン、デスクトップ、ノートPCなど、さまざまなデバイスとの互換性を提供。
4.静電容量リップセンサー
多様性と包摂性を重視した代替的な用途に対応。
5.高感度圧力センサー
ごくわずかな息の強度で操作可能。
6.無料アプリ
多彩な音色、演奏モード、音階、ユーザーが設定可能な楽器を提供。
7.USB MIDIクラス準拠
どのOSでもZefiroをネイティブで認識可能。
8.リアルタイムの音色強化
圧力感度によってリアルタイムで音色が豊かになる。
9.アンビエント音楽や伝統音楽向けの伴奏トラック
演奏の幅を広げるための多彩なバックトラックを提供。
10.高度にカスタマイズ可能なMIDI機能
コントロールチェンジ(CC)、感度、カーブの設定が可能。
11.AndroidおよびiOS対応アプリ
iPhoneでは同時に認識可能なタッチ数が5つに制限される。
12.カスタマイズ可能な運指とインターフェーススキン
リラクゼーションのための呼吸トレーニング用ミニアプリも含む。
13.どのDAW、VST、スタンドアロンのバーチャル楽器とも互換性
あらゆる音楽制作環境で利用可能。

専用のヘッドセットホルダーもオプションで用意

このZefiroをスマホとセットとして使うのもいいのですが、前述のとおり、これ自体がUSBクラスコンプライアントなMIDIデバイスであり、スタンドアロンのMIDIブレスコントローラとして利用することも可能です。

Zefiroをシンセサイザと組み合わせてスタンドアロンで利用することも可能

その際、ノート情報はキーボードで演奏しつつ、ブレスコントローラーとして、またリップセンサーとしてZefiroを利用したり、加速度センサー内蔵のZefiro Proであれば、顔の動きでモジュレーションをかけるといったことも可能になります。

スタンドアロンで利用する際に有用なヘッドセットホルダーもオプションで用意されている

そうした際に有用になるのがヘッドセットホルダー。ARTinoiseではそうしたヘッドセットホルダーもオプションで用意しており、価格は19ユーロ(約3,000円)で購入することが可能となっています。

12月13日までKickstarterで販売中。価格は早いほど安くなる!

そんなZefiroは、現在アメリカのサイトであるKickstarterでクラウドファンディングを実施中です。モノとしては

Zefiro
Zefiro Pro

の2種類のほか、Zefiroの3点セット、Zefiro Proの3点セットがあります。Kickstarterでは多くの場合、早く購入した人ほど安く入手できるという特典があり、標準モデルのZefiroの場合、245個限定で22ユーロ、それを逃すと29ユーロとなります。また上位モデルのZefiro Proの場合、880個限定で39ユーロで、それを逃すと少しずつ値段が上がっていくという形になっています。

コンパクトなZefiro。専用のストラップもオプションで用意されている

Kickstarter、基本は英語サイトであり、このZefiroの説明自体は英語ではあるものの、プラットフォーム部分は日本語化されており、Visa、MasterCard、JCB、American Expressなどの日本のクレジットカードを利用することができます。

Kickstarter自体は日本語で操作でき、日本のクレジットカードで決済可能

また、Kickstarterはプロジェクトが成功しなければカード決済されない仕組みになっていますが、11月17日時点で目標金額5,000ユーロに対して、12倍以上となる63,881ユーロを集めているので成功は確定。プロジェクトが終了する12月13日に決済される予定となっています。

また製品の到着は来年2025年2月の予定とのこと。その後、Zefiro、Zefiro Proとも市販されることが予定されており、想定価格はそれぞれ42ユーロ(約6,800円)、69ユーロ(約11,000円)とのことで、国内ではコルグを通じて販売されることが予想されます。もちろん、それまで待つというのもいいのですが、誰よりも先に、そして安い価格で購入するというのはいかがでしょうか?

【関連情報】
Zefiro製品情報(Kickstarterサイト)

【価格チェック&購入】
◎Kickstarter ⇒ Zefiro 、 Zefiro Pro