アルペジオに命を吹き込み、より表現豊かな演奏を。Pitch InnovationsのEternal Arpsがリリース

多くのインストゥルメントにはアルペジオ機能が搭載されているし、DAWにもアルペジオ機能が搭載されていますが、そうしたアルペジオはコードを上から下へ、下から上へというように単純に繰り返して鳴らすだけで、表現できるフレーズの幅は非常に限られています。そのアルペジオを表現力をまったく次元の異なるレベルに引き上げて、プロの演奏家がハープを弾いたりマリンバを弾いたりするような感じのアルペジオ演奏を簡単に実現できるプラグイン・インストゥルメント、Eternal Arps(エターナル・アープス)がPitch Innovationsからリリースし、国内での販売がスタートしました。

指1本で弾くだけでさまざまなアルペジオを弾くことができるし、これまでのアルペジエーターと同様に、自分でコードを弾いた状態で、そのコードにマッチさせたアルペジオを弾くことも可能です。またインストゥルメントなので、これ自体が音源になっているためハープやマリンバに加え、ハンドパン、カリンバ、オルゴール、シンセプラク…といった音源が内蔵しており、これらが利用できるのはもちろん、VSTやAU、AAXなど自分の普段使っている音源をこのアルペジオで鳴らすことも可能です。価格は13,308円(税込み価格:為替レートによって変動します)と手ごろな値段ですが、現在リリース記念の特別価格で8,254円となっているので、買うなら今がチャンスといえそうです。実際、試してみたので、どんなプラグインなのか紹介してみましょう。

Pitch Innovationsから表現力豊かなアルペジオ生成ができるEternal Arpsが誕生

誰でも簡単にバリエーション豊富なアルペジオ演奏を可能に

まずは、どんなサウンドで、どんなアルペジオ演奏ができるのか、Eternal Arpsを演奏したデモビデオがあるので、こちらをちょっとご覧になってみてください。

だいたい雰囲気は分かったでしょうか?鍵盤を1つ押すだけで、かなり表現力豊かなアルペジオ演奏ができ、簡単に設定を変えるだけで、非常にバリエーション豊富なアルペジオが演奏できていることが分かると思います。

このEternal Arpsを開発したのはインドのムンバイにあるプラグインメーカー、Pitch Innovations。これまでも「コードからコードへのベンディングを実現する画期的なプラグイン、Fluid Chordsが誕生」、「◯、△、□のアイコンを並べてグルーブを作り出すプラグインGroove Shaperがスゴイ!」、「インドメーカーが開発。手持ちのMIDIキーボードをMPE対応にする画期的プラグイン、Fluid Pitchが国内発売開始」、「PCのキーボード操作で無数のリズムを生成するドラムマシン、インドPitch Innovations開発のRhythm Boxが超便利」といった記事でも紹介してきたことがありましたが、これまでにない画期的なソフトを次々と開発している非常にユニークなメーカーでもあります。

そのPitch Innovationsが今度はアルペジオに着目して、これまでにないソフトを開発してきたので、もう少し詳細に見ていきましょう。

従来のアルペジエーターとは大きく異なるフレーズ生成能力

アルペジオを生成するアルペジエーター自体は、大昔から存在する機能であり、DTM、シンセサイザの世界においては当たり前すぎるものとなっています。が、当たり前すぎたためなのか、大きく進化しないまま何十年も経っているようにも思います。ご存じのとおり、従来のアルペジエーターは、コードを弾くと、そのまま和音を鳴らすのではなく、その和音をテンポに合わせてアルペジオ化して、上から下へ、下から上へなど、いくつかのパターンを選択して演奏する、というものでした。押した音そのものだけでなく、上下のオクターブまで展開してアルペジオ生成するものもあったわけですが、いずれにせよできるアルペジオのパターンは単調で機械的なものではありました。

アルペジオ生成の中枢を司るpattern oasis

その単調だったアルペジエーターの概念を抜本的に変えてしまおう、というのがこのEternal Arpsなのです。先ほどのビデオからも分かるとおり、本当に多彩なアルペジオが生成できるようになっているのですが、その中枢となっているのが、画面右側の円にあるpattern oasis(パターンオアシス)です。ここでアルペジオパターンが生成されるわけですが、各音符が均等に並んでいるわけではなく、本当にさまざまなリズムになっているからこそ、バリエーション豊かになっているのです。

数多くのプリセットが用意されている

そのアルペジオのパターンは、まず上のプリセットメニューから選ぶことで、ハープ系のもの、ストリングス系のもの、シンセ系のものなどを選んでいくことが可能で、その数は300以上となっています。その上で、pattern oasis内にある小さな丸を選択することでパターンを切り替えることも可能です。

MAGIC DICEでどんどんアルペジオパターンを生成することができる

さらにMAGIC DICEというサイコロを振ることによって、パターンをランダムいろいろと生成していくこともできるのでアルペジオパターンが気に入らなければこれを振ってみるのもありですね。

また細かく調整したいのであれば、音符の数や並びなどはSCATTERパラメーターを動かすことができ、そのパターンを微妙な調整するのであれば、右のVARIATIONパラメータを動かすことで、音符の位置を変えていくことも可能となっています。

コード生成も自由自在。Split機能で左手でコード、右手でメロディー

でも、なぜ1本指で鍵盤を押すだけでアルペジオが生成できるのか。そもそも、どうやってそのコードを生成しているのかというと、その辺が画面左側のARP ENGINEで作られているのです。

コード生成やスケール設定を司るARP ENGINE

TRIGGERモードというのが、まさに1本指でコードを生成するもので、INPUTのところでコードを設定するとともに、OUTPUTでスケールを設定するようになっているのです。メニューで自在にコードやスケールを変更できるので、これを選ぶことによって、1本指での演奏の雰囲気は大きく変わっていきます。

自在に1本指で生成するコードを指定できる

またSEQUENCEモードはTRIGGERモードの発展形のような形で、指定するコードを1つだけでなく複数設定できるようになっています。これを順番に繰り返していったり、鍵盤を抑えるごとに切り替えていくことが可能になっています。

そしてLIVEモードは、ある意味従来のアルペジエーターに近い形で、自分で弾いたコードを元にアルペジオパターンが生成される形となります。

Splitモードにすると左手でアルペジオ、右手でメロディーを弾ける

なお、その下にPLAY MODEとしてarpモードとsplitモードがあります。通常はarpモードでアルペジオ生成をしていくわけですがsplitモードにすると左手でアルペジオを生成する一方、右手はメロディーを弾けるようになります。つまり、左手で生成される自動アルペジオを元にインスピレーションによって右手でメロディーを弾いていく即興作曲を可能にしてくれるのです。

生成したアルペジオをドラッグ&ドロップでDAWへ

このEternal Arpsはスタンドアロンのソフトとして使える一方、WindowsではVST2、VST3、AAXのプラグインとして、MacではAU、VST2、VST3、AAXのプラグインとして使えるようになっており、単に指1本で演奏したMIDIデータがあれば、Eternal Arpsを通した結果、豊富な表現力を持つアルペジオにしていくことができるわけですが、生成されたアルペジオを固定化したいということももちろんあると思います。

弾いたアルペジオをMIDIデータとして記録していく

そんなときは画面右下にあるRecord MIDIボタンを押して、Eternal Arps自体でアルペジオを記録していくことができるようになっています。この記録、ステップレコーディング的になっているので、演奏途中に休んでもそこは記録されないので、落ち着いて入力していくことが可能です。

生成したアルペジオをMIDIトラックへドラッグ&ドロップ

そして入力し終わったら、ここからDAWのMIDIトラックへドラッグ&ドロップで持っていくことで、MIDIデータとして受け渡すことができるので、音源をそのままEternal Arpsで鳴らすことはもちろん、ほかのインストゥルメントで生成されたアルペジオを利用することも簡単にできるようになっています。

音源を内蔵している一方、好きな音源で鳴らすことも

最後に紹介しておくのが音源に関する部分です。Eternal Arpsの一番の機能はこれまで見てきたMIDIを使ったアルペジオ生成機能なわけですが、Eternal Arps自体はインストゥルメントのプラグインとなっていて、これ自体が音源として機能するようになっています。

12種類の音源を搭載している

具体的にはハープやハンドパン、マリンバ、オルゴールなど12種類とそれほど多いわけではありませんが、PCMによる非常にキレイなサウンドであり、まさにアルペジオ用に最適な音源として利用できるようになっています。また簡単ではあるものの、エンベロープジェネレータがついていて、アタックやディケイ、サステイン、リリースの調整ができるほか、チューニングやパンの調整やリバーブの調整もできるようになっています。

簡易的ながらもエンベロープジェネレータも搭載されている

一方、もっと幅広い音源で利用したいという場合はDAW側の設定でMIDIのルーティングを調整することでEternal Arpsから別音源にMIDIを流すことによって、利用することも可能になっています。

音源のないMIDI FXという位置づけのEternal Arps MFXも入っている

またEternal Arps MFXという音源のないプラグインも入っており、ほかの音源を使う際、DAWによっては、こちらを使うケースもあるようです。この辺、詳細はマニュアルを参照してみてください。もちろん、リアルタイムで演奏するのでなければ、前述のドラッグ&ドロップによる方法でもOKです。

Eternal Arps MFXも音源がない以外、機能はすべて同じ

以上、Pitch InnovationsのEternal Arpsについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?楽曲を作る上で強力な武器となるツールであり、表現力を豊富にする一方、制作効率を大きく向上させるツールだと思います。価格的にも手ごろなので、1つ持っておいて損はないと思います。

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