10月22日、スウェーデンのXLN Audioがドラム音源として人気のAddictive Drumsをバージョンアップし、Addictive Drums 2からAddictive Drums v2.5へとアップデートしました。このAddictive DrumsはStudio Rock、Studio Pop、METAL、Heavy Rock……などさまざまな音源コレクションがあるほか、複数のコレクションの中から好きなものを複数選べるCustom Collectionといった製品があり、どれを購入してもすぐにスタンドアロン、プラグインで動作するドラム音源として使える製品です。そのAddictive Drumsのエンジン部分が大きくアップデートしv2.5となったため、すべてのコレクションにおいて機能アップ、性能アップが図られています。
価格はいずれのコレクションも従来と変更なく、たとえば単品コレクションの場合、代理店サイトであるハイ・リゾリューションの直販サイトでのダウンロード価格が25,201円(税込)。また現在セール期間中のため、18,150円となっています。また既存のユーザーの場合、新たにシステムをダウンロードしなおせば2.5が入手できるため、無償でAddictive Drums 2からv2.5へバージョンアップすることが可能になっています。また今回のアップデートは完全な後方互換性があるため、以前のAddictive Drums 2で作成されたすべての素材(プリセット、トゥイーク、ミックス設定、MIDIビート、その他の設定)は、そのまま意図したとおりに動作し、サウンドは変わらず保たせることが可能で、安心してアップデートすることができます。またすべてのAddictive Drums 2拡張機能(ADpaks、MIDIpaks、Kitpiece pak)で動作するのも重要なポイントです。実際、そのAddictive Drums v2.5を少し試してみたので、どんなものなのか紹介してみましょう。
XLN AudioのAddictive Drumsとは
プラグインのドラム音源としてはこのAddictive DrumsのほかにもBFD、EZDrummer、Superior Drummer……などさまざまなメーカーがさまざまな製品を出していますが、その中でも、このXLN AudioのAddictive Drumsは、バリエーションが豊富なこともあり、もっとも人気のあるドラム音源の一つです。
Addictive DrumsはスウェーデンのメーカーであるXLN Audioが2006年に最初のバージョンを開発しており、非常に高音質でありながらも軽いことで高い人気を誇ってきました。そして2014年に大幅なバージョンアップを行いAddictive Drums 2となり、さまざまな機能が追加されるとともに、その後どんどんと音源コレクションを増やしていき、現在のドラム音源としての不動の地位を得るようになりました。
その2014年にDTMステーションでも「積極的な音作りもできるAddictive Drums2を使ってみた」という記事で、Cubase標準音源のHALionのドラム音源と比較しながらレビューしているので、今見ても面白いと思います。
そのAddictive Drums、国内ではハイ・リゾリューションが代理店として取り扱っていますが、数多くの音源コレクションがあるのが大きな特徴となっています。Metal、Heavy Rock、Pop、Breaks & Beats、Soul and R&B……といろいろあるので、自分の使いたいコレクションだけを買うのもOKだし、複数のコレクションが必要であれば、Custom Collectionという製品を購入して、一気に複数のコレクションを手に入れることも可能です。その際、バリエーションの数に応じてCustom、Custom XL、Custom XXLとあるのもユニークなところです。
またこのコレクションは単にドラムキットであるADpaksだけでなく、MIDIビートパックのMIDIpaks、シングルドラムのKitpiece Pakがセットとなっています。
外観を大きく刷新し、よりシンプルに、より使いやすく
さて、そのAddictive Drumsが今回Addictive Drums 2からv2.5へとバージョンアップしました。見た目も変わり、性能も大きく向上しているため、ユーザーから見るとメジャーバージョンアップのようにも見えますが、2.0から2.5なのでXLN Audioとしてはマイナーバージョンアップという位置づけのようです。
そのため価格も従来通りの据え置きですし、既存ユーザーは誰でも無償で入手できるようになっています。入手方法は単純に、XLN Audio Online Installerを用いてアップデートするだけ。ドラムキットデータであるADpakなどは従来のままで、本体プログラムがアップデートされている形です。
そのアップデート内容、以下のYouTubeビデオにまとまっているので、これを見れば分かりやすいと思います。
ここにもある通り、まずは外観が大きく変わっており、よりスッキリとシンプルになった印象です。またこのUIの変更でワークフローも改善されており、より効率よく音楽制作ができるようになっています。その上で、さまざまな機能強化も図られているので、一つ一つみていきましょう。
TRIG GATE搭載で簡単にバシッとしたサウンドに
今回の目玉機能の一つがFX画面の中にTRIG GATE=トリガーゲート機能が搭載されたこと。このTRIG GATEはOverhead、Room、Bus、Masterの各チャンネルと、各Send FXユニットで使用できるというもので、ドラムサウンドを再生するMIDIノートをトリガーとするオーディオゲートとなっています。
Addictive Drumsはさまざまなパラメータがあるので、これらをこねくり回していると、妙な音になってしまうこともありますが、このTRIG GATEを噛ますことですべてのドラム・ヒットで完璧なゲート・アクションを得ることができます。
使い方は簡単で、FX画面の中にある、TRIG GATEをオンにして、Kick、Snare、Tomsのそれぞれのパラメータを動かすだけ。これにより低ベロシティ・ヒット(スネアのゴースト・ノートなど)をゲートのトリガーから除外することができるのです。
もちろん、これを強く掛けることで微妙なニュアンスが削がれてしまうわけですが、バシッとしたハッキリしたリズムにしたい場合には、非常に有効に効いてきます。
またタイミングを図る上で、細かくms単位で時間指定するだけでなくdボタンをオンにすることでホールドタイムを音符単位で指定することも可能。さらにホールドタイムがFloorレベルに達した後、Floorレベルに落ちるまでの時間を設定するパラメータや、Releaseの時間に達したときに音量が落ち着くレベルを指定するパラメータなど必要に応じて繊細な設定も可能になっています。
ビートに迫力とアタック感を演出するRocket Boostモード搭載
当然のことながらAddictive Drumsはもともとコンプレッサが搭載されていましたが、今回そのコンプレッサにRocket Boostなる、ユニークなボタンが追加されています。
見た目にもまさにかわいいロケットのアイコンになったボタンですが、これを押すだけで、従来と比較して迫力がますとともにアタック感を強く演出したサウンドになるのが特徴です。
このコンプレッサはFXではなくEDIT画面の中にあり、ディストーションとセットとなっているのは従来通り。コンプレッサの使い方自体もこれまでと変わっておらず、Thr=スレッショルド、Ratio=レシオ、Attack=アタック、Release=リリースで音作りをしていくのですがその状況をリルタイムに表示するGRメーターの上にこのRocket Boostボタンが追加されているのです。
これをオンにするとオレンジに光るとともに、コンプの聴き具合を示すレベルメーターもオレンジに変わり、まさに音がガツンとパワフルになるのです。これまでAddictive Drums 2で作った楽曲でも、これをオンにするだけでドラムの迫力が変わるので、ぜひ従来ユーザーの方はまずこれを試してみてください。
リアルタイム周波数分析機能搭載でパラメトリックEQが進化
また、EQ部分も今回進化しています。
EQではすべての周波数にわたって信号のリアルタイムの視覚的フィードバックが明確になりました。4バンドのパラメトリックEQであることは従来通りですが、このEQ設定画面と重なる形でFFTで周波数分析された結果がリアルタイムに表示されるようになっています。
これによりEQのパラメータを調整した結果がサウンドで確認できると同時にリアルタイムに視覚的にも確認できるため、より簡単に、そして正確な調整ができるようになっています。
もちろん、こうした機能は一般的なプラグインのEQにもありますが、ドラム音源本体内に搭載されたことで、より細かな音作りが可能になります。
感覚的にビート生成を可能にするBEAT TRANSFORMER
そしてもう一つ、今回のv2.5で非常に強力になっているのが内蔵のドラムシーケンサ部分。これまでもBEATSというタブを選ぶことで、Addictive Drumsのさまざまなドラムパターンを選択したり、そのパターンを表示させ、必要に応じてエディットすることはできました。
しかし今回、そんな細かなエディットをしなくても、パラメータを調整するだけでまさに感覚的にビートを作り直すユニークな機能、BEAT TRANSFORMERなるものが搭載されています。
ここにはいくつかのパラメータがあるのですが、たとえばRangeコントロールでは、ビートのベロシティレンジを圧縮、拡張、シフトすることができます。またアクセント・ノブは、ビートにアクセント(プラスとマイナス)を加えるクリエイティブな方法で、これを動かすだけでかなり違ったビートへと変化していきます。
さらにRandomノブは、TimingとVelocityのそれぞれ個別にわずかなランダム性を適用することが可能で、無機質な硬いビートにライブな感じの人間味を加えることが可能になっています。
ここは解説するより、触ってみるのが一番ですが、いったんリズムパターンを選んだあと、なんとなく調整するだけで自分だけのオリジナルビートにしていくことができるので、かなり便利に使えそうです。
そして完成したビートはそのままDAWへドラッグ&ドロップしてMIDIトラックに持っていくことができるので、この機能だけを目的にAddictive Drums v2.5を使ってもいいと思えるほどです。
以上、新しくなったAddictive Drums v2.5についてざっと紹介してみましたが、いかがでしょうか?このバージョンアップに併せ、いまセールを展開しているので、ドラム音源をちょっと新しくしてみたい…なんて思っていた方にとっては絶好のチャンスだと思います。
【関連情報】
Addictive Drums v2.5製品情報
【価格チェック&購入】
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