従来のイヤホンの常識を覆す革命だ! 元ヤマハのエンジニアが開発したスタジオモニタースピーカーの響きを再現するAIPの破壊力

これまでのイヤホンの常識を抜本的に覆す画期的なイヤホンが開発されました。AIPAcoustic Innocent Pureというこのイヤホンは、従来の頭の中に閉じた空間の音ではなく、外に広がる非常に自然な音を実現するという、これまでにないbluetooth接続のイヤホンになっています。まさにスタジオモニタースピーカーの響きを再現するイヤホンで、演奏の細かいニュアンスを忠実に再現できる性能を持っています。

見た目もこれまでにない、耳から角が突き出すような不思議なデザインのこのAIP、開発したのは元ヤマハのエンジニアである旭サウンドエンタープライズ株式会社の旭保彦さん。音を聴いた瞬間に「何だこれは!」と感じる、従来のイヤホンともヘッドホンとも異なる自然なサウンドを実現してくれます。またしばらく聴いていても装着感があまりなく、イヤホン特有の疲れをまったく感じないのもAIPの大きな特徴となっているのです。このAIPとはどんなもので、なぜこんな画期的な音を実現できているのか、開発者である旭さん、そしてマーケティングを担当する同じく元ヤマハのエンジニアで合同会社サウンドNinjaの松原弘明さんに話を伺ってみました。

ユニークな形状にしたことで、イヤホンの常識を覆すサウンドを実現したAIP

--このAIP、奇をてらったデザインのイヤホンなのかなと思って試してみましたが、音を聴いた瞬間に従来のイヤホンとまったく違うものであることに驚きました。これは何なのですか?
旭:すぐにご理解いただけたようで、嬉しいです。おっしゃるとおり、これはこれまでにない、まったく新しいイヤホンです。実をいうと、前職において小型のドライバーをいろいろ開発しており、そのドライバを使ったプロダクトの企画途上でリタイアとなってしまいました。そこでリタイア後、一人会社を起業してイヤホンやスピーカーなどの開発を続けてきたのです。ご存じのとおり、イヤホンにおいて難しいのが非常に狭い空間に音を閉じ込めざるをえない、という点です。これがイヤホンならではの宿命ではあるのですが、背圧のコントロールや後ろの空間があまりにも狭すぎることから、音響機器として考えると非常に無理のかかるデバイスなんです。やむなく穴をあけて、背圧を逃がしてみたり、穴の開け閉めでチューニングしたりもしたのですが、なかなかうまくはいきません。そうした中、某社から「うどん」と呼ばれるイヤホンが登場しました。あのベロンと飛び出すようなデザインは、さすがにあり得ないだろう、と思う中、協力いただいているデザイナーから悪魔の角のようなユニークなデザインの提案を受け、「これは!」とひらめいたのです。

AIPの開発者である旭保彦さん(右)とマーケティング担当の松原弘明さん(左)

--デザイナーさんからの提案が、今回のプロダクトのフックになった、ということなんですね。
旭:はい、このデザインはスピーカーの発想とつながるぞ、と。B&Wの1000万円以上するハイエンドのスピーカーとか、ちょんまげスピーカーと呼ばれたツイーターの考え方につながると思えたのです。要は流線形の中に秘められた本質的な形状の特徴としては平行面がないということと、交差面がないということ。これにより反射もないし、回析もおきないため、歪みがない。そして一番大きいのが、大容積にすることができること。一般のスピーカーもそうですが、イヤホンの場合、空間が非常に小さいので、空気抵抗みたいな効果で振動を抑制しすぎてはまともな振動になりません。そのためパワーを入れてガンガン振動させるというプロダクトが多かったのが事実だと思います。そうせざるを得なかったというのが実際のところでしょう。その縛りをなくして、大きくてもいいじゃないか、それならもっとアコースティックに寄せてみたいという狙いで開発したのが、このAIPなんです。

B&W社のスピーカー。AIPの流線形のデザインと共通する部分がいろいろある

--デジタル的に特殊な信号処理をしたというわけではなく、また電気的に回路を変わったものにしたというわけではなく、純粋にアコースティックな処理による開発である、と。
松原そこが本製品のコンセプトなんです。アコースティックで自然な音の響きを得られるけれどもイヤホンでもなく、ヘッドホンでもない。まさに新感覚の再生デバイスとすることができました。これによってスタジオモニタースピーカーの響きが得られるようになっているのです。
旭:ちょっと不思議な形状ではありますが、この形にしたことによって容積を大きくとることができ、そもそも背圧の影響を受けにくくなることで、二重の効果があるのんです。まして反射も起きない。ちなみに「うどん」の外に出している部分は単にバッテリー容量を大きくするためだったようで、アコースティックな改善にはつなげていないのだとか……。もったいないですよね。

一般的なイヤホンは振動板からの音の反射や回析で音が歪みやすいが、AIPは反射や解析が起きないずクリアな音となる

--AIP、まさにイヤホン革命ともいえる大発明なのでは……と思いますが、もちろんデザインが決まったら完成というわけではないですよね。
旭:そうですね。容積を大きくできるということからスタートしたわけですが、やはり音作りで一番苦労するのはバッフル板の効果をどう閉じ込めるかという点であり、そこにつきます。これを徹底してイヤホンで実現してみた、というのがこのプロダクトなんです。

 

--お話を聴いていると、イヤホンというよりスピーカーの開発のようですね。
旭:はい、まさにスピーカーと考え方は同じです。開発においてこのAIP特有なところとしては、このラウンドの設計です。流線形からくる素直なデザインですが、その根元のところが一番太い円形になっているんですが、それと合わせて全体のR、ラウンド流線形の特徴がそのまま耳の内側から全体につながっています。この内側をトータルに支えているので安心感があるんです。実はこのデザインにしたことで、イヤホンが耳たぶの後ろくらいまで触れているんです。
松原このことが、AIPならではの装着感のよさ、安定感につながってくるんです。一般的なイヤホンは耳の中のパッドでグイッと抑えています。ものによっては少し大きくして周りで抑えたりするけれど、平面的に潰れているので、装着していると痛くなったり、疲れを感じたりします。それを自然に耳たぶで支えることで、疲れをまったく感じずに、ずっと聴いていることができというのも非常に大きな特徴です。

外に突き出した流線形部分を耳たぶで支えることで装着における安定性を実現させている

--この大発明、特許を取得したりはしているのですか?

旭:確かに技術特許を申請するということもできたとは思います。ただ、小さな会社で技術特許を取得し、維持していくことの負担は大きいという判断から断念しました。一方でデザイン的には非常に特徴があることから、デザイナーが意匠に関しては取得しております。

一般的なイヤホンと比較して容積を大きく取れたことでさまざ音響的メリットを発揮させることができた。ただ特許は申請していない

--音作りとしては、どういう方向を目指して開発されたのですか?
旭:とにかく、できる限り無理のない、自然な音にしていこうと調整していきました。先ほどのとおり、容積を大きくできたので、そのメリットを存分に生かせるようにしていったのです。目指していったのは原音に忠実であり、ハイデンシティ&HiFiな歪のない自然な音。結果的にそれを実現することができるとともに、スピーカーで聴いているのに非常に近いサウンドにすることができました。普通、イヤホンで音を聴くとどうしても頭の中で音が響く感じになりますが、外から音が聴こえるようになります。

AIPでのサウンドは頭の中で音が響くのではなく、外から聴こえてくるのが従来のイヤホンとの大きな違い

--まさに頭外定位する感じですね。オープンエアのヘッドホンのようなオープンエアのイヤホン。非常に解像度の高いサウンドなので、音楽制作用としても非常によさそうです。
松原その通りで、スタジオモニタースピーカーの響きが得られる、従来にないイヤホンだと思います。実際、AIPで聴くことですべての楽器が際立つ存在感を出してくれ、演奏の細かいニュアンスまで忠実に再現されてモニターすることができます。低音から高い音までフラットに鳴らすことができ、まるで生音のようなサウンドを得られるのが特徴です。

音楽制作用のモニターイヤホンとしても快適に利用できる

--ただしワイヤレスであり、Bluetoothでの接続となるから、レイテンシーの観点から楽器の演奏のリアルタイムモニタリングには向かないですよね。スペック的な部分はどのようになっていますか?
松原通信方式はBluetooth 5.0でコーデックはSBCとAACに対応しています。防水規格としてはIPX4防滴仕様となっています。またシリコンイヤーチップとしてSS/S/Mサイズの3種類を標準で用意しております。

--充電の仕方や、フル充電からのバッテリーの持ち時間などはどうですか?
松原専用の充電器とUSB Type-Cケーブルが付属しているので、これにAIPを差し込む形で充電していただく形です。またフル充電からは再生時間はイヤホン本体で約4時間ほど、充電器には約16時間分、合わせて約20時間程度です。なお持ち歩きにも対応できるようにポーチも同梱していますが、室内においては充電器に挿して据え置いていただきインテリアのようにお楽しみいただければと思っております。

付属の充電器にセットすることで動作をオフにして充電を行うことができる

--ところで、このAIP、発売自体は数年前だったと伺いました。まったくその存在を知らなかったのですが、本当ですか?
旭:はい実は、コロナ禍の真っただ中、2020年9月に製品としてリリースしていました。音にはすごく自信を持っていたのですが、形状がユニークなので、Z世代の女性や、コスプレイヤーなどをターゲットにEAR DEVILという名称で売り出したのです。すごく面白いと思ったのですが、なかなかウケなかったですね(苦笑)。そこで元同僚でもあった松原さんに入ってもらい、作戦を見直し、音を全面的に打ち出したAIPとしてリブランディングして、発売しなおしたところです。Acoustic=自然で、Innocent=無垢で、Pure=純粋なサウンドを実現するものなので、ぜひ多くのDTMユーザーのみなさんにも使っていただければと思っております。

--ありがとうございました。

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