Ableton Liveが12.1にアップデート。ピッチ補正プラグインやドラムサンプラーなどを搭載。Push 3も大幅機能向上

AbletonからLive 12のアップデート版、Live 12.1がもう間もなくリリースされます。すでに12.1のパブリックベータが公開されていたので、使っていたという方も少なくないとは思いますが、かなり大きな機能強化となっています。Live 12のバージョンアップ時に本来搭載されていたはずものが、このタイミングで正式登場になったのでは……という感じもしますが、AutoTune的なピッチ補正プラグインやドラム専用のサンプラーが追加されたり、AIによってサンプル素材に自動タグ付けする機能など、11から12へのバージョンアップを見送っていた人も、これらのためにバージョンアップを行っても十分元が取れるような内容になっています。

一方で、Push 3も12.1になることで、いろいろと機能強化が図られており、より使いやすいものへと進化しています。これはLive 12.1の新機能の追加だけでなく、Pushでマクロ設定ができるようになったことなど、Push自体が格段に使いやすくなっているのです。実際どんな機能強化が図られたのか、各ポイントをピックアップして紹介していきましょう。なお、この12.1へとアップデートとタイミングを合わせ、8月29日~9月4日の1週間、新規ユーザー向けに20%オフというセールも実施されているので、その内容も併せて紹介してみましょう。

Ableton Liveが12.1にアップデート。ピッチ補正プラグインやドラムサンプラーなどを搭載。Live本体はもちろん、Pushが大幅機能向上

Ableton Live 12.1がリリース。併せてPush 3も大きく機能・性能UP

Liteも含めたLive 12の全バージョンにAutoTune的なプラグイン、Auto Shiftが追加

今回の12.1へのアップデートでは2つのデバイスが追加されているのが大きな目玉なのですが、その一つがAntareのAuto-Tuneのようなリアルタイム・ピッチ補正プラグイン、Auto Shiftというものです。

目玉機能として搭載されたリアルタイムピッチ補正プラグイン、Auto Shift

このAuto ShiftはLive Intro、Standard、Suiteはもちろんのこと、Live liteにも追加されるという太っ腹。実際どんなプラグインなのかを紹介するビデオがあるので、まずはこちらをご覧ください。

このビデオについて簡単に解説しておくと、これはAudio Effect Rackを利用して3つのAuto Shiftを並べてハモらせています。またLive 12で新たに追加になったスケールにも対応しているので、メジャー、マイナー、リディアン、ドリアン……といった設定をすることで、そのスケールに合わせたピッチで歌わせることが可能になります。

スケールにも対応している

このAuto Shiftは単に音程を設定して、その音程に合わせこむというだけのものではありません。フォルマントを調整することで、男性ボイスを女性ボイスっぽくするとか、子供っぽい歌声にするといったことも可能だし、ビブラートをかけることも可能です。

キーボードを弾くことでボコーダーのようにリアルタイムに演奏することも可能

また、MIDIトラックで指定したメロディーで歌わせることもできるし、MIDIトラックにMIDIキーボードからの信号を入力することで、リアルタイムに音程を設定して歌わせることも可能です。その際、MonoからPolyに変更した上で、Voicesでボイス数を設定することによって、先ほどのようにラックを使ってAuto Shiftを3つ重ね合わせるといったことをせず、1つだけでコーラスを歌わせることも可能です。

強力なエフェクトを内蔵するドラム専用のサンプラー、Drum Sampler登場

もう一つ追加されたのがドラム専用のサンプラーであるDrum Samplerです。これまでLiveにはSamplerおよびSimplerがあり、ドラムラック用には通常Simplerが使われていたわけですが、今回それらに加えてDrum Samplerというものが追加された形です。これもLiteを含むLive 12.1の全エディションで使える形なので、Abletonとしても、かなり力を入れて出してきたもの、ということなんだと思います。

Drum SamplerがLiveの全エディションに搭載された

このDrum Samplerの非常に大きな特徴はこのデバイスの中にエフェクトがセットで入っているという点です。具体的にはStretch、Loop、Pitch Env、Punch、8-bit、FM、Ring Mod、Sub Osc、Noiseという9つのエフェクトを選択できるほか、それらとは別にフィルタも搭載されている形です。

Drum Samplerには9つのエフェクトが内蔵されている

そして、9つのエフェクトは画面下の2つのパラメータで調整できるようになっているのですが、X-Yパッドでそれらのパラメータを動かすことも可能であるため、直感的にそしてリアルタイムにサウンドを変化させられるのが楽しいところ。もちろんフィルタを使って、積極的にサウンドを変化させていくことも可能です。

Drum Samplerというドラム用のサンプラーではありますが、ドラムやパーカッション以外で利用してももちろんOK。さまざまな活用ができそうです。

Limterにモード切替機能追加で、より使いやすく

既存のデバイスに対しても、さまざまなアップデートがされているようですが、中でも大きいのがLimiterの進化です。今回、サウンド面、外観の両方で完全に刷新されたというLimiter、エンベロープの改良によりリミッターのリリースがよりスムーズになり、とくにリリースを長くした場合に、いい効果が出るようになっています。

LimiterにSoft Clipモード、True Peakモードが追加された

またModeというものが追加され、これまで標準モード=Standardモードに加え、Soft Clipモード、True Peakモードを選択できるようになったのです。Soft Clipは上限レベルに近づくと信号が緩やかに抑える形になり、True Peakにするとサンプル間でのピークを抑え、いわゆるトゥルーピークに対応する形です。

さらにM/Sルーティングモードが追加されたり、最初のチャンネルを使用して信号のモノラル部分を制限し、2番目のチャンネルを使用してステレオ部分を制限できるようになっているのも大きな進化点です。

AIでオーディオサンプルを自動解析してタグ付けしてくれる

使い勝手という面で、飛躍的に便利な機能が搭載されました。それがAIによるユーザーコンテンツの自動タグ付け機能です。正確にいうとMusic information retrieval(音楽情報検索)という技術を使ったもので、ユーザーライブラリとして取り込んだオーディオサンプルを自動的に解析した上で、それにもっとも適すると思われるタグを自動で割り当てるというもの。

自動的にタグ付けしてくれるAuto Tag機能が搭載された

従来であれば1つ1つ手動でタグ付けをする必要があり、ユーザーライブラリから目的のものを見つけ出すには、そうしたタグ付けされていることが前提でした。そのため、面倒でなかなか設定できないというのが多くのユーザーの実態だったと思います。それが自動的に行われるというのはまさに画期的。ほかのDAWでもこうした機能を持ったものは現状ではありません。

なお、この自動タグはFiltersのところに新たに登場した目のアイコンをON/OFFすることでブラウザでの表示/非表示を設定することが可能です。もちろんタグエディタで削除したり、ユーザータグに変更することも可能なので、まずは自動でタグ付けし、その後、チェックして必要あれば修正するというのが効率UPにつながりそうです。

Push 3本体でのマクロ設定が可能になった

このようにAbleton live 12.1ではパワフルな機能強化が図られたほかにも、Saturatorがバージョンアップしていたり、MIDIノートのフィルタリングと選択が強化されたり、MIDIノートのチョップ機能、MIDIノートのグリッサンド化機能……などなどさまざまなアップデートが行われています。

Push 3のマクロ設定が本体だけでできるようになった

が、そうしたLive自体のパワーアップのほかにも、Push 3が大きく強化されたのも大きなポイントとなっています。Push 3自体については以前「Ableton Live内蔵のハードウェア、Push 3が誕生!パソコン不要でどこでも持ち運べる音楽制作環境を」、「CPU、SSD、メモリ、Linux内蔵でスタンドアロンで動作する話題のAbleton Push 3、ややマニアックにチェックしてみた」という記事でも紹介しましたが、今回の12.1のタイミングで、さまざまな強化が図られているのです。

このPush 3のスタンドアロン版は内部にプロセッサを備え、コンピュータとの接続不要でLive 12を動かすことができるようになっていました。ただ、コンピュータ版のLive 12と機能的にまったく同じか、というと、まだ新しいデバイスであるだけに、できない機能があったのも事実です。その足りない機能が今回補強されているのです。

その中でも大きいのがPush 3本体でマクロのマッピングができるようになったこと。これにより、デバイスをグループ化して、マクロをより直感的にマッピングできるようになりました。またさまざまなマクロ設定を即座に保存、トリガー、ランダム化できるマクロバリエーション機能も追加されています。

トラックの順番入れ替えが可能になった

そして地味ではあるけれど、Push 3の新バージョンで非常に便利になったのはトラックの順番を入れ替えられるようになったこと。まあ、これはできて当たり前であり、ようやくこのタイミングで実現された、というものですが、操作方法は簡単。変えたいトラックを選んだ上で、ホイールを回すことで入れ替えが可能になります。同様にシーンの順番も変えられるようになっています。

ルーター不要で直接Wi-Fi接続が可能にするHotspot機能

また、Wi-Fi接続に関しても機能強化が図られました。これまで同じWi-Fiルーターに接続することでコンピュータとPush 3を接続することはできましたが、Wi-Fiルーターがない環境だと、そうしたことができませんでした。たとえば地下室やスタジオなどでWi-Fiがない場合だと、接続ができませんでしたし、ステージ上で接続できずに困った……という人も少なくなかったと思います。

Wi-Fiのピアtoピア接続を実現するHotspot機能

しかし、今回HotSpotをオンにすることでSSIDとパスワードが表示されるので、ここにアクセスすればピアtoピアで接続可能となり、ほかのものに干渉させずにやり取りが可能になるので非常に便利です。

Auto ShiftやDrum SamplerもPush 3に搭載された

一方で、前述のAuto ShiftやDrum SamplerもPush 3で使えるようになっているし、AutoTag機能もPush 3で使えるなど、さまざまな機能が追加されています。従来と比較して格段に使いやすく、便利になっているので、これまでPush 3の導入に戸惑っていた人も、このタイミングで入手してみるのもよさそうです。

8月29日~9月4日限定で新規ユーザー向け価格が20%オフ

Ableton Liveを初めて導入しようという方にとってはお得なセールが8月29日~9月4日の一週間限定で開催されています。

これはLive Intro、Live Sandard、Live Suiteの3つのグレードを新規購入する場合に適用されるもの。またさまざまなDTMハードやソフトにバンドルされているAbleton Live Liteを持っている方にも適用されます。具体的な価格は以下の通りです。

特徴 通常価格 セール価格
Live 12 Intro 主要機能を備えた低価格版 ー 16トラック、5GB以上のサウンドを収録 11,800円 9,440円
Live 12 Standard 38GB以上の音素材と、一部のインストゥルメントとエフェクトを搭載したLiveのフル機能モデル 52,800円 42,240円
Live 12 Standard UPG from Live Lite Live LiteからLive 12 Standardへのアップグレード 42,800円 34,240円
Live 12 Suite 71GB以上にも及ぶ多彩な音素材と、LiveおよびMax for Liveすべてのインストゥルメントとエフェクト搭載した最上位モデル 84,800円 67,840円
Live 12 Suite UPG from Live Lite Live LiteからLive 12 Sioteへのアップグレード 77,800円 62,240円

このチャンスに入手してみてはいかがでしょうか?

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