Bechstein D 282、Bösendorfer 290SE、Yamaha C7…、8種の最高峰ピアノを再現する1TB超のサンプリング音源、Neo Pianoの実力

音楽制作においてピアノ音源にはこだわりを持って使っているという人は少なくないと思います。Native InstrumentsのKONTAKTやXLN AUDIOのAddictive Keys、SynthogyのIvory、SteinbergのHALion、IK MultimediaのSampleTank……などなど、これまでも多くのサンプリング音源のライブラリとして数多くのピアノ音源があったので、いろいろなものを使っている人がいると思います。が、今回紹介するのは、そうしたメジャーメーカーのピアノ音源とはちょっと異なるSOUND MAGICNeoPiano(通常価格$499、現在セール価格で$299、さらに20%オフクーポン利用で$239.20)というものを紹介しましょう。

これはサンプリングサウンドと物理モデリングを組み合わせたハイブリッド・モデリング・テクノロジーを用いたピアノ音源で、ここにはSteinwayの1927年のコンサートグランド、Bechstein D 282、Bösendorfer 290SE、Yamaha C7、Yamaha C7…など8種類、計1030GB超という膨大なサンプリング音源を収録したプラグインであり、スタンドアロンのピアノ音源としても使えるというもの。実際どんなものなのか試してみたので、紹介してみましょう。

8種の最高峰ピアノを再現する1TB超のサンプリング音源、Neo Piano

2007年の誕生から第11世代目となるピアノ音源

SOUND MAGICは、現在国内に代理店などがないため、ご存じない方のほうが多いと思いますが、同社は2007年に中国・北京で誕生したソフトウェア音源メーカー。現在はアメリカのアナハイムや、イギリス・ロンドンにも支社を持つ20名の社員で構成される会社です。

以前記事で取り上げたSOUND MAGICいよるAIを使った画期的EQ、NeoEQ

DTMステーションではこれまで「手ごろな価格でフルオーケストラサウンドを実現できるSound MagicのNeo Orchestra CEの実力」、「EQの常識を覆す画期的なイコライザ、AIが調整すべき周波数帯を自動で割り出してくれるNeo EQシリーズのスゴさ」、「AIエンジンでボーカルをいい具合にしてくれるEZVoxが誕生。EQ、ディエッサ、コンプ、ダブラー、リバーブなどを自動で調整」といった記事で取り上げてきたので、「ああ、あのメーカーね」と記憶にある方も少なくないと思います。AIなども駆使する、優れた技術を持つユニークなメーカーです。

そのSOUND MAGICが2007年の設立当初から力を入れてきたのがピアノ音源です。そのピアノ音源のエンジンとしては現在のものが第11世代目とのことですから、いかにピアノにこだわって製品を出してきたのかが感じられます。

8種類のピアノ、1030GBを収録

そのSOUND MAGICではさまざまなピアノ音源製品を出しています。同社サイトを見てみると、Cinema Ground、Neo Piano、Imperial Grand、Blue Grand、Ruby Grand……、と現時点で16製品が並んでいます。

SOUND MAGICサイトでピアノ音源を一覧すると現在16種類が存在する

これらすべてに共通するのはNeo Pianoという名称のプレイバックエンジンが入っていて、それにピアノ音源データが1つもしくは複数付属している、という点です。その中の代表ともいえるのが、今回紹介するNeo Pianoという製品なのです。プレイバックエンジンと製品名が同じなので、ちょっと混乱しそうですが、このNeo Pianoは8つのピアノ音源データがセットになっているのです。説明はともかく、まずはそのNeo Pianoの演奏ビデオをご覧になってみてください。

これはアメリカのピアニスト、Katie Pachnosさんが、ショパンの「ノクターン第 19番 ホ短調 Op.72-1」をNeo Pianoを使って、KORGのKronosを弾いているものです。

ご覧いただくとわかる通り、このショパン・ノクターンの演奏では、順番に音色を切り替えていってます。最初はRuby Grand(1972年製Ymamaha C7)、続いてImperial Grand(Bosendorfer 290 SE)、Thor(Horowitz Steinway:ロシア帝国生まれのアメリカのクラシックピアニスト、ウラディミール・サモイロヴィチ・ホロヴィッツ氏所有のSteinway)、Rose(Fazioli Brunei)、Blue Grand(ビンテージSteinway D)、Cinema Grand(Blüthner)の順です。

それぞれ、力強いピアノ、優しい音色のピアノなど、特徴が出ているのがよくわかります。Soundcloudでも同じ、演奏が収録されているほか、ほかにもNeo Pianoによる演奏が収録されているので、ぜひ聴いてみてください。

Sound Magic · Neo Piano

SOUND MAGICサイトにある8つの音源に関する紹介をそのまま翻訳したのが以下のものです。

IMPERIAL GRAND

 

豊かでダークなサウンドで有名な Bösendorfer 290SE は、非常に詳細なサウンドを通じて信じられないほどのリアリズムを実現します。低音から高音まで、ニューエイジからクラシックまで、さまざまな音楽ジャンルでその希少性が際立っています。
VINTAGE 1927

豊かで贅沢なサウンドを提供するこのスタインウェイ ピアノは、ポップ、ジャズ、クラシックなど、あらゆる種類の音楽に対応できるダイナミック レンジを生み出します。
RUBY GRAND

有名なヤマハ C7 サウンドを誇る Ruby Grand は、世界中の最も有名なコンサート ステージ、国際コンクール、権威ある音楽イベントで使用されてきました。その穏やかなサスティン、美しい音色、そしてユニークな音色は、ポップ、ジャズ、ロックに最適です。
ROSE WHISPER

10 フィート グランド ピアノの限定版カスタム デザインであるこのモデルは、イタリアで手作りされており、世界で最も高価で有名なコンサート グラントの 1 つです。表現力豊かでダイナミック、そして明瞭に響く高音で有名なこの多用途のサウンドは、あらゆるジャンルに適合します。
HOROWITZ STEINWAY

伝説のピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツが最も愛したピアノ、スタインウェイ D は、豊かな音色と、2 分以上続くダイナミックで豊かな共鳴演奏を誇ります。忘れられない息を呑むような体験をお届けします。
MINI RUBY

ヤマハ C3 は、従来の C7 よりも小型ですが、同様に豊かなサウンドを特徴としており、コンサートグランドピアノとは異なる独特で感動的な感覚を与え、他の製品とは一線を画しています。
BECHSTEIN D282

C. ベヒシュタイン D 282 コンサートグランドピアノは、最高級の楽器です。その素晴らしく美しい音色により、大規模なコンサートホールに最適なグランドピアノです。ベヒシュタインはピアノ製造において長い歴史を持ち、ほとんどのドイツ人が好む特別なスタイルの音を奏でます。
BLÜTHNER MODEL ONE

ブリュートナーはドイツの至宝とされています。モデル 1 はブリュートナーの最高傑作であり、過去 150 年間のピアノ製作で培われた知識が凝縮されています。このピアノは、他のピアノではほとんど聞かれない、弱音を弾いたときにも非常に豊かな表現力を発揮します。

これら8つのピアノのトータルで1030GBとのこと。ただ、ピアノだけで1TBも消費してしまうと、ストレージが足りない…と心配してしまう方も多いでしょう。実は8つのデータで消費するストレージの量は28.4GBなので、まったく心配はいりません。なぜこんなに差があるのか、SOUND MAGICに聞いてみたところ

1030GBというのははRAWサンプルコンテンツのサイズです。つまり、ピアノの音を録音し、編集せずにファイルに名前を付けます。次にデータのサイズを測定すると、1030GB になります。これらのサンプルは非常に高解像度で、通常は 32Bit/192kHz または 32Bit/384kHzのデータであり、多くのスペースを消費します。また、ベロシティ レイヤーとマルチマイク・サンプルも多くのスペースを消費します。そこでサンプルデータをモデル化した後、最終的にロスレス圧縮を行い結果としてNeo Piano が読み取れる形式にしたのが、この28.4GBというわけです。このようにハイブリッド モデリング技術の主な利点は、ピアノデータのサイズを大幅に削減できることです。最大4GBのサイズで、ピアノ全体を簡単にRAMにロードでき、パフォーマンスを向上させることができるのです。

との返事がありました。

シンプルながらさまざまな調整ができるNeo Piano

そんなNeo Pianoですが、使い方はシンプル。スタンドアロンとしてもプラグインとしても動作するのですが、起動時は「No Instrument Loaded」と表示されるので、ここをクリックした上で、製品に同梱されている8つの音源データのいずれかを読み込めば、すぐに演奏することが可能。ただ、それだけでOKです。

起動時はサンプリングデータが読み込まれていない

でも、必要に応じて、少し画面をいじることで、いろいろなことが可能になります。まず一番上の真ん中あたりにあるHDDのアイコンをクリックすると、メモリのアイコンに切り替わります。これはHDDからストリーミングするか、RAMに読み込んで鳴らすかを表すものです。SSDを使て散る場合なら、HDDアイコンのままでよさそうですが、RAMに切り替えることで、よりスムーズになる可能性があるので、試してみてください。その右にある数字でRAMの容量の調整もできるので、それも併せて動かしてみるとよさそうです。

HDDモードをRAMモードに切り替えることで、よりスムーズに鳴らすことが可能になる

その右の「A.I. TOOLS」をクリックするとペダル、ベロシティなどに関するインジケータが表示されます。

A.I. TOOLSをオンにすると現在の演奏状況が表示される

またその右のDefaultというところをクリックするとプルダウンメニューが表示されます。確かに基本的には8つのピアノが収録されているのですが、それぞれを調整することによって、コンサートグランド風だったり、ゴスペルピアノ風だったり、ライブロック風な音に調整することが可能です。

通常はDefaultの設定でいいが、モデリング技術でさまざまな音色に変えることも可能

通常はDefaultでいいとは思いますが、少し音を調整してみたいという場合、まずはこのプリセットを使ってみるとよさそうです。

必要に応じて自由に音を作りこむことも可能

通常は音源ライブラリデータを読み込んで、プリセットをセットするだけで十分だと思いますが、必要に応じて、自分で音を作りこんでいくことも可能です。簡単に見てみましょう。

左上はリバーブです。LEDを点灯させるとリバーブがかかるので、パラメータを調整してみてください。

リバーブをオンにすると響き、音の広がりが出る

またNoisesは各種ノイズの調整です。Pedalを上げるとペダルを踏んだときのノイズ、Stringsを上げると、ピアノの弦にかかわるノイズ、Hammerはハンマーのノイズの調整になります。またDampingはダンパーに関する調整を行います。

鍵盤を弾くノイズやダンパーペダルノイズなどを調整できる

左下にいって、Harmonicsは、鍵盤を弾いたときの、近くの鍵盤への反響具合の調整です。さらにToneはLow High、Lidの3つのパラメータを使って音色を変化させていきます。
そしてPerspectiveではピアノを拾うマイク位置を調整するものでPlayerを上げると演奏者本人が聴いているような音、Audienceを上げるとコンサートホールなどでの観客席側からの聴こえ方になってきます。

Perspectiveパラメータを調整することでどこから聴いているのか、距離感を変更できる

そしてTuning Systemではチューニングを設定することが可能で、必要あればScala Tuning Fileを用意することで、各種スケールに変更することもできるのです。またKey Dynamicsを使って鍵盤のベロシティカーブの調整なども可能です。

毎月1本ずつピアノライブラリが増えるSupreme Piano 4

そんなNeo Pianoを入手すれば、ほかのメーカーのピアノとは明らかに異なるクオリティーの高いピアノを手軽に使えるようになります。とくにNeo Pianoであれば、ほかにはない非常に高品位な8種類のピアノを使えるようになるのでお勧めです。

最上位版はSupreme Piano 4。Neo Pianoの音源に加え毎月コンテンツが増えて最大32種類のピアノが追加される

が、ピアノ音源にとくにこだわってきたSOUND MAGICは、この8種類に限らず、さまざまなライブラリがあります。とくに最高峰のSupreme Piano 4は、持っておくと毎月ピアノのライブラリが増えていくという非常にユニークなシステムになっています。SOUND MAGICではかなり膨大なピアノのサンプリングを行っているようで、毎月新たなピアノを追加でダウンロードできるようになるのです。とくにサブスクなどが設定されているわけではないので、単純にSupreme Piano 4を買えば、追加料金不要で増えていくわけです。

当初は8本入っており、その後最低でも32本以上になる、と言っているので、約3年かけて増やしていくというのでしょう。こんな面白い音源ってないですよね?価格は先ほどのNeo Pianoの倍の$999ですが、現在セール価格の$499。さらに最後に記載するクーポンを利用することで$399.20と手ごろな価格になっています。毎月何がダウンロードできるのかWebサイトで更新されていき、最終的には32本以上になるわけですから、1本あたりにすると$124.85、日本円にするとちょうど2,000円でこの高いクオリティーのピアノが手に入ると考えると、かなり安いのではないでしょうか?

Piano Oneならすべて無料で使える!

そしてもう一つ特筆すべき点があります。かなりの数のピアノライブラリを持っているSOUND MAGICですが、その中に1つ無料配布のフリーウェアがあるのです。それがPiano Oneというもの。もしかしたら、すでに何等かで入手した、という人がいるかもしれませんが、Piano OneもYamaha C7をサンプリングしたピアノ音源で、同じNeo Pianoのエンジンで鳴らすものです。

実はデータ量1GB超の無料のPiano Oneという音源も公開されておる

無料とはいえ、1GBのサンプリング容量を持つ音源でSOUND MAGICのNeo Pianoの威力を十分に感じることが可能な音源になっています。ただし、ほかの有料製品と比較すると、ちょっとだけ制限がある、とのこと。具体的には音符の長さが18秒以内に限られているという点、共鳴など一部の機能が欠けている点などです。とはいえ、試用版などと違い期間制限もないし、途中で音が途切れるといったこともありません。またエンジンは同じなので、Neo Pianoの使い勝手も十分これで理解できるはずです。まずは、このPiano Oneをダウンロードして試すところから始めてみてもよさそうです。

なお、購入する際は以下のクーポンコードを入れてみてください。これによりセール価格よりさらに20%オフで入手可能です。これはNeo Piano以外でも利用できるようですが、$99以上の製品に対して効くとのことなので、ぜひ活用してみてください。

クーポンコード:DTM20%OFFSS

【関連情報】
Neo Piano製品情報
Supreme Piano 4製品情報
Piano One製品情報

【価格チェック&購入】
SOUND MAGIC ⇒ Neo Piano
SOUND MAGIC ⇒ Supreme Piano 4
SOUND MAGIC ⇒ Piano One(無料)