6月20日、カシオから76鍵のカシオトーン、CT-S1-76が発表され、6月27日より発売が予定されています。コンパクトで軽量ながらアンプ出力6.5W+6.5Wのスピーカーを内蔵し、これ単体で演奏できるキーボードでありつつ、USBでコンピュータと接続すればDAWと連携する便利なUSB-MIDIキーボードとしても利用可能。オプションのワイヤレスMIDI&AUDIOアダプターであるWU-BT10を利用すればBluetoothでオーディオを飛ばしたり、Bluetooth-MIDIでWindowsやMac、さらにiPhone/iPadやAndroidなどと接続してプレイすることも可能となっています。
これまで61鍵のCT-S1という機種があったので、このCT-S1-76はその鍵盤数を増やしたモデルという位置づけではあるのですが、単に鍵盤数が増えただけでなく、内蔵スピーカーの出力が大きくなったり、iOS/Androidのアプリから各種設定ができるようになるなど、さまざまな点で強化されています。オープンプライスですが、カシオのオンラインストア価格は税込み40,700円と手ごろな価格なのも大きなポイントです。そのCT-S1-76を発表前に少しチェックする機会が得られたので、実際どんなものなのか紹介してみましょう。
76鍵のカシオトーン、CT-S1-76
今回発表されたCT-S1-76はカシオが発売するカシオトーン(Casiotone)の新モデルで、76鍵盤の電子キーボードです。カシオトーンと聞いて、なんか懐かしく感じる人も少なくないと思いますが、初号機のCT-201が誕生したのが1980年なので、今年で誕生から44年。そしてカシオトーンは今も脈々と続いている製品なのです。
その初号機に関しては以前「デジタルシンセの夜明け、1980年発売の『カシオトーン201』に搭載された画期的アイディア、子音・母音音源システム」という記事でも紹介しているので、そちらを参考にしていただきたいのですが、今回そのカシオトーンの新機種としてCT-S1-76が誕生したわけです。
その現行カシオトーンの中でデザイン的にもカッコよく、人気機種だったのが61鍵のCT-S1。今回登場したのはそのCT-S1の76鍵バージョン、という位置づけのようです。もちろんCT-S1は今後も現行製品としてCT-S1-76とともに併売になり、ユーザーの環境に合わせて好きな大きさのキーボードを選べるようになっています。
ただし61鍵のCT-S1はホワイト、ブラック、レッドの3色なのに対し、CT-S1-76はホワイトとブラックの2色で、レッドは存在ません。もっともCT-S1-76は単純にCT-S1から鍵盤が増えた、というだけではありません。
スピーカー搭載の76鍵キーボードとしては最軽量
61鍵から76鍵になって、もちろん横幅は長くっています。具体的にはCT-S1が930mm(W)×258mm(D)×83mm(H)なのに対しCT-S1-76では1140mm(W)×258mm(D)×83mm(H)。つまり奥行き・高さはそのままに、横幅だけ21cm長くなった、という形ですね。
しかし、ここに搭載されているスピーカーが変わっています。カシオトーンは基本的にすべての機種がスピーカー内蔵であり、これ単体で演奏できるというのが大きな特徴になっていますが、CT-S1のスピーカーの出力が2.5W+2.5Wだったのが、CT-S1-76では6.5W+6.5Wとよりパワフルになっています。6.5W+6.5Wあると、かなりな音量が出せますね。もっとも、それぞれのスピーカーサイズ自体は130mm×60mmと同サイズになっています。
そんなCT-S1-76、重さは5.3kgとなっていますが、実はスピーカー内蔵のキーボードとしては調べた限りではおそらく最軽量なのだとか。ちなみにCT-S1は4.5kgです。
コアには音の表現力を最大限に発揮するAiX音源を搭載
カシオトーンは機種によって、さまざまな音源を搭載していますが、CT-S1、そしてCT-S1-76に搭載されているのはAiX(Acoustic Intelligent multi-eXpression)音源というもの。このAiX音源はカシオが電子キーボード向けに開発した音源で、楽器としての音の本質を追求し、音楽的な表現力を高めた、というもの。回路や機構、ソフトウェア、チップ(LSI)などを総合的にデザインすることで、ピアノやストリングスなどのアコースティック楽器から、エレクトリック・ギターやオルガンなどの電気楽器、シンセサイザーといった電子楽器まで、音の特性を徹底的に解析しリアルな音色を再現しているそうです。
実は歌うキーボードであるCT-S1000VにINSTURUMENTとして搭載されているのもAiX音源。パワフルな低音からクリアな高音までを豊かに響かせることができ、高性能LSIの高い演算能力でピアノの音色変化やドラムの空気感、ストリングスのリッチな広がりなど、アコースティック楽器が持つ音の魅力を自然に表現することができます。
以下にCT-S1-76、CT-S1に搭載されている音色をいくつかピックアップしてみたので、ぜひチェックしてみてください。かなりリアルなサウンド表現になっていることが分かると思います。
CZやVZの代表的な音色が、CASIO CLASSIC TONESとして搭載
さらに、CT-S1-76、CT-S1の音色としてピックアップしたいのがCASIO CLASSIC TONESという音色群。
この名称からも想像できる通り、カシオ歴代の電子楽器のサウンドを、AiX音源によって再現させたもの。前述の1980年誕生の第一号機Casiotone 201(CT-201)をはじめ、PD(Phase Distortion)音源として80年代に大ヒットとなったCZ-101、またiPD音源を搭載したVZ-1……などの歴代のカシオのシンセサイザから厳選したサウンドを鳴らせるのです。
いくつかピックアップしてみると、以下のようなサウンドです。
なおPD音源については「カシオのシンセサイザの原点はCZ-101にあり。PD音源とは何なのか」で詳しく解説しているので、こちらを参考にしてみてください。
CT-S1-76には、CT-S1と同様にCASIO CLASSIC TONESを含め、トータル61音色が収録されています。
iPhone/iPad、Androidのアプリから各種設定が可能
そんな楽器としてのとしての機能、性能を持つCT-S1-76。音源においてはCT-S1とまったく同じであり、本体の操作ボタンなども同じなのですが、一つ大きく進化した点があります。それがiPhone/iPad、Android用のアプリ、CASIO MUSIC SPACEと接続して各種設定ができるようになっている、という点です。
これを利用するにはCT-S1-76のmicroUSB端子とスマホやタブレットと接続するか、Bluetooth-MIDIで接続する必要があるのですが、接続することによって、使い勝手が各段に向上するのです。
具体的には、まず音色選び。前述の通り、CT-S1-76には61音色が入っていますが、それを一覧して、選ぶことができるし、カテゴリーから絞って選択することも可能です。もちろん本体だけで選ぶことも可能ではあるのですが、本体に液晶ディスプレイなどがないため、マニュアルの音色リストを見て、鍵盤に割り振られた番号などをもとに設定する必要があるため、なかなか操作しづらいのが実情。それが、アプリを使えば簡単に行えるわけです。
また鍵盤のタッチレスポンスを調整したり、トランスポーズの設定、チューニング、さらには音律のタイプ設定、ダンパーペダルの機能選択……などなどを行えるようになっています。
また、このアプリにはMIDIレコーダー機能も搭載されています。これもアプリが持っている機能というより、CT-S1-76本体が持っている機能をリモートコントロールするものですが、アプリを使うことで、より操作しやすくなっています。
なお、USB接続する場合はOTGケーブルやLightning-USBアダプタなどが必要となります。Bluetooth-MIDIを利用する場合は、オプションのワイヤレスMIDI&AUDIOアダプター、WU-BT10が必要となります。
USB接続でDAWとの連携も
そして、やはりDTMステーションとして一番気になるのがパソコン、DAWとの連携についてです。これもスマホやタブレットとの接続と同様、microUSB端子を利用することで、接続してMIDIのやり取りが可能になっています。
MIDIの打ち込み用にUSB-MIDIキーボードを探しているという方も多いと思いますが、76鍵盤となると、なかなかいいもの見つからないのが実情。そんな中、CT-S1-76であれば、コンパクトで便利に使うことが可能です。
基本的にはドライバなど不要でWindowsやMacとUSBケーブルで接続するだけでOK。その後DAWを起動すればCASIO CT-S1-76 USBとしてMIDIの入力、出力として見えるので、これを指定すればすぐに使うことができます。
また前述のワイヤレスMIDI&AUDIOアダプター、WU-BT10を利用すれば、Bluetooth-MIDIで接続することも可能です。ただし、Windowsの場合はBluetooth-MIDIに多少クセがあるため、「WinRT MIDI/UWP MIDIって何だ? WindowsにおけるBluetooth MIDIの活用法」という記事を参考にしてみてください。
以上、カシオトーンの新製品、CT-S1-76についてざっと紹介してみましたが、いかがでしょうか?4万円程度でこれだけの機能を持ったキーボードが手に入るというのは、悪くない選択だと思います。
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CT-S1-76製品情報