Rolandのフラグシップ、FANTOM EXが誕生。JUPITER-8、SH-101、JX-3Pを蘇らせるとともにJD-800も忠実に再現。Cubase、Studio Oneとの連携も

4月25日、Rolandからフラグシップのシンセサイザ、FANTOMの新モデルFANTOM EXが発表されました。セミウェイテッド61鍵盤のFANTOM 6 EX、同じく76鍵盤のFANTOM 7 EX、そして木材と樹脂とのハイブリッド構造のプログレッシブ・ハンマー・アクションの88鍵盤であるFANTOM 8 EXの3ラインナップ。これまでのFANTOMシリーズの機能、構造、デザインは引き継ぎつつ、Roland最上のアナログ・モデリング・テクノロジー=ACBを利用してJUPITER-8およびSH-101、さらにはJX-3Pの名器を極めてリアルなサウンドとレスポンスで再現しています。

さらに新開発のSuperNATURAL Acousitic Piano 3というピアノを新たに搭載したり、JD-800も実機に忠実な形で再現。また、FANTOM用に設計された最新シンセサイザ・エンジンn/zyme(エンザイム)も装備するなど、とにかく機能満載。DAWコントロールとしては従来のFANTOMで対応していたLogic、Ableton Live、MainStageに加え、CubaseやStudio Oneにも対応。これによって、ほとんどのDAWと連携できるようになっています。実際この新しいFANTOM EXがどんな点が強化されたのか、DAWと組み合わせることでどういうことができるのかなど、チェックしてみたいと思います。

Rolandからフラグシップシンセ、FANTOMの新シリーズ、FANTOM EXシリーズが誕生

FANTOMからFANTOM EXへフラグシップモデルがさらに進化

RolandのフラグシップシンセであるFANTOMシリーズ、FANTOM 6、FANTOM 7、FANTOM 8のそれぞれが進化し、FANTOM 6 EX、FANTOM 7 EX、FANTOM 8 EXとなって発売されました。

FANTOMはスピーディーな制作と表現力豊かなパフォーマンスを実現させるRoland最高峰のシンセサイザ。DAW環境とも有機的に連携することができ、まさに現代の音楽制作にマッチしたシンセサイザとなっています。

今回登場したFANTOM EXの3機種、従来モデルと見た目はそっくり。実は大きさ、形状、デザインなどもすべて同じなのですが、内部が大きく強化されたことにより、非常に強力なシンセサイザへと生まれ変わっているのです。まずは、そのFANTOM EXのサウンドを紹介するビデオがあるので、こちらをご覧になってみてください。

非常にナチュラルなサウンドのアコースティックピアノを実現できる一方、Rolandのビンテージシンセを代表するJUPITER-8やSH-101、そしてJX-3Pをアナログ・モデリング技術によって忠実に再現させているのもFANTOM EXの大きなポイントです。一方で、1991年に発売されたデジタル・シンセサイザであるJD-800もまた別の技術でFANTOM EXで再現させています。さらに、Rolandのシンセサイザとしては少し珍しいWavetable系のシンセサイザであるn/zymeも搭載するなど、とにかくさまざまな機能が強化された機材となっています。

実はすでにFANTOM EXへのアップグレードキットがリリースされていた!?

このFANTOM EXリリーズのニュースを見て「あれ?FANTOM EXってこの前出てなかったっけ?」と不思議に思った方は正解。実は昨年11月にRoland Cloudを介して「FANTOM EX System Upgrade for FANTOMO 6/7/8」というものが、$199でリリースされているのです。これを適用することによって、従来機種であるFANTOM 6、FANTOM 7、FANTOM 8をFANTOM 6 EX、FANTOM 7 EX、FANTOM 8 EXへとアップグレードすることが可能になっていました。

すでに昨年11月に登場している従来のFANTOMをFANTOM EXにアップグレードするキット

もちろん現在も「FANTOM EX System Upgrade for FANTOMO 6/7/8」は入手可能なので、すでに従来機種を持ってるよ、という方は最新モデルへとアップグレードすることが可能なのです。別の見方をすれば、もし旧製品の在庫が手ごろな価格で販売されていれば、チャンスともいえそうですね。

このアップグレードキットは、FANTOMの内部のファームウェアを書き換えるものであり、基板を追加するとか差し替えるといった操作は不要。USBメモリを利用して書き換える形になっているので、「機材内部を開けて調整するのは怖い」という人でも心配なくアップグレードすることが可能です。

ただし、従来製品をアップグレードしても、ベンド・ホイール上にあるFANTOMロゴは変わらないので、新製品とに違いはロゴ部分だけ、ということになりますね。

新たにJX-3P ACB Expansionが登場

では、もう少しFANTOM EXの中身についてみていきましょう。
まず、最初に紹介したいのが、前述のアップグレードキット登場のときにはまだなく、このFANTOM EXの誕生に合わせ、4月25日に発表されたJX-3P ACB Expansionです。

これは名前の通り、JX-3PをFANTOM上で忠実に再現させたもの。1983年発売のJX-3PはJUNO-6やJUNO-106と同世代のアナログシンセながら、だいぶ方向性の異なるシンセで、パッド系などでもよく使われていた名器です。

実はこのJX-3P、FANTOM EX本体に標準で搭載されているのではなく、Roland Cloudからダウンロードし、USBメモリを介してFANTOM EXへインストールして使う形になっています。もっともライセンス自体はFANTOM EXに含まれているため別途購入する必要はなく、ユーザーが使いたいときにインストールして利用できる形となっています。

ちなみに、当時のJX-3PはオプションとしてPG-200というモジュールが用意されていて、これを使うことで音色エディットがしやすくなる形となっていましたが、このJX-3P ACB ExpansionはもちろんPG-200が載った状態をシミュレーションしており、PG-200のUIを用いて音色エディットができるようになっています。

ACBによりJX-3PのほかJUPITER-8、SH-101を忠実に再現

そのJX-3Pに加え、FANTOM EXではJUPITER-8およびSH-101がプリインストールの形で搭載されています。そしてこれら3つに共通するのがACBという技術です。

これまでもDTMステーションで何度か紹介したことがありましたが、RolandではACB=Analog Circuit Behaviorというテクノロジーを生み出しています。これはTR-8SやSYSTEM-8などのAIRAシリーズ、Roland CloudのLEGENDARYシリーズでも使われているもので、昔のアナログ回路を正確にシミュレーションするRoland独自の技術です。もちろんアナログモデリングという技術自体は、一般化しており、今や珍しいものではありません。

しかしACBはRoland社内に残る、回路図や現存する実機、そして当時の開発者の証言などを元に、アナログ回路とそのすべての動作をコンポーネントレベルで忠実に再現するというものになっています。単に回路図だけでは分からないノウハウも含めて再現しているからこそ、ホンモノと同じ音が出せるのです。

ご存じの通りJUPITER-8は1981年に発売された史上最も有名で人気の高いポリシンセの1つ。これを本家であるRoland自らが回路レベルで完全に再現し、FANTOMにマッチさせる形で配置したもの。カラーディスプレイ上でグラフィカルにパラメータが調整可能で、JUPITAR-8のサウンドをそのまま出せるし、もちろんほかのFANTOMサウンドと組み合わせて使うことも可能です。

一方SH-101は1982年誕生のシンセであり、エレクトロニック・ミュージックのスタイルを形作り上げてきた機材。現在でも実機が世界中で幅広く使われていますが、それをFANTOM上で使えるようになっているのです。

V-PianoとSuperNATURALで高品位なピアノも

ACBとは別の形での新音源もいろいろ追加されています。その中でも大きなものがピアノ音源で、まったく異なる方式の2種類のアコースティックピアノが搭載されています。

その1つがGerman Concert V-Piano Expansion 01です。これはもともとRolandのステージピアノのフラグシップ、RD-2000用に開発されたV-Pianoの音源で、豊かな表現力と力強さを兼ね備えた最高峰ピアノサウンドを実現するもの。17種類のシーンそれぞれにユニークなキャラクタがあり、ピアノサウンドの可能性を大きく広げることができる音源です。

そしてもう1つがSuperNATURAL Acoustic Piano 3。こちらはRoland自慢のモデリング技術SuperNATURALによるピアノ音源で、ステージ演奏に最適な明るくダイナミックなトーンからアンビエントに適したムーディーなバリエーションまで、15種類の特徴的なピアノサウンドが出せるようになっています。

JD-800と先鋭的なシンセ、n/zyme

さらにRolandのデジタルシンセとして大ファンが多いJD-800もFANTMO EXに搭載されています。JD-800はデジタルシンセでありながら、アナログシンセのような使い勝手で音作りができるというもの。1991年に誕生したJD-800は90年代の音楽シーンで幅広く使われた名器でもあります。

こちらはACBではなく、Rolandの最新テクノロジー、ZEN-Coreエンジンを使ったものとなっており、JD-800のオリジナル波形を活用しながら、煌びやかなサウンドを再現してくれます。

さらに同じZEN-Coreエンジンを使ったシンセが、n/zymeです。Wavetable OscillatorやPhase / Shape Modulation、レゾナント・フィルター、2系統のステップLFOを融合させたn/zymeは、まさに現代のサウンド・メイクができる新世代シンセサイザとなっており、これもFANTOM EX上で前述のビンテージシンセと一緒に鳴らせるというのが面白いところです。

Cubase、Studio Oneとも連携し、DAW環境とシームレスに

そんなFANTOM EXですが、DTM的に見た際、もう一つ大きな進化点があります。それは、これまでLogic Pro/MainStageとAbleton Liveとの連携ができたのに加え、CubaseとStudio Oneとの連携も可能になった、という点です。

この連携は大きく2つの要素があります。まずはMIDIコントローラとしての部分です。あらかじめFANTOM EXのSYSTEM設定でUSB Driverを「GENERIC」から「VENDOR」に変更し、「WRITE」ボタンを押してから電源を入れ直すというのがミソなのですが、これを行った上で、WindowsやMacと接続します。この際パソコン側にはFANTOM用のドライバをインストールしておきます。

その後、FANTOMのDAW設定において「Cubase / Studio One」を選択します。さらにCubaseやStudio One側のリモートコントローラとしてMackie Controlを選び、「FANTOM-6 7 8 DAW CTRL」の入出力を選べばOK。

ちなみにCubaseの場合はMIDI ポートの設定において「All MIDI Input」の項目のチェックボックスを外しておくのがポイントです。

この状態でFANTOM側を操作すれば、CubaseやStudio Oneをリモート操作できるフィジカルコントローラとして機能させることが可能になります。

そしてもう1つの要素がオーディオです。DAW側から見るとFANTOM EXは16in/6outのオーディオインターフェイスのように見えます。

この際44.1kHzのサンプリングレート限定とはなるのですが、FANTOMの各MIDIチャンネルのオーディオ出力をデジタルのまま劣化なくレコーディングできるので、まさにDAWとFANTOM EXを融合させて使うことが可能になるのです。

以上、FANTOM EXについて、従来のFANTOMになかった機能を中心にざっと紹介してみました。もちろん従来からの機能も見ていけば膨大。そして、今回のCubase、Studio Oneへの対応によって、まさに現在の制作環境にピッタリとマッチさせたシンセサイザに進化しているので、ハードウェアのシンセサイザ、そしてキーボードの導入を考えているなら、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?

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FANTOM EX製品情報

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