ベストセラーオーディオIF Steinberg UR-CシリーズがUPDATE。機能強化されたUR-C V3.0の実力

2019年に発売され、多くのDTMユーザーに愛用されているSteinbergUR-Cシリーズ。そんなUR-Cシリーズは発売されてから5年経ちますが、今もなお進化を続けています。ご存知の方も多いと思いますが、先日、新しいファームウェアとドライバーがリリースされ、ユーザーは無償でdspMixFx UR-C V3.0を使えるようになりました。dspMixFxとは、UR-Cシリーズの特徴ともいえるミキサーシステム。PCに負荷を掛けることなく、本体に搭載しているDSPを使って、エフェクトを掛けたり、ループバックをコントロールしたり、モニターを調整したり…、音楽制作に限らず、配信などでも重宝する機能。

そんな進化したdspMixFxでは、DAW、音楽プレーヤー、ボイスチャットなど複数のオーディオアプリケーションのボリュームを個別にコントロール可能になりました。また、専用のストリーミングミックスが搭載され、ストリーミングのメイン出力にマルチバンドコンプレッサをインサートできるようにもなっています。さらに新しいエフェクトの追加、より直感的に使えるようになったUIなど、主に配信関係がかなり強化されているような印象で、ある意味、ヤマハのAG08で実現させた機能をUR-Cシリーズでも利用できるようにしたもの、ともいえそうです。そのUR-Cシリーズ、昨年秋にはカラーバリエーションが登場したり、先日はアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」とのコラボモデル「UR22C BOCCHI EDITION」が発表されるなど、話題沸騰中です。そんな圧倒的な存在感を放つ、UR-Cシリーズがどう進化したのか紹介していきましょう。

UR-Cはアップデートにより自由なセッティングと新たなエフェクトが追加。ぼっち・ざ・ろっく!コラボモデルも登場

SteinbergのベストセラーオーディオインターフェイスUR-Cシリーズ

UR-Cシリーズは、Steinbergが開発したUSB Type-C接続のオーディオインターフェイス。UR-Cシリーズは、UR22C、UR24C、UR44C、UR816Cの4機種で展開されており、ほかにもUR22C Recording Packというコンデンサマイクやヘッドホンをセットにした製品も存在しています。32bit/192kHz対応で、DSPの内蔵により、ほぼレイテンシーゼロでのエフェクトを実現しているのが、最大の特徴。大人気の製品なので、ご存知の方も多いと思いますが、発売当初「SteinbergがUSB Type-CモデルのオーディオインターフェイスUR22C、UR44C、UR816Cを発売。時代は32bit INTEGERに!」という記事で、詳しく紹介しているので、ぜひそちらもご覧ください。

Steinbergが開発したUSB Type-C接続のオーディオインターフェイスUR-Cシリーズ

そのUR-Cシリーズですが、発売から5年が経過する中、やはり原料価格の高騰、物価の高騰、円安の進行……などなどで7月1日から価格改定されています。こうした価格改定はUR-Cシリーズに限ったことではないですが、具体的な価格は以下のようになっています。

製品名 メーカー希望小売価格(税込)
UR22C 22,000円 → 28,600円
UR22C Recording Pack 26,300円 → 47,300円
UR44C 39,600円 → 49,500円
UR816C 72,600円 → 88,000円

ちなみにSteinbergのオーディオインターフェイスには、最近発売されたIXOシリーズというモデルも存在しています。このIXOシリーズとUR-Cシリーズの大きな違いは、DSPを装備しているかどうかという点。前述のとおりUR-CシリーズはDSPを内蔵しているので、PCに負荷を掛けることなくエフェクトなどを掛けることができます。一方IXOシリーズは、DSPを搭載していないので、よりシンプルな作りになっているという違いがあります。またIXOは、軽量でよりコンパクトなので持ち運びしやすく、UR-Cシリーズと比較すると、かなり購入しやすい価格設定になっているなど、よりライトに使える機材となっています。詳しくは、「ベストセラーオーディオインターフェイスUR12とUR22mkIIの後継機となるSteinberg IXO12とIXO22の実力とは?」という記事で紹介しているので、ご覧ください。

UR-Cシリーズよりも軽くてコンパクトなIXOシリーズ

マイクやPC上の音声信号を自由自在にコントロールするdspMixFx

さてここからは、UR-Cシリーズに搭載されているDSPを使って動かす、dspMixFxにフォーカスして紹介していきます。dspMixFxとは、以下のような画面のソフトウェア。

ミキサーでバランスを取ったり、DSPを使ったエフェクトを調整できるdspMixFx

ここでは、各チャンネルのボリュームのバランスを取るのはもちろんのこと、各チャンネルにエフェクトを掛けたりすることができます。これを使って、DAWに入る前の信号とDAWから出た後の信号をコントロールすることができるのですが、dspMixFxを使わなくても問題なくレコーディングを行ったりすることはできるので、意識していない方もいるかもしれません。しかし、dspMixFxを使えるようになると、かなり便利なので、この機会にぜひ試してみてください。

Steinbergから、UR-C Version 3 アップデートに関しての動画もアップロードされているので、お時間ある方はこちらもご覧ください。

AG08と同様のマルチストリームオーディオドライバーにより柔軟性が向上

では、dspMixFx UR-C V3.0の進化点について順番に見ていきましょう。まずは、マルチストリームオーディオドライバーについて、これは音楽プレイヤーだったり、ゲーム音だったり、ボイスチャットだったりをミキサーのチャンネルに立ち上げて、個別にコントロールできる機能。これまでは、InputとDAWでしかチャンネルを分けることができなかったのですが、dspMixFx UR-C V3.0からはinputとDAWに加えて、Music、Voiceという2つのチャンネルが追加されています。

自由に選択できる2つのチャンネルが追加された

デフォルトでは、Music、Voiceというチャンネル名になっていますが、こちらは名前を変更でき、実際は自由自在に音声信号をコントロールできます。PC側の音声出力設定を見てみると、3つの出力先を選べるようになっており、ここで選択したチャンネルに信号が行くようになります。たとえば、BGMやゲーム音をLineというチャンネル、ZOOMやDiscordをVoiceのチャンネル、DAWの出力先をDAWのチャンネルに割り振ることで、各信号のバランスをdspMixFxでとることができます。これまで、同じようなことをしようとすると別途仮想ミキサーソフトが必要だったので、かなり嬉しいアップデートですよね。

PCや各ソフトから出力先を選択できる

さらに、専用のストリーミングミックスのチャンネルが追加されました。右のタブからアイコンをクリックすると配信ミックスのミキサーに切り替わり、ここで配信する最終の音声のモニタリングとその調整を行うことが可能。さきほど、各チャンネルに好きな音声を割り振れると書きましたが、加えて配信に便利なエフェクトが搭載され、これを使うことができます。

専用のストリーミングミックスのチャンネルが追加された

これらの機能、実はヤマハのAG08で実現させたものと、かなり近いものとなっています。ご存じの通り、Steinbergはヤマハの子会社であり、Steinbergのオーディオインターフェイスは日本のヤマハが主導的に開発しているものなので、AGシリーズとURシリーズはいわば兄弟関係。

AGシリーズのフラグシップ、AG08

中でもAGシリーズのフラグシップであるAG08は、ステレオ3系統を仮想的に別々に出力でき、それらを含めたStreaming、Voice、AUXの3系統でPCに戻すことができる仕様で、そこが大きな売りのポイントになっていたわけですが、今回のUR-C Ver 3.0ではそれに匹敵することができるようになったわけです。AG08については、以前「DAW配信にも使える!? ヤマハのライブストリーミングミキサーの最高峰AG08は、一般的なミキサーと何が違うのか?」という記事でも紹介しているので、そちらも参考にしてみてください。

新たに追加された6つのエフェクト

配信ミックスのミキサーを選択すると、これまでエフェクトをインサートしていたラックに加え、もう1段配信用のエフェクトをインサートするラックが表示されます。まず配信で主にマイクを接続するInputチャンネルでは、GateかCompを選択できるようになりました。

InputチャンネルではGateかCompを選択できる

ここでは、GateかCompのどちらか一方しか選べませんが、従来から搭載してあったCh.Stripを使えば、実質コンプとゲートを同時に使用することも可能です。

チャンネルストリップとGateを組み合わせて使うことも可能

また、DAW、Music、Voiceのチャンネルには、Duckerというエフェクトが搭載されています。これは、たとえばマイクで話しているときはBGMの音量を下げ、話してないときはBGMを上げるというのを自動で行うエフェクト。サイドチェインを利用したコンプのようなエフェクトで、声以外をある程度聴かせつつ、自分の声を目立たせたいときに便利なエフェクトとなっています。

声以外のサウンドを自動的に抑えてくれるDucker

そして、最終段にはマルチバンドコンプレッサが搭載され、マイク、ゲーム音、ボイスなどすべてミックスした音に対してコンプ処理を行えるようになりました。また、このマルチバンドコンプは1-knobというボタンが搭載されているので、このエフェクトに詳しくなくても、1つパラメータを操作するだけで、いい感じに使うことができます。

配信ミックスのミキサーでは最終段にマルチバンドコンプレッサをインサートできる

また、マイクのチャンネルにインサートするエフェクトも増えており、PITCH FIXというピッチシフタ&ボイスチェンジャも搭載されました。歌を歌う際にはスケールを選択して、ちょっと歌をうまく聴かせたり、ケロケロボイスを作ったりすることが可能。ボイスチェンジャ的な使い方もできるので、バ美肉ツール的な利用もできます。通常であれば、リアルタイムに使うのであればハードのボイスエフェクタを用意する必要があるし、別ソフトで声を変えるとレイテンシが気になったりしますが、このPITCH FIXを使えば音の遅れを心配することなく、無料で声を変えることができるのです。

ボイチェンを行えるPITCH FIXも無料で使える

ほかにも、細かいポイントもアップデートされており、より直感的に操作できるようになるなど、使い勝手も向上しています。前述の通りチャンネル名の変更ができたり、シーンの保存も可能になったり、UR22CにあるDAWとMIXのツマミを回すと、それがdspMixFxにも反映されたり、無料アップデートなのにかなりの部分が便利になっています。
過去記事でも書いていますが、iPhoneやiPadでDSPコントロールすることもできるので、配信中は手元で操作できるようにしておくという使い方もできますね。

グリーンとレッドのカラバリも昨年秋から登場

そんなUR-Cシリーズですが、昨年10月に従来のブラックモデルに加え、2種類のカラーバリエーションが追加されています。具体的にはUR22C GN(グリーン)、UR22C RD(レッド)、UR44C RD(レッド)、そしてUR22C RD Recording Packのそれぞれす。仕様も価格は通常色と同一ですが、カラーの選択肢が増えたのは嬉しいところですね。

UR22CにGREENとREDのカラーバリエーションが登場

ぼっち・ざ・ろっく!コラボモデル、UR22C BOCCHI EDITIONの受注申し込み受付中

UR22C BOCCHI EDITIONが7月28日まで受注受付中 ©はまじあき/芳文社・アニプレックス

そんなUR-Cに、またユニークなモデルが発売されます。アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」とのコラボモデルです。アニメの作中で主人公・後藤ひとりが、押し入れの中でYouTubeにアップする作品を制作するのに利用していたUR22C。そのUR22Cの特別モデルが限定生産されることになったのです。
UR22Cのブラックモデルの天面にギターを演奏する後藤ひとりがデザインされているのとともに、サイドには通称「ツチノコぼっち」があしらわれているなど、限定デザイン仕様になっています。
価格は35,200円(税込)と通常版より高い設定になっており、受注生産の限定モデル。その受注期間は2024年7月28日までとなっています。そこからの生産となるようで、納品は来年2月ごろの予定とのこと。申し込みは各楽器店で行っているとのことなので、気になる方は、ぜひ早めの申し込みを!
【予約受付】
◎Rock oN ⇒ UR22C BOCCHI EDITION
◎OTAIRECORD ⇒ UR22C BOCCHI EDITION
◎サウンドハウス ⇒ UR22C BOCCHI EDITION

以上、dspMixFx UR-C V3.0と間単にカラバリについて紹介しました。今回のアップデートで便利すぎる機能が多数追加されたので、これきっかけでUR-Cシリーズを購入する人が増えそうな予感がしますね。これまでも、なんの不満もなく使えていたUR-Cシリーズですが、無料でさらに進化するのは、なかなか太っ腹ですよね。発売から5年目で、このアップデートなので、まだまだ長く愛用できそうです。

【関連情報】
UR-Cシリーズ製品情報
UR22C BOCCHI EDITION情報
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