録音した音声をAIがいい感じに仕上げてくれるiZotope VEAを声優・小岩井ことりさんと一緒に試してみた

先日、iZotopeがリリースして、いろいろなところで話題になっているプラグイン、VEA=Voice Enhancement Assistant。4,200円と手ごろな価格ながら、適当に録音した音声でも、プロフェッショナルな音に仕立ててくれるツールとして、さまざまな現場で使われるようになってきているようです。「コンテンツクリエイターのためのAIオーディオエンハンサー」として登場したVEAはiZotopeのRXOzoneNectarのテクノロジーが詰め込まれているとのことですが、初心者でも本当に簡単に使えてしまう、というのが大きな特徴です。

このVEAについては、1月13日に配信したDTMステーションPlus!の番組でも特集しましたが、先日、声優の小岩井ことり(@koiwai_kotori)さんとも改めてその実力について試してみました。ご存じのとおり、小岩井さんは自身でRXも使いこなすバリバリのiZotopeユーザー。その小岩井さんから見てVEAは使えるのか、RXと何が違い、どう使い分けるべきなのかなど、実際に小岩井さんの声を収録しながらチェックするとともに、コメントしてもらいましたので、紹介していきましょう。

声優の小岩井ことりさんと、iZotopeのVEAについてどのくらいの効果があるのか試してみた

すべて自動で音声をブラッシュアップしてくれるツール、VEA

VEAについて、ご存じない方もいると思うので、まずはその概要について紹介してみましょう。このプラグインはVEAと書いて「ヴィア」と読むそうですが、音声の調整を誰でも簡単にできてしまう、という画期的なソフト。AIを駆使してオーディオデータを分析した上で、ベストなサウンドに素早く仕立てくれるというツールなのです。

ボーカル用途で使うことも可能ですが、音楽用というより、人が喋る声に対し、プロのサウンドエンジニアが行うような音質調整をしてくれるのですが、まずは以下のビデオをちょっとご覧になってみてください。

お分かりいただけたでしょうか?今回、小岩井さんに、ノイズがありそうな場所でいろいろ声を録音してもらったのですが、あえてマイクを離したり、向きを反対に向けるなどして音質悪めで録ってもらっていたのですが、それをVEAに5~6秒聴かせてあげると、勝手にその音を分析していい感じに仕上げてくれのです。


バリバリのDTMerでもある小岩井ことりさん

ノイズがなくなり、声の明瞭度が上がり、聴きやすい声になっています。さらにその後、VEAにあるClean、Shape、Boostという3つのパラメータを適当に少し持ち上げてみると、さらにいい感じに仕立てられる、というわけです。

基本全自動だけど、3つのパラメータを調整することでより好みの音声に

いまのビデオからも分かる通り、VEAの使い方はいたって簡単。プラグインとして組み込むと自動でLEARN状態になるので、音を聴かせて学習させます。もちろん、やり直す場合などは手動でLEARNボタンを押せばOK。

その後、自動でレンダーしてくれるので、あとは必要あれば少しパラメータを調整するというだけなので、音の処理に関して何の知識がない人でも、プラグインの起動さえできれば、誰でも簡単に調整することが可能です。

小岩井さんには、ほかにもいくつか、試してもらっているので、元の音とVEAを使って一瞬で調整した音を比較してみてください。

kenfujimoto · VEA

いかがですか?ノイズがある中で、少しボヤけた音が、クッキリした音になって前に出てくるのが分かると思います。

Clean、Shape、Boostという3つのパラメータしかないので、あまり分からなくても適当に調整するだけでいいのですが、それぞれの役割を簡単に紹介すると、まずCleanはその名称からも分かる通り、音をクリーニングしていくためのパラメータ。iZotopeのRXのエンジンがここに採用されているとのことで、このパラメータを上げていくことにより、音のバックグラウンドノイズを消していくことができます。

具体的にはRXのVoice De-noise、De-hum、De-ess、Mouth De-Clickの4つがここに使われているのだとか…。100%まで上げれば、バックグラウンドノイズはほぼゼロになるのですが、あまり上げすぎると、本来聴かせたい音声のほうにも影響が出て、音がこもった感じになってしまうので、ほどほどにする、というのがポイントです。

基本的にすべて自動で調整してくれるiZotopeのVEA。必要に応じて3つのパラメータも使える

次のShapeは音のキャラクタを調整するためのものです。本来であればEQや、フィルタ操作などで細かく調整すべきところをノブ一つで調整できるというのがVEAの凄いところ。VEAに数秒聴かせるだけで、いい具合に調整してくれますが、必要に応じて、上げたり下げたりすることで、声質を好みの感じにすることができるのです。

そしてBoostは音の強さを調整するためのものです。でも、Boostのポイントは単に音声のボリュームを上げるというのではなく、音の強弱を維持しつつ自然な仕上がりで、まさにプロのミックスエンジニアが処理したような音声に調整をしてくれるというところ。

画面左下のスイッチでダークモードとライトモードの変更が可能

いずれも極端に上げすぎず、デフォルトよりちょっと上げると効果が見えやすくなるので、好みに応じて調整するのがよさそうです。

ノイズ除去だけなら、やはりRXに軍配が上がるけど…

でも、実際にこれらの音声処理結果を聴いてみて、「もうちょっとノイズをキレイに取れないの?」と思った方も少なくないと思います。

実は今回、小岩井さんとVEAのテストをするにあたり、「RXとの違いがどのくらいなのかもチェックしてみたいよね」、という話をしており、ノイズリダクションだけにフォーカスをした実験もしてみました。

小岩井さんの声のレコーディングにはLewittのLCT 240 PROを使ってみた

その際に利用してみたのが、LewittのLCT 240 Proというコンデンサマイク。というのも、このLCT 240 Proは12,000円程度で購入できる手ごろなコンデンサマイクでボーカルや楽器のレコーディングはもちろん、ナレーション録りにも便利に使えるものなのですが、これを購入するとVEAがオマケでもらえてしまうのです(正確には購入後、付属の国内サポートIDを登録することでVEAを無償ダウンロード可能になる)。

この実験では、マイクから15cm程度の距離でマイクプリのゲインもしっかり調整した上で録音してみました。ただし、あえて、空気清浄機のすぐそばでかなりノイズが入る状態で行っています。その音がこちらです。

kenfujimoto · Original – 部屋の換気の音が鳴っている状態で録音したケース

これを先ほどと同様にVEAで簡単補正した結果がこちらです。

kenfujimoto · VEA – 部屋の換気の音が鳴っている状態で録音したケース

やはり先ほど同様にキレイな音にはなっていますが、ノイズが多少残っており、「とにかくノイズを取る!」という要望からすると、やや気になるところです。そこで今度はRXを使って試してみました。その結果がこちらです。

kenfujimoto · RX – 部屋の換気の音が鳴っている状態で録音したケース

いかがですか?今度はかなりノイズがキレイに取り除かれているのが分かると思います。ここではRXのSpectral De-Noiseでバックグラウンドノイズ部分を選択し、Learnボタンをクリックしてノイズを覚えさせた上で、ThresholdとReductionをいい具合に調整、という作業を小岩井さんにしてもらったものです。

ノイズ除去だけが目的ならRX10のほうが、より強力な効果が期待できる

VEAとは違い、どこがノイズなのかをしっかり指定した上で、さらに調整をしていくので、操作には多少スキルが必要となってきますが、かなり追い込むことは可能なわけです。

ノイズ除去だけが目的ならRX、より手軽にいい音にするならVEA

このように、VEAはとにかく手軽で簡単にいい感じの音にすることができるツールです。ノイズリダクションに過大な期待を持つのは禁物ですが、とりあえず十分な品質にできることはお分かりいただけたのではないでしょうか?

一方で、ノイズを確実に取ることが目的であればRXがやはりお勧め。ちょうどVEA発売記念ということでRXのほうもセール展開中で、RX10 Standardが最大75%オフなので、購入するにはいいタイミングかもしれません。

今回の実験を行ってみて小岩井さんからは以下のようなコメントをいただきました。

おうちや録音環境のあまり良くない場所で録音を行わないといけないけれど、音声の編集はよくわからない。
自室での録音で、どうしてもノートPCのファンノイズが混入してしまう。とにかく簡単に音質を向上したい。

そんな方の初めての音質調整プラグインとして最適じゃないでしょうか。
VEAなら難しい知識がなくても3つのパラメーターだけで好みの音質に調整できます。

今ならLEWITTのマイクを買うとVEAが同梱されるということなので、
これを機にマイクをコンデンサーマイクにアップグレードして、更にVEAで音質も向上。
このLEWITTのマイクにVEAが付いて1万円ちょっとだなんて。。。うらやましいです!

VEAとRX、どちらがいい、というよりは、シチュエーションによって使い分けるというのがよさそうですが、音声をインスタントな作業でいい感じにブラッシュアップするツールとしてVEAは今後いろいろなシーンで活用できそうです。

 

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第232回 特集「iZotope VEA」【恐るべきAIの威力!】

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