先日、フランスのArturiaからソフトシンセの全部入りパック、V Collection Xが発売されました(ダウンロード価格、63,250円)。20年以上の歴史を持つArturiaの技術が詰まっており、新たに6つのインストゥルメントが追加されました。追加になったのは、ハイブリッドシンセサイザMiniFreak V、TB-303をエミュレートしたAcid V、YAMAHAのCP-70を再現するCP-70 V、ピアノ音源のAugmented GRAND PIANO、パワフルなブラスサウンドのAugmented BRASS、最先端のシンセシスと木管楽器を組み合わせたAugmented WOODWINDSのそれぞれ。
また、ほかにも2つのリビルトインストゥルメント、3つの拡張パックと450の新しいプリセットも追加されています。合計39のインストゥルメント、3つのエクスクルーシブなサウンドバンク、10,000以上のプリセットからなる膨大なサウンドライブラリーを持つ、最高峰のインストゥルメントバンドルがどんな内容になっているのか紹介していきましょう。
仏Arturiaの最強バンドルがバージョンアップ、MiniFreak V、TB-303、CP-70が追加されたV Collection Xが発売
数々のビンテージシンセを忠実に再現してきた20年以上の歴史を持つ会社Arturia
Arturiaは、創業当初からハードシンセのソフトウェア化に注力しており、MOOG Modularをはじめ、Prophet-5、Jupiter-8、DX7、Fairlight CMI、Emulator IIなど、数々のビンテージシンセを忠実に再現してきました。
これまでArturiaが培ってきたアナログシンセを忠実にエミュレーションするというTrue Analog Emulation (TAE) 技術で、さまざまなビンテージシンセを開発してきたことで、DTMの世界に大きな革命をもたらし、音楽制作の可能性を大きく広げてきました。一方で、物理的モデリングを開発したり、ハイブリッド弦楽器などArturiaオリジナルのシンセもいろいろとリリースしてきています。
V Collection Xのイメージ。今回はダウンロード販売のみでパッケージ版は販売されない
そんなArturiaが、これまで出してきたインストゥルメント、ソフトウェアシンセをすべてまとめてパックにした製品がV Collectionです。Arturiaの数多くのシンセが一機に入手でき、しかも割安ということで人気の製品ですが、前バージョンであるV Collection 9については2022年のリリース時に「MS-20やSQ80も登場!32種類のシンセをパックにしたArturiaのV Collection 9が発売開始」という記事でも紹介してきました。ちなみにそのときのタイトルでは32種類となっていますが、実際にはPropeht-5VとProphet-VS Vを別々のものとカウントすると33種類ということだったようです。
新しいインストゥルメント6つ加わり、全39種類の音源が収録されている
そして、先日そのV Collectionの新バージョンとして今回リリースされたのが、V Collection X。収録されているインストゥルメントは以下の39種類となっています。
アナログシンセ | デジタルシンセ & サンプラー |
ACID V | CMI V |
ARP2600 V | CZ V |
BUCHLA EASEL V | DX7 V |
CS-80 V | EMULATOR II V |
JUN-6 V | MINIFREAK V |
JUP-8 V | PROPHET-VS V |
KORG MS-20 V | SQ80 V |
MATRIX-12 V | SYNCLAVIER V |
MINI V | キーボード & オルガン |
MODULAR V | B-3 V |
OP-XA V | CLAVINET V |
PROPHET-5 V | FARFISA V |
SEM V | MELLOTRON V |
SYNTHI V | SOLINA V |
VOCODER V | VOX CONTINENTAL V |
クリエイティブハブ | アコースティックピアノ & エレクトリックピアノ |
ANALOG LAB PRO | CP-70 V |
Augmentedシリーズの インストゥルメント | PIANO V |
AUGMENTED BRASS | STAGE-73 V |
AUGMENTED GRAND PIANO | WURLI V 3 |
AUGMENTED STRINGS | |
AUGMENTED VOICES | |
AUGMENTED WOODWINDS |
この中で、MiniFreak V、Acid V、CP-70 V、Augmented GRAND PIANO、Augmented BRASS、Augmented WOODWINDSが新しいインストゥルメント6つとなっています。また今回、Mini V4やWurli V3はアップデートが行われ、さらに3つの拡張パックの追加、450の新しいプリセットも収録されています。
ちなみにV Collection Xは、Windows、Macハイブリッドで、VST2、VST3、AU、AAX、そしてスタンドアロンで使えるほか、Native InstrumentsのKOMPLETE KONTROLでも動作するNKS対応となっています(Analog LabのみNKS非対応)。そんな新しく追加されたインストゥルメントについて、それぞれ簡単に紹介していきましょう。
22種類のオシレーターモードを内蔵、サウンドエンジンを2系統搭載したMiniFreak V
まずは、MiniFreak Vから。これは、昨年DTMステーションの「ハードシンセとソフトシンセが完全連動、デジタルもアナログも搭載する超強力で幅広い音作りができるArturia MiniFreak」でも紹介したソフト音源。ハードシンセのMiniFreakとソフトシンセのMiniFreak Vが完璧に連動するという特徴があり、もちろん単体でも非常に強力なシンセとなっています。
ハードウェアシンセのMiniFreakとまったく同じ音で鳴らすことができるMiniFreak V
もともと2019年に登場して大人気となったArutiraのMicroFreakの上位版として登場したMiniFreakでしたが、ここにはMicroFreakのサウンドエンジンを2系統搭載し、強力なエフェクトを3系統搭載するとともに、アルペジエータやシーケンサを搭載するなど、よりパワフルなデジタルシンセとして世界的にも人気な製品となっています。そのMiniFreakをそっくりそのままソフトウェア音源として利用できるのが、MiniFreak Vなのです。
ベースシンセサイザTB-303を元に開発されたAcid V
次にAcid Vです。これは、画面を見ればすぐに分かる通り、1981年にローランドがリリースしたベースシンセサイザ、TB-303を再現した製品。ただのクローンとしてではなく、TB-303にはない、さまざまな機能を追加しています。2オクターブ範囲のサブオシレーターやディストーションのアルゴリズムを14種類搭載するなど、ユニークなソフトウェア音源に仕上がっています。
RolandのTB-303をエミュレーションしつつ、独自の拡張をおこなったAcid-V
使い勝手のいいシーケンサ、モジュレーションとエフェクトの搭載、実機をカスタマイズするかのごとく、本物のビンテージユニット特有のピッチ、ドリフト、ノイジーな癖をエミュレートする機能まで付いています。
伝説のエレクトリックグランドピアノCP-70を再現したCP-70 V
CP-70 Vは、1976年から1985年までヤマハが製造していたエレクトリックグランドピアノであるCP-70をソフトウェア音源化した製品。当時スティーヴィー・ワンダーをはじめ、多くのミュージシャンに愛用されていた名機が、手軽に使えるソフトウェア音源として収録されています。
CP-70を再現するとともに、より細かく調整したりエフェクトも数多く搭載したCP-70 V
ぱっと見は、CP-70そっくりそのままのUIとなっていますが、Advancedボタンを押すと、細かくチューニングできたり、ベロシティカーブを変更したり、ステレオでの広がりなどを調整することが可能です。また、FXボタンを押すと、リバーブ、ディレイ、テープエコー、ディストーション、EQ、コンプ、コーラス、フランジャー……など最大6系統のエフェクトを同時に使えるようになっています。
AugmentedシリーズにAugmented GRAND PIANO、Augmented BRASS、Augmented WOODWINDSが追加された
そして、AugmentedシリーズにAugmented GRAND PIANO、Augmented BRASS、Augmented WOODWINDSの3つが新しく収録されました。Arturiaは、既存のビンテージシンセを復元することを主眼として製品開発をしてきたわけですが2018年にPigments Piano Vというオリジナル音源を開発し、高い評価を受け、それに加えて新シリーズが誕生しました。
それがAugmentedシリーズであり、V Collection製品の中では唯一鍵盤を持たないシンセであり、ノート1つを入力したり、コードを入力するだけで、音楽を作り出してくれるといった簡単に使える音源。簡単なのにそのサウンドは、重厚感があるので、ぜひこちらもそれぞれのビデオをご覧ください。
名前にもあるように、Augmented GRAND PIANOはグランドピアノ、Augmented BRASSはブラス、Augmented WOODWINDSは木管楽器を主軸としており、それらとシンセエンジンを掛け合わせることにより、主力として使えるサウンドから、ユニークなサウンドまで作り上げることが可能となっています。
以上、Artuiraが発表したV Collection Xについて紹介しました。ここでピックアップしたのはあくまでもV Collection 9から追加された音源だけですが、トータルで39種類ものインストゥルメントが収録されているので、かなりのボリューム。とくにビンテージシンセにおいては、右に出るものなし、といったバリエーションですから、持っておいて絶対に損はないはず。ダウンロード価格である63,250円を39で割れば、1本あたり1,621円の激安ですから…。
なお、国内の販売店から購入できるのはフルバージョンであり、すでにV Collectionを持っている方のバージョンアップはArturiaの本国サイトからの購入となります。
【関連情報】
V Collection X製品情報
【価格チェック&購入】
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