すでにご存じの方も多いと思いますが、スタンドアロンで動くA4サイズのポータブルDJシステム、FJ1のクラウドファンディングがmakuakeにて1月30日18:00まで行われています。これは、日本発のオールインワンDJマシンとして大きく話題になったGODJ Plusの後継機種として7年ぶりに登場するマシン。仙台のベンチャー企業、株式会社ミューシグナルが、GODJ Plusの使い勝手はそのままに、まったくゼロから開発し直し、よりパワフルに、より高機能・高性能になる、というものです。
税込価格92,000円で今年の秋以降に発売される予定ですが、1月30日18:00まで実施中のクライドファンディングで申し込めば35%オフの59,800円で購入することが可能です。クラウドファンディング自体はすでに目標額の5,000万円を突破し、1月28日現在8,431万円となっているのでプロジェクトは成立済。さらにストレッチゴールである8,000万円も超えているのでBluetoothドングルへの対応機能も標準搭載され、BluetoothイヤホンやBluetoothスピーカーで音を出すこともできるようにする、とのことです。そのFJ1クラウドファンディングの最終版にFJ1の実機のプロトタイプを見て触れるDJイベント「The DJ Gadget Night」が開催され、DJ KOOさん、DJ TAROさんなどによるDJプレイや、FJ1に関するトークセッションも行われたので、その内容をレポートしてみたいと思います。
GODJ Plusの後継機となるFJ1が登場。1月30日18:00までクラウドファンディング実施中
GODJ Plusの後継機として新たに設計されたFJ1
GODJ Plusについては「仙台の5人のベンチャーが開発した小型デジタルDJ機が秀逸!より高機能・低価格化してクラウドファンディング実施中」「クラウドファンディングで大成功のデジタルDJ機、GODJ Plusが一般に向けて発売開始だ!」といった記事で紹介したことがありましたが、A4サイズのオールインワン・デジタルDJマシンとして、一世風靡した機材です。そのGODJ Plusに内蔵されていたスピーカーの音質が非常によく高性能、ということからそこだけを抜き出したスピーカーもその後OVOという名前で発売され、爆発ヒットしたことをご存じの方も少なくないと思います。
DJ KOOさん、DJ TAROさんによるDJプレイが披露された「The DJ Gadget Night」
そのGODJ Plus誕生から7年たった今年、その後継機がFJ1という名前で誕生することになったのです。改めて、そのFJ1とは何かを簡単に説明すると、レコードのターンテーブルはもちろん、パソコンも不要で、A4サイズのFJ1一つでDJプレイができるというマシン。USBメモリにWAVやMP3などの音楽ファイルをいれて本体横のUSBポートに差し込めばすぐにDJプレイが可能となり、2つの曲を滑らかにつなげていったり、液晶パネルに表示されるターンテーブルをタッチしてスクラッチプレイをしたり、フィルターを掛けるなどのエフェクト操作をしたり、ドラムマシンを鳴らして重ねていったり……とあらゆるDJプレイを可能にしてくれます。
The DJ Gadget Nightでお披露目されたFJ1のプロトタイプ
しかも、アンプ・スピーカーを内蔵しているので、これだけで音を鳴らすこともできるし、大容量バッテリーも内蔵されているため、電源のない屋外でもプレイ可能。そのポテンシャルは大規模なDJセットにもまったく引けをとらない、という内容です。では、従来モデルであるGODJ Plusと何が違うのか?
7年前に登場したGODJ Plus(左)と新たに誕生するFJ1(右)
新世代プロセッサを搭載したことで、よりパワフルに、より高機能に
開発者である株式会社ミュージグナルの宮崎晃一郎さんに伺ったところ
「機能面はGODJ Plusを引き継ぐ形ですが、液晶の解像度が縦横それぞれ2倍で、4倍の解像度に上がっているというのがぱっと見すぐに感じられるところだと思います。コントラスト比や明るさも大きく向上しているので、屋外でも使いやすくなっています。またGODJ Plusの筐体はプラスチックだったのがFJ1ではアルミニウムになっているので、より堅牢になっているほか、内蔵プロセッサが爆速になっているのが最大の違いでもあります」とFJ1プロトタイプを示しつつ話してくれました。
同じA4サイズではありますが、大きさは若干小さくなっているようでノブやボタン、スライダーの配置も少し変わっています。また3つあるEQノブが縦並びになったあたりも、結構印象が異なるところでした。違いを表にまとめたものが以下のものです。
でも、それだけだと何がどう強化されているのか、よくわからなかったので、ややマニアックな内容ではありますが、システム的にどうなっているのかを聞いてみたところ、そのパワフルさがハッキリ分かってきました。
「GODJ Plsのプロセッサは昔、我々が開発したものを使っており、動作周波数も58MHz、メモリも8MBというものでした。しかし今回はARMコアの1.6GHzのものを採用し、メモリも4GBとなっているので、まったく別次元のものであり、処理速度も断然早くなります。たとえば、GODJ PlusでBPMや頭の拍など楽曲解析をするのに10~20秒程度かかっていましたがFJ1なら1秒もかかりません。また、メモリ空間が広がったことでさまざまな処理を滑らかに高速にできるようになり、従来はメモリの制限で難しかったリバーブなどのエフェクトも搭載可能になります。おそらくリリース当初はGODJ Plusの機能をそのまま踏襲させた形で移植したものとなりますが、その後のファームウェアアップデートで、どんどん機能UPしていく予定です」と宮崎さん。
FJ1に内蔵されるスピーカーユニット。パッシブラジエーターを備えた密閉型で見た目からは想像できないほどパワフルな音を出る
「GODJ Plusではハードウェア用に直接ファームウェアを書いていたのですが、FJ1はLINUX上で動かす形になるので、ネットワーク接続も簡単になるし、USBクラスコンプライアントなデバイスなら、おそらく何でもつながってしまう、というメリットもあるんです」(宮崎さん)とのこと。まだ詳細は分かりませんが、ストレッチゴールでのBluetooth対応もその辺の機能を利用することになると思いますし、それができるならオーディオインターフェイス経由で音を出すといったこともできそう。また必要あるか分かりませんが、マウスやキーボードをつなげて操作…なんてことも可能になるのかもしれません。
DJ TAROさんがMCを務める形でThe DJ Gadget Nightは進行していった
そんな取材をさせていただいたのは1月26日、東京・渋谷にある「Circus Tokyo」というイベント会場。ここでは「The DJ Gadget Night」と題したDJイベントが行われており、オープニングアクトとしてDr.DJ ATSUKOさん、そしてDJ TAROさん、メインゲストであるDJ KOOさんによるDJプレイが行われました。もっとも、またFJ1は開発中であるため、みなさんの愛用機であるGODJ Plus、GODJを使ってのプレイとなり、集まった100人以上の観客のみなさんも盛り上がっていました。
Dr.DJ.ATSUKOさんによるDJプレイの中、どんどん人が集まってきた
その後、DJ KOOさん、DJ TAROさんそして宮崎さんによるトークセッションがスタート。その後の会場からの質疑応答も含めて、非常に面白い内容だったので、以下にまとめてみたので、ご覧ください。
DJ KOOさん、DJ TAROさん、宮崎さんによるFJ1トークセッション
宮崎:DJ KOOさん、DJ TAROさん、本日は素晴らしいプレイをありがとうございました。TAROさんもさっき言ってましたが、KOOさん、プレイでのボタン押しすぎですよね。
DJ KOOさんによるGODJ Plusを使ったプレイ。数多くのエフェクトなどあらゆる機能を駆使したパフォーマンスだった
KOO:だから言ったじゃないですか。このGODJ Plusの唯一の欠点が夢中になりすぎちゃうってこと。でもプレイしてて楽しいんですよね。
TARO:最近のDJはパソコンを使ったり、さまざまな機材をつなぐので、セットチェンジする際、現場でドキドキすることも多いですよね。
KOO:そうですね。USB接続だったり、音源ソースがいろいろあったりと、トラブルが起きかねないんですが、このGODJ Plusは電源を入れれば一発OKという安心感は大きいですね。誰でも練習してきたものをそのまま本番に持って行って使える強みは大きいです。
DJ KOOさんのDJプレイ後に行われたトークセッション。左からDJ TAROさん、宮崎さん、DJ KOOさん
TARO:これ1つ持っていけばOKというメリットは大きいですよね。
KOO:ちょうど5年くらい前に、JICA(国際協力機構)さんから国際親善の仕事をいただきまして、アフリカと日本の架け橋になることができないか、ということだったので、日本の盆踊りを何等かの形で持っていこうと考えたんです。もちろん、アフリカで日本の盆踊りも言葉も通じないわけですが、美空ひばりさんの「川の流れのように」をマッシュアップしたものを作って、GODJ Plusに入れて南アフリカからアフリカ大陸を旅していったんです。もうあたり全部がバナナ畑だとか、市場といったところで、GODJ Plusで音を鳴らすとみんな集まってくるんですよ。そしてみんなGODJ Plusを見て「これから音が鳴ってるのか!?」って口々に言うですよね。そこから輪ができて踊りの先生も一緒になって盆踊りを踊っていくという。耐久性もすごいんですよ。昼と夜の温度差も激しい中で使ってまったく問題なかったですね。アフリカの旅もそうですが、フランスやチリでもまったく問題なく使えました。
TARO:宮崎さんは、そうした過酷な環境での耐久テストもしていたんですか?
宮崎:いや、全然そこまではしてないです。精密機械なので、大事に使ってください…と(笑)。ある意味、KOOさんにテストいただいたような感じですね。
KOO:どこにもっていっても、このA4サイズのコンパクトなもので行うDJプレイを見て、驚かれますね。この液晶がしっかりしていて、そこを見ながら選曲しているのを見て、「ちょっとやらせてくれ!」みたいな感じでやってきますよ。だから海外の人に「これが日本のDJスタイルなんだ」って自慢するわけですが、コミュニケーションもすごくはずみますよ。
ストレージはSDカードからより高速にアクセス可能なUSBメモリに変更
TARO:そんな、GODJ Plusをいつも使っているKOOさんに伺いします。今回7年経って、FJ1という新たなモデルが誕生するので、いろいろなところがバージョンアップしていると思うのですが、KOOさん的に「ここの機能が強化されたらいいな」というところはありますか?
SDカードよりUSBメモリがいいと話すDJ KOOさん
KOO:えっと…、やっぱりFJ1もSDカードですか?
宮崎:そこですね。今回、SDカードではなくUSBメモリになります。そしてUSB Type-Cにも対応します。
KOO:よかった!そこの部分がまず気になっていました。音源用のストレージとしては、やはりUSBメモリが音の面でも、ハンドリングのしやすさでもいいんです。DJやイベントの前にいろいろな準備をするのですが、たとえばダウンロードした音源データを一度インターフェイスを通してPCに入れ、そこでイコライザなどをかけて戻して…という作業は必須なので、作業スピード、そして音の面でもそうなることを希望してました。
TARO:FJ1、USB Type-Cのポートが1つ、またUSB Aのポートが2つあるというのも大きいですね。何かのトラブルがあったときに困るので、DJってサブでもう1つ音源を持っておくんです。そういう意味でもポートが複数あると安心ですね。一方で、液晶も格段に見やすくなってますよね。波形表示させた際にかなり見やすくなっているな、と。今度は宮崎さん側からKOOさんに、ここが進化したと唸らせるような部分はありますか?
宮崎:ちょっと拍子抜けしちゃう話かもしれませんが、今回フォントが大きくなるんです。GODJ Plusはメモリの制限があって、1つのフォントしかロードできなかったのですが、今回そうした制限がなくなったことから複数のフォントを選択できるし、大きさも変えられるようになりました。
KOO:なるほど、そういう点も考慮されているんですね。
FJ1はWi-Fiを経由してインターネット接続も可能なDJマシンに進化する
TARO:FJ1はどんどん進化していくデバイスだと僕は思っているんですが、KOOさんが今後FJ1に期待したい機能ってありますか?
KOO:やっぱりクラウドへの対応ですね。クライドから音源を簡単に引っ張ってこれると作業が圧倒的にしやすくなる。
宮崎:よかった。それもまさに私から言おうかと思っていた機能です。FJ1にUSB Aのポートを2つつけた理由は、USBメモリを2つさせるというメリットもあるのですが、1本をWi-Fiのドングルに割り当てて、インターネット接続できるようにしたいと考えています。その上でFJ1がメジャーになって世界デビューして数が増えていくと、音楽配信サービスとも組めるようになるのでは、と期待しているところです。
TARO:では、ここから質疑応答に入りたいと思います。会場にいらっしゃるみなさんの中で、何かご質問があれば、お願いします。
質問者1:いろいろな機能が強化されているようですが、DJをプレイしたログをとる機能を搭載することはできないですか?
TARO:プレイ結果を録音するというのではなく、ログを取るということですか?
質問者1:はい、さっきのDJ KOOさんのプレイは何をどうしていたのか、ログがあれば、それを元にいろいろ学べるんじゃないか、同じプレイをできるんじゃないかと思い質問させてもらいました。
宮崎:録音機能はすでにGODJシリーズには搭載されているのですが、そうではなく操作のログを取る、プレイ内容を記録したいということですね。なるほど、それは面白いアイディアですね。できる余地はありますが、まずはどれくらいのニーズがあるのかも含め、検討してみたいと思います。
TARO:続いては、そちらの男性の方、お願いします。
FJ1という名称に込められた3つの意味
質問者2:私はGODJとGODJ Plus、それにOVOを5台持ってます。このプロジェクトのホントウにファンで今回もFJ1、さっそく支援させていただきました。今回もとってもカッコイイ機材ですが、FJ1というネーミングがどういう経緯で決まったのか気になったので、教えていただけますか?
TARO:5台って、すごいですね。宮崎さん、いまの質問と被ると思いますが、今回のFJ1はGODJ Plusのアップデート版である、ということでいいんですか?アップデート版なのに、あえてネーミングが違う、という。
宮崎:毎回、ご支援いただきありがとうございます。ネーミングについてですが、GODJはMONSTERとの共同でのブランドだったのに対し、今回はMONSTERとコラボしていない関係で、GODJが使えないという背景もあり、名称変更することになりました。このFJ1には3つの意味を持たせているんです。一つはDJのD=ディスクですが、この機材はディスクではなくファイルを使っているからFJということ。2つ目はインターネット前のパソコン通信時代の話なんですが、日本からのニュースは1か所に集められていて、日本から来た情報だよ、というのを示すのにFJという2文字が使われていました。「From Japan」という意味でFJですね。まさに日本で開発された機材という意味で、こう名付けています。そして3つ目はなんとなく富士山っぽくていいかな、って(笑)。
前モデルであるGODJ Plus(上)と新モデルのFJ1(下)
TARO:なんと、そんな意味が込められてたんですね。お時間の都合であとうもう一人だけ。じゃあ、そちらの眼鏡をかけている男性が早かったですね。どうぞ。
質問者3:これまでGODJ Plusなどを使ったことがなく、いまFJ1を支援するかどうか考えているところです。この資料を見てよくわからなかったので質問なのですが、iTunesでプレイリストを作り、それを取り込んでメモリCUEとかを使って管理することはできるのでしょうか?
KOO:僕もCUEポイントをつけて、今日もデータを持ってきていて、電源を入れて、そのまま使っているので、そこは大丈夫ですよ。でも、すごいと思うのでは、曲をいれると、BPMの解析を自動でやってくれるんですよ。気づくともう解析が終わっていてるから本当に使いやすいし、その精度がすごいんですよね。
宮崎:今回のFJ1ではその精度があがり、解析速度が断然高速になります。これまでのGODJシリーズでは1曲を解析するのに10~15秒程度かかっていましたが、今回は1秒というか数百ミリ秒で解析し、さらに精度も向上します。ぜひ、この点もご期待いただければと思います。
TARO:みなさん、まだまだご質問があるとは思いますが、時間の都合でこれで終了したいと思います。最後に記念撮影をしたいと思いますので、お集りください
と、トークイベント終了後に、解散となったわけですが、その後、DJ KOOさんが、FJ1のプロトタイプを、真剣にご覧になっていたので、見た印象を少し伺ってみました。
「今まで使ってきたGODJ Plusをさらに大きく超えて、まさにDJの未来が全部詰め込まれているという感じですね。パっと見の第一印象としては液晶ディスプレイがかっこいいし、見やすい。これ一目でやるべきことが全部分かりますね。もちろんGODJ Plusもよかったんですが、その分かりやすさが格段に上がってると思います。またDJはすごくモニターを気にするので、モニターのオン・オフが一目で分かり、ノブやフェーダーなどの操作も分かりやすくなっていていいですね。左右がしっかりと分かれて、それぞれでやることがキッチリ分離されているため、初心者の方でもより使いやすくなると思いますね。FJ1の登場、楽しみに待っています」(DJ KOOさん)
とのことでした。冒頭でも紹介した通り、FJ1の一般販売は今年の秋以降に92,000円で発売となりますが、1月30日18:00までにmakuakeのクラウドファンディングを利用すれば35%オフの59,800円(税込み、送料込み)で購入可能です。せっかくなら、このタイミングで入手してみてはいかがでしょうか?