ヤマハのHSシリーズに新しく、3.5インチウーファー搭載のHS3、4.5インチウーファー搭載のHS4が仲間入りしました。HSシリーズには、これまでHS5、HS7、HS8というモデルが存在していましたが、これらより小さいサイズのモニタースピーカーが登場したのです。DTMで定番のHS5よりもコンパクトなので、スペースの取れない環境に最適。スピーカーの性質上、ウーファーが小さければ低音も抑えられるので、低音を鳴らすことはできないけど、スピーカーから音を再生したいという場合にもおすすめです。
音楽制作用途としてはもちろんのこと、サブスピーカー、ビデオクリエイタの音声チェックとしてもちょうどいいモデルのHS3とHS4。また通常のモニタースピーカーは、左右にアンプが独立していますが、HS3とHS4は片方にアンプや接続端子が集約しているため設置も簡単。ペアでの販売のみとなり、市場想定価格はHS3が27,500円(税込)、HS4が33,000円(税込)となっています。コンボジャック、RCAでの接続はもちろんのこと、ステレオミニ端子もあるので、手軽に利用可能。フロントにボリュームツマミやヘッドホン端子も搭載している、ミニマムな環境下で威力を発揮する、HS3とHS4を試してみたので紹介していきましょう。
音楽制作、サブモニター、映像クリエイタの音声チェックに最適なHS3とHS4
DTM用モニターとして定番となったHSシリーズ
ヤマハのモニタースピーカーには、HSシリーズとMSPシリーズの2ラインナップが存在しています。MSPシリーズはMSP 5 StudioやMSP 7 Studioが生産終了になったため、現行機種はMSP3Aのみとなっています。一方のHSシリーズはこれまで世界中でヒットし、DTM用モニターとしても定番となっているHS8、HS7、HS5に加え、今回新しく登場したHS3とHS4という構成になっています。
HS3,HS4を含めたHSシリーズ全ラインナップ
従来のHSシリーズよりアップデートされているHS3とHS4
HS3とHS4はHSシリーズの流れなので、基本的にはほかのHSシリーズと同じだと思っていたのですが、最新機種というだけあって、細かいところでアップデートされています。まずは、フロントのデザインですね。ほかのHSシリーズには、フロントに操作するツマミなどは一切搭載していないのですが、HS3とHS4にはボリュームを調整するツマミと3.5mmのヘッドホン端子が搭載されています。
フロントにボリュームを調整するツマミと3.5mmのヘッドホン端子を搭載
フロントのボリュームツマミとヘッドホン端子はあると意外と便利
自宅の作業では、これが意外と便利で、まずボリューム調整をすぐに操作できるというメリットが1つ。そして、このツマミを絞り切ると、スリープ状態になるので、わざわざスピーカーの後ろに手を伸ばして、電源を落とす必要がなくなるというのもポイント。
また、MSP3Aも含め、これまでヘッドホン端子を搭載してこなかったヤマハが、ここにきてモニタースピーカーに3.5mm端子を搭載してきました。おそらく、これまでは音楽制作用として開発を進められてきたのだと思いますが、より幅広い用途でモニタースピーカーを導入する人が増えたからこそですね。DTMerであればオーディオインターフェイスから、ヘッドホン出力を行うのが定番ですが、HS3またはHS4があれば、オーディオインターフェイスを繋がなくとも、ヘッドホン再生できるのは地味に便利です。
オーディオインターフェイスがなくても簡単にヘッドホンを接続可能
ヤマハ独自の技術をHS3とHS4に搭載
スペック面でいうと、このHS3とHS4には、MSP3の後継機MSP3Aに搭載された、ヤマハ独自のツイステッドフレアポートが搭載されています。現在これを搭載しているのはHSシリーズの中でも、HS3とHS4のみ。ツイステッドフレアポートとは、ポート両端で発生するノイズを大幅に抑制する独自技術で、クリアで忠実な低域再生を実現するというもの。価格的にエントリーモデルのHS3とHS4ですが、MSP3Aにも搭載されているヤマハの最新技術が採用されているという点でも、コスパの高さが伺えますね。なお、MSP3Aについては以前「20年ぶりのモデルチェンジ。DTMにピッタリなヤマハの小型モニタースピーカー、MSP3Aを試してみた」という記事で紹介しているので、こちらも参照してみてください。
MSP3Aに搭載されていたヤマハ独自のツイステッドフレアポートをリアに搭載
カラバリはブラックとホワイトの2色
HS3とHS4は、従来のHSシリーズと同様にブラックとホワイトの2色展開。黒いモニタースピーカーは多いですが、白くて価格の安いモニタースピーカーは少ない印象。自宅のレイアウト的に白いスピーカーがほしいと思っていた方にはピッタリです。
左側のスピーカーに端子類などすべて集約されているので、簡単にセッティングできる
リアパネルを見てみると、2機種とも片側にアンプや各端子が集約されています。MSP3AやほかのHSシリーズも左右独立タイプのモニタースピーカーだったので、割としっかりとしたセッティングが必要でした。一方、HS3とHS4は片方に端子類が集約されているので、配線が簡単。ちなみにアンプなどが入っているスピーカーがLEFT側となっています。
電源ケーブルは一体型で、入力端子はXLRまたはTRSフォンに対応したコンボジャック、RCA、ステレオミニとなっています。なお、すべてにデバイスを接続して再生すると、全部の音がミックスされ出力されるので、それぞれ繋げっぱなしにしておけば、入力を切り替えることなく、好きなデバイスから音を再生することができます。ただテストしてみた結果、RCAとステレオミニ端子にそれぞれケーブルを繋げ、そこから同時にデバイスを接続しておくと、レベルが下がってしまったので、コンボジャックに1ソース、RCAまたはステレオミニに1ソースという使い方がよさそうです。
また、リアには簡易的にチューニングすることのできるROOM CONTROL(0/‐2/‐4 dB under 500 Hz) 、HIGH TRIM (+2/0/‐2 dB above 2 kHz)を搭載。
環境によってチューニングできるROOM CONTROLやHIGH TRIMが搭載している
左右のスピーカーの接続は付属のスピーカーケーブルを使って接続します。ちなみに付属品は、ステレオミニRCAケーブル1.5m、 スピーカーケーブル2.5m、滑り⽌めパッドとなっています。
万能タイプのHS4とコンパクトさが魅力のHS3
さて再生周波数帯域など、以下の表にまとめてみたので、ご確認ください。
型番 | HS3(ペア売り) | HS4(ペア売り) | HS5 | HS7 | HS8 |
参考市場価格(ペアの場合、税込) | 27,500円 | 33,000円 | 35,200円 | 57,020円 | 91,280円 |
アンプ | 26W + 26W | 26W + 26W | 70W (LF: 45W, HF: 25W) | 95W (LF: 60W, HF: 35W) | 120W (LF: 75W, LF: 45W) |
HF/LF | HF: 0.75インチドーム, LF: 3.5インチコーン | HF: 1インチドーム, LF: 4.5インチコーン | HF: 1インチドーム, LF: 5インチコーン | HF: 1インチドーム, LF: 6.5インチコーン | HF: 1インチドーム, LF: 8インチコーン |
再生周波数帯域(-10dB) | 70Hz – 22kHz | 60Hz- 22kHz | 54Hz- 30kHz | 43Hz- 30kHz | 38Hz – 30kHz |
入力端子 | COMBO(XLR&Phone) x1, RCA x1. ST mini x1 |
COMBO(XLR&Phone) x1, RCA x1. ST mini x1 |
XLR3-31 type(balanced) x1, Phone(balanced) x1 *XLRとPhoneはパラレル接続 |
XLR3-31 type(balanced) x1, Phone(balanced) x1 *XLRとPhoneはパラレル接続 |
XLR3-31 type(balanced) x1, Phone(balanced) x1 *XLRとPhoneはパラレル接続 |
寸法 (W×H×D) | L: 132mm × 223mm × 189mm R: 132mm × 223mm × 177mm |
L: 150mm × 240mm × 213mm R: 150mm × 240mm × 203mm |
170mm × 285mm × 222mm | 210mm × 332mm × 284mm | 250mm × 390mm × 334mm |
それぞれウーファーとツイーターのサイズが違うので、周波数レンジなど細かい点は違うのですが、目指している音のキャラクタは同じ。もちろんウーファーのサイズが大きいので、HS4の方が低音を再生することができますね。一方、HS3は全体のレンジ間は狭めですが、決して悪い意味でなく、ボーカルといった中音域がモニタリングしやすく、ミックス時全体のバランスが取りやすいと感じました。ラジカセのようなスモールモニター用途としても使えそうです。
コンパクトさが魅力のHS3。MacBookAirと並べてみた画像
MSP3A、HS3、HS4、HS5が近い価格帯で、選び方が難しそうだったので、個人的に基準を考えてみました。まず、音楽制作用途としてであれば、MSP3AかHS5が最適。スピーカーはウーファーのサイズが大きい方が物理的に低音を再生できることを考慮すると、設置できるのであればHS5かなと思います。一方、設置場所、再生のボリュームの関係で、HS5をフルに鳴らしきれないのであれば、MSP3Aという判断ですね。もちろん、出音の好みもあるので、ここは実際に聴いてみてチェックしてくださいね。
HS5よりも省スペースさを重視し、セッティングの面でもより簡単にできるという点から見て、これからDTMを始めるような方であれば、HS4。さらにコンパクトさを求めつつ、YouTubeでの配信など映像制作の音声モニター用としてであれば、HS3という選択がよさそうです。HS4は中間なので、音楽制作用でも、ほかの用途でも万能に機能しますね。ですがHS3のコンパクトさも魅力的。普段ヘッドホンで音楽制作をしていて、あまり大きい音は出せないけど、スピーカーでもチェックしてみたい、という場合はHS3もアリ。逆に考えれば、小さければ低音域を抑えられるというメリットになるので、ぜひ自分にあったモニタースピーカーを探してみてください。ちなみにHS3でもHS4でも、MAXで音を出せば、近所迷惑になるぐらいの大音量は再生可能です。
以上、HS3とHS4について紹介しました。価格、機能、出音のバランスがよく、最初の1台としても、サブスピーカーとしても最適な製品でした。音楽制作用途のみならず、映像クリエイタの方にもおすすめできるスピーカーですね。今後、もっといいスピーカーが欲しくなっても、HS3やHS4はサブモニターとしても使い続けることができるので、持っていて損はないと思います。
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