どんな音でもイカしたローファイ・サウンドに仕立て上げる大ヒットサンプラー、LIVEN Lofi-12の上位版、Lofi-12 XTがクラファン開始!

昨年発売されて、世界的な大ヒットとなったサンプラー/Grooveboxマシン、SONICWARELIVEN Lofi-12。このLofi-12にサウンドを取り込むと、それがどんな素材であっても、とってもいい感じのローファイサウンドに仕立て上げてくれる、不思議な機材であったため、大きなヒットとなったようです。そのキモは12kHz/24kHz-16bitサンプリングとともに、12bitサンプラーモードを搭載していたこと。これによって、まるで80年代後半のサンプラーのようなサウンドにすることができたのです。

ただ、そのLIVEN Lofi-12でのサンプリングは4秒までと制限があったり、トラック数が4つまでだったり、またサンプルデータのファイルベースでの取り込みができない……、など物足りなさを感じていたユーザーも少なくありませんでした。そうしたユーザーからの要望をもとに、LIVEN Lofi-12を大きくパワーアップさせた製品、Lofi-12 XTが開発されることになったのです。今回は、すぐに販売というわけではなく、アメリカのサイト、kickstarterを通じて、クラウドファンディングという形での予約受付開始。通常価格は$499=約75,000円となっていますが、Kickstarterなので早めに購入すれば安くなる、という特典もあります。具体的には100台限定のSuper Early Birdで$379=56,000円、最初の5日間限定のEarly Birdで$399=59,000円など…。製品の発送は来年4月ごろの予定となっています。実際Lofi-12 XTとはどんなもので、従来のLIVEN Lofi-12と何が違うのかなど、チェックしていきましょう。

10月25日からKickstarterでのクラウドファンディングがスタートしたLofi-12 XT

LIVEN Lofi-12の機能・性能を大幅に向上させたLofi-12 XT誕生

Lofi-12については昨年「どんな音でもイカしたローファイ・サウンドに仕立て上げるレトロ・サンプリング音源、LIVEN Lofi-12が発売開始」という記事で紹介したことがありましたが、日本のベンチャー電子楽器メーカー、SONICWAREが開発するLIVENシリーズの新モデルとして登場したローファイサウンド特化型のGrooveboxマシンです。そのLofi-12を大きくパワーアップさせたのが、今回Kickstarterで登場するLofi-12 XTです。

Lofi-12 XTは昨年発売されたLIVEN Lofi-12の上位版という位置づけの製品

そもそもLofi-12をよくご存じない方もいらっしゃると思いますが、まずは、以下のビデオをご覧になってみてください。

いかがですか?ちょっと懐かしい雰囲気もある、気持ちいいローファイサウンドを作ることができるマシンであるのが感じられたと思います。なんとも言えないザラついたこのサウンドは、いわゆるLoFiプラグインとはちょっと違い、80年代後半に登場したサンプラーであるAKAIのS900やMPC 60のようなサウンドという印象です。

Lofi-12 XTのボディーはSmplTrekと同じ!?

が、その一方で「あれ?この機材見たことあるような…」と思った方も少なくないでしょう。さらには「ええ?これ、自分も買ったSmplTrekじゃないの!?」と思った方もいるでしょう。

Lofi-12 XTはSmplTrekのボディにLIVEN Lofi-12を大きく機能・性能UPしたものを入れ込んだもの

そう、実はLofi-12 XTは見た目も大きさも昨年登場したSmplTrekと同じものであり、LIVEN Lofi-12と比較すると半分くらいの大きさになっています。以下の写真はLIVEN Lofi-12とSmplTrekを並べたものではありますが、これを見れば、大きさの違いは分かると思います。

LIVEN Lofi-12(左)とLofi-12 XTと同じ大きさのSmplTrek(右)。サイズ的にはLIVENの半分以下になっている

Lofi-12 XTとLIVEN Lofi-12との主な違い

でも気になるのは、LIVEN Lofi-12とLofi-12 XTで何が違うのかという点。これについては、以下の比較表を見ていただくと、そのすべてが分かると思います。

主な点をピックアップしてみると、まずサンプラーとしてはモノラルの16bitで12kHz/24kHzおよび12bitモードという点は共通なので、音の質感はまったく同じです。それに対し、サンプリング時間が大きく変わり、LIVEN Lofi-12では最大4秒しかサンプリングできなかったのが、Lofi-12 XTでは内蔵メモリではなくSDカードにサンプリングする形になったため、1サンプルあたり最大300秒=5分と大きく変わっています。これなら1曲まるごとローファイ化……なんて使い方もできそうです。

Lofi-12 XTでは、サンプルデータなどをSDカードに入れる仕様となっている

本体には32GBのSDカードが付属しており、この中にはTR-808/909、LM-1、linndrum、DMX、Drumulator、SP-12、Drumtraks、TOMなどレジェンド・ドラムマシンのサンプルをはじめ、Lofi HipHopやLofi Houseの楽曲制作に即戦力となる1,000超のサンプル・ライブラリーが収録されています。

またサンプラーとしての同時発音数がLIVEN Lofi-12では10音だったのが、28音になるとともに、USBからのストリーミングや外部ソースも一緒に流せるなど、大きく進化しているし、マイクを内蔵しているので、本体で直接音のサンプリングができる、というのもユニークな点です。

Lofi-12 XTでは、スピーカーはもちろんマイクも内蔵している

さらにシーケンサ部分も大きく進化しています。LIVEN Lofi-12では4トラックで64パターンという仕様だったのがLofi-XTでは8トラックになるとともに、128パターンとなり、16ソングx256プロジェクトまで扱えるという点も大きな進化点ですね。

SAMPLEとTRACK、PATTERN、SONG、PROJECTの関係概念図

またDTMユーザーから見て大きなポイントとなるのがファイルの取り扱いについてです。手元にサンプル素材や楽曲がWAVデータとしてある人がほとんどだと思いますが、これらをローファイ化したいというとき、LIVEN Lofi-12では音として録り込むしか方法がありませんでした。つまり、PCからオーディオインターフェイスを経由して出力し、それを接続してサンプリングしていく…という手法です。

オーディオ端子やマイクからサンプリングしてもファイル変換しても、いい感じのレトロサウンドに仕立ててくれる

それが今回のLofi-12 XTではSDカードを採用したことにより、SDカードのフォルダ内にWAVファイルをコピーすれば、Lofi-12 XT側でインポートして取り込むことができるようになったのです。この際、いい感じにコンバートしてくれ、LIVEN Lofi-12と同じザラついた質感に仕立ててくれるようになっているのです。

マイクロカセットの音も再現!? 便利なバックグランドMixテープ録音

またちょっとユニークな新機能として、バックグラウンドMixテープ録音なる機能が搭載されています。これはLofi-12 XTで演奏しているものを本体の電源を切るまでずっとバックグランドでキャプチャしておいてくれる、というもの。つまり「適当に遊びながら演奏してんだけど、さっきの雰囲気がすごくよかった……」なんてことがあったものをしっかり残していてくれるんです。

Lofi-12 XTでの演奏を常に録音していてくれるバックグラウンドMixテープ録音機能

しかもLofi-12なだけに、レコーディング品質を5段階から選択できるようになっているのも面白いところ。一番低品質はマイクロカセットで録音したようなモノラルサウンド。40代以上の方なら「わぁ…、懐かしい。昔の留守電マイクロカセットだった!」なんていう人もいる一方、30代以下の方だと見たこともないかもしれませんよね。またカセットテープ品質やクロームテープ品質、さらにはDAT品質などが用意されているのは楽しいですよね。

また、エフェクトの種類が少し変わって全24種類が扱えるようになっていて、以下のブロックダイアグラムを見ると分かる通り、8つある各トラックごとにインサーションエフェクトを1つずつ利用できるほか、センド/リターンで1つ、マスターで1つ使えるため、最大同時使用可能エフェクト数が11となっています。

各トラックごとにインサーションエフェクトが1つ、センド/リターンで使うディレイ・リバーブ、マスター用コンプが利用できる

そのほかにもサンプルエディットをリアルタイムで利用できるよう、ノートの連打機能を搭載したり、になったり……とさまざまな点で機能強化されているのです。

SysExでLIVEN Lofi-12とLofi-12 XTのデータ互換性も実現

一方で、これまでLIVEN Lofi-12を使ってきたユーザーからすると、「結構多くのサンプルデータを作ったけど、これをLofi-12 XTに持っていく手段はないの?」と思う方も多いと思います。LIVENシリーズの場合、SDカードもサポートされていないし、USB端子もないので、難しそうな印象もありますが、SONICWAREはその点もしっかりサポートしてくれています。

サイドにUSB端子、リアにMIDI入出力端子を装備

そう、LIVEN Lofi-12にはDIN 5ピンのMIDI端子があり、Lofi-12 XTにもUSB端子とともにDin 5ピンのMIDI端子が用意されています。そこで、このMIDI端子同士を接続した上で、データ転送を行うとSysExを利用してサンプルデータを転送することが可能になっているのです。もちろんエンジンは同じですから、これによって同じ音を再現できるようになっているのです。

金型の作り直しや回路の再設計には大きなコストと時間がかかる…

ところで単純な疑問として「なんで小さいほうが高機能になったんだ?」、「LIVEN Lofi-12の形のまま機能強化はできなかったの?」と思った方も少なくないでしょう。その点について、SONICWAREの担当者にぶつけてみたところ、以下のような返事がありました。

LIVENシリーズは同じ筐体、同じ回路を用いながら、8bit warps、XFM、BASS&BEATS、Texture Lab、そしてLofi-12などを展開してきました。しかし、DSPのリソース的に限界があり、これ以上の機能・性能にすることができなかったのです。一方で、昨年出したSmplTrekのハードウェアは断然高性能なDSPを搭載していたほか、SDカードのサポートやUSBでの接続など、スペック面で有利だったのです。これならば、多くのユーザーのみなさんから寄せられていた要望を実現することができるはず、とSmplTrekのハードウェアを利用しながら今回のLofi-12 XTを開発したのです。

とのこと。このシャーシひとつを作るのにも、金型を起こす必要があり、そこに長い時間と数百万円・数千万円というコストがかかるのです。また、そこに入れる回路設計にも同様のコストと時間がかかるため、まったく新たなハードウェアを作るというのは、メーカーにとって莫大な投資になるし、リスクになるわけです。そのため、すでに出来上がった資産を活用することで、コストを抑え、開発スピードを上げることが可能になる、ということのようです。

Lofi-12 XTとSmplTrekの違いは?

ここでもう一つきになるのは今回のLofi-12 XTとSmplTrekの違いについてです。見た目はほぼ同じですし、サンプラーであるという点も共通。でもやはりコンセプトは違うので、内容は大きく異なるようです。とくにSmplTrekのトラック構成はちょっと複雑で、そこがユニークなポイントでしたが、Lofi-12 XTはLIVEN Lofi-12のトラック数を倍にした形でシンプル。やはり使い勝手はLIVEN Lofi-12に寄せた形になっています。詳細は、以下のスペック表にあるので、参考にしてみてください。

ちなみに、ユーザーからのフィードバックで多かったものの一つとして「ブラックボディーのものが欲しい」という声があったので、今回のLofi-12 XTのカラーはブラックとなっていますが、LIVEN Lofi-12に親しんで来た人からすると、「やっぱり、あのちょっとベージュ系ホワイトがいい」と思う人も少なくないはず。私自身も、LIVEN Lofi-12ユーザーなので、あの色がいいな…と思うのですが、そうしたユーザー向けに500台限定でレトロカラーモデルが用意されています。価格的にはブラックモデルより若干高めですが、数が限られているので欲しい方はお早目に。

LIVEN Lofi-12と同じRetro Colorのモデルは500台限定

早く購入するほどメリットの大きいKickstarterでのクラウドファンディング

価格は冒頭でも紹介したとおり、通常価格は$499=約75,000円(1ドル=150円換算)ですが、Kickstarterのクラウドファンディングなので、早く注文すると安くなるという特典が用意されています。




具体的には100台限定のSuper Early Birdだと$379=約56,000円、最初の5日間限定のEarly Birdだと59,000円。その後であっても$429=64,000円と、今後通常販売される価格と比較すると安く入手することが可能です。


またレトロカラーにおいては100台限定のSuper Early Birdだと$399=59,000円、5日間限定のEalry Birdだと$429=64,000円となっています。
送料については標準のブラックも、レトロカラーも国内ならすべて無料です。ただし海外発送の場合、国によって3,000~10,000円程度になるとのことです。

いずれも購入するためにはKickstarterへのアカウント登録が必要となり、クレジットカードでの支払いが必須となります。また製品の発送は来年4月ごろの予定となっているので、それらの点を確認の上、なるべく早めのプロジェクト支援をお勧めします。

【関連情報】
Lofi-12 XT製品情報(SONICWAREサイト:日本語)
Kickstarter Lofi-12 XTページ(英語)