9月28日、Rolandから新たなシンセサイザ、GAIA 2が発表され、10月13日より発売が開始されます。これはRolandとしては珍しいウェーブテーブル・オシレータを予め搭載したシンセで(これまでSH-4dに搭載されていたほか、FantomでもExpansionで対応はしていた)、そのウェーブテーブル×1に加え、バーチャル・アナログ×2の計3つのオシレーターを搭載した完全デジタルのハイブリッド・シンセサイザ。
GAIAは2010年に登場し、そのシンプルで分かりやすい音作りのシンセであることから、現在も世界中で親しまれている製品です。そのGAIAが大きくリニューアルし、まったく新たなシンセサイザ、GAIA 2として誕生した形です。価格はオープンですが国内の実売価格は税別で108,000円前後。その発表に先駆けて実物にも少し触れることができたので、そんなシンセサイザなのか紹介してみましょう。
13年ぶりにフルモデルチェンジでGAIA 2に
GAIA 2を従来モデルのGAIAと並べたわけではないので、比較しにくいのですが、全面メタリックとなったこともあり、見た目の印象はだいぶ違いますが、いずれも37鍵のフルサイズキーボードで、3つのオシレーターを持つシンプルなデジタル・シンセサイザ、という点では同じ。サイズ的には655(W)×336(D)×92(H)mmとなっているので、これまでのGAIAと比較すると、横幅が少し短くなった分、奥行きが少し長くなった…というサイズ感です。
※2023.9.29修正
初出時、ウェーブテーブルを本体に搭載したシンセとしてRolandでは初という記載をしていましたが、SH-4dが対応していたので、修正しました。
従来のGAIAとはデザイン的にも大きく変わり、横幅はやや短く、奥行きがやや長くなっている
そのオシレータ部が従来モデルと比べて大きく変わっています。そうこれまでバーチャル・アナログのオシレーターが1つ搭載されていたのに対し、GAIA 2では
バーチャル・アナログ×2
と計3つのオシレーターが搭載された形になっています。
3つのオシレータが並んでいる。上の1ラインがウェーブテーブル、その下の2ラインがバーチャル・アナログ
パネルを見るとOSC 1、OSC 2、OSC 3と3つ並んでいますが、一番上のOSC 1がウェーブテーブルで、下のOSC 2およびOSC 3がバーチャル・アナログです。そしてOSC 1のTABLEを使って波形を選ぶわけですが、選んだ結果は本体中央にある128×64ドットの有機ELディスプレイに表示され、POSITIONを回すことで、ポジションを動かしていくことが可能です。波形間をジャンプしたり、モーフィングしたりすることにより、劇的な変化から緩やかに進化するテクスチャまで自在に作り出せるのが面白いところです。
TABLEパラメータを動かすと、有機ELディスプレイに表示される波形が切り替わっていく
一方のバーチャル・アナログのほうは、それぞれ
三角波
ノコギリ波
パルス波
SUPER SAW
ノイズ
の5種類の波形を選択でき、SHAPEパラメータでシェイプをかけられるだけでなく、リング・モジュレーション、オシレーター・シンク、クロス・モジュレーション1、クロス・モジュレーション2とさまざまな変調が可能で、シンセサイザとして幅広い音作りができます。
右側にはフィルター、アンプ、エフェクトなどのセクションが並んでいる
パネルをざっと見ても、これまでシンセサイザを使ってきた人であれば、すぐに音作りができるワークフローとなっており、フィルタ、LFO、エンベロープジェネレータ、アンプ……とほぼ迷うことなくすぐに使えると思います。
Model Expansionで、SH-101など往年の名機も再現
ところで、従来のGAIAはSH-01という型番が付いていましたが、GAIA 2では、そうした型番はないようです。とはいえ、RolandのSHの系譜をひくシンセサイザであることには変わりなく、SH-101などとも共通する分かりやすさが特徴です。
さらにRolandを象徴する歴代のシンセサイザを忠実に再現するModel Expansionにも対応しています。このModel Expansionを使うと、ここまで紹介したGAIA 2のサウンドエンジンとはまったく異なる、クラシカルなシンセサイザへと、ボタン一つで切り替わるようになっています。
1982年に発売されたSH-101をModel ExpansionとしてGAIA 2で忠実に再現できる
そのModel ExpansionとしてSH-101が標準搭載されており、すぐに使うことが可能です。さらにJUPITER-8やJUNO-106、JX-8PなどのMODELも利用可能。ただし、SH-101以外のModel ExpansionについてはRoland Cloudから購入して使う形となっています。
また、そのRoland Cloudからは往年の名機を再現するModel Expansion以外にも新しいサウンドエンジンやバーチャルインスゥルメントを拡張することができ、GAIA 2をパワーアップすることができる、というのもユニークな点です。
Roland Cloudについては「クラウド型のソフト音源サービス、Roland Cloudが大きく進化し、国内でも本格スタート。現行ハードウェア製品と音色互換を持つソフトシンセZENOLOGYもリリース」という記事など、これまでも何度か紹介してきているので、そちらも参照してみてください。
またRoland Cloudのコンテンツをワイヤレスで利用できるRoland Cloud Connectに対応しているのも最新のGAIA 2ならではのポイント。コンパクトなWi-Fiアダプタ(WC-1)をUSB端子に接続し、このデバイスの専用アプリを使用してコンテンツを試聴したり、GAIA 2にダウンロードすることが可能になっています。
Roland Cloud Connectに接続するためのワイヤレスアダプタ、WC-1
リアルタイムに動きや表情をサウンドに与えるモーショナルパッド
さて、このGAIA 2を一目見て、すぐに目に飛び込んでくるのが有機ELディスプレイの下にあるモーショナルパッドです。これはXYパッドとなっており、横軸・縦軸それぞれにシンセやエフェクトのパラメータをアサインすることで、パッド上で指を動かすことで音をモーフィングできる、というもの。フェイズモジュレーションやシェイプモジュレーションといったことができます。KORGシンセでいうところのKaoss Pad的なものというと分かりやすいところですよね。
指で操作することでパラメータを動かすことができるモーショナルパッド
ユニークなのは、このパッド上で指を動かすモーションを記録でき、それを再生することで、オリジナリティあふれる複雑な動きを再現し、繰り返すことができるという点。また多くのサウンドプリセットには、このモーショナルパッドの動きも組み込まれているので、非常に動的なサウンドになっていることが分かるはずです。また単にプリセットを再生するだけでなく、そのプリセットにおけるモーショナルパッドの動きを必要に応じてカスタマイズすることも可能なので、かなり幅広い音作りができそうです。
高性能ステップシーケンサやアルペジエータも搭載
一方、GAIA 2には、かなり高機能・高性能なシーケンサも搭載されています。これは最大64ステップのシーケンサとなっており、もちろん一般的な16ステップのシーケンサとして使うことも可能です。このシーケンサ、1ステップで単に1つのノートを設定できるというのではありません。
1ステップあたり8種のノート、さらに4種のコントロール情報を記録していくことができるのです。そのためかなり複雑なデータを作っていくことも可能。その記録方法としては、ステップで1つ1つ打ち込んでいくほかに、リアルタイムレコーディング、Rolandのドラムマシン形式のTR-RECにも対応しています。
さらにステップシーケンサだけでなく、アルペジエーターも搭載。こちらはアップ、ダウン、アップ&ダウン、ランダム、ノート・オーダーのモードを備えるとともに、16種類のスケールを選択できるようになっています。
また、エフェクトが充実しているのがGAIA 2の大きな特徴です。フィルター、フェイザー、ディストーションからスキャッター、Lo-Fiなど幅広いエフェクトが搭載されており、その数は全部で53種類。これらを組み合わせていくことで、サウンドづくりも大きく広がっていきます。
USB Type-CとUSB Type-Aの2つを装備し、コンピュータとの連携性も抜群
さて、DTMステーション的に気になるのは、このGAIA 2とコンピュータとの連携性です。リアを見るとUSB Type-C端子とUSB Type-A端子が2つ並んでいます。このうちUSB Type-Aのほうは、前述のRoland Cloud Connectを挿してWi-Fi接続できるようにしたり、USBメモリを接続してデータのやり取りができるほか、MIDIキーボードを接続することにより鍵盤拡張ができるようになっています。USBクラスコンプライアントでの接続なので、Roland製品に限らず各種キーボードが利用可能です。
GAIA 2のリアパネル。USB Type-A、USB Type-Cの端子が並んでいる
それに対し、USB Type-Cのほうがコンピュータと接続するためのもので、Windows、Macはもちろん、Linuxでも使うことができるほか、先日発売されたiPhone 15シリーズを含めiPhone/iPadでも連携させることが可能です。
基本的にUSBクラスコンプライアント、つまりドライバなしで接続することができ、MIDIの入出力はもちろんオーディオの入出力も可能です。このUSBクラスコンプライアント接続の場合はオーディオは24bit/48kHzとなります。
MIDIの入出力、ペダル端子、メインの出力、ヘッドホン端子も装備されている
しかし、WindowsおよびMac用の専用ドライバも用意されているのが大きなポイント。これにより44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれに対応するようになるとともに、WindowsではASIOが利用可能になるのです。つまり、コンピュータから見てGAIA 2が2in/2outのオーディオインターフェイスとして見えるようになるわけです。この際、コンピュータ側から音を出すと、GAIA 2のヘッドホンやメイン出力からミックスされて音が出る形になります。一方、GAIA 2を演奏すると、その音が劣化なくコンピュータにレコーディングできるようになるのです。やはりノイズの心配なくDAWに取り込めるというのは重要なポイントですよね。
以上、GAIA 2の概要について見てきましたが、いかがだったでしょうか?価格的には従来のGAIAと比較すると少し上がっていますが、機能・性能的には10倍近いものになった、といっても言い過ぎではないと思います。音作りのしやすさにおいては抜群のGAIA 2、まずは楽器店などで触れてみてはいかがですか?
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GAIA 2製品情報