Steinbergの楽譜作成ソフト、Dorico(ドリコ)。Cubaseの兄弟ソフトともいえるこのDoricoが、Vesion 5にメジャーバージョンアップしました。Dorico 5は、再生機能中心に進化しており、真上から見下ろすように表示された画面上の舞台に演奏者を配置することで、パンやリバーブが自動設定されるステージ機能、ミキサーにプリセットチャンネルを定義することで、舞台が存在する空間の音響までを設定できるスペース機能などが新搭載されています。
また、アーティキュレーションのアルゴリズムがブラッシュアップされ、より表情豊で人間味あふれる再生を実現。ドラム音源としてGroove Agent SEが追加されたり、スクラブ再生機能といったものも搭載され、より強力な楽譜作成ソフトとなりました。MusicXMLの読み込み機能も強化され、Finaleのフォントも追加、さまざまな楽譜作成ソフトウェアとの互換性も高まっています。そんなDorico 5のポイントとなる機能をピックアップして、紹介していきましょう。
Dorico 5は、再生機能強化とともにFinaleとの互換性も向上した
Dorico 5のラインナップ
まず新機能の前に、商品のラインナップから紹介しておくと、以下のようになっています。
Dorico Proクロスグレード 通常版
Dorico Proアカデミック版
Dorico Proクロスグレード アカデミック版
Dorico Elements通常版
Dorico Elements アカデミック版
パッケージ版の発売は6/1から。パッケージデザインは、Dorico 4と同じですが、中のカードはDorico 5のものになっているので、購入してアクティベーテョンすれば、普通にDorico 5を起動することができます。また旧バージョンのDoricoを4月1日以降にアクティベーテョンした方は、Dorico 5への無償バージョンアップの対象となるそうですので、Steinbergサイトをチェックしてみてくださいね。
では、ここから主な新機能を順番に見ていきましょう。
記譜モードにテンプレート「ステージ」と「スペース」を新搭載
舞台上のアイコンを動かして、パンやリバーブの設定を自由に行える
記譜モードに新たなテンプレート、ステージとスペースが搭載されました。ステージは、真上から見下ろすように表示された画面上の舞台に演奏者を配置することができ、仮想の舞台上でアイコンを動かすと、パンやリバーブの設定も自動的に反映されます。簡易的なミックスが圧倒的に簡単になり、クオリティの高い仮音源を手軽に作成可能。ミックスに関して詳しくなくても、視覚的に楽器を配置することができるので、かなり重宝する機能だと思いますよ。オーケストラも分かりやすいことはもちろんのこと、バンドの立ち位置を決めれば、それに合わせて定位してくれます。またスペースでは、ミキサーにプリセットチャンネルを定義することで、舞台が存在する空間の音響まで設定することが可能です。
アーティキュレーションのアルゴリズムがブラッシュアップ
従来のバージョンのアルゴリズムのような機械的な演奏を避けるために、タイミングや音に微量のランダム性を持たせるヒューマナイゼーション機能に加えて、新アルゴリズムにより、表情豊かで人間味あふれる再生を実現しています。さらに演奏の抑揚がつくようになり、スタッカート、アクセント、スラーのフレーズなど、人間のように演奏してくれます。
ドラム音源のGroove Agent SEの追加
Cubaseでお馴染みのGroove Agent SEが搭載された
Cubaseでお馴染みのGroove Agent SEが、Dorico 5にも標準搭載されるようになりました。これまでDorico上でドラムを鳴らす場合には、HALionが使用されていましたが、これをGroove Agent SEに変更することが可能。Groove Agent SEはドラムに特化した音源なので、これまでよりもリアルなドラムサウンドを使用することができるようになりました。
コードシンボルも演奏してくれるMIDIトリガーリージョン
指定した範囲で、曲の構成やリズムの出だし、コードシンボルを入力するだけで、スコアに現れない音やコードを演奏してくれるMIDIトリガーリージョンを新搭載。Groove Agent SEやTGuitarなどのパターンベースでMIDIをトリガーする場合に役立ち、制作時間をかけずにリアルな演奏を楽譜上で実現することができます。
カーソル位置の音を鳴らすことができるスクラブ再生に対応
再生位置をドラッグして、その場所のフレーズなどを確認できる
アンサンブル全体や個別パートを選択して、ハーモニーの確認やフレーズのチェックに便利なスクラブ再生機能が搭載されました。
特殊な楽器のテンプレート作成ができるインストゥルメントエディター
Doricoには、もともとテンプレートとして、さまざまな調性の楽器が用意されていますが、これが自分でも新規作成することが可能になりました。特殊な楽器のテンプレートを作成することができ、次回以降そのテンプレートを呼び出して使いまわせるようになっています。
すばやい編集作業を可能にするライブ編集
マウスを使って素早く音楽を編集、コピーする新機能ライブ編集を搭載。選択した音符をドラッグして音程を変えたり、新しいリズムの位置にドラッグしたりすることができ、音符がどこに移動するかはオーバーレイでリアルタイムに表示されます。マウスを直接操作することで、楽譜やキーエディターで作業する場合でも、音楽をより簡単にすばやく編集することが可能になっています。
MusicXMLの入出力を強化し、Finaleとの互換性も向上
アプリケーション間で楽譜データを交換するためのフォーマットMusicXMLへの対応が強化されました。ハーモニクス、奏法、装飾音、ホールド、ポーズなどの読み込み対応が充実しただけでなく、書き出しも改良され、ページレイアウト情報が含まれるようになったほか、プロジェクトで使用される楽譜やテキストフォントの情報をエンコードすることも可能。具体的には、Finaleの音楽フォントが追加になり、Finale Ash、Finale Broadway、Finale Jazz…を扱えるようになっています。ちなみに、これらのフォントはTrueTypeフォントなので、Drico 5をインストールすることで、Dorico以外のアプリケーションからもこのFinaleフォントを使うことが可能になっています。
なお、ここまで紹介した新機能は、基本的にDorico Proに搭載されたもの。Dorico Elementsについては以下のようになっています。
2. 浄書モードにおいて、水平方向と垂直方向の間隔を制御可能
3. 再生オプションのカスタマイズ可能。
4. テキストおよび音楽フォント、コード記号がカスタマイズ可能。
以上、Dorico 5のバージョンアップのポイントについて、その概要を紹介しました。再生周りがかなり強化され、高いクオリティの音を簡単に確認できるようになりました。また、Finaleとの互換性も向上しているので、より便利に使いやすくなっていると思います。ぜひこの機会にDorico 5をチェックしてみてはいかがでしょうか?
※2023.5.25追記
パッケージ版については順次Dorico 4からDorico 5に切り替わっていますが、仮にDorico 4を購入して、インストールしても自動的にDorico 5として登録される仕組みになっています。
【関連情報】
Dorico 5製品情報
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