3Dサンプルモーフィングエンジンを搭載したLunacy Audio(ルナシーオーディオ)のCUBE($179)。これは、画期的なGUIと現代的な迫力のあるサウンドを持ち合わせる、サンプラおよびベクトルシンセサイザ。日本では、まだまだ知名度が低いものの、操作性のよさ、サウンドのクオリティが高いので、これから多くの人が使い始めるのでは、と感じています。
何より、特徴的なのは3Dのインターフェイス。最大8つのサウンドを読み込ませ、3Dインターフェイスを使ってブレンドすることで、複雑性の高いサウンドを作ることが可能。フィルター、EQ、ディストーション、ビットクラッシャー…など13種類のFXや4つのLFOを搭載。500以上のプリセットも搭載しているので、初心者でも高クオリティなサウンドを鳴らすことができます。このCUBEには通常版のほかに機能限定版であるCUBE Mini($49)の2種類がありますが、CUBEのほうを試してみたので紹介していきましょう。
※2023.4.11追記
ただいま、Lunacy Audioのサイトがメンテナンス中でダウンしています。確認したところ、日本語対応の準備および拡張パックの新製品を準備しているとともに、セールの準備をしているとのこと。詳細わかりましたら、また告知します。
3Dサンプルモーフィングエンジンを搭載したLunacy Audio(ルナシーオーディオ)のCUBE
さっそくですが、以下はCUBEの動画となっているので、サウンドを聴いてみてください。
すごく今っぽくて、エレクトロニック、ヒップホップ、ポップス…など、さまざまなジャンルにハマる音源ですよね。また、プリセットを読み込んで鳴らした動画もあるので、ぜひこちらもご覧ください。
この真ん中で、動いている怪しいオーブが、このシンセのユニークな点なのですが、詳しくは後述しますね。まずは、CUBEのライナップと価格。そしてExpansionsについてです。
CUBEのラインナップ
CUBEは、簡易版CUBE MiniとフルバージョンCUBE、2ラインナップで展開されています。それぞれの違いと価格は、以下のようになっています。
CUBE | CUBE Mini |
179ドル | 49ドル |
108音源 | 35音源 |
500以上のプリセット | 120のプリセット |
高度なサンプル エディター | 高度なサンプル エディター |
FX スイート | FX スイート |
ランダム化アルゴリズム | ランダム化アルゴリズム |
拡張機能をロードする機能 | 拡張機能をロードする機能 |
いつでもアップグレード | |
モジュレーション (4 つの LFO + マクロ) | - |
Orbitカスタマイザーを備えた完全なOrbitシステム | - |
50以上のオービット | - |
オーディオのドラッグ アンド ドロップ (Wave + SFZ ファイル) | - |
ドラッグ アンド ドロップ畳み込みインパルス応答 | - |
すべての新機能アップデート、プリセット パックなどへのアクセス… | - |
大きく違うのは、音源数とプリセット数。またCUBE Miniでは、LFOを細かくエディットできなかったり、Orbitカスタマイザーという真ん中で動いているオーブを自分の好きなように調整できる機能が省かれています。財布との相談にもなりますが、サウンドが気に入ったのであれば、フルバージョンのCUBEを導入するのがおすすめ。とはいえ、もしCUBE Miniから導入しても、フルバージョンへのアップデートプランも用意されているので安心です。またトライアル版はないですが、この後紹介する拡張音源のExpansionsを除いて、14日以内であれば返品も可能なので、まずは試してみるといいと思いますよ。
現在、CUBEの拡張音源として用意されているのは、Rumble、Threads、Airの3種類。それぞれ49ドルとなっており、このExpansionsの中には、音源とプリセットが収録されています。
拡張音源としてRumble、Threads、Airの3種類が用意されている
なお、ExpansionsはCUBE Mini、CUBEで読み込むことが可能。以下は、各Expansionsのプロモーションビデオとなっています。
Rumble
Threads
Air
どれもカッコいいサウンドで、即戦力で使えそうですよね。気に入ったExpansionsを追加で買うというのもいいですが、フルバージョンのCUBEにこれらExpansionsすべてが付属して、299ドルのEverything Bundleも販売されています。メインで使える、新しいシンセを探しているのであれば、こちらを検討してもいいと思いますよ。
全部入りのEverything Bundleも販売されている
さて、前置きが長くなりましたが、ここからはフルバージョンのCUBEを使って、特徴的な部分をピックアップして紹介していきましょう。
CUBEの基本操作
まず、起動して表示されるのは、以下の画面。
ここがメイン画面になっており、試しにプリセットを読み込んでみると、中央のオーブの周り軌道が表示されました。画像では分かりにくいですが、動画でも見ていただいたように、このオーブが表示された軌道に沿ってウヨウヨ動いています。このメイン画面では、フィルターやマクロが搭載されていることから分かるように、大雑把だけど強力に音を変化させるパラメータが付いており、プリセットを読み込んで、ここに搭載されているパラメータを動かすだけで、いい感じのサウンドを鳴らすことができるのです。
シンプルなメイン画面のパラメータを操作するだけでも、カッコいいサウンドを作ることができる
真ん中を漂うオーブは、飾りというわけではなく、立方体の8つの角に配置された音色が、このオーブの動きによって鳴っているのです。上部にある、Soundsタブをクリックすると、中央の画面が切り替わり、Global Editorが表示されます。8つの角には、A〜Hまでが割り振られており、それぞれサンプルを読み込むことができます。
8つの角にそれぞれ音を配置することができる
用意されているもの以外にも、自分のサンプルを読み込むこともでき、エディットも可能。サンプラの基本的な機能に加え、ステップシーケンサとアルぺジエーターも搭載しています。
オーブが近づいた方の音が強調して出力されるようになっているので、視覚的にも分かりやすく、重厚感のある動的なサウンドを鳴らすことができるわけですが、このオーブの動きも自分で設定していくことが可能です。
上部にあるOrbitタブをクリックすると、オーブの軌道をエディットする画面に移ります。右側にあるOrbitsでは、オーブの軌道をプリセットから選ぶことができ、左側では軌道の大きさやスタート位置、傾きなどを調整可能。
用意されている軌道を調整するパラメータは画面左側に搭載されている
軌道のプリセットを選んで、調整していってもいいのですが、面白いのはこの軌道をゼロから自分で作成できるところ。右側にあるOrbitsの下にあるCreate New Orbitをクリックすると、オリジナルの軌道を作成する画面が表示されます。
Create New Orbitをクリックしてオリジナルの軌道を作成することもできる
オリジナルの軌道を作成するモードはOrbits Stepperと Axis Sculptor2種類。Orbits Stepperモードでは、STEPを追加していって、ステップの折り返し地点をオーブをドラッグして決めていきます。通常のドラッグで上下に動き、Shiftを押しながらドラッグすると前後にオーブを動かせます。また、軌道に沿って動かさず、STEPの位置にジャンプさせるといった設定も可能で、Axis Sculptorモードに比べると、シンプルで狙ったサウンドを作りやすいです。
Orbits Stepperモードでは、1つ1つポイントを設定して、軌道を作成していく
一方で、Axis Sculptorモードは、Horizontal(水平)とVertical(垂直)とDepth(深さ)のそれぞれをSine、Triangle、Saw、Square、Path、Manualから選んで、パラメータを操作し掛け合わせていくので、複雑な軌道を作りやすくなっています。シーケンスを走らせて、音を鳴らしながら設定していくことができるので、適当にパラメータを触っていって、聴きながらいい感じのサウンドを作り上げることも可能です。
Axis Sculptorモードでは、曲線のある複雑な軌道を作ることができる
そしてEffectsタブでは、シンプルながらも高品質なエフェクトを設定していくことができます。具体的にはFilter、EQ、Distortion、Compressor、Chorus、Delay、Reverb、Limiterのそれぞれ。
また、Modタブをクリックして表示される画面には、切り替えて使うLFOまたはステップシーケンサーが4機搭載されています。
切り替えて使用するLFO/ステップシーケンサーが4機搭載されている
ちなみに、CUBEはそこまでCPUに負荷が掛かる音源ではないのですが、ECOモードが搭載されています。これをオンにすると、CPU負荷を抑えることができるようになっています。ただ、オンにするCUBEの特徴である、8つ角に音を配置したり、オーブは動かせなくなります。つまり、ただのシンプルなサンプラになるのです。
プリセットを読み込んで、ほしい音に近い音からエディットしていくのもいいですが、Sounds、Orbit、FXをランダマイズして音作りをするのも有効な手段です。たとえば、Soundsをランダマイズすると、大きく音が変わるので、これで大枠を決めていき、次にFXで方向性は同じながらも、別の音色を作っていきます。最後にOrbitで動きを付けるといった大胆なサウンドキングも可能。もちろん、作った音色はプリセットに保存して、呼び出すこともできますよ。
ランダマイズを使って、プリセットにない音を作り上げることもできる
以上、Lunacy AudioのCUBEを紹介しました。ユニークなGUIに目が行きがちですが、手軽に即戦力なサウンドを鳴らすことができる優秀な音源でした。シンセに詳しくなくても、シンプルな作りをしているので、簡単に音作りできるのも魅力。Webページを覗くと、Pastelsという新たなExpansionsも近々追加されるとのこと。今後の進化も楽しみな音源ですね。
【関連情報】
CUBE 製品情報
Lunacy Audio