10月27日、Synthesizer Vの新しい歌声データベースとして、Maiがお披露目となり、その歌唱動画が公開されました。実際にユーザーが入手可能になるまでには、まだもう少し待つ必要がありそうですが、遅くとも年内には登場するそうですから心待ちにしたいところです。
今回、Synthesizer Vの開発元であるDreamtonicsによって公開されたMaiの歌声のビデオを見ると、驚くほど滑らか、スマートな歌い方であり、もはや人間の歌声と区別がつかない次元まで進化しているように感じます。しかも、とくに調声をしなくても、音符と歌詞を入力するだけで、非常にリアルな歌い方をしてくれる、というのも、嬉しいところです。一方で、先日リリースされたSynthesizer V Studio Proの最新バージョン1.7.1において、歌声データベースの複数バージョンを利用できる機能が追加されています。なぜそんな機能があるのか、これをどのように活用するのかなども、少し解説してみたいと思います。
Synthesizer Vの歌声データベースにMaiが登場することが発表された
新歌声データベース、Maiが近日リリース
何はともあれ、まずは以下のビデオをご覧ください。
いかがですか?これが今回発表されたMaiの歌声ですが、これがコンピュータによって合成された歌声だとは信じがたいですよね。これまでも、急速に進化してきたSynthesizer Vですが、ついにこの領域まで来てしまったのか……と驚くばかりです。
歌声の滑らかさがとっても人間的であるのもそうですが、高い音域でファルセットになるところが非常に自然なのも感心してしまいます。また息継ぎ、呼吸部分がすごくリアルなのも驚きで、もうこれ中に人がいるでしょ…というように思ってしまいました。
今回のMaiのデモソングは基本的にベタ打ちになっている!?
さらに、すごいのは、このMerry-Go-Roundという曲、基本的にはベタ打ちであり、ほとんど調声をしていないのだとか…。一部、気に入らなかった部分を以前「Synthesizer Vの歌声合成は次の次元へ。調声は不要、AIリテイク機能で好みの歌い方を選べる時代に」という記事で紹介したAIリテイク機能で、差し替えを行ってくるくらいだそうです。
AIリテイク機能で、少し歌い方を変えたものも採用している
先日、ヤマハが4年ぶりのVOCALOIDの新製品、VOCALOID 6をリリースしたことも大きなニュースになりました。このVOCALOID 6もSynthesizer Vと同じくAI歌声合成のエンジンを搭載したソフトではありますが、このVOCALOID 6とSynthesizer Vでは明らかに目指している方向がまったく違うことがハッキリとわかります。もちろん、どっちがいいという話ではなく、どんな機能をどのような用途、目的で使うのかによって、利用するソフトも違ってくる、ということなのだと思います。とにかく入力すればすぐにリアルな人のような歌声で歌ってくれるのがSynthesizer Vなのです。
Synthesizer V 1.7.1で登場したバージョン選択機能とは!?
さて、先ほども触れたAIリテイク機能は、非常に画期的な機能ではあったのですが、AIリテイク機能を搭載した1.7.0のリリースに伴い、既存のユーザーから「歌声が変わってしまった」という戸惑いの声がいろいろと上がっており、少し問題となっていました。とくに、すでに作成した楽曲データを再生した際に、声が変わってしまうのは大きな問題で、クレームになっていたのです。
そこで、AHSは暫定策として、過去のバージョンを公開する形で対応しました。ただ、Synthesizer V Studio ProのエディタだけをAIリテイク機能がない前バージョンに戻しても、声質が変わってしまうため、歌声データベースも前バージョンをインストールしなおさなくてはならない……という状況であったため、ユーザーも一部で混乱していたようです。
9月1日にSynthesizer V Studioの1.7.1β1がリリースされ、その後、9月30日に1.7.1の正式版として公開された
そうした問題を解決するため、Synthesizer V Studio Pro 1.7.1というバージョンが9月末に公開されていました。これがどういう意味を持ち、なぜ、このような問題が生じたのか、Synthesizer Vの開発者でDreamtonicsの代表取締役であり、先日AHSの代表取締役 兼 CTOにも就任したKanru Hua(カンル・フア)さんに少し話を伺ってみました。
「これまでも、バージョンアップにともない、歌声データベースもバージョンアップを繰り返し、そのたびに声や歌い方も微妙に変化していました。機械的な歌声から、より人間的な歌声になる進化をしていたことから、その進化をいいと思っていただいていたのだと考えています。ただ、今回HDVM=High Dynamics Voice Modelという技術を採用したことによって、声の変化が大きかったのと、旧バージョンとの互換性を壊してしまったため、混乱を起こしてしまったことは申し訳なく思っています。そこでそれらの問題を解決させるために、1.7.1へのアップデートをしたのです」(Kanruさん)
そう、声質や歌い方の違いはエディタよりも、歌声データベース側による面が大きく、エディタだけを前のバージョンに戻しても、歌声は変わってしまったんですね。とくに、すでに作成したデータを、新バージョンで再生すると声が変わってしまうのは問題であるため、1.7.1では、複数のバージョンの歌声データベースを一緒に扱えるような仕掛けをしてあるのです。
インストールはとってもシンプルで、各種バージョンの歌声データベースをインストールすれば、上書きされるのではなく、共存するようになっているのです。実際「ライセンスとアップデート」の「ステータス」部分を見ると、複数のバージョンが入っていることを確認できるはずです。もし、とくに過去のバージョンは不要というのであれば、最新版の歌声データベースを除いて削除することも可能になっています。
もっとも、Synthesizer Vでは、最新版の歌声データベースが登場すると、エディタ上からアップデートできるようになっているため、すでに全部最新版にしてしまったという人も少なくないと思います。その場合、AHSのマイページから過去バージョンもダウンロードできるようになっているので、これを入手してインストールすればいいのです。
では、この複数あるバージョンの歌声データベースをどうやって使い分けるのか。これもなかなかうまくできています。まず、Synthesizer Vの楽曲データであるSVPファイルのデータには、どの歌声データベースを使っているかという情報だけでなく、どのバージョンの歌声データベースであるかも記録されているため、旧バージョンで作ったデータを開くと、自動的に旧バージョンの歌声データベースが割り当てられるようになっているのです。
とはいえ新バージョンだったら、どんな歌い方になるのかも気になると思うし、逆に新しく曲を打ち込んだとしても、旧バージョンだったらどんな歌い方になるかも試してみたくなりますよね。その場合は、トラックの設定で歌声データベースを指定するだけじゃなく、「歌声」タブをクリックして表示される項目の上から2番目「歌声データベースバージョン」を使ってバージョンを変更すれば、切り替わるようになっているのです。
ちなみに、複数のバージョンの歌声データベースをインストールしても、アクティベートにおけるライセンス管理は1つなので、1度アクティベートしておけば別バージョンをインストールする際に、再度アクティベートを求められることはないので扱いは簡単です。今後も、Synthesizer Vの進化に伴い、歌声データベースもどんどんアップデートしていくことが予想されます。それに伴って声質や歌い方に変化が現れる可能性もありますが、こうしたバージョン選択機能が搭載されていれば安心ですね。
というわけで、リリースが予定されている新歌声データベース、M
【関連情報】
Synthesizer Vシリーズ製品情報(AHS)
Dreamtonicsサイト
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