日本時間の2022年9月30日0時、PreSonusのDAWであるStudio Oneが、第6世代目となるStudio One 6へとメジャーバージョンアップしたことが発表されると同時に、国内でも発売が開始されました。ラインナップは従来通り、Professional、Artist、Primeの3種類で、いずれも日本語版としての発売となっています。オープンプライスですが、国内発売元であるMI7の直販ショップであるMUSIC EcoSystems STOREのでの価格はProfessionalが税込53,900円(クロスグレードは40,700円)、Arsitが14,300円。そしてバージョンアップおよびアップグレードは6,820円~となっています。Primeに関してはこれまで通り無料となりますが、Primeのリリースは少し遅れ10~11月ごろ提供予定との情報です。
今回のStudio One 6へのバージョンアップでは、グローバル・ビデオ・トラック機能の搭載により、MOVやMP4などのビデオファイルがStudio Oneのトラックとして扱えるようになる一方、より素早く制作に取り掛かれるようにするためのスマート・テンプレートが搭載されるようになりました。さらに、スコアに歌詞を扱える機能が搭載されるとともに、MIDIプロダクション、オーディオ・セッション、さらにはライブ・パフォーマンスにも歌詞を追加できるようになるなど、ほかのDAWにはないユニークな機能も搭載されてきています(現状英語歌詞のみで、日本語歌詞には後日、アップデートで対応する予定)。さらにボコーダーやディエッサーが追加されるなど、エフェクト周りも機能強化が図られてみました。そんなStudio One 6をリリースとともに試してみたので、ファーストインプレッションということで紹介してみたいと思います。
Studio Oneの新バージョン、Studio One 6がリリース
Studio One 5がリリースされたのが2020年7月8日だったので、それから2年3か月で、待望の新バージョン、Studio One 6がリリースとなりました。もちろん、これまでも5.1、5.2、…5.5と着実にアップデートしてきたので、そろそろ6.0が……と期待していた人も多いと思います。数日前にSNSにティーザー広告も表示されるようになり、カウントダウンとなっていたわけですが、いよいよ発売となりました。
冒頭でも紹介した通りラインナップとして
Studio One 6 Artist
Studio One 6 Prime
の3通りでいずれも日本語版としてリリースされています。価格は円安の問題があるものと思われますが、Studio One 5のときより、やや上がっており、Studio One 6 Professionalで53,900円となっていますが、Studio One 1.x~5.x ProfessionalからStudio One 6 Professionalへのバージョンアップであれば、19,800円と、比較的手ごろな価格で入手できるようです。各価格を整理して表にしてみたものが以下のものです。
Studio One 6 Professional | 通常版 | 53,900円 |
クロスグレード版 | 40,700円 | |
Studio One 1~5 Professonalからのバージョンアップ | 19,800円 | |
Studio One 2 Producerからのバージョンアップ | 19,800円 | |
Studio One 1~6 Arsistからのアップグレード | 39,600円 | |
Studio One 6 Artist | 通常版 | 14,300円 |
Studio One 1~5 Aritistからのバージョンアップ | 6,820円 | |
Studio One 6 Prime | 無料 |
さて、そのStudio One 6 Professionalをさっそくインストールしてみたところ、インストーラの画面の雰囲気がちょっと変わって、おっ?と思いましたが、Windowsにおける推奨インストール容量が25.16GBとなかなかの容量。もちろん、そのほとんどはサンプリング音源であるPresence XTのライブラリであったり、ループライブラリなわけですが、これはかなり時間がかかるのでは……と構えたのですが、サーバーがかなり高速なのか、10分ほどでインストール完了しました。
Studio One 6 Professionalのインストーラー画面。Windowsの推奨インストールで25.16GBになる
またこのインストーラー、ネットからのダウンロードによるインストールだけでなく、ファイルからのインストールという機能が追加されていたので、一度ダウンロードしてしまえば、いちいちネットからインストールするのではなく、より高速に、簡単にインストールできるようになっているんですね。
起動させてみると、かなり色合いがポップになった感じのStudio One 6ロゴとともに、簡単なチュートリアル画面が表示されます。これにしたがって、セッティング作業を進めていけば、すぐにStudio One 6が使えるようになります。私はStudio One 5 Professionalがインストールされている状態でStudio One 6 Professionalをインストールしてみたのですが、置き換えられるのではなく、併存する形になっているので、何かトラブルがあったような際でも、Studio One 5に戻ることがでいるので、その点でも安心だと感じました。
オープニング画面はちょっとシンプルになった気もするが、基本的には従来と同様
そのStudio One 6、機能画面は従来より、ちょっとシンプルになっているのですが、左上の「+新規」というボタンをクリックすると、ちょっと見慣れない画面が登場します。これがスマート・テンプレートというものです。
新規をクリックすると、スマート・テンプレートの画面が表示される
Studio One 5では新規ソング、新規プロジェクト、新規ショーと3つに分かれていましたが、今回それらが統合されるとともに、ここにさまざまなテンプレートが用意され、ここからすぐにアクションに入れるようになっているのです。具体的には
リハーサルとパフォーマンス
今すぐ再生
今すぐ録音
ビートを生成
コンテンツを作成
ファイルをインポート
PreSonusインターフェース
デモ
というものが用意されており、すぐに録音したり、リズムを作っていったりすることができるのです。
しかも「今すぐ録音」、「ビートを生成」といったものを選ぶと、このテンプレートでどのように作業をすすめていけばいいのかの案内が表示されるので、初めてStudio Oneを使うユーザーでも、安心して、分かりやすく操作できるようになっているのもうれしいところです。
テンプレートを選ぶと、即制作に入れるとともに、簡単なチュートリアルも表示される
一方で、今回非常に便利になったな、と感じたのがビデオの扱いです。これまでもソングにビデオファイルをインポートして扱うことはできましたが、感覚的にはStudio Oneのソングとビデオを連動させることができる……という雰囲気のものでした。が、今回、グローバル・ビデオ・トラックという名前のビデオ専用のトラックが登場し、MP4やMOVファイルなどをドラッグ&ドロップするだけで、このビデオトラックが生成されるとともに、サムネールも自動生成されて、ビデオと音との同期が視覚的にもハッキリとれて扱いやすくなっています。
ビデオをドラッグ&ドロップでソング画面上に持ってくると、ビデオトラックが生成され、サムネール表示もされる
ただ、ドロップしただけの状態だと従来と同様、ビデオだけが表示されて、その中にあるオーディオは登場してきません。が、「ビデオサウンドプレイバック用のオーディオトラックを生成」というボタンをクリックすると、ビデオトラックの下にオーディオトラックが生成され、ここにビデオの波形も表示され、普通にオーディオトラックとして扱えるようになっています。
このビデオトラック自体は1つのみであり、本格的なビデオ編集機能とまではいかないものの、このビデオトラックに別のビデオをドラッグ&ドロップで持ってくることができ、こうすることで、カーソル位置に別のビデオをインサーション可能になっているのです。もちろん、時間的なトリミングもできるなど、簡易的なビデオ編集は可能なので、結構便利に使えそうです。もちろん、オーディオトラックやインストゥルメントトラックも交えた上でのミックス結果をビデオとしてエクスポートすることもできるようになっています。
ソングメニューにはビデオのエクスポートという項目があり、ここからビデオ生成が可能
ところで今回のStudio One 6では「カスタマイズを編集」というちょっとユニークな機能が追加されています。「カスタマイズを編集ってどういうこと?」と思ったら、Studio Oneの画面から普段使わない機能を消してしまい、自分だけの使いやすいシンプルなStudio Oneにしようという機能のようです。
「カスタマイズを編集」機能によりStudio Oneを自分だけのUIにしていくことができる
ツールバー、インスペクター、トランスポート、ブラウザと4つのタブがあり、たとえば、インスペクターに表示される数多くの項目の中で自分の使うもの以外のチェックを外せば、それらが見えなくなり、より効率よく作業ができるようになる、というわけですね。Studio One 6はこれまでと同様、すごく軽いDAWではありますが、こうしたカスタマイズ機能によって、よりシンプルに機動性高く使えるようにする、ということのようです。
MIDIトラックに歌詞を入力していくことができる
また、今回のStudio One 6の新機能として登場したのが、歌詞サポート機能です。冒頭でも少し触れましたが、この歌詞のサポート、従来のDAWでの歌詞入力・表示機能とはちょっと異なっています。各MIDIトラックではノートごとに歌詞を入力していくことができるほか、グローバルでの歌詞の入力・表示機能というものが用意されているのです。グローバルというのは、全トラック共通という意味なのですが、つまりMIDIトラックなしで、オーディオトラックだけでも、歌詞の入力や表示が可能になっており、何小節目の何拍目…という感じで歌詞を入力していくことができるのです。
MIDIトラックに限らずグローバルに歌詞入力、表示も可能になっており、小節、拍単位で入力が可能
現時点でもMIDIトラックに対しては日本語の文字入力が可能なようでしたが、グローバルでは日本語入力ができないなど、まだ日本語対応は完璧ではありませんでした。が、これについては後日アップデートで日本語対応するようなので、ここは期待して待ちたいところです。
新たにエフェクトとして追加されたVocoder
さらに、エフェクトの機能強化も図られています。大きな目玉としてはVocoderの搭載です。このボコーダー、インストゥルメントではなくエフェクトとしてのボコーダーであるため、歌うシンセのように使うためにはマイク入力ができるようにしたオーディオトラックにVocoderをインサーションで挿すとともに、MaitaiやMojitoなどなどのインストゥルメントトラックを作成。その上で、Vocoderのサイドチェーンをオンにして、出力先に、インストゥルメントトラックを設定することで、いわゆるシンセ系のボコーダーとして機能してくれます。プリセットも数多く用意されているので、結構派手に遊ぶことができますね。
サイドチェーンの出力先としてインストゥルメントを指定することで、ボコーダーシンセとして使えるようになる
また、待望のディエッサも今回のStudio One 6で搭載されました。これにより、ボーカル処理などもしやすくなっています。
そのほかPro EQがPro EQ 3へと進化し、見た目にも機能的にもより強力な8バンドのパラメトリックイコライザーになっています。オプションでスペクトラムメーター、可変ローカット、ハイカット、低周波、高周波のマルチモードフィルター、バンドソロ、ダイナミックモードコントロール、出力ゲイン設定なども可能となっています。
またAutofilterも、今回大きく進化していました。ここには2つのレゾナンスフィルターが搭載され、6つのフィルターモデルから選択することができるようになっています。フィルターのカットオフ周波数とレゾナンスは、標準波形、16ステップ・シーケンサー、エンベロープを使用したLFOでモジュレートできるなど、かなり複雑な設定も可能で、これだけでもかなりの音作りができそうです。
ほかにもStudio One 6では、インストゥルメントであるMai TaiやSample One XT、Presence XTがノートコントローラーに対応したり、ミキサーにフェーダーフリップ機能を搭載したり、ミキサーチャンネルのオーバービュー機能搭載…などなど数多くの新機能が搭載されています。とはいえ基本的な使い方はStudio One 5を踏襲しているし、もちろんデータの互換性もしっかりあるので、Studio One 5ユーザーであれば、即バージョンアップしてよさそうです。今回は触れませんでしたが、Studio One 6 Professionalであれば非常に強力なマスタリング機能も搭載されているので、ほかのDAWを使いつつ、Studio Oneをマスタリング用途に使うのもよさそうです。もちろん、膨大なライブラリも用意されているので、これを機会にStudio Oneを新たに導入してみるというのもいいのではないでしょうか?
近いうちにDTMステーションPlus!でもStudio One 6特集を組むとともに、さらに掘り下げて紹介していきたいと思っております。詳細が決まり次第お伝えいたします。
【関連情報】
Studio One 6製品情報
【価格チェック&購入】
◎MI7直販ショップ ⇒ Studio One 6 Professional(通常版) , Studio One 6 Professional(クロスグレード)
◎MI7直販ショップ ⇒ Studio One 6 Prefessional(バージョンアップ版[Studio One 1~5 Professional])
◎MI7直販ショップ ⇒ Studio One 6 Prefessional(アップグレード版[Studio One 1~6 Artistl])
◎MI7直販ショップ ⇒ Studio One 6 Artist(通常版) , Studio One 6 Artist(バージョンアップ版)