iZotope RXがバージョンアップし、RX 10となりました。RXは、さまざまなノイズを取り除くレストレーションソフトとして、レコーディングの現場からポストプロダクション現場まで幅広く使われているツール。ライブレコーディング、ナレーション、音楽制作など、音に関する現場では必須ともいえるツールで、これがないと仕事ができないという方も多いと思います。
今回のバージョンアップでは、Repair Assistantが進化し、より直感的に使えるものになり、新機能のSelection Featheringという処理範囲と周囲の差を自然に慣らしてくれる機能も追加。またリモート収録などで欠損したファイルをより自然に復元するSpectral Recoveryの改善やDe-humが改善され学習なしで動きのあるハムノイズにも対応しました。そして日本語非対応ではありますが、新しい方向性の新機能である、音声ファイルから言葉をテキスト化するText Navigation機能、話者を識別しタグづけするMultiple Speaker Detection機能が実装されました。音声処理のプロフェッショナルツールRX 10のアップデート内容を紹介していきましょう。
iZotope RX 10が発売開始!より使いやすくなったRepair Assistantと音声のテキスト化がすごい
RX 10のグレードは、これまでと変わらず、RX 10 Elements、RX 10 Standard、RX 10 Advancedの3ラインナップで展開されています。新機能などについて、利用できるかどうかはグレードによって違うのですが、StandardとAdvancedに関して、大きな変更点はないようです。ただRX 10 Elementsに関しては、大きく仕様が変わり、これ後紹介するRepair AssistantがRX 10 Elementの本体に置き換わるとのこと。なお価格は以下のようになっています。
商品名 | 日本定価(税抜) | 日本セール定価(税抜) | セール定価(税込) |
RX 10 Elements | ¥17,455 | ¥13,182 | ¥14,500 |
RX 10 Standard | ¥53,909 | ¥39,818 | ¥43,800 |
RX 10 Advanced | ¥161,909 | ¥106,273 | ¥116,900 |
RX Post Production Suite 7 | ¥269,909 | ¥132,909 | ¥146,200 |
また、このタイミングで既存RX Standard/AdvancedユーザーのRX 10アップグレード国内特典として、先着1000名様にPro Sound Effects社アカデミー受賞アーティストによる90以上のフォーリー音源のプレゼントがあるとのこと。詳しくはRock oN Line eStoreにアクセスしてみてください。
さて、RX 10のバージョンアップ内容について見ていきましょう。まずはRepair Assistantが新しくなり、RX上のみならず、プラグインとしてDAW上で動かすことが可能になりました。以下がRepair Assistantの画面なのですが、RX 9と比べて、かなり変更され、直観的に使えるツールへと進化しています。
RX 10になりRepair Assistantがより直感的に使えるようになった
使い方としては、Voice、Musical、Percussion、Sound FXから音源に合うものを選び、Learnをクリックするだけ。
Learnをクリックすると、解析が始まる
すると、RXが自動で必要な5つのツールを表示してくれて、さらにはパラメータも設定してくれます。これで再生すると、見事にノイズを除去してくれます。もちろん、自分でパラメータを操作することも可能。
解析が完了すると自動で必要な5つのツールを表示、パラメータも設定した状態になる
さらにOpen Module Chainボタンを押すと、どういったモジュールが使われているか確認することもできます。
Open Module Chainから、モジュールの確認も可能
また、ここからモジュールの詳細設定に飛んで、より細かい調整も可能です。
たとえば、動画制作をしている方でも音声処理は必須なので、簡単で直観的に声の処理を行えるようになったのは、かなり嬉しいポイントだと思います。また、なるべく時間を掛けずに、でも高いクオリティでノイズを除去したいユーザーにとっても、使い勝手のいいツールへ進化していますね。
試しにDAW上で、Repair Assistantを立ち上げてみました。なんの問題もなく立ち上がり、RX上で開いたときと、ほぼ同じ動作をするので、普段DAWを使って音楽を作ったりしている方にとっても、嬉しいバージョンアップになっていると思います。もちろん、これまでと同様に各モジュールを個別でアサインすることもできます。
次にギタリスト向けのものとしてDe-humの改善ですが、これまで範囲選択してハムノイズをLearnして読み込ませる必要があったものが、Adaptive modeに有効にするだけで、ハムノイズを検出して除去することが可能になりました。これまでは、ハムノイズ部分をLearnする必要があり、それができない場合うまくノイズ除去できなかったので、それと比べるとかなり便利になったと思います。
学習なしで動きのあるハムノイズにも対応
また、ZOOMなどのビデオ通話アプリを収録すると、上と下の周波数がなくなってしまうのですが、その失われた周波数を復元するSpectral Recoveryが機能向上しています。RX 10からは、ローエンドの周波数も復元してくれるので、最近よくあるリモート参加の演者の声を処理するのが楽になっています。
Spectral Recoveryが機能向上して、ZOOMなどの音声をよりきれいに処理することが可能になった
そして、新しい方向性の音声ファイルから言葉をテキスト化するText Navigation機能についてです。これはまだ日本語に対応していないのですが、音声ファイルを読み込んで、吹き出しのようなアイコンをクリックすると、テキストで言葉が表示されます。言葉の検索機能も付いているので、Searchに文字を入力すると、その地点にジャンプすることもできます。
英語のみ対応だが、話している内容のテキストを表示できる
また、話者を識別しタグづけするMultiple Speaker Detection機能もあり、こちらは日本語でも使用することができます。音声ファイルを読み込んで、解析させると、Speaker1やSpeaker2のように話者が識別されます。特定の人を範囲選択することができるので、その人の声だけをノイズ処理したり、ボリュームを上げたりすることが可能です。
誰が話しているか認識する機能も追加された。こちらは、日本語でも使用可能
そのほか、たとえばRXの投げ縄ツールで囲った範囲に処理をしたときに、境界線で処理前の音と処理後の音が分かれてしまっていたのですが、それがクロスフェード的に調整してくれるSelection Featheringが搭載されています。また快適に動作するようCPUスレッド制限機能や複数リージョン同時作成機能など、細かい部分でのアップデートも行われています。
今回のiZotope RX 10になって追加された機能、改善された機能などをまとめると以下のようになっています。
・Repair Assistant plug-in (新機能)
・De-Hum Dynamic Mode (改善)
・De-reverb (追加)
※ RX 10 ElementsはStandalone起動せず、新Assistantを含めてPlug-in動作のみとなります。
従来通りDe-click/De-clip/Voice De-noiseの単体プラグインも含みます。
・Text Navigation (新機能)
・Repair Assistant plug-in (新機能)
・Selection Feathering (新機能)
・First time user experience (FTUE) (新機能)
・De-Hum Dynamic Mode (改善)
・Text Navigation (新機能)
・Repair Assistant plug-in (新機能)
・Multiple Speaker Detection (新機能)
・Upgrade Spectral Recovery (新機能)
・First time user experience (FTUE) (新機能)
・Selection Feathering (新機能)
・De-Hum Dynamic Mode (改善)
ところで、RX 9からRX 10へのバージョンアップで気を付けたい点が1つあります。それはVST2のサポートがなくなり、VST3のみになったという点です。VSTの規格元であるSteinbergがVST2のサポート終了を打ち出しているので、当然の流れではあるのですが、世の中にはVST3をサポートしていないソフトも一定数残っています。
その代表ともいえるのがネット配信ソフトのOBSでしょう。OBSはWindows版もMac版もVST2のみのサポートであるため、VST3だと使うことができません。そこで、有用なのがVST2-VST3コンバーターとしても利用可能なBlue Cat AudioのBlue Cat’s Patchworkです。詳細は「VST3、VST2、AAX、Audio Unitsと何でも動かせるプラグインコンバーター、Blue Cat’s PatchWorkの威力」と記事を参考にしていただきたいのですが、これを組み込むことでRX 10をOBS内で使うことが可能です。
Blue Cat’s Patchworkを使うことで、VST3プラグインであるRX 10をOBSのプラグインとして使うことができる
もうひとつ、Nugen AudioのSigModというソフトでも、RX 10をOBSで動かすことができました。これもPatchWorkと近いコンセプトの製品で、VST2のプラグインとして機能しつつ、その中でさまざまなエフェクトを機能させることができるというもの。現在のバージョンではVST3のプラグインを内部に組み込むことができるので、ここにRX 10を入れることで、OBS内で使うことができるようになるのです。
※2022.9.7追記
最新のSigMod1.3.0.7はVST2非対応となっているので、アーカイブから一つ古いバージョンの1.2.3.0をインストールして使うようにしてください。
Nugen AudioのSigModを介すことでもRX 10をOBS内で使うことができた
一方、Windowsのみの対応ソフトではありますが、日本のソフトメーカー、インターネットが開発したAudio Input FXというソフトも便利に使えます。これは入力デバイスとして仮想的にこのソフトを設定し、この中にRX 10を起動させて利用するといもので、以前「リアルタイムでプラグインが動かせるVSTホスト、Audio Input FXがVerUpし、演奏生配信で利用可能に。Free版も同時に誕生!」という記事で紹介したこともありました。詳細はそちらの記事を参照いただきたのですが、これをt買うことでOBSにはあらかじめRX 10でノイズ除去をした音を入力するという方法です。
Audio Input FXをOBSの仮想入力に設定することで、音源にRX 10をかけることが可能になる
いずれもややトリッキーな使い方ではありますが、OBSの音をRX 10でよくしようという人にとっては有用な方法だと思います。
そして、本日9月7日18時から、このRX 10のセミナーが開催予定です。RX 10に興味のある方は、より深く情報をゲットできると思うので、このiZotope RX セミナーに参加してみてはいかがでしょうか?
以上、速報という形でRX 10について紹介しました。今回の目玉はRepair Assistantのアップデート。使いやすいUIに進化したので、より手軽にノイズ除去を行うことができますよ。アップグレードやクロスグレードも含め、イントロセール実施中なので、この機会にぜひ試してみてはいかがでしょうか?
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