DTMにおいてボーカルや生楽器の音をレコーディングしたい、と思ったら、まず揃える機材にマイクが挙げられます。ただ、一言でマイクといっても、数多くの種類があるし、プロが使うものとなると数十万円といったものが中心。中でも高感度に音を捉えることができるラージダイアフラムのコンデンサマイクの場合、非常に高価というイメージもありますが、実際には手頃な価格のものもいろいろ存在しています。
そうした中、今回ピックアップするのはSeide(ザイド)というメーカーのPC-Me MK2(11,000円税込)とEC-Me MK2(6,600円税込)という2種類のラージダイアフラムのコンデンサマイク。これでどれくらいの音質でレコーディングすることができるのか、シンガーの小寺可南子(@cana_ko_tera)さんに協力をお願いしてボーカルを録ってみました。その結果、想像していた以上に高音質にレコーディングすることができたので、実際の音も紹介しつつ、コンデンサマイクの基本や、取り扱い方法なども見ていきましょう。
1万円程度で買えるコンデンサマイクはどこまで使えるのか? SeideのPC-Me MK2(黒)とEC-Me MK2(緑・赤)でボーカルレコーディングしてみた
まず、マイクは大きく分けて、ダイナミックマイク、コンデンサマイク、チューブマイク、リボンマイクの4種類あります。それぞれ特徴が異なるわけですが、基本的に自宅で声を録音するとなると、ダイナミックマイクかコンデンサマイクが最適。
シンガーの小寺可南子さんに歌ってもらい、PC-Me MK2とEC-Me MK2の音を比較しながらチェックしてみた
ダイナミックマイクは、物理衝撃や大音量に強く、指向性も狭いため、ライブやドラムのレコーディングなどに使われます。繊細なニュアンスを収音するのは苦手なので、ボーカルのレコーディングなどではあまり使用されません。ただ、比較的安価なものも多いので、配信など、そこまで声の音質を重視されないところで使用するのはアリ。マイクの近くで喋らないといけないので、部屋の反響やエアコンなどのノイズを抑えられるという特性もあります。
一方コンデンサマイクは、衝撃や湿気に弱く、ダイナミックマイクに比べると、保管に気を遣う必要があります。繊細に音を拾うことは得意なので、ボーカルのレコーディングには、まずコンデンサマイクが選ばれていると考えていいでしょう。マイクからある程度離れた音も拾うので、デスクの上にコンデンサマイクを置いておけば、喋り声は簡単に拾うことができます。ただ、反響音や周囲のノイズも拾うので、その点には注意が必要ですね。
コンデンサマイクは、繊細な音を拾える一方、保管には気を使う必要がある
もちろん製品によって、違いはあるのですが、大まかな傾向はこの通りです。ボーカルのレコーディングに使うとなるとコンデンサマイクの方が向いているわけですが、最近ではUSBマイクのラインナップが揃ってきたので、これを使うという選択肢もあります。ですが、USBマイクは、PCと直接接続できるので、セッティングが簡単という特徴がある一方、多くの製品に専用ドライバが用意されていないためリアルタイムにモニターがしにくかったり、最高で16bit/48kHzといった制限があることもしばしば。配信用やネット会議でUSBマイクを使うのならいいですが、ボーカルのレコーディングとなるとやはりオーディオインターフェイスと共に使うほうが扱いやすいのが事実。それが、オーソドックスですし、汎用性もオーディオインターフェイスとマイクの組み合わせの方が上です。
コンデンサマイクを使う際には、ファンタム電源が必要なので、オーディオインターフェイスの48Vと書かれているボタンをオンにして電源供給します。また、振動に弱いのでショックマウントが必要で、吹かれにも弱いので、ポップガードを取り付ける必要があります。そのため、一般的なコンデンサマイクでレコーディングする場合、PC、DAW、オーディオインターフェイスのほかに、ショックマウント、ポップガードが必要となります。またオーディオインターフェイスと接続するためのケーブルやマイクスタンドも必要ですね。
コンデンサマイクを使用する際は、ポップガードやショックマウント、ケーブルなどが必要
そのため、普通はマイクを購入すると同時に、そういった周辺のアイテムも購入する必要になるのですが、今回ピックアップするコンデンサマイクのEC-Me MK2とPC-Me MK2には、マイク本体のほかに付属品が充実しています。具体的には、EC-Me MK2にはマイクホルダー、ミニスタンド、XLRケーブル、ポップガードが付属。
EC-Me MK2にはマイクホルダー、ミニスタンド、XLRケーブル、ポップガードが付属
PC-Me MK2には、ショックマウント、XLRケーブル、ポップガードが付属しています。立って歌う際に使うマイクスタンドは別途購入する必要がありますが、こういった周辺アイテムが付いてくるのは嬉しいところですよね。
PC-Me MK2には、ショックマウント、XLRケーブル、ポップガードが付属
さて、EC-Me MK2はバーミリオンレッドとエメラルドブルーの2色展開となっている、片手サイズのコンデンサマイク。本体にローカットフィルターや指向性の切り替えスイッチがない、単一指向性タイプです。
一方、PC-Me MK2は、本体の胴ネジを回すと内部基盤中央のローカットスイッチを切り替えることが可能。そのほかは、単一指向性で、EC-Me MK2とサイズも一緒。この後、実際に音質の違いを紹介しますが、カラーリング以外の外見はほぼ同じとなっています。
今回の録音は音楽教室 EMS東京校の中のスタジオをお借りして、小寺可南子さんのボーカルを録音してみました。楽曲は、DTMステーションCreativeレーベルの第1弾ミニアルバム「Sweet My Heart」からSweet My Heart。オーディオインターフェイスは、マイクプリを2つもつFocusriteのScarlette 2i2 3Genを使って、EC-Me MK2とPC-Me MK2を上下に配置。同時に録音しているので、この2本に関しては、まったく同じテイクの録音となっています。
マイクを上下に配置して、小寺可南子さんのボーカルを録音してみた
またオーディオインターフェイスのつまみは、入力レベルが同じになるように調整。
オーディオインターフェイスはFocusriteのScarlette 2i2 3Genを利用した
DAWはStudio Oneを使用し、24bit/48kHzでレコーディングして、EQやコンプで軽く整えるとともに、オケに馴染む程度にリバーブをかけた結果が以下のものです。
聴いてみていかがでしょうか?この値段のマイクとは思えないほど、キレイに録れているのが分かると思います。ただ、EC-Me MK2は、高音域が控え目ですね。実際に使うとなると、EQで高音域をブーストしてあげると、いい感じになると思います。ここで、このようなミックスをしない、録ったままの生のボーカルデータを聴いてみてください。
こちらを聴くと、よりマイクの特性が分かると思います。EC-Me MK2は、PC-Me MK2に比べ周波数レンジが狭く本格的なレコーディングにはやや不向きではありますが、その分中高音域にフォーカスしているので、喋り声を拾うには最適。配信などの場面では、活躍するマイクだと思います。それに対しPC-Me MK2は、かなりキャラクターが違っており、高域もしっかりと出ているし、フロアノイズもないクリアなサウンドですね。EQでそこまで調整しなくても、キャラクターも付いているので、まずはそのままでも十分使える音だと思います。約1万円のマイクですが、しっかりしたレコーディングできていると思いますよ。
Studio One 5を使ってレコーディング/ミックスを行った
ある程度の値段のするマイクだと、解像度が高かったり、反応がよかったり、ニュアンスを繊細なところまで拾えたり……するのですが、通常レコーディングスタジオに置いてあるようなマイクは、数十万円します。それを個人で持つのはなかなか難しいので、まずはこういった1万円程度のマイクから始めてみるというのは大事だと思います。それでレコーディングに慣れてきたり、音の違いが分かってきたら、より自分に合ったマイクを探すといいでしょう。結果としては、初心者が最初にPC-Me MK2を選ぶのは、付属品も付いて約1万円なので、非常におすすめだと思います。
【関連情報】
PC-Me MK2製品情報
EC-Me MK2製品情報
【価格チェック】
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