超軽量、コンパクト、ハイコストパフォーマンスのオーディオインターフェイス、ZOOM AMSシリーズ

ZOOMから6月上旬にAMSシリーズなる、とても小さなオーディオインターフェイス3種類が発売されています。これは、AMS-22(税込12,000円前後)、AMS-24(税込15,000円前後)、AMS-44(税込20,000円前後)のそれぞれで、配信や録音に便利すぎる機能を持ち、24bit/96kHzにまで対応する小型のオーディオインターフェイスです。AMS-22はZOOM史上最もコンパクトなサイズであり、重さは85gと、持ち運びに優れたWindows/Mac/iOS/Android対応のデバイスとなっています。ほかの2機種も圧倒的な軽さを誇っており、場所を問わず音楽も配信も簡単に行うことが可能。

オーディオインターフェイス本体のスイッチで、ループバックの設定、1chと2chのステレオリンク、ダイレクトモニターなどを切り替えることができるのに加え、MUSICモードとSTREAMINGモードという2つのモードを搭載してるのもポイント。このモードは名前の通り、音楽制作と配信それぞれに最適化された状態に切り替わるというものなのですが、これにより圧倒的簡単にセットアップを完了させることが可能になっているのです。実際どういった仕様になっているのか、AMSシリーズ3機種を試してみたので、紹介してみましょう。

とにかく小さく、軽いながら高性能なZOOMのオーディオインターフェイス、AMS-22(写真)とAMS-24、AMS-44をチェックしてみた


今回取り上げるのはAMSシリーズですが、ZOOMはAMSシリーズの発表と同じタイミングで32bit float対応オーディオインターフェースUAC-232とUAC-432も発表しており、これが気になっている人も多いと思います。このUAC-232、UAC-432は以前「これはオーディオインターフェイス革命!ZOOMが32bit Float対応のUSBオーディオインターフェイスにもなる小型レコーダーF3を発表」や「どんな爆音を入れても絶対クリップしない! ZOOM F3が、ついに32bit float対応の革命的オーディオインターフェイスに」という記事でも紹介したF3にも搭載された独自のデュアルAD回路と32ビットフロート録音技術が搭載されているもの。発売は2022年冬とのことで、まだ少し先であるため、実物が入手できていません。これは入手次第、詳しくレビューをしていく予定なので、もうしばらくお待ちください。

コンパクト、超軽量、ハイコストパフォーマンスのオーディオインターフェイス ZOOM AMSシリーズ

さて、今回発売されたAMSシリーズですが、UAC-232やUAC-432とコンセプトは違っているので32bit float対応ではないものの、圧倒的にコンパクトで、軽量ですし、便利な機能が搭載されているので操作も楽で、安価という特徴があります。スペックはラインナップ共通で、最大24bit/96kHzとなっており、ほかには以下のような違いがあります。

AMS-22 AMS-24 AMS-44
価格 税込12,000円前後 税込15,000円前後 税込20,000円前後
INPUT チャンネル 2 2 4
タイプ XLR/TRSコンボジャック×1
ステレオ3.5mmジャック×1
XLR/TRSコンボジャック×2 XLR/TRSコンボジャック×4
プリアンプ 1 2 4
ファンタム電源 1 2 4
OUTPUT チャンネル 2 4 4
タイプ TRS×2
ヘッドホン出力×1
TRS×2
ヘッドホン出力×2
TRS×2
ヘッドホン出力×2
重量 85g 134g 177g
電池駆動 ×

まずAMS-22から具体的に見ていくと、まず驚くべきは、その小ささ。手のひらサイズしかなく、重量も85gとZOOM史上最小、最軽量の超コンパクト設計になっています。

手のひらサイズのAMS-22は、ZOOM史上最小、最軽量の超コンパクト設計となっている

こんな小さい機材でも、必要な機能はしっかりと搭載されており、フロントにはマイクやギターを入力するためのコンボジャック、ステレオ3.5mmの入力、ヘッドホン端子が装備されています。

フロントには、コンボジャック、ステレオ3.5mmの入力、ヘッドホン端子を装備

リアには、TRS出力とPCと接続するためのUSB端子、スマホなどで使用する際の電力供給のためのUSB端子を搭載。

リアには、TRS出力、PCと接続するためのUSB端子、電力供給のためのUSB端子を搭載

トップには、コンボジャックに接続した信号を調整するためのGAINツマミ、ヘッドホンとアウトプットのツマミが付いています。左サイドには、コンデンサーマイクを使うための48Vファンタム電源。

左サイドには、ファンタム電源スイッチ

右サイドには、ダイレクトモニターの切り替えスイッチ、ループバックの切り替えスイッチが搭載されています。

右サイドには、ダイレクトモニターの切り替えスイッチ、ループバックの切り替えスイッチを搭載

一見するとシンプルな機材ですが、必要な要素が詰まっており、個人的にいいなと思った点を挙げるとすると、まずはリアの出力がRCAでなく、TRS出力となっている点。こういった小さい機材はRCA出力が搭載されていることが多いのですが、TRS出力になっているので、ほか機材との接続が簡単に行えますし、業務機用レベルで出力できるので、使い勝手がかなりよいです。

iPhone 12 Proと並べてみるとその小ささがよく分かる

また、ダイレクトモニターの切り替えスイッチが筐体についていることはよくありますが、ループバックが簡単に切り替えられるのは大変便利で、これも好印象です。わざわざソフトを立ち上げて、ループバックを切り替える必要がないので、こういった機材に慣れていない方でも扱いやすいですね。

iPadに繋げて使用してみた

次にAMS-24ですが、これが一番人気になるのではないかと思っています。入出力は、AMS-22が2in/2outだったのに対し、こちらは2in/4outとなっています。AMS-24も実際に使うユーザーのことをよく考えて作られており、様々な工夫が施されています。またこちらも非常に軽く、重量は134g。サイズもコンパクトで、AMS-22の約2つ分の大きさとなっています。

2in/4outのAMS-24

まず搭載されている端子から見ていくとフロントには、コンボジャック2つ、ヘッドホン端子2つあります。

フロントには、コンボジャック2つ、ヘッドホン端子2つ装備している

リアはAMS-22と同じく、TRS出力とPCと接続するためのUSB端子、電力供給のためのUSB端子が搭載されています。

リアの構成は、AMS-22と同じ

トップには、コンボジャックに接続した信号のゲインを調整するツマミ、1chと2chに接続した信号をステレオとして扱うことのできるステレオのリンクボタン、1chにはMIC/LINEとGUITARを切り替えるためのスイッチが搭載されています。またOUTPUT A,Bという2つのボリュームノブが装備されてるのですが、これの使い勝手がかなりいいのです。

トップにあるOUTPUT A,Bという2つのボリュームノブで、2系統の出力レベルコントロールできる

OUTPUT Aには、リアの出力と上のヘッドホン端子が割り振られており、OUTPUT Bには下のヘッドホン端子が割り振られています。つまり、別々のミックスを作ることも可能となっており、TRS出力では回線数が足りないときに下のヘッドホン端子からミキサーへ出力する、といった使い方もできます。TRS出力から外部へ出力しているときに上のヘッドホン端子からモニターすると、ヘッドホンのボリュームを操作しようとした際、TRS出力の音量も変わってしまいます。そういったときにOUTPUT Bを活用すれば、別々の音量を作ることが可能。ヘッドホン端子がミニジャックである点に対しては、好みはあるとは思いますが、柔軟に使える仕組みになっています。

リアと上のヘッドホン端子はOUTPUT A、下のヘッドホン端子はOUTPUT Bに割り振られている

また、MUSICとSTREAMINGの切り替えスイッチが搭載されているのも、これがAMSシリーズの大きな特徴です。このスイッチは、AMS-24とAMS-44のみ搭載されていて、AMS-22には搭載されていないのですが、これを切り替えることでにって、信号のルーティングが切り替わり、音楽制作用として使うか、配信専用機材として使うか、大きく変えることが可能になっているのです。

音楽制作または配信専用機材へと生まれ変わるMUSICとSTREAMINGの切り替えスイッチ

具体的には、以下の図を見るとよくわかりますが、入力信号の扱い方が大きく変わってきます。

上がAMS-44、下がAMS-24の信号の流れ

まずは、MUSICモードから具体的に説明していきましょう。といってもMUSICモードは通常のオーディオインターフェイスと同様のもので、AMS-24の場合INPUT1に接続したものは、DAWのINPUT1に送られます。INPUT2も同様ですね。

DAWを使うときにはMUSICモードを使用する

一方、STREAMINGモードはというと、配信に特化した設定となっているので、OBSといったソフトやスマホで配信するときに使います。これは、INPUT1とINPUT2がまずステレオLRになり、そのあとOBSの入力に送られる設定。つまり入力した音は、まずミックスされPCに送られるようになるのです。なので、INPUT1に接続したものでも、DAWでいうところのINPUT2にも信号は送られます。ウェビナーやリモート会議といった場面でも使うことができ、2人で喋る場面でも簡単にセッティングを行うことが可能。とにかく音楽制作をするときは、MUSICモード。配信をするときは、STREAMINGモードにしておけばOKです。

OBSなど配信ソフトを使う時にはSTREAMINGモードを使用する

さて、右サイドにはAMS-22と同様にダイレクトモニターの切り替えスイッチ、ループバックの切り替えスイッチが搭載されています。

右サイドにはAMS-22と同様にダイレクトモニターの切り替えスイッチ、ループバックの切り替えスイッチが搭載

左サイドには、コンボジャック1chと2chのためのファンタム電源スイッチ。それからAMS-24は電池駆動するので、そのための切り替えスイッチが搭載されています。

左サイドには、コンボジャック1chと2chのためのファンタム電源スイッチ、電池駆動の切り替えスイッチを装備

電池駆動状態では、44.1kHz、48V OFF、ヘッドフォン32Ω負荷時に単3アルカリ電池2本で約4時間駆動するようになっています。PCと接続する際は、バスパワーで駆動するので、あまり使うことはないかもしれませんが、スマホで利用するユーザーにとっては嬉しいポイントだと思います。わざわざ外部から電源を入力せずとも、電池で動かすことができるので、かなり機動性高く使えますよね。

スマホなどで利用する際に電池で駆動させることができる

そしてAMS-44ですが、これは4in/4outとなっています。重量は177gで、この入力数でようやくスマホと同じ大きさぐらい。AMS-22が小さすぎるので、伝わりにくいですが、これでも十分に軽量でコンパクトサイズですよ。

4チャンネルの入力を持っているが、それでもコンパクトなAMS-44

フロントには、コンボジャックが4つ装備されており、その右側にヘッドホン端子が2つあります。

フロントには、コンボジャックが4つ、その右側にヘッドホン端子を2つ装備

リアとサイドはAMS-24と同様で、トップにはコンボジャックが4つある分のツマミが付いています。1chにはMIC/LINEとGUITARの切り替えスイッチ、3ch4chをステレオリンクさせるボタンも配置されています。そのほかは、AMS-24と同じなので、AMS-44は、AMS-24のインプットが4チャンネルになったバージョンというわけですね。

3,4chにステレオリンクするボタンが搭載されている

実際に手元にあるiPhoneに繋いでみたのですが、接続すればすぐに使用可能になりました。スマホでも同じく、音楽制作するならMUSICモードにして、配信するのであればSTREAMINGモードにすれば、簡単にストレスフリーで利用することができますよ。

AMS-24をスマホに接続して使用してみた。電池を入れているので、電源用のケーブルは不必要

スマホとともに持ち運ぶことも前提に考えるのであれば、AMS-22かAMS-24のどちらかになりそうですが、どちらにするか迷いますね。AMSシリーズ自体、モバイルバッテリーで電源供給することもできるので、AMS-22は電池駆動がないですが、フレキシブルに使うことはできます。決め方としては、やはりどんな使用用途かになってきますよね。それこそ、PCでの使用がメインで自宅でも外でも使うのであれば、AMS-24の方が使い勝手がよさそう。とはいえ、必要なチャンネルが4チャンネルならAMS-44ですし、圧倒的に小さいのはAMS-22なので可搬性を求めるならこれですね。

小さくて軽いけどパワフルなAMSシリーズ、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
AMS-22製品情報
AMS-24、44製品情報
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2件のコメント
  • てるた

    質問なのですが、AMS-24やAMS-44を使って楽器とDAWの音を遅延なく配信することは可能でしょうか? ループバックスイッチをオンにして、4chある出力のうちOutput3/4をDAW(Studio Oneなど)に、Output1/2を配信ソフト(OBS Studioなど)に送れば、楽器の音をDAWに録りつつその様子を配信できるのではないかと思ったのです、実際できるのでしょうか…?
    現時点では私は2ch出力のオーディオインターフェース(YAMAHA AG03)しか持っていないのですが、ループバックスイッチを切り替えながら音楽制作・配信するのはかなり煩わしいです。またVoicemeeter Bananaなどといったソフトウェアの仮想ミキサーを使ってDTM配信を行おうとすると、入力側で大きな遅延が発生して楽器の録音がやりにくいという欠点があるのです…。

    2022年8月10日 9:12 PM
  • 藤本 健

    てるたさん

    結論からいうと難しいと思います。4ch出力というのは、スピーカーなど外部に出る音で、DAWやOBSへの出力ではないです。その目的であれば無理に1台のPCと1台のオーディオインターフェイスで行うのではなく、2台のPCを用意するのが早いように思います。

    2022年8月12日 8:46 AM

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