最近WAVESからリリースされたClarityというプラグインがSNSでかなり話題になっているのはご存知でしょうか?これは、ノイズリダクション系のプラグインで、1ノブで簡単に精度よくノイズを除去できるというもの。ノイズリダクションプラグインは、いろいろなメーカーからリリースされていますが、その中でもClarityの精度はかなり高く、しかも操作が簡単なので、音楽に携わる人だけではなく、音に関して知識が少ない映像系の人でも効果的に使うことができるのです。
Clarityは、Clarity Vx Pro(イントロプライス:31,746円税込)とClarity Vx(イントロプラス:3,828円税込)の2ラインナップで展開されており、違いは細かな設定・調節ができるかどうか。エンジン的には同じものを使っているので、Clarity Vxでも十分に実用レベルです。この後にClarityの動画を載せていますが、見ていただくと本当にびっくりしますよ。この価格で、ここまで高いクオリティなので、絶対に持っていて損はないプラグインだと思います。では、そのClarityの実力を見ていきましょう。
最先端のAI技術で、音声とノイズを分けるClarityの実力
さっそくですが、まずは公式から出ているデモ動画をご覧ください。
すごい威力ですよね。ただ、WAVES自身が出しているプロモーション動画なので、ホントにここまで効果が出るのか…と疑問にも思うところ。そこで、モノは試しということで、換気扇を強で動かしている前で、iPhoneの付属のマイクに向けて喋った声を録った音に対して、Clarity Vxを使ったらどうなるか実験してみたので、ご覧ください。
いかがでしょうか? 実際録音する環境として、こんなシチュエーションはほとんどないとは思いますが、こうした劣悪な状況で録音した音に対してClarity Vxを使ってみると、元の声をしっかり残しつつ、ノイズがキレイに消え去るのが、ハッキリとわかるし、とにかく使い方が簡単です。ここでは、マイクのソロの状態ですが、実際はこれにBGMなどを乗せるということを考えると、まったく気にならないレベルですね。
このClarity Vxには、Waves Neural Networksという新しいエンジンが搭載しているとのこと。このテクノロジーはノイズリダクションとボイスエンハンスメントに対する先駆的なAIアプローチらしく、この学習には、何十万もの音声ファイルを用いているそうです。ただ使用する際に注意しておきたいのは、Clarityは声に対するノイズ除去プラグインなので、楽器といった声以外のデータに入ったノイズはうまく取り除けない可能性があります。そういった意味でもRXといったノイズ除去プラグインと使い分けしていくのがいいですね。
上位版でより細かく調整可能でノイズ成分だけを取り出すことなどもできるClarity Vx Pro
では、シンプル操作で使える、Clarity Vxについて見ていきましょう。まずは、センターにある大きいノブですが、メインにこれを使ってノイズの除去具合を調整していきます。オーディオデータに多くノイズが入ってしまった場合は、目一杯回していき、逆に少しのノイズの場合は少な目で回すと声への音質変化を抑えて、ノイズ除去できます。どのぐらい回すかは、モニターヘッドホンでチェックしながら使うと、いい感じに仕上がりますよ。
NEURAL NETWORKSと書かれているところでは、Broad 1とBroad 2が選択できるようになっています。Broad 1では複数の音声が録音されている場合にそのすべての声を残したままノイズを取り除くことが可能。Broad 2では複数の音声が録音されている場合にメインとなる音声だけ残してノイズを取り除くことができます。ノイズがひどい場合にもBroad 2は有効です。たとえば、街中やカフェで音声録音したときなど周りでも話している人がいるときは、Broad 2に設定するとメインの声を残すことができますよ。どちらを使うかは、これもしっかり音を聴きながら判断するべきですね。
左下にあるANALYSISでは、SINGLEかDOUBLEを選択することが可能で、分析の回数を決めることができます。もちろんDOUBLEを選択するとCPU負荷が増えるのですが、より高品質に仕上げることができます
また、ステレオトラックのときのみに表示されるWIDTHでは、左右でノイズの成分が違う場合に幅を狭めることによって、モノに近い状態で検出して除去することが可能です。
そして、リセットボタンをクリックすると一度Neural Networksをリセットすることができます。1つのファイルに対して使っている際には必要ありませんが、たとえば複数トラックをバストラックにまとめている際にそれぞれのファイルのノイズが微妙に違うときにオートメーションなどでリセットすることで、次のファイルに最適な状況を作りだすことができます。1つのトラックにいろいろなVTRの音声を配置しているときなどは、毎回リセットするように設定するといった使い方がありますよ。
さて、Clarity Vxで操作できるのは以上です。たったこれだけの簡単操作で、ノイズをきれいにできるので、どんな方でも簡単に扱えますね。一方Clarity Vx Proは、もう少し複雑。といっても、ほかのノイズ除去プラグインに比べたら簡単なのですが、これについても見ていきましょう。実際に起動してみると、Clarity Vx Proの場合は、画面上部にグラフィックFFTディスプレイが表示され、効果が視覚的にも分かりやすくなっています。
またメインのノブの左側にAMBIENCEというのが追加されています。右に回すと先ほど説明したようにノイズを除去することが可能なのですが、逆に左に回すとノイズだけを残し、声だけを除去することが可能。喫茶店での話し声だけを除去して、環境ノイズを使いたいときなどに利用することができます。
Clarity Vx Proの場合だと、NEURAL NETWORKSにBroad 1、Broad 2に加えてBroad 1 HFが選択できるようになります。これは高音域のノイズ除去を抑えめにする設定で、これにより音声の高音域の抜けのよさを保つことができます
そしてClarity Vx ProにはADVANCED CONTROLSを押すとさらに細かく設定を追い込むこむときに使うパラメータが表示されます。
SENSITIVITYでは、ノイズと信号の感度を調整可能で、通常はNORMALになっており、これでも十分作用します。もし、声とノイズのレベルが近い場合は、ここをHIGHにするといいでしょう。
REFLECTIONSでは、部屋鳴りをどれだけ抑えるか調整可能です。デフォルトで、左いっぱいに回っており、これが一番部屋鳴りがない状態になっています。自然な感じを再現する際は、ここを回していきます。もちろんルーム感を戻せば戻すほど、ノイズも目立ってきます。
AMBIENCE GATEでは、音声がない状態のときにバックグラウンドをゲートするか調整可能。ここにはゲートのスレッショルド、アタック、リリースが付いています。
ADVANCED CONTROLSをオンにすると、グラフィックFFTディスプレイのところに4バンドで微調整できるパラメータも表示されます。一番上の100で、ノイズリダクションが100%の状態になっており、たとえば中音域の音声がある部分の値を下げることで、声をよりナチュラルに保ったまま、ノイズ除去を行えます。ソロやバイパス、デルタボタンという取り除いたノイズだけを聴くものだったりが、ここに配置されています。使い方としては、ソロとデルタボタンをオンにして、除去したノイズ成分扱いのところに音声の成分が入らないギリギリを狙うといったものになります。
帯域ごとに細かくリダクション具合を調整できる
これらで設定した値の比率をキープしたまま、全体の調整はPROCESS AMOUNTで行うことがきます。全体的にノイズ除去の効果を上げたり下げたりをここで調整可能。
全体の比率を保ちつつPROCESS AMOUNTでノイズをコントロール
なおOBSもVSTプラグインが使えるので、Clarityが使えるか試してみました。結果からいうと、普通にインサートして使うのは難しく、少し手間のかかる手順を踏んでも実際に使えるかどうか検証はできませんでした。公式も対応しているとはいっていないので、DAWでの音声処理だったり、動画編集ソフトで使ったり、ポストプロダクションで使っていくのがよさそうですね。ただ、中にはOBSにWAVESプラグインをインサートしている方もいるので、これについては要検証ですね。
さて、いかがだったでしょうか?Clarity Vx Proには、Clarity Vxが付いてくるので、手軽にノイズ除去をしたいときなど使い分けも可能。Clarityの強みは、プラグインとしてインサートして使えるところであります。ノイズリダクション系のプラグインだと代表格なのはRXですが、RXの場合本格的なノイズリダクションをしようと思ったら、RX Connectを使ってアプリを立ち上げる必要があったり、その操作を覚える必要があるので、単純な環境ノイズを取り除くのであればClarityに軍配が上がるかもしれません。ただ、RXではポップノイズを取り除いたり、楽器に対しても使えるので、要は使いどころ。Clarity Vxは、約3,000円で入手可能なので、まず持っていて損はないので、試してみてはいかがでしょうか?
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