元AKG社員約30人が集まってできたメーカー、Austrian AudioのフラグシップヘッドホンHi-X60、Hi-X65

AKGの元社員約30人で設立したオーストリアのメーカー、Austrian Audioをご存知でしょうか?2015年にAKGを所有していたハーマン・インターナショナル・インダストリーズがサムスン電子に買収された後、設立された比較的新しいメーカーであり、メンバーには業界標準のマイクやヘッドホンを作った人たちがいるのです。開発チームはノイズキャンセリングのテクノロジーやソフト、ファームウェア、DSPなどいろいろな分野のエキスパートがいて、すでに複数特許を取得。ちなみに最初にリリースされたのは、C818OC18というコンデンサマイクで、プロからの評価が高い製品となっています。

そんなAustrian Audioが次に手掛けたのがモニターヘッドホンであり、フラッグシップ、プロフェッショナル、コンシューマーという3つのラインで、現在販売されています。フラグシップには49,500円(税込)と同じ価格の密閉型Hi-X60と開放型Hi-X65という2機種が用意されていて、実際試したところ、かなりよかったので、それぞれの違いを含め、紹介していこうと思います。

Austrian AudioのフラグシップヘッドホンHi-X60、Hi-X65


Austrian Audioは、2017年7月1日にオーストリアのウイーンで創業した、オーディオメーカー。Austrian Audio初の製品は、以前「C414の伝統を引き継ぎつつ、現代にマッチしたモダンマイクが誕生!元AKG社員約30人が集まってできたメーカー、Austrian Audio始動」という記事で、設立の歴史とともに詳しく紹介していたりするので、ぜひそちらもご覧ください。その記事では、Austrian Audioの営業部長、デイヴ・カールセン(Dave Karlsen)さんにC818、OC18のお話しを伺っているのですが、そのときからモニターヘッドホンについて言及しており、それがついに今回実現したというわけです。

Austrian Audioの営業部長、デイヴ・カールセンさん

そんなAustrian Audioのモニターヘッドホンのラインナップは以下のようになっています。

フラグシップ
Hi-X65 開放型オーバーイヤー 49,500円
Hi-X60 密閉型オーバーイヤー 49,500円
プロフェッショナル
Hi-X55 密閉型オーバーイヤー 39,600円
Hi-X50 密閉型オンイヤー 36,300円
コンシューマー
Hi-X25BT 密閉型オーバーイヤーBluetooth 22,000円
Hi-X15 密閉型オーバーイヤー 14,300円

Austrian Audioのモニターヘッドホンラインナップ

この中で今回ピックアップするのは、フラグシップモデルであるHi-X60とHi-X65。両機種の大きな違いは、密閉型か開放型かという点。そもそもヘッドホンはその構造から、密閉型(クローズド型)と開放型(オープンエアー型)の2つに分けられ、ハウジング部分の特徴が異なります。ハウジングとは、ヘッドホンを装着したときにちょうど耳に着ける部分で、ハウジングの中には音を出すドライバー(振動板)が搭載されています。そのハウジングが密閉されているのが密閉型ヘッドホン、そうでないものが開放型ヘッドホンと呼ばれています。

密閉型ヘッドホン、開放型ヘッドホンで特徴が異なる

一般的に密閉型ヘッドホンは、遮音性が高く、ヘッドホンから出ている音を外に漏らさず、外部からの音を遮断しやすいため、レコーディング時のモニター用途として使われることが多いです。またハウジング内の空気を利用することで、力強い低音を再生できる一方、音がこもったり、音場が狭くなってしまうという傾向があるとされています

密閉型ヘッドホンのHi-X60

一方開放型は、室内用ハイエンドモデルとして販売されることも多く、高音域のキレイさは抜群。ハウジング部分が密閉されていないため、構造上遮音性が低く音漏れしやすいという特徴がありますが、音漏れを気にしない環境では、高いポテンシャルを発揮します。音場が広く、圧迫感が少ないため、長時間の使用でも疲れにくく、音楽制作を快適に行うことができるとされています。とはいえ、もちろんヘッドホンよって音の違いがあるので、どちらが自分がほしい音なのか、使用用途などで判断したいところ。

開放型ヘッドホンのHi-X65

さて、日本で発売される前から海外でかなり評価の高いHi-Xシリーズ。そのフラグシップモデルにあたるわけですが、両機種ともAustrian Audio独自開発のハイエクスカーション・アコーステイック・テクノロジーによる44mm Hi-Xドライバーを搭載しているとのこと。またハウジングの違い以外のスペックは、表を見る限り同じになっており、周波数のレンジは5Hz~28kHz、THD(@1kHz)は0.1%以下、インピーダンスは25Ω、感度は110 dBspl/Vとなっています。

ツートップのフラッグシップモデル。両機種の見た目は似ている

共通している部分としては、折り畳みと回転機構が装備されており、持ち運んだりするにしても便利で、片耳でモニタリングもできるのでDJ用途としても使用できそうです。

折り畳み、回転機構を装備

また大部分のデザインは、ハウジング以外同じで、どちらも高級感のある仕上がり。カラーリングについては、Hi-X65は、ハウジング、ヘッドバンド、ヒンジ部分がグレーになっており、Hi-X60は全体的にブラックに統一されています。ロゴは、Hi-X65は黒、Hi-X60が赤で刻印されていて、かっこいいですよね。強度を左右するパーツにはメタル素材を採用しているらしく、手に取ってみると、ちょっとやそっとじゃ壊れなさそうな堅牢さを感じます。

高級感がありつつ、堅牢も兼ね備えている

イヤーパッドは、低反発の素材が使われて、着け心地はかなり快適。Hi-X60は320g、Hi-X65は310gと、そこそこあるのですが、ヘッドバンドも含め、すっぽり頭を包んでくれるので、長時間作業でも耳が痛くなったりすることはなさそうです。堅牢な作りをしているので、イヤーパッドの変えは付属していませんが、純正アクセサリとして販売されているので、パッドがへたったら交換することで長く愛用できるモニターヘッドホンです。

イヤーパッドは着け心地がよく、長時間作業でも疲れない

付属品は、交換可能な1.2Mと3Mケーブル、ステレオ標準変換アダプター、キャリング・ポーチ。純正アクセサリとして、ケーブルも販売されていますし、付属しているキャリング・ポーチとは別のハードケース型のヘッドホンケースもあります。純正ケーブルの変えだったりは、現場やスタジオなどいろいろなところで使うユーザーにとっては必要なので、しっかり用意されているのは嬉しいところ。

交換可能な1.2Mと3Mケーブル、ステレオ標準変換アダプター、キャリング・ポーチが付属

では、音質について見ていきましょう。音の方向性は両機種とも同じで、どちらも解像度が高く、ピアノやウッドベースのタッチ感、リバーブの余韻といった細部までモニタリングできます。高音域、中音域、低音域すべてのバランスがよく、まさしくモニターヘッドホンというクオリティ。両機種の違いは、まさしく密閉型と開放型の違いにあり、Hi-X60は低音域の力強さがよく、特性上音漏れをしにくいので、外部で音が鳴っている場合やレコーディングする際に使えます。

密閉型のHi-X60

一方Hi-X65は、開放型というだけあって音場が広く、中音域・低音域の前後の位置もしっかりに把握できます。また高音域の伸びもあり、広いレンジで自然なモニタリングが可能。音のアタック感、余韻も再現性が高く、ミックスやマスタリング用途として最適です。両機種ともに約5万円というので、このクオリティであれば、コストパフォーマンスがいいなと感じました。

開放型のHi-X65

以上、Hi-X60とHi-X65について紹介しました。歴史を作ってきたAKGの元社員が集まったというだけあって、細部まで作りこまれた、いいヘッドホンという印象でした。マイクの高い評価に続いて、このヘッドホンも多くのユーザーに受け入れられていくと思います。ぜひ、ほかのラインナップも実際に聴きたいと感じました。両機種は、音の細かい違いはありますが、音の好みはそれぞれあると思うので、ぜひ一度試聴していただきたいところです。

【関連情報】
Hi-X60製品情報
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Commentsこの記事についたコメント

2件のコメント
  • まみ

    Hi-X55 密閉型オーバーイヤー
    Hi-X50 密閉型オンイヤー
    ではないでしょうか?

    フラグシップとプロフェッショナルの違いがどれだけあるのか気になります。

    2022年3月20日 3:02 PM
  • 藤本 健

    まみさん

    ありがとうございます。おっしゃるとおりですね。修正しました!

    両方を聴き比べてないので、違いがちゃんとは見えていませんが、機会があれば、改めてレポートしてみます。

    2022年3月20日 4:49 PM

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