FPGAx2とDSPx4で構成されるスーパーデスクトップインターフェイスZen Tour Synergy Coreをフラグシップに持つAntelopeのZenシリーズ。昨年には、このZenシリーズのエントリーモデル、Zen Go Synergy Coreが発売され、価格がこれまでのAntelope製品から考えると非常に安価であったこともあり、かなり話題になったのも記憶に新しいところです。そんな中、新たにミドルモデルとしてZen Q Synergy Coreがリリースされました。
コンパクトながらも2つのコンボジャック、2つのラインまたはHi-Z入力、2つのヘッドフォン出力、2つのバランス・モニター出力、2つのバランス・ライン出力……などを搭載。Zen Go Synergy Coreよりも入出力が増え、コストと機能のバランスがよく、いいとこどりの機材となっています。また、Zen Go Synergy CoreがUSB Type-Cでの接続だったのに対し、Zen Q Synergy CoreはThunderbolt3での接続。さらにSynergy Core FXをDAWのプラグインとして利用可能なのも重要なポイントです。Synergy Core FXとは、FPGAとDSPにより、ビンテージ機材をはじめとするさまざまなエフェクトを、PCのCPUパワーを必要とせず、このハードウェア自身でレイテンシーなく再現できるシステム。価格は125,400円(税込)で、2022年1月31日までに購入した方にはEdge Solo モデリングマイクロフォン、Bitwig Studio 4、追加の「Big15 」FXバンドル、afx2dawBridgeプラグインがもらえるキャンペーンも実施中。エントリーモデルから次のステップのオーディオインターフェースとして最適なZen Q Synergy Coreについて紹介していきましょう。
ミドルレンジのオーディオインターフェースに大型新人が仲間入り!ZenシリーズのいいとこどりなZen Q Synergy Core
AntelopeがZenシリーズのミドルレンジとして出したZen Q Synergy Core
Antelope Audioは、高精度なクロックで広く知られるヨーロッパのメーカー。クロックの代名詞的存在でもあり、レコーディングスタジオ御用達のメーカーとしても知られている、世界中の現場で導入されています。そんなAntelope Audioは、現在オーディオインターフェースの製品ラインにプロオーディオ技術を実装しており、Zenシリーズもその技術を用いられた製品群となっています。
Zenシリーズは、これまで「FPGAx2とDSPx4で構成されるスーパーデスクトップインターフェイス、AntelopeのZen Tour Synergy Coreの実力」という記事で紹介したZen Tour Synergy Coreをフラグシップに、エントリーモデルに「これは価格破壊!Antelopeが37種のエフェクトを標準搭載した超高性能オーディオインターフェイス、Zen Go Synergy Coreを56,000円で発売開始」という記事で紹介したZen Go Synergy Coreがありました。
Zen Go Synergy Core(左)とZen Q Synergy Core(右)。Zen Qのほうが一回り大きいけれどコンパクト
そのZen Tour Synergy CoreとZen Go Synergy Coreの真ん中として仲間入りを果たしたのが、今回リリースされたZen Q Synergy Core。ここでは、Thunderbolt版を紹介していきますが、同じスペックのUSBバージョンも発売予定とのこと。今回チェックした機材を簡単に説明するとZen Go Synergy Coreよりも入出力が増えたバージョンであり、またPCとの接続がThunderbolt3になっています。詳しくは後ほど説明しますが、afx2dawプラグインを使って、DAW上でSynergy Core FXを利用することが可能になっているのも重要なポイントです。ちなみにThunderbolt3で、PCと接続すればバスパワーで動作しますが、Thunderbolt3のケーブルが付属していないので、この点には注意が必要です。
24bit/192kHz、14in/10outのスペック
では、スペック面を見ていきましょう。クロックは、64-bit AFCテクノロジーというクロッキング技術の代名詞のようなAntelope独自のものが搭載しているのはもちろんのこと、最大127dBのヘッドルームを備えたAD/DA変換、最大24ビット/ 192kHzでの録音というレコーディングスタジオのプロ機材同様の能力を有しています。
クロッキング技術の代名詞ともいえるAntelopeの64-bit AFCテクノロジーを搭載
14in/10outという仕様になっており、フロントのインプットは、TRSのHi-Zとラインを切り替えられる1/4インチの入力を2つ装備。ここにギターやベースを接続したり、シンセなどをステレオで入力することができます。Zen Go Synergy Coreには、このフロント入力がなかったので、ギタリストの方や機材を繋いだままにしときたい方にとっては、大きな違いだと思います。
またリアには、コンボXLRジャックが装備されており、マイク/ライン/ Hi-Z入力の切り替えが可能。フロントの入力と同じく、ゲイン幅は0db~65dB。ここのマイクプリアンプは、Antelope自慢のディスクリート回路によるものが2つ搭載されています。それぞれ個別に+48Vのファンタム電源のON/OFFの設定が可能です。
Antelope自慢のディスクリート回路によるマイクプリが2つ搭載されている
ここまでで、4inあったわけですが後の10inは、S/PDIFコアキシャルのデジタル入力が2ch、ADATオプティカル入力が8chという内訳になっています。ADATは、サンプリングレートによって入力できるチャンネル数が変わるので、最大8chですね。このADATもZen Go Synergy Coreには、搭載されていなかった点になります。
出力は、MONITORと書かれたTRS出力がステレオ1ch、LINE OUTと書かれたTRS出力がステレオ1ch搭載されています。Zen Go Synergy Coreもアナログの出力は、ステレオ2系統搭載されていましたが、片方がRCA出力だったので、Zen Q Synergy Coreに搭載されているのがどちらもTRSであることから、よりプロ仕様になったようですね。さらにいうと、Zen Go Synergy CoreのRCA出力は、モニター出力とミラーされており、
Zen Q Synegy Core自体がスタジオという概念
入力や出力のゲイン調整、ボリューム調整、+48Vの切り替えなどは、本体トップパネルの3つのボタンと大きいノブを使いながら、左側にあるディスプレイを見てコントロールします。ノブはプッシュ式で、ミュートの切り替えなども瞬時に行うことができます。また、LINE、Mic、Hi-Zの切り替えは、まさにスイッチで行っているようで、切り替えタイミングで、カチカチとリレーの動作音も聞こえてきます。
基本的操作はトップパネルにある3つのボタンと大きなノブ、左のディスプレイで行える
より細かい調整は、ほかのZenシリーズと同様にAntelope Launcherというソフトを起動し、Start Control Panelボタンを押すと表示される画面から行っていくことができます。これが結構優秀で、ルーティングを自由自在にカスタマイズできるのです。詳しくはZen Go Synergy CoreやZen Tour Synergy Coreの記事をご覧いただきたいのですが、Antelopeのオーディオインターフェイスは、これ自体がスタジオであり、ここにミキサーコンソールも入っているという考え方になっているので、ほかの一般的なオーディオインターフェイスとはちょっと違います。慣れるまでに少し時間が必要ですが、覚えてしまえば圧倒的に便利で、配信などを行うときのループバックの設定なども自由に行っていくことが可能です。
より細かな操作はControl Panelというソフトウェアを用いて行う
FPGA&DSP搭載で、37種のエフェクトを標準装備
そして、ここからがほかのオーディオインターフェースと圧倒的に違うところ。Zen Q Synergy CoreにはFPGAとDSPが搭載されており、これらのプロセッサによってビンテージのアナログ機材のモデリングを中心に、計37種類のエフェクトをPCのCPUパワーを必要とせずに標準で利用することができます。
たとえば、Pultec EQP-1Aを再現するVEQ-1A、UREI 1176-LNを再現するFET-A76、dbx903を再現するX903……などなど。プロの現場で使われるような名機種のモデリングがあり、これらは、DAWプラグインではなく、Zen Go Synergy Core内にあるFPGAやDSPで動かしているハードウェアのエフェクトなので、レイテンシーはなく(※厳密にいえばデジタルエフェクトなので、0.1msec以下の処理時間がかかりますが、DAWやオーディオインターフェイスのバッファサイズなどとは関係なく動作し、人が認知できるレベル以下の遅延なので、ここではレイテンシーなしと表現しています)、動作させることが可能です。
またその37種のほかにも、オプション扱いでAntares Audioと共同開発したAuto-Tune Synagry、テープレコーダーで録ったような音にするReel To Reel、 InertiaのInstinct……といったものも存在しています。とくにAUTO-TUNEは、各種環境のバージョンがある中、リアルタイム性という意味では、AntelopeのSynergy Coreが最速のようです。
これらのエフェクトは、Zen Q Synergy CoreでもZen Go Synergy CoreでもAntelope Launcher上で利用し、ある種、アウトボード的な使い方をするのが基本なのですが、オプションのafx2dawというプラグインを使うことで、DAW内で通常のプラグインをインサートするようにSynergy Core FXを利用することが可能です。ただプラグインのように使えますが、あくまでもZen Q Synergy Core内部のエフェクトにルーティングしているので、CPUベースで動くプラグインとは少し挙動が異なります。
afx2dawを使うと、DAW上でSynergy Core FXを使用できる
たとえばエフェクトを通じてバウンスするという場合でも高速処理するオフラインバウンスではなく、必ずリアルタイム時間をかけた処理を行う形となります。イメージとしては、ハードのエフェクトと繋いでいるのと非常に近い形なので、リアルタイムバウンスが必要なのです。afx2dawを使えば、PCに負荷を掛けずにミックスなどを行っていけるので、ここにメリットを感じる方も多いと思います。
ちなみにZen Tour Synergy CoreもThunderbolt3接続が可能なので、同じようなことが行えるのですが、インサートできるプラグインの個数は、FPGAとDSPの数によって異なります。Zen Q Synergy Coreの搭載数は、DSP2つ、FPGA1つとなっています。それぞれのシリーズのFPGAおよびDSPの数は以下のとおり。
FPGA | DSP | |
Zen Go Synergy Core | 1 | 1 |
Zen Q Synergy Core | 1 | 2 |
Zen Tour Synergy Core | 2 | 4 |
ところで、Thunderbolt3を搭載しているPCとしてM1 Chip搭載Macを使っている方もいると思います。実際今回のセットアップでは、M1 Chip搭載のMac miniを使用したのですが、少しセッティングに注意が必要でした。公式からセットアップの説明(https://jp.antelopeaudio.com/support/macos/)が出ているので、これ通りにセッティングする必要があります。Intel Macと同じ手順だとうまく動かないので、使用する際はちゃんと読んでみてください。
以上、Zen Q Synergy Coreとはどんな機材なのか、紹介しました。価格は125,400円(税込)と、Zen Go Synergy Coreよりも高いですが、コストパフォーマンスは抜群。音質のクオリティは業務用のスタジオレベルで、便利さもかなり高い機材であり、同じ価格帯にあるRMEやUniversal Audioと今後勝負になってきそうですね。
Edge Solo Modeling Mic、 BitwigStudioフルライセンスDAW、追加の「Big15 」FXバンドル、afx2dawBridgeプラグインがもらえるキャンペーン実施中
2022年1月31日までに、Zen Q Synergy Coreを正規販売店で新規購入、2022年2月15日までにオーディオインターフェースのアクティベーションを行ったユーザーに向けて、キャンペーンを実施中です。
目玉は、Edge Soloというモデリング用のコンデンサマイクがもらえる点。Edge Soloはシングルカプセルでラージダイアフラムを持つコンデンサマイクで単体の実売価格が68,000円程度のもの。それ自体、いいマイクではあるのですが、単なるマイクではなく、Antelopeのマイクモデリング技術により、さまざまな著名クラシックマイクにエミュレーションすることが可能。
また、最上位版であるBitwig Studio 4、追加のFXバンドル、記事でも紹介したafx2dawのプラグインがもらえてしまいます。この機会にぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
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